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国際的な取組 平成13年12月 9月11日の米国同時多発テロ以降、国際テロの防止・根絶に向けて国際的な取組が進められています。以下では、このためにこれまで取られてきた対応として、国際的な連帯の形成、テロ対策に関する国際協力、アフガニスタン難民・避難民支援、パキスタン、中央アジア諸国等の周辺国支援、アフガニスタン和平・復興に向けた支援について紹介します(12月10日現在)。(本原稿は『時の動き』編集内閣府 平成14年1月号に掲載されたもの)。国際的な連帯の形成 9月11日の米国における同時多発テロは、米国のみならず人類全体に対する挑戦であり、極めて卑劣かつ許し難い攻撃でした。今次テロのような国際テロ行為の防止・根絶には、国際社会としても多岐にわたる分野において包括的な取組が必要です。そして、その前提として各国が一致団結してテロの防止・根絶に取り組むための国際的な連携を構築し、維持することが極めて重要です。 テロ発生後、国連安保理決議第1368の採択(9月12日)、G8首脳声明の発表(9月19日)等において速やかにメッセージが発出されたのも、このような連帯の重要性を各国が認識していたことによるものです。 これに対し、今次テロの首謀者とされるオサマ・ビン・ラーディンはムスリムに対し「聖戦」を呼びかけていますが、各国とも、今次テロに対応する国際社会の取り組みはテロリズムとの闘いであってイスラムとの闘いではないことを確認し、結束を維持しています。 我が国としても、今次テロの発生以降、国際的なテロとの闘いを我が国自らの安全確保の問題と認識して積極的かつ主体的に取り組むとの考えの下、米国等の行動を強く支持し、世界の国々と一致結束して対応してきました。特に、テロの対象となった米国のほか、アフガニスタンの周辺国やイスラム諸国、さらにアジア諸国への外交努力を通じ、テロの防止・根絶に向けた取組への連携の強化に努めてきました。具体的には、以下のような取り組みをしています。 ● 小泉・ブッシュ会談 まず、テロ直後より小泉総理大臣の声明や会見により、テロの犠牲となった方々への哀悼の意を表するとともに、テロに対する国際社会の結束を訴えつつ、米国に対し最大限の協力を表明しました。また、テロ発生現場における救助・救援活動を支援するため、合計1000万ドルの資金を供与しました。さらに、小泉総理大臣は9月24日から26日にかけて訪米し、ブッシュ大統領との首脳会談において天皇陛下よりのお見舞いの言葉を伝達したほか、9月19日に発表した我が国の貢献に関する方針を伝えるとともに、日米間で、周辺国への外交努力の強化や国際世論形成のための連携を確認しました。小泉総理の訪米は、今次テロ後の首脳レベルの訪米の中で、シラク仏大統領、ブレア英首相、クレティエン加首相に続く4番目のものでした。 また、これと並行して、テロに関与したオサマ・ビン・ラーディンとその率いるテロ組織であるアル・カーイダが潜伏していると見られるアフガニスタンのタリバーン政権への対応のために、アフガニスタン周辺国やイスラム諸国に対しても働きかけを開始しました。イスラム諸国には、まず、総理親書を発出してテロとの闘いへの団結を呼びかけるとともに、この闘いはイスラムとの闘いではないことを強調しました(注参照)。 ● 総理特使の派遣等 次いで、総理特使を各国に派遣しました。まず杉浦外務副大臣がパキスタンを訪問し(9月25日-28日)、国内の困難な状況にもかかわらずテロとの闘いにおける国際社会への協力を表明したパキスタンに対する我が国の支持を伝達し、パキスタンへの緊急の経済支援の内容について説明しました。続いて高村元外務大臣がサウディ・アラビア、イランを訪問し(9月30日-10月5日)、サウディでは、ファハド国王、アブドッラー皇太子、スルタン第二副首相兼国防航空相及びサウード外相と、またイランでは、ハタミ大統領、ハラズィ外相などと会談しました。これらの会談では、今次テロをイスラムと結びつけるべきではないこと、テロの口実とされないためにも中東和平問題の解決が必要であることが認識されました。 また鈴木元北海道・沖縄開発庁長官はタジキスタンを訪問し(10月7日-8日)、ラフモノフ大統領と会談しました(帰路にはウズベキスタンも訪問し、スルターノフ首相と会談)。