国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)
第57回総会(概要)
平成13年4月27日
国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)第57回総会が、4月19日から25日までバンコクのESCAP国連会議場において開催された。ESCAP総会は、ESCAPの最高意思決定機関であり、閣僚レベルで毎年一回開催されている。
今次総会には、44カ国・地域の加盟国・準加盟メンバー(内21カ国が閣僚級)及び14の非加盟国の代表の他、国連諸機関、政府間機関、NGOの代表等、計400名以上が参加した。我が国からは、荒木清寛外務副大臣が首席代表として出席した。概要は以下のとおり。
1.今次総会では、高級事務レベル会合と閣僚会合の二つが開催された。
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(1)高級事務レベル会合(19日~21日)
- まず、高級事務レベル会合では、社会開発、環境協力、地域経済協力、運輸・通信・観光・インフラ、統計などの分野でのESCAP諸活動のレビュー、並びに今後の効率的な活動計画を中心に議論がなされるとともに、ESCAPの下部機関及び地域内関連政府間機関からの活動報告がなされた。
また同会合では、当該地域の環境問題対策の具体化に向け、我が国より提出した、ESCAP/アジア太平洋環境と開発に関する閣僚会議(2000年8月31日~9月5日、北九州市)(注1)の勧告の早期実施をESCAP加盟メンバー、関連国際機関及びNGO等に慫慂する内容の決議案等につき議論された。
注1.ESCAP主催の本会議では、アジア太平洋諸国の代表が、持続可能な開発の実現に向けた地域協力のあり方等につき議論した。本会議では、(イ)当該地域環境大臣の共通認識と決意を表明する「アジア太平洋環境と開発2000年閣僚宣言」、(ロ)2002年の「リオ+10」会議への当該地域からのインプットとして発出される「国連環境開発会議成果の実施状況の10年レビューに向けた地域メッセージ」、(ハ)今後5年間の当該地域における、国家レベル、準地域レベル、地域レベルでの協力の枠組みや事業実施の指針となる「2001-2005年環境上健全で持続可能な開発のための地域行動計画」、(ニ)公害克服・環境再生を成し遂げた北九州市の経験を広く共有し、当該地域の都市環境の改善を図るための都市間協力の方途を示す「クリーンな環境のための北九州イニシアティブ」が採択された。
(2)閣僚会合(23日~25日)
(イ)閣僚会合は、23日午前、タクシン・タイ首相により、開会が宣言された。本会合では、まず、「アジア太平洋諸国の都市・農村・地方のバランスの取れた開発」をテーマに各国首席代表から政策演説が行われた。
参加各国は、情報革命や経済のグローバル化の進行は、現存する都市・農村間の格差を拡大するばかりか、新たな格差を生み出すとの認識で一致し、持続可能な開発及び公平な富の分配の実現に向けて努力していく決意を表明した。
また、格差の問題への対策としては、知識社会に対応するための教育、地方自治体の能力育成を伴った地方分権、及び開発に参加できない貧困層の最低限の安全を保障するための社会・経済的社会保障の創設等が強調された。
なお、荒木副大臣は、政策演説にて、グローバル化の影で進行する経済格差や環境の問題に対処するにあたって、個々の人間の生存、生活、尊厳を確保するという観点から、「人間の安全保障」の考え方を強調し、また、アジア太平洋地域での貧困削減、環境問題、感染症対策、障害者対策、及び情報格差の是正における我が国の取組を紹介した。その他、「アジア太平洋障害者の十年(1993年から2002年)」終了ハイレベル会合を我が国の滋賀県で開催することを提案した。
- (ロ)また、本閣僚会合では、特別議題として「HIV/エイズに関する国連特別総会(6月25日~27日)のためのアジア太平洋地域としての準備」が設定されていた。同議題のもと、アナン元タイ首相及びカウンダ元ザンビア大統領が、自国の経験を紹介しつつ、HIV/エイズに対処するため、一層の南南協力を呼びかけた。また、キム・ハク・スーESCAP事務局長は、新たな感染の内50%が24歳以下の児童・青年によってであることに注意を向け、この人的資源の流出に対処するため何らかの策が講じられなければならないとした。
- (ハ)23日(月)午後、域内で優れた人材養成プログラムを実施している個人・団体を表彰するESCAP/HRD(人材養成)賞授与式が行われ、インド・タミルナド州けいれん性麻痺患者協会が表彰された。同協会は、インド南部のタミルナド州にて、教育、健康、幼児看護、及び農村開発の分野において州政府職員やNGO職員のための研修を実施している。授与式には、本件賞のドナー国である我が国を代表して荒木副大臣も出席し、同協会のアロカ・グハ会長に対し祝辞を述べ、また賞金として3万米ドルの小切手を手交した。
(ニ)24日午前には、閣僚ラウンド・テーブルが開催され、各国首席代表が、ESCAPの今後の役割や次回総会のテーマ等につき活発な意見交換を行った。各国代表は、キム事務局長によるESCAPの再活性化に向けた努力を評価し、同事務局長が示した2005年までのESCAPの優先事業分野(注2)を支持した。
- 注2.キム事務局長は、以下の三つの分野を、ESCAPの優先事業分野としている。
- 1)貧困軽減のためのベスト・プラクティス(成功例)の特定、普及
- 2)グローバル化に取り残された途上国への支援(WTO加盟支援、開発支援)
- 3)人口問題、移民、女性、障害者問題といった当該地域が直面している社会問題
なお、次回総会のテーマとして、「グローバル化の時代の持続可能な社会開発:挑戦、機会、政策選択肢」(Sustainable development in a period of rapid globalization: challenges, opportunities and policy options)が、全会一致で決定された。
(ホ)25日午後の最終セッションで、本件総会の報告書案及び、我が国提案の「2000年アジア太平洋環境と開発に関する閣僚会議」決議案の他、HIV/エイズ対策における域内協力を慫慂する「HIV/エイズ対策実施に向けた地域の要請」決議案等、計6つの決議案が全会一致で採択された。
2.日程
(1)4月19日~21日 高級事務レベル会合
- 以下の分科会・作業部会が並行して開催された。
分科会1 |
ESCAPの機構改革、事業計画、技術協力等について |
分科会2 |
地域経済協力、統計、運輸・通信・観光・インフラ開発分野での活動レビュー |
分科会3 |
環境、社会開発、後発開発途上国・内陸国・島嶼国開発分野での活動レビュー |
決議案についての作業部会 |
(2)4月23日~25日 閣僚会合
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23日 |
午前 |
開会
議題「アジア太平洋諸国の都市・農村・地方間の均衡のとれた開発」
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午後 |
議題「HIV/エイズに関する国連特別総会(6月25日~27日)のためのアジア太平洋地域としての準備」
HRD(人材養成)賞授与式
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24日 |
午前 |
閣僚ラウンド・テーブル
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午後 |
議題「アジア太平洋諸国の都市・農村・地方間の均衡のとれた開発」(続き)
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25日 |
午後 |
報告書及び決議案の採択 |
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