中近東関係

1 中近東諸国との外交関係

世界の石油宝庫としてまたA・Aグループのメンバーとして団結している中近東地域の重要性に鑑み、政府は同地域に対する施策の重点として第一に親善友好関係の増進に努め現在左のとおり十の在外公館を設置し、対中近東政策の実施に万全を期している。

 在エジプト大使館、在トルコ大使館、在イラン大使館、在アフガニスタン大使館、在イラク公使館、在レバノン公使館、在エティオピア公使館、在シリア公使館、在イスラエル公使館、在カサブランカ領事館

なお、わが国はイェーメンに対しては国交関係設定を申入れ中であるが、イェーメン以外の十六カ国とは全部国交関係をもつている。

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2 中近東との通商の促進

政府は中近東に対する施策の重点の第二としてわが国の当地域に対する貿易・通商の伸長ならびに技術協力の促進をはかつている。当地域諸国の多くは、直接間接の石油収入にもとづいて国土開発を進めてあり、これに対するわが国の協力が期待せられるところである。しかるにこれら中近東諸国は地理的に遠隔の地にあり、遺憾ながらわが国との関係は二三の国を除き従来極めてなじみが薄く、今日の日本の産業文化の状態はこの地域にほとんど知られていない状況である。そのため政府は在外公館を通じ必要な宣伝啓発につとめる一方、一昨年来当地域より主として各界の指導的立場にある人々をつぎつぎに本邦に招請して、産業文化等各般の制度施設等を紹介し、大きな効果を収めてきた。他方、わが国としても、従来当地域の経済事情については、比較的調査の行き届かなかつた点もあるので、あるいは在外公館を通じ、あるいは特別の調査団を派遣して鋭意調査を進め、実情の把握に努めている。

当地域との貿易関係の促進、経済技術協力の伸長については、時日をかけて忍耐強く行う必要があることはいうまでもないが、幸い貿易額ならびに技術協力等の面においては、徐々にではあるが年々着実に実績を収め向上の跡が見られている。

ちなみに当地域でわが国と通商航海条約を結んでいる国はトルコ、貿易協定または支払協定を結んでいる国は、シリア、トルコ、エジプトである。

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3 中近東の紛争とわが国の態度

平和を維持することはわが国外交の基本政策であるが、中近東地域においてわが国との通商貿易関係が円滑に促進されるためにもこの地域に平和が保たれることが望ましい。

昨年七月エジプト政府によるスエズ運河の国有化措置断行以来、この地域は大きな紛争の渦に巻込まれたが、政府は当初より、スエズ運河の自由かつ安全な通航の確保を第一義とするとともに、紛争が国連憲章の精神にしたがつて平和的に解決されることを念願してこれに対処してきた。

政府はこの平和的処理の方針については、昨年の第一次ないし第三次ロンドン会議およびさきの第十一次国連総会等において、内外に対してしばしばこれを明らかにしてきた。

アラブ、イスラエルの対立抗争関係は、当地域の平和維持のため、重大な関係をもつものであるが、この問題についても、政府は国連憲章の精神に従い紛争の速かな平和的解決が実現するよう期待している。

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