さらに橋本元総理大臣はエジプト、アラブ首長国連邦を訪問(10月7日-12日)、エジプトではムバラク大統領、ムーサ・アラブ連盟事務総長及びアラファトPLO議長・パレスチナ暫定自治政府長官と、ア首連ではスルタン副首相及びハムダーン外務担当国務相との会談を行いました。また、森前総理大臣及び杉浦副大臣はインドを訪問、ヴァジパイ首相他、インド要人との意見交換を行いました。これらの訪問では、アフガニスタン周辺国や中東諸国との間でテロに対する闘いへの協力を確認しました。 また田中外務大臣も、各国要人や在京各国大使との会談を通じて、テロへの取り組みにおける結束を確認しました。田中大臣は先般11月22日から27日にかけてパキスタンを訪問し、ムシャラフ大統領等に対し、テロに対する我が国の取り組みの現状及びパキスタンへの支持・支援を伝達したほか、11月16日に政府が発表した我が国の追加的経済支援について説明し、今後の両国間の一層緊密な協力関係の構築に向けて意見交換を行いました。 このほか、総理及び外務大臣は、相手と直接顔を合わせての会談以外にも、電話会談という形で各国要人と連絡を取り合い、テロに対して断固たる措置を取ることを確認するとともに、今次テロへの対応を協議しています。 ● アジア諸国との結束 さらに、アジア諸国との間でも結束をはたらきかけています。総理の訪中(10月8日)や訪韓(10月15日)において、首脳レベルでテロ撲滅に向けた闘いにおける協力を確認したほか、我が国の措置についても説明を行いました。また、多数国間会議の場において、テロに対する各国の政治的意思と取り組みを表明してきました。 まず、10月20日から21日、上海でAPEC首脳会議が開催されました。従来、APECにおいては、経済問題を中心に協議が行われてきましたが、米国での同時多発テロの重大性にかんがみ、今次首脳会議においては、テロリズムへの対処についても協議が行われました。その結果、宗教的・文化的に多様なメンバーからなるAPECにおいて、テロリズムを強く非難し、反テロリズムのための国際協力を強調する声明が発出されました。 また、11月5日に行われたASEAN+3首脳会議では、前日のASEAN首脳会議における「テロリズムに対抗するための共同行動に関する2001ASEAN宣言」の採択を受け、議長プレス・ステートメントにおいて、反テロを含め、より緊密な東アジアパートナーシップの構築がうたわれました。またこの機会に行われた日ASEAN首脳会議の場でも、小泉総理より、我が国のテロ対策面での努力を紹介しました。 さらに、第56回国連総会に宮澤元総理大臣が政府代表として出席し、11月11日に我が国の一般討論演説を行い(副題:「テロの根絶に向けた総合的なアプローチの展開」)、テロ問題に対する我が国の取り組みを幅広く紹介しました。 (注)総理親書発出先 アブドッラー・サウディ・アラビア皇太子、ハタミ・イラン大統領、ムバラク・エジプト大統領、ハマド・カタル(イスラム諸国会議議長国)首長(9月19日)、シャロン・イスラエル首相、アラファト・PLO議長・パレスチナ暫定自治政府長官(10月19日) テロ対策に関する国際協力 9月11日の米国同時多発テロ以降、多国間及び二国間の様々な場でテロとの闘いが当面の緊急課題となり、取り組みが進められています。テロ対策に関する国際協力は、軍事面以外にも、反テロの連帯強化のための外交努力、テロ防止・テロリスト処罰のための国際的な法的枠組みの強化、テロ資金源対策等の側面の重要性が認識されており、国際的な取組が重層的に展開されています。 ● 国連及びG8・G7を中心とした動き 国連では、米国同時多発テロ発生の翌日に、テロを非難し、国際の平和及び安全に対する脅威と認める旨の安保理決議第1368を採択しました。また、テロ根絶に向けたテロ資金対策に関して具体的措置を盛り込む形で全ての国連加盟国に履行を義務づけた安保理決議第1373を9月28日に採択しました。さらに、国連は、従来より第6委員会を中心にテロ防止関連条約の作成にも取り組んできており、現在、包括テロ防止条約及び核テロ防止条約の交渉が進められています。 G8及びG7は、国際テロ問題への対処に引き続き中心的な役割を果たしています。9月19日にはG8首脳声明を発表し、テロ防止関連条約の可及的速やかな実施等を全ての国に要請するとともに関係各大臣に具体的措置のとりまとめを指示しました。また、10月6日にはG7財務大臣、中銀総裁会議において「テロ資金供与に対し闘うためのG7行動計画」が採択されたほか、11月11日にNYで開催されたG8外相会合では9月19日のG8首脳声明の内容が再確認されており、国際テロ対策の一層の強化に向け、様々なレベルでフォローアップが行われています。 ● 国際的な法的枠組みの強化と我が国の取り組み このような国際社会の動きの中で、我が国も国際社会の平和と安全を守るため、国際テロの防止・根絶に向けた協力に全力で取り組んできています。テロ根絶のためには多角的なアプローチが重要であり、我が国は、国際協調の下、長期的な視野に立った外交努力は勿論、国際的な法的枠組みの強化や関連の国連安保理決議の履行を始めとする具体的なテロ対策に積極的かつ主体的に対応することとしています。 我が国は、テロ防止関連の諸条約の締結・実施に自ら取り組み、他国にも呼びかけることを通じて、テロリストがいずれかの国で必ず処罰されることを確保するとともに、テロを未然に防ぐための協力の枠組みの整備に向けた国際的な法的枠組みの強化に積極的に参画してきています。 これまでに国連その他の国際機関で作成されたテロ防止関連条約は12本ありますが、主に、テロに典型的に見られるような特定の行為類型を犯罪として定め、犯罪人引渡しや自国での事件の付託義務を通じて犯罪者がいずれかの国で必ず刑事手続きに付されるような仕組みを設けるとともに、テロを未然に防ぐための協力措置等を定めています。 我が国は、そのようなテロ防止関連条約のうち11本を既に締結しています。特に、9月のテロを踏まえ、11本目に当たる爆弾テロ防止条約の締結作業を加速化し、11月9日に国会の承認を得て、同16日に国連事務総長に受諾書を寄託しました。この条約は、爆弾のみならず、毒性化学物質(サリン等)、生物剤(炭疸菌等)、毒素(ボツリヌス菌毒等)、放射性物質(濃縮ウラン等)等を用いた致死装置を公共の場所に設置する行為等を犯罪として定めています。例えば炭疸菌の入った封筒を郵送する行為も対象となります(同条約は、12月16日に我が国について発効)。 また、テロ資金源対策はテロ根絶に向けた闘いの最も重要な柱であることから、我が国は、12本目のテロ防止関連条約であるテロ資金供与防止条約についても10月に署名を行い、現在締結に向けて関係省庁間で作業を行っています。現在締約国は14ヶ国(12月4日時点、G8では英国のみ)ですが、22ヶ国に達すれば発効することになっています。この条約は、ハイジャック、空港テロ、人質行為、シージャック、爆弾テロその他のテロ行為に使用されるための資金の供与・受領を、その資金が実際にテロ行為の実行に利用されたか否かを問わず、犯罪化すること等を義務づけるものです。 テロ資金源対策に関しては、また、安保理決議第1373(テロ資金供与防止・資産凍結等に関する決議)が9月28日に国連安保理で採択されています。同決議は、テロ行為に対する資金供与を防止・抑止すること、自国民による又は自国領域内においてテロ行為を行う目的で資金の供与・受領を行うことを犯罪化すること、テロ行為等を行う者、テロ行為等を行う者により直接・間接に所有・支配されている団体等の金融資産及び経済資産を凍結すること、自国民又は自国領域のいかなる者・団体に対しても、いかなる資金、金融資産、経済資源、金融その他のサービスの利用を可能にすることを禁止すること等を内容としています。今後、テロ資金供与防止条約と併せて同決議を履行するため、法制の整備を進める等所要の措置が講じられることになります。なお、タリバーン関連のテロリストの資金凍結については、わが国は関連の国連安保理決議を履行する形で既に所要の国内措置をとってきています。 以上のように、我が国は自らの取り組みを進めることは勿論、引き続き、G8や国連等の枠組み、更には様々な二国間や地域レベルでの取り組みを通じて関連の条約の締結・実施や国連決議の履行を始めとする措置の着実な実施を確保すべく、国際協調を図るとともに、他国への呼びかけ・支援を行っていくことが国際的なテロ防止・根絶、並びにテロリスト処罰を徹底していく上で不可欠と考えています。 テロ対策に関する国際協力は、以上に述べた事項に限られるものではなく、国際民間航空機関(ICAO)等の専門機関や、APEC、ASEANなど地域レベルでのフォーラムでもテロ対策の行動計画や反テロのメッセージの発出が行われたり、具体的な取り組みが進められたりしています。こうした中で、今後、国際テロ対策の国内実施体制の整備を着実に進めていくとともに、かかる実施のための技術・能力が多くの国に共有されることが益々重要になると考えられます。 アフガニスタン難民・避難民支援 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、米国同時多発テロ以前、約三五〇万人の難民がアフガニスタンから周辺国に流出していました(パキスタン二〇〇万人、イラン一五〇万人など)。またテロ以降、約一五万人の難民がパキスタンに到着したと推計されています。 このような事態は、人道上の問題であると同時に、周辺地域ひいては世界の平和と安定にも影響を及ぼしかねない重要な問題です。そこで我が国は、次の四つのアフガニスタン難民支援策を打ち出し、実施しています。 (1)国連機関等を通じた支援 国連は、九月二七日、総額五億八四〇〇万ドルの支援を全世界に対して要請しました。我が国は、一〇月四日、この要請を踏まえ、今後アフガニスタン難民支援を行う国連機関等からの具体的な拠出要請に応じて、最大一億二〇〇〇万ドル(国連の要請額の約二〇%)までの支援を行う用意があることを表明しました。 その一環として、まず、UNHCRに六〇〇万ドルを支援することを表明し、一〇月三〇日には、その一部として三三〇万ドルの拠出(緊急無償資金協力)を決定し、実施しました。 また、これまでの具体的拠出要請の内容等を検討し、アフガニスタン国内の避難民等への支援を実施している四機関(世界食糧計画(WFP)、赤十字国際委員会(ICRC)、国連児童基金(UNICEF)、国際移住機関(IOM))の要請のうち、緊急に支援が必要と判断されるものについて、一一月一六日、合計三六八五万ドルの拠出を決定しました。 これらの国際機関は、長年の活動により蓄積された専門的な知識やノウハウを用いて、中立的な人道支援活動を行っています。我が国の支援により、UNHCRはテントや毛布などの生活関連物資の配布、WFPは食糧支援、ICRCは食糧・医療品の配布、UNICEFは保健・栄養関連支援や児童保護、IOMはシェルター、防寒具の配布を行うことになっています。 (2)物資の提供等 我が国は、「顔の見える支援」の一環として、UNHCRの要請に応え、生活関連物資(十人用テント三一五張、毛布二〇〇枚等)を提供の上、これら物資を自衛隊輸送機によりパキスタンまで輸送し、一〇月九日、UNHCRに引き渡しました。また、同月二五日には、パキスタンにて日本国内の備蓄用に調達予定であった十人用テント五〇〇張を、現地にてUNHCRに提供しました。 さらに、テロ対策特措法に基づく被災民救援活動として、一一月一六日に決定された基本計画に従って、生活関連物資(十人用テント一〇二五張、毛布一万八六〇〇枚等)を自衛隊艦船によりパキスタンまで輸送し、UNHCRに提供しました。 (3)我が国NGOを通じた支援 ● ジャパン・プラットフォームへの支援 政府は、ジャパン・プラットフォームの枠組みの下で難民支援活動を行う我が国のNGOを支援しています。 ジャパン・プラットフォーム(以下、JPF)とは、我が国NGOが災害・紛争等に際し、より迅速かつ効果的な緊急人道支援活動を行えるよう、NGO、政府及び経済界が連携する枠組みです。この枠組みは、一九九九年のコソヴォや東チモールにおける避難民・帰還民支援などの緊急人道支援活動において、日本のNGOが、欧米の国際NGOに比べて組織的・財政的基盤が脆弱なことから、緊急支援の初動が遅れ、十分効果的な活動ができないケースが見られたことを踏まえ、昨年八月に発足しました。JPFには、政府や民間企業・財団などが拠出した支援金がプールされ、武力紛争や自然災害等の現場におけるNGOの初動活動(NGOが被災民や難民に対する支援を行う前の段階での、現地の状況調査や現地の体制立ち上げ(現地事務所の開設、現地スタッフの募集、車両や通信の確保)等)に充当されるほか、NGOは民間企業から必要な技術、機材、人材、情報等の提供を受けることができます。 九月二八日にJPFがパキスタンにおけるアフガニスタン難民への支援を決定したことに伴い、政府はJPFに拠出している五億八〇〇〇万円の初動活動資金をNGOが利用することを認めました。さらに、一一月一二日にJPFがアフガニスタン国内の避難民への支援活動を行うことを決定したことに伴い、政府はNGOの活動を現地で支援するため、外務省員を派遣しました。政府としては、引き続き、これらNGOの活動をできる限り支援するつもりです。 ● 国際機関との連携推進 現地で活動するNGOは、現地情報収集など、今後の事業実施のため、UNHCR、WFP等の国際機関とも協議を重ねています。これらのNGOのなかには、国際機関が計画する難民支援事業を請け負うことを希望するNGOもあり、政府はより一層「顔の見える支援」に資するためにも、これらNGOが国際機関と事業実施契約を結べるよう、側面的支援を行っているところです。 (4)アフガニスタン周辺国への支援 我が国は、今回の事態で影響を受けた周辺国の負担を軽減するため、周辺国に対しても支援を行っています。これらの支援については、次項以下で具体的に述べることとします。 パキスタン等の周辺国支援 今次テロ発生後、日本政府は、米国を始めとする国際社会と一致団結してテロとの闘いに参加する方針を決定し、これを達成するための7項目の当面の措置の一つとして、周辺及び関係諸国に対し人道的・経済的その他の必要な支援を行うこと、その一環として、今回の非常事態においてテロとの闘いに協力するパキスタンに対し、これまでに以下の支援を行うことを表明しています(大半を既に実施済み)。 ● 緊急経済支援 9月21日、政府は、
を発表しました。 (A)の二国間支援のうち、30億円の緊急財政支援は、全額ノン・プロジェクト無償資金協力による支援であり、今次テロの影響により、パキスタンにおいて、深刻な外貨不足等慢性的な経済困難が更に悪化する恐れがあることを考慮して、世界銀行(世銀)・国際通貨基金(IMF)の下で進められている構造調整努力を支援するべく、物資等の購入資金を供与するものです。 また、17億円の難民支援は、既にパキスタンに滞在する大量のアフガニスタン難民、及び今後新たに流出してくる難民への対策としての支援であり、その内容としては、8億円の緊急無償資金協力、5億円のWFP(世界食糧計画)経由の食糧援助、UNHCR向け拠出予定のうちパキスタン向けの2億円の支援、及び2億円の草の根無償資金協力となっています。緊急無償及び食料援助は国際機関も活用しながら、草の根無償については、NGO等を通じて支援することとしています。 一方、(B)の公的債務繰り延べについては、債務返済困難な状況にあるパキスタンに対し、パリ・クラブ合意に従って早急に繰り延べを行うものです。 (C)の国際金融機関を通じた支援は、パキスタンの経済困難緩和、貧困削減に向けたIMF、世銀等の融資について、積極的に支持・支援を行うものです。 上記緊急経済支援内容については、9月25日から28日にかけてパキスタンを訪問した杉浦外務副大臣が先方に説明。これに対し、パキスタン側は、日本の支援は他国に先駆けた迅速かつ寛大な支援、「苦しい時の友こそ真の友」であり、杉浦副大臣の来訪は連帯の証であるとして高く評価し、深甚なる謝意を表明しました。また、米国をはじめとするG8各国首脳も、日本の支援を高く評価する旨発言しました。 ● 追加的経済支援 パキスタンは、今次テロ発生以降、経済活動の大幅な落ち込みや財政負担の増大など、深刻な経済的困難に直面しており、小泉総理とムシャラフ大統領との電話会談(10月17日)やアジズ大統領特使の訪日等の機会を通じて、我が国に対し更なる支援を累次にわたって要請がありました。 我が国としては、本件発生以来、テロに対する国際的連帯の観点を踏まえ、今回のテロとの闘いにおいてパキスタンの安定と協力が極めて重要であり、国内的に大きな要因を抱えている同国を支援していくことが不可欠とであるとの認識に基づいて、パキスタンに対し、11月16日、
からなる追加的支援を行うことを決定しました。3億ドルの無償資金協力は、パキスタン政府による教育及び保健の分野を含む貧困削減の努力を支援するために実施するものです。 中央アジア諸国 中央アジア諸国、特にタジキスタン及びウズベキスタンは、米国に自国の基地を提供するなど反テロ闘争に相当の貢献を行っています。また、これらの諸国はもともと干魃被害等による経済困難を抱えていたことに加え、今般のアフガニスタンを巡る情勢から国境警備にかかる費用の増大など困難な状況に直面しています。 我が国は、先般十月七~八日の鈴木元北海道・沖縄開発庁長官を総理特使としてのタジキスタンに派遣した結果を受け、タジキスタン政府に対し、アフガニスタン難民対策支援として二億四千万円の緊急援助を行なったところです。 これまで政府は「シルクロード地域」外交を推進し、中央アジア諸国の改革努力への支援を行ってきていますが、今回のテロを巡る状況をも踏まえ、我が国として可能な支援を継続していきたいと考えています。 アフガン和平・復興 政府はテロの防止・根絶、そして、地域全体の安定の観点から、アフガニスタン問題に積極的に取り組んでいます。九四年頃から勢力を拡大し、九月十一日前にはアフガニスタンの大半を支配していたタリバーン政権は、その抑圧的な政策やオサマ・ビン・ラーディンを含む多数のテロリストの庇護、支援により、国際的な孤立を招いてきました。その結果、アフガニスタンは国際テロの温床となり、ひいては米国での悲劇を生みました。つまり、アフガニスタンの安定は、アフガン国民の希望であるのみならず、我が国自身の安全に関わる問題でもあるのです。そして、今後のアフガニスタンに安定をもたらす鍵となるのが、2つの大きな課題に対する国際社会の取り組みです。 第一は和平問題です。新しいアフガニスタンでは、アフガン国民の意思が尊重されるとともに、国民各層に広く支持され、国際法を守り、国際社会に広く受け容れられ、近隣諸国と友好関係を築く政府が樹立されることが重要です。そして、このような新政権は、アフガン人自身の手によって作り出されなければなりません。 我が国は、今回のテロが発生する以前から、アフガニスタンの和平に向けた努力を続けてきました。具体的には、アフガン各派の招聘、外務省幹部の出張を通じ、ハイレベルでの和平等に関する協議を行ってきました。また、和平の中心となる国連の努力を支持、支援してきました。 米国でのテロ後、事態が一変したことは周知の通りです。国際社会の断固たるテロ撲滅に対する決意により、タリバーンは影響力を失っています。今後、アフガニスタンが内戦状態や混乱に陥るのを防ぎ、長期に亘る内戦に苦しむアフガン国民にこれまで以上の支援の手を差し伸べるためにも、アフガン各派の合意に基づく安定した新政権の樹立が急務となりました。 このため、国連のブラヒミ・アフガニスタン担当事務総長特別代表を中心に、11月27日よりドイツでアフガン各派の代表者による会議が開催された結果、12月5日、暫定政権の樹立などについて各派が合意に達しました。わが国は、今後ともアフガニスタンの真の安定のために、関係国・機関とも協力しつつ支援・貢献を行っていきます。 第二に重要な課題は復興です。アフガニスタンの真の安定のためには新政権の樹立と並び、長年の戦闘で荒廃した国土を復興していくための国際社会の支援が欠かせません。我が国はアフガニスタン国民の苦境を少しでも和らげるべく、これまでも人道支援に取り組んできましたが、このような支援を国土の復興に継ぎ目なく結びつけていくことが重要です。このような考え方に基づき、我が国は、11月20日に米国との共同議長の下、ワシントンにおいてアフガニスタン復興支援高級事務レベル会合を開催しました。この会合では、将来の復興支援への国際社会の決意が確認され、今後の復興支援体制として、日本、米国、EU、サウディ・アラビアを共同議長とする復興支援運営グループが結成されました。また、1月後半には我が国で幅広い国々の参加を得て、アフガニスタン復興に関する閣僚級会合を開催します。 タリバーンは支配地域の大部分を失いましたが、その後には長年の内戦、干魃等に苦しんできた多くのアフガン国民が残されています。このような中で重要なことは、国際社会が和平と復興について強く支援していくというメッセージを発出し、また、国際社会の支援の下、和平と復興が実際にアフガン国民の目に見える形で進展することにより、アフガン国民が将来への希望を持つことができるようにすることです。我が国は今後も、和平と復興の両面で、アフガン国民に希望を与えるための国際社会の努力に積極的かつ主体的に貢献していきます。 |
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