外務大臣会見記録 (平成15年11月30日(日)9:15~ 於:芝庁舎会見室)
イラクにおける日本大使館員の殺害
(外務大臣)8時15分ですがCPAからの連絡がありまして、二人の身元は外務省の奥参事官、参事官はイラクに長期出張中でしてイギリス大使館の参事官です。それとイラクの大使館員で三等書記官の井ノ上正盛三等書記官の二名であることがわかりました。二人は29日にティクリットで開催されることになっていました北部イラクの支援会議に出席するということで出張中でして、その出張中に今回の事態になったということであります。イラクの復興支援に取り組むという我が国の基本方針の中、文字通り日夜粉骨砕身をしていた二人です。この二人の優秀な部下が亡くなったということについては痛恨の極みとしかいいようがありません、言葉を知りません。ご家族には衷心からの弔意とお見舞いを申し上げたいと思います。この件の背景等事実関係につきましては、引き続き在イラク大使館で精力的に確認作業を行っています。また、田中政務官に昼過ぎに成田を出発して現地に向かってもらいます。この事件の発生を受けまして、大使館及び館員の安全対策につきまして改めて見直し、速やかに必要な措置を執るとともにイラクに滞在をしている在留邦人、そのほとんどと言ってよいと思いますが、報道関係者の方ですが、イラクに対してはは退避勧告が出ているということを改めて注意を促す。邦人の安全対策については、万全を期したいと思います。今回の事件は許し難いことであります。亡くなった二人の意志をしっかりと引き継いでいくためにも、今後ともテロに屈することなくイラクの復興支援に積極的に取り組むという我が国の基本方針が揺らぐことはありません。小泉総理よりもこの趣旨については指示を受けているところであります。
(問)日本人の外交官であることを認識した上でのテロというように判断されているのでしょうか。
(外務大臣)テロであるかどうかは分かりません。事実は確認中です。
(問)バクダットの大使館の縮小とか引き上げとかということはお考えでしょうか。
(外務大臣)考えていません。
(問)自衛隊の派遣計画に何らかの変更、影響はどのようにお考えでしょうか。
(外務大臣)先程も申しましたように我が国の基本方針に変わりはありません。
目次へ戻る
外務大臣会見記録 (平成15年11月28日(火)10:15~ 11:05~ 於:芝会見室)
閣議・閣僚懇談会
(外務大臣)今日の閣議では、私からは特に何も発言をしていませんが、閣僚懇談会の席上で、私からイラクへの人道復興支援について、今まで4年間で50億ドルということを言ってきまして8600万ドルの支援をいろいろな分野でしてきたわけですが、若干その御紹介をしました。例えば、この間の4件は御存知と思いますが、草の根・人間安全保障無償資金協力で、上下水道、中学校の修復ということが決まりました。そういった支援に対してバグダッド市の評議会から感謝状を持って大使館に訪問があったということを御紹介しました。日本の支援が現地においてどのように行われ、どのような感謝をされているかということについて十分に、更にお伝えしていなかければいけないわけですが、外務省で作ったパンフレットも閣僚懇談会の場でお見せして、そういうことも行っていますという御紹介もさせて頂きました。
(問)イラクの現地の治安情勢など、調査団の報告を受けて大臣の方から何か御発言とか、あるいは他の方からの発言とか、お話はあったのでしょうか。
(外務大臣)それについては何もありませんでした。私自身、まだ報告は受けておりません。若干追加すれば、先程の私の発言の後、閣僚の皆さんからいろいろとイラク支援についての御発言があって、例えば外務省の作ったパンフレットについては非常にいいパンフレットだと思うと何人かの閣僚の方からあって、これをもっと増やしていろいろな方に配ることが重要ではないかという発言もありました。幾つかの省でもイラクへの支援について省内でもいろいろ考えているので、連携をしていきたいという話がありました。これに対しては、今までも既に十分に連携をとってきていますが、これは今、更に全政府をあげて国際社会も一緒になって行っていかなければいけないので、それを更に強めていく必要があると私は思っています。例えば、今までミッションを出すということも他の省庁も一緒になって行ってきていますので、アフガニスタンで行ったように各省の連携を更にしていくことがいい支援に繋がると思います。今まで十分に行っていますし、いろいろな知恵も頂いていますが、外務省としても更にやっていきたいと思っています。まだ50億ドルのうちの8600万ドルなので、草の根無償で大使館員や岡本補佐官など、非常に苦労して現地で動いて、案件についての活動を行っていますので、そういった努力を更にしていきたいと思っています。
(問)アメリカのブッシュ大統領がイラクへ行かれましたが、例えば日本で今後の展開次第で総理、大臣がイラクへ行かれる可能性というのはあるのでしょうか。
(外務大臣)いろいろな可能性というのはあるのではないでしょうか。今何が決まったということではありませんから、いろいろな状況を見ながら日本政府としてどのような支援をするのがいいかとか、どのような国際協調を作っていくのがいいかとか、日本のイラク支援の気持ちをどのような形で表すかとか、いろいろなことはあると思いますが、今の時点で何か決まっているということでは全くありません。
(問)大臣自身がイラクに乗り込んでいくなり、いろいろな調査団を派遣されていますが、外務大臣として現地に行ってそういったことを直接肌で感じてくるというお考えはあるのでしょうか。
(外務大臣)それは考えていないということではありません、私自身としては。ただそれは、直ちに今出来るかといえばそういうことでもないでしょうし、それは状況その他を見ていくということだと思います。今の時点で具体的に考えているわけではありません。
(問)行かれる時の判断というのは、やはり現地が危険だというような、大臣が入ると狙われるとか、そういう危険性があるということでしょうか。
(外務大臣)今、日本の支援がどういう段階にあるかという中で、一番効果的な時に行くべきだと思っています。また、現地では非常に小さい大使館で支援のためのフルの稼動をしているわけで、それなりに負担をかけます。もちろんおっしゃったような警護の問題もあります。一人で黙って行くというわけにはいかないわけですから、そういった総合的な状況というのは考えなければいけないと思います。やはりイラクで日本が支援をしているということの意味というのは、いろいろな側面がありますが、例えばイラクが今後テロの温床になってはいけないとか、中東和平の影響とか、日本がイラクも含め中東地域の安定、平和、繁栄に依存している度合いの大きさとか、いろいろなことを考えて日本は支援をしていかなければいけない。それは日本の責任であるわけで、そういったことを行っていく過程でいろいろなことを考えながら一番適切な時に日本としてどういう形で日本政府のポイントを表すかということだと思います。
目次へ戻る
北朝鮮(薮中アジア大洋州局長の韓国・中国訪問、六者会合、拉致問題)
(問)薮中局長が韓国、中国を訪問されていますが、報告は現地から受けられていますか。
(外務大臣)適時、受けています。
(問)現地での進捗状況について、若干の御説明を頂けますか。どんな状況でしょうか。
(外務大臣)これは第2回目の六者会合に向けて、今御案内のようにいろいろな人が行き来をしながら議論をしている段階にあるわけです。その一環であるということです。日本として六者会合を成功させるために貢献をする必要がある、リーダーシップをとっていくべきだと思っていまして、そういうことと、各国の連携というのが非常に大事ですから、それを行っていくということです。いろいろな人と会って話をしてもらって。
(問)今、リーダーシップという言葉がありましたが、詳しい中身はともかくとして、大臣から見て日本の外交がリーダーシップをとっているという手ごたえは感じますか。
(外務大臣)北朝鮮との問題については、ずっといろいろな局面でとってきていると思います。これはどういう形でこの議論を先に進めていくかということについて様々な知恵を出していると思います。そういう意味で、貢献をしているし、先に進めるということでリーダーシップをとる努力をし続け、またとってきていると思います。
(問)もう一点、今のに関連してですが、これまで日本政府は拉致解決なくして国交正常化なしという基本スタンスをずっととってきているわけですが、一方で拉致解決なくして安全の保証の枠組みに即応するということはあるのか、あるいは拉致解決がなければ安全の保証は出来ないのか、その辺の見通しはいかがでしょうか。
(外務大臣)今、拉致の問題だけをおっしゃいましたが、それも当然重要な要素として含み、他の問題もいろいろあるわけです。日本として日朝平壌宣言に則って解決していくということですから、問題を包括的に解決していくというのが基本的なポジションです。そのために今一生懸命努力をしているわけですから、それが駄目だった時にどうかという話をするには、余りにも時期尚早だと思います。そういった懸案の問題の解決がなければ日本は国交正常化をしないというのが平壌宣言に書いてあるとおりです。正常化しなければ経済協力をしないというのは、まさにそれに則って行っていくということです。
目次へ戻る
外務大臣会見記録 (平成15年11月25日(火)9:35~ 於:芝会見室)
閣議
(外務大臣)閣議では何も発言をしておりませんので、申し上げることはありません。
目次へ戻る
自衛隊派遣と世論調査
(問)連休中にフジテレビと産経新聞で合同で世論調査を行いまして、サンプルは2千ですが、イラクの自衛隊派遣につきまして、一つには日本政府は国民に対して十分に説明していると思わないという回答が88ポイント、もう一つは今年の9 月の段階と比べますと今の段階では自衛隊をイラクに派遣しない方がよいという方が10ポイント増えて45ポイントとなっています。最近テロなどが増えていますが、この点を踏まえて今、国民の自衛隊派遣に対する理解あるいは賛成、反対をどうお考えでしょうか。
(外務大臣)22日(土)に広島でタウンミーティングを行いまして、イラクについても我々としてはできるだけ説明する努力をしました。まだまだ政府としてもきちんと説明をしていく努力を続けないといけないと、タウンミーティングでも思いましたので、行っていく必要があると思います。国民の考え方については、色々な方が色々な考え方を持っているのは当然であると思います。ただ、大事なことは、国際社会が協調してイラクの復興のために、皆が努力をするということがなければ、イラクは平和的で繁栄した国家になっていかない、それはさらにテロリストの温床となり、世界の不安定化につながり、日本の平和と安定、繁栄にとって、問題となっていくことをきちんと理解頂くということだと思います。日本としてイラクの復興のために最大限の努力をする必要があると私は思っていますし、それが日本の責任であると思っています。その中で何を具体的にやっていくのかということについては、日本は来年度の無償で15億ドルということも発表しましたし、全体として4年間で50億ドルということも発表しています。そして既に8千600万ドルの支援を行ってきています。その中で、近隣のアラブ諸国とも一緒になって三カ国協力ということも行っていますし、その三カ国協力を広めたいということについては、先般エジプト、チュニジアを訪問した時にもチュニジアや、それからイランからも大きな関心を示されている訳で、日本として行うことは沢山あるということです。自衛隊の派遣については、総理がずっとおっしゃっているように、今は状況の把握を行っており、それで判断をしていくということについて、政府の立場は変わりありません。
目次へ戻る
六者会合
(問)6カ国協議の日程については、日本以外の参加国は17日から19日と言っていますが、日本政府としてはどういった考えでしょうか。
(外務大臣)結論から申し上げると具体的日程は今決まっているということではありません。12月中旬位の日程については報道で拝見していますが、そういった形で決まったということはありません。各国とも外交努力を重ねて、できるだけ早く開催したいと思っていることについては、みんな同じだと思います。
目次へ戻る
小型核
(問)アメリカ側の小型核につきましては、先日のタウンミーティングで、懸念は伝えたということですが、具体的にどういった言い方でそういった懸念を伝えたのでしょうか。
(外務大臣)具体的にどういう言い方をしたかは私はここで情報をもっていませんが、非戦略核についての懸念は国際社会全体が有していますし、さらに削減していく必要があるといったことを考えているわけで、そういったことについてお伝えしているということです。不拡散体制に悪影響があるということであってはならないと考えています。
目次へ戻る
外務大臣会見記録 (平成15年11月21日(金)10:15~ 於:院内控室)
閣議及び冒頭発言
(外務大臣)閣議では、特に私の方から何も発言をしておりませんので、閣議については特に申し上げることはございません。また、ご案内のように、昨日、イスタンブールでテロがありまして、大勢の方が亡くなったわけです。お亡くなりになれた方にお悔やみ申し上げたいと思いますし、ご家族にお見舞い申し上げたいと思います。そういったテロという卑劣な行為については、やはり国際社会が一緒になって戦っていかなくてはならないという思いを更に強くしています。また、他の国もそういうことを考えていると思います。
(問)閣議が終わった後に、官房長官と話をされたようですが。
(外務大臣)色々な外交案件について、時々打ち合せのようなことをやっているので、そういうことです。
目次へ戻る
トルコにおけるテロ及び自衛隊派遣
(問)トルコのテロですが、イギリスを標的にしているということで、アメリカから或いはアメリカと緊密な関係にあるイスラエル等の親米国というか、アメリカのイラク戦争を支持した国にテロが拡大しているので、これは日本にとってもかなり大きな影響があると思います。テロが自衛隊派遣の議論に与える影響はありますか。
(外務大臣)自衛隊の派遣については、これは今まで総理がおっしゃられているように、調査チーム等の行っている仕事も踏まえて検討をし、適切な判断をしていくということに尽きます。それから、テロとの関係では、テロリストが狙っていることというのは、イラクにおいて国連も赤十字も含めということであったわけですが、イラクの復興に支援を行っている人たちをイラクから待避させることが狙いでやっているわけですから、それを恐れて、そういう行動を取れば、それはテロリストたちの目的に填ってしまうことだと思います。自衛隊については、従来通り方針に変わりはなく、きちんと情報の分析をし適切に判断をするということです。
目次へ戻る
モラゴダ・スリランカ経済改革・科学・技術大臣との会談
(問)本日スリランカのモラゴダ大臣と会われますが、多少政権についての話し合いの意図は見えてきましたが、今回の会談でどのような話をされますか。
(外務大臣)あの状況の中で、大統領と首相とで話し合いをなさって、今後引き続き、両方の立場での話し合いが必要になると思いますが、モラゴダ大臣は、この件に関してはこれまで密接に関わって来ていらっしゃる方ですので、今の状況について直接話を伺いたい思っています。これは特にスリランカの国防について、というのは国全体としてどのように考えるかということを、スリランカの国民が或いはスリランカの政府と大統領側が一体となって考えて行く必要があるわけですから、出来るだけ、そういうことを慫慂する必要があれば、そういうことを申し上げるかもしれませんが、今の現状についてお話を伺わなくてはいけないと思っています。
目次へ戻る
総理の外遊日程
(問)総理の外遊日程についてですが、一部の報道で5月に総理がイラク訪問ということを検討されているという報道がありますが。
(外務大臣)一部報道については知っていますが、総理の外遊日程について何かが決まったいうことでは全くありません。
目次へ戻る
外務大臣会見記録 (平成15年11月18日(火)11:10~ 於:芝会見室)
閣議
(外務大臣)私の方からは、今日は閣議では特に発言をしておりませんので申し上げることはありません。
目次へ戻る
北朝鮮情勢(拉致問題、「安全の保証」)
(問)閣僚懇で中川経産大臣の方から拉致問題について何か発言があったと思うのですが、どういう発言があって、それに対して大臣としてはどういうことを。
(外務大臣)中川大臣の方から、拉致の問題というのは人権の問題でもあるわけで、六者会合において、その話をしていくということは重要だと考えている旨の発言がありました。私は今日、ケリー米国務次官補にお会いしますが、いろいろなそういった働きかけを通じ、拉致の問題が六者会合で取り上げられるように、日本としてそれを言っていく必要があるのではないかとういう話でした。私からは、中川大臣のおっしゃることと私の考えていることは全く同じだということを申し上げました。包括的に解決をしていくということについての日本の方針は全く変わりないわけで、今までいろいろな会談の折にそういうことを取り上げてきているということを話しました。例えば、これは閣僚懇談会の時には言いませんでしたが、戴秉国・中国外交部副部長がこの前に来た時も話をしていますし、大体いろいろな方とお会いした時には話をしているということです。
(問)ケリー次官補との会談ですが、外務省幹部の方はいろいろな会見等で、「安全の保証」だけにみんなの注目はいっているが、そうではなく、核の放棄をきちんとさせることが重要だ、94年のようなことがないようにということを述べています。それは趣旨としては良く分かるのですが、北朝鮮側に納得させるには、こちらに「安全の保証」のある程度の案がないと向こう側も保証できない。6カ国協議も来月という可能性もあるという中で、どちらが先、卵と鶏のようにならないよう、やはり両方やっていかないといけないと思うのですが、そういう中で大臣がお話なさって、アメリカとしての案というのはあるのでしょうか。それともいろいろな話を日本を含めて聞いた上で、これから出すという感じなのでしょうか。
(外務大臣)今は安全の問題に焦点が当たっている、少なくとも日本の新聞等ではそういう感じが見えます。もちろん拉致の問題もありますが、核の問題が重要だというのは私は全くそう思っていまして、今日、閣僚懇談会での話の時もちょっとそういうことも言いました。北朝鮮を納得させるためにはということももちろん非常に重要な要素ですし、我々が納得するということも非常に重要であるわけです。ですからおっしゃったように、両方どうやって進めていくかということを考えていかなければいけないので、まさに意見の擦り合わせをしているということです。昨日もたぶん、薮中・ケリー会談の後で説明があったかと思いますが、いろいろな議論をしているということです。
(問)アメリカの案というのは一応あることはある、示されたということですか。それともまだこれからということなんでしょうか。
(外務大臣)いろいろな議論をしていますので、途中段階にありますから、今の段階でこういうことであるということを申し上げるのは控えさせて頂きたいと思います。
目次へ戻る
中国に拘束されている金子さんの件
(問)中国に拘束されている金子容子さんですが、昨日、ご主人が大臣宛の要望書を提出したということですが、刑期が順当であれば11月23日に終わって釈放される見通しということだと思うのですが、大臣はその辺は、情報を何か掴んでいらっしゃいますか。
(外務大臣)金子容子さんの件については、前回も質問がありましたが、外務省としては出来るだけのことをしているということです。日本の国籍がおありにならないので、建前から言ってしまうと邦人保護ということでやっていくことは難しいのですが、日本に住んでいて、日本の方と結婚をして、日本で生活をしていらっしゃるという実態があるわけですから、その実態に基づいて、実質的にはそういう邦人と同じような考え方で働きかけをしていく。また今までもずっとしてきています。おっしゃった期間が一応切れた、終わったということで出来るだけ早く釈放をということを働きかけています。
(問)一説には拷問を受けているのではないかという話もあるようなんですが、その辺、人権上の問題というのは。
(外務大臣)今おっしゃったことについては、私は聞いておりませんが、働きかけをして早く釈放してもらうということは大事だと考えて、これは引き続きその方向でやっていきます。
目次へ戻る
FTA
(問)本日、FTAの推進本部、大臣を本部長とします会合があると思うのですが、農水省なり経産省もそれぞれ本部を立ち上げて、推進しようとしているのですが、畠山さんの論文で、メキシコとの交渉の失敗は日本の交渉担当者が3大臣担当となっていることだと指摘されていますが、今後そういう各省間の総合調整というのはどういうふうにやっていくおつもりでしょうか。
(外務大臣)推進本部ですが、まず外務省は大分前にそれを立ち上げて、ずっとそれでやってきているわけです。畠山さんの論文を読ませて頂きましたが、いろいろ幾つかの要因があって、3大臣が交渉しているのが失敗の原因であるとはお書きではいらっしゃらない。日本が何を交渉のタマとすることが出来たかとか、もっと基本的なことを書いていらっしゃると思います。3大臣で交渉する体制はどうかということについて言いますと、私は個人的に、これはメキシコでのWTOについても、今度のFTAについても、3人の大臣の時間をそれに使う、それぐらい重要なことではありますが、もう少し効率的なやり方があるのではないかということはずっと感じてきています。それをどういう方向で変えていくことが出来るのかということは、日本の各省の所管に関わることでもありますので、かなり工夫をすることが必要なのではないかという気がしています。どういうふうに解決をすればいいのかということについて、今、他の2大臣も解決策を持っていらっしゃるということではないと思います。メキシコ側も2大臣でやっていたわけですが、ですから2対3ということであったということだと思います。どの問題が大きな問題かということで、そういう意味で言えば、貿易所管というのはそれぞれの省に、物資の所管のところに貿易はあるわけですから、人の問題が中心になるようなFTAの交渉で、大きな問題になるようなことであれば、更にそういう担当の大臣も出てくるわけです。3で常に収まるということでもないかもしれませんから、何か工夫は必要なのではないかと考えています。
目次へ戻る
イラク情勢(自衛隊派遣)
(問)イラクへの自衛隊派遣の問題で、かなり閣議決定が遅れているという報道もありますが、その辺はいかがですか。
(外務大臣)検討しているということです。調査チームも出ましたので、調査チームの結果等も踏まえながらということだと思います。今、イラクの復興が、この間の政治プロセスについての時期を早めるという合意もありましたが、それを進めていくためにもやはり復興というのは大事であって、今、国際社会が強調して復興ができるかということが問われていると思うのです。ですから、日本はずっと言ってきたように、日本として復興のために、あるいは人道的な支援のために最善を尽くすということが、日本としての責務であるということが一番の基本だと思います。その上で今、いろいろ検討しているということです。
(問)専門調査団の帰国を待ってから改めて決断をくだすという理解でよろしいですか。
(外務大臣)帰国をしなければ決断が出来ないかというと、それはしなくても出来るだろうと思います。いずれにしても、それは一つの要素であって、検討をしているということです。
目次へ戻る
外務大臣会見記録 (平成15年11月14日(金)11:10~ 於:芝会見室)
閣議(大臣のマレーシア、ラオス訪問、東南アジア友好協力条約、日越投資協定)
(川口外務大臣)閣議では、今回のマレーシア、ラオス訪問についての報告をしました。話の中身は、12月にASEANとの間で行います特別首脳会議について両国と話をし、こういう方向でやっていきたいと考えているという話をしたのですが、両国から非常に強い期待、日本とASEANとの間で引き続き従前のようなコミットメントがあるということについての熱い期待が寄せられました。マレーシアでは、アブドゥラ政権が成立し、私が初めての外国要人の訪問者ということがあり、マレーシアと日本の二国間関係をより緊密なものにしていきましょうという話をしました。今、日本とマレーシアの間で国際工科大学の設立という話がありますが、それについても前に動かしていきましょうということを話しました。ラオスは、外務大臣として13年ぶりの訪問で、大変歓迎され、ラオスの副大統領、副首相兼外務大臣とお話をしましたが、日本の経済協力について、始めから終わりまで大変厚い御礼の言葉がありました。
TAC(東南アジア友好協力条約)についてですが、日本に是非入ってほしいという話が両国でそれぞれあり、私からは前向きに検討、調整中であるということを言いました。
日越投資協定ですが、今日の閣議でこの署名が決定されました。これを受けて、ベトナム計画投資大臣との間で今日の午後、署名を致します。これは日韓で結んだものと同様に、内国民待遇を決めた投資家の権利の保護という意味ではかなりレベルの高いものであり、ASEANの国とこのようなタイプの投資協定を結んだということは、今後の他の国との関係でも意味が大きいと思っています。
目次へ戻る
六者会合
(問)いろいろな報道よると、中国の戴秉国外交副部長と竹内次官の会談の際に、日本に12月の6カ国協議で拉致問題を取り上げないように勧めたそうですが、にもかかわらず日本政府は12月の6カ国協議の冒頭発言で拉致問題を取り上げるつもりはございますか。
(川口外務大臣)六者会合を12月に行うという話は、いろいろ報道されていますが、まだそれが決まっているわけではありません。拉致問題については、前から申し上げているように、拉致問題やミサイルの問題や、日本にとっての問題を全部含めた形で包括的に解決することが日本の考え方ですから、その考え方の中で会談では適切に対応していきたいと考えています。
(問)今のところ6カ国会議、12月中旬にもという報道がいろいろとされていますが、同じ時期に日ASEAN特別首脳会議が設定されている。もし仮にぶつかるようなことがあればどうするのか、あるいは日本としてはなるべくぶつけない方向で調整しているのか、その辺のお考えをお伺いしたいのですが。
(川口外務大臣)12月に六者会合があるということが決まったわけではないので何とも申し上げられないのですが、日本の立場から言えば、アジアをベースにした特別首脳会議はASEANとの間でも非常に重要な会議です。ASEAN側にとってみると、首脳会議をASEANの地域外で行うというのは初めてです。ですからそれは政府全体としてきちんと進めなければいけない会議です。実際に、そこはきちんとやっていかないといけないことだと思います。同じアジア局ですから、2つのことをするのは難しいでしょう。いずれにしても、12月に行うということで六者会合の方は決まっているわけではありません。
(問)今の質問に関連してですが、そうすると日本政府としては、出来れば同時期に6者とASEANがぶつかることは避けたいという、お気持ちはお気持ちなんでしょうか。
(川口外務大臣)実際に対応が出来ないのではないかと思います。例えば藪中局長一人とっても、まさに担当の特別首脳会議で担当の局長がいない中で会議が出来るものではありません。
(問)そうすると、今おっしゃられたそういうお気持ちを参加各国に、もちろん今、12月開催が決まったわけではないということですが、今後、6者協議の日程調整が進む中で、そうした日本側の意向を参加各国にしっかりと伝えるというお気持ちはお持ちでしょうか。
(川口外務大臣)六者会合が12月、その頃にあるということについて、報道はいろいろありますが、中身がそういうことで決まりつつあるということではないものですから、そういうことをベースにお話を何かするということではありません。ただ、日本がこの時期に重要な会合をやろとしているということについては、それはまさにアジアの国がかかわっている話なので、それは十分に関係国に伝わっていると思います。
目次へ戻る
ラムズフェルド米国防長官の来日(日米刑事裁判手続き)
(問)アメリカのラムズフェルド国防長官とお会いになられて、7月に協議が事実上停止しました日米間の刑事裁判手続き、駐留米兵のこの問題について、協議の早期再開を合意するとか、一致するかというところまで、国防長官との会談で話は出来そうな状態なんでしょうか。
(川口外務大臣)ラムズフェルド長官とすべき話はたくさんあります。沖縄関係のそういった話、あるいは刑事裁判の話、いろいろ他にも、イラクの話とかたくさんありますから、何をどれぐらい話をするかということは、今の時点ではっきり決まっているということではありませんが、必要なことについて出来るだけお話をしていきたいと、私は思っています。
目次へ戻る
中国国籍の日本人妻の拘束
(問)戴秉国次官が来ているところなんですが、日中関係で、佐渡に住む金子さんという方の中国国籍の妻が邦人保護活動で中国側に拘束されているということで、外務省に対して再三、救出を要請しているという事案があるようですが、この件については大臣は把握されていますか。
(川口外務大臣)これは、国籍は日本ではないということではあるのですが、したがって純粋に言えば、邦人保護という考え方の対象ではないのですが、ただ実際に日本に住んで、日本の方と結婚をしていて、そういう生活をここで営んでいるという事実があるわけで、外務省としては今まで、再三再四、働きかけをしてきています。
(問)向こうの反応は。
(川口外務大臣)その辺りは、一つ一つ申し上げることではないと思います。金子さんのご親族の方からお手紙を頂いたりもしています。そういうことはきちんと御説明をしながらやっています。
(問)日中関係もあるので、そういう中で、中国が調整役を務めている中でなかなか言いにくいというようなことはありますか。
(川口外務大臣)全くそういうことはないです。それはそれ、これはこれ、日本としてやるべきことはやっていく。どこの国に対してでも同じです。
目次へ戻る
在日米軍
(問)在日米軍の兵力構成について、日米間での局長級の協議が12月にも決められるというような報道もありますが、その辺の事実関係はどうでしょうか。
(川口外務大臣)これは、今まで話は常にしているわけです。ですからそういう中で情報の交換等はやっています。特にそういった会議を12月に局長間で新たに立ち上げるということについては私は聞いていませんが、話をする場というのは既にたくさんあるわけです。
目次へ戻る
イラク情勢
(問)イラクの現状認識なんですが、イタリア軍がテロ攻撃に遭いましたが、現在、アメリカからは戦闘地域、非戦闘地域を確定付けるのは難しいという発言も出ていますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
(川口外務大臣)イラクのナシリアでイタリア軍に対するテロ行為があったということについては非常に残念なことで、大勢の方が亡くなられたわけですから、亡くなられた方々、怪我をなさった方々には御冥福及びお見舞いを申し上げたいと思っています。イタリアの大臣も述べていましたが、こういうことがあったからといってそれでひるむということが、まさにテロリストの思う壺にはまるということですから、イラクの支援について国際社会が今しなければいけないことというのはたくさんあり、それをまさに今、しないといけない。これはそういうことだと思っています。そういう中で、日本としても可能な支援、これはきちんとしていきたいと思っています。
(問)これに関連して、福田官房長官、小泉総理が、今後慎重に状況を把握しないといけない、年内の自衛隊及び文民の派遣について慎重な姿勢をとっているわけですが、こうした方針というのは更に後倒しになりそうな展開でしょうか。
(川口外務大臣)基本的な姿勢は先程申し上げたとおりで、日本としてやるべきことはやっていