財・日本国際医療団
(参考)財団法人日本国際医療団設立趣意書
開発途上国にある諸国では、先進国で既に防圧に成功している各種伝染病・寄生虫疾患その他の疾病がなお蔓延し、気候風土の関係も伴い、保健衛生上極めて悪い条件下にあるにもかかわらず、医療施設に恵まれず、その住民の大部分は、近代医学の恩恵に浴することもできない状態に置かれています。これら諸国の住民のため医療の手をさしのべることは、人道的見地からも、極めて必要なことと云わなければなりません。
これら諸国からの医療協力の要請に応え、わが国は、海外技術協力の一環として、医療研修員の受け入れ・医療専門家等の派遣・医療機材の供与・現地医療センターの設置等を行っており、医療協力の人的協力面の実績としては、昭和29年度以降昭和40年度末までの累計は、受け入れ研修員300名余・派遣専門家90名余程度で、未だ微々たるものと云わざるを得ません。これら諸国は、一層積極的な協力をわが国に要請する度合が強まっていますので、本年度以降いよいよ拡充される医療協力事業に関しましては、物的面はさておき、ようやく本格化してまいった人的協力面を如何にして伸長させるかがわが国にとって大きな課題であります。即ち委託研修機関の問題につながる研修員受け入れの隘路・派遣専門家の帰国後の身分保障問題に関連しての長期派遣専門家確保の困難等を如何にして解決するかが問題であります。
このような隘路を打開して、日本政府の医療協力事業の推進に寄与する事業を行うため財団法人日本国際医療団を設立しようとするものであります。
即ち、財団法人日本国際医療団は、内外から資金を集め、(1)開発途上にある諸国から受け入れた医療技術研修員に研修の場を提供し、かつ、わが国の高い水準にある医療技術を広めると共に、研修終了者を通じてわが国の医療機材の普及を計り、(2)医療専門家等の要員を確保してその身分を保障し、政府の行う対外医療協力事業の派遣専門家等の人的面での協力の円滑化に寄与し、(3)更に熱帯医学に対する総合的・基礎的・応用的な調査・研究・資料整備を行い、これらに必要と認める施設を整備し、もって政府の行う医療協力面一段と効果あらしめるよう、政府の立案および実施に寄与せんとするものであります。
開発途上国にある諸国の医学は、歴史的にみて、欧米の旧宗主的諸国に依存する度合が極めて強くわが国の医学水準に対する認識が不足している面があるに鑑み、今後医療に関するわが国の技術協力事業の飛躍的な発展と、わが国に対するこれら諸国の信用の増進およびわが国の国際社会における地位の向上に資せんとするものであります。
昭和42年2月21日
発起人連署 一万田尚登
白浜 仁吉
田中久兵衛
岩佐 凱実
大林 芳郎
木川田一隆
武見 太郎
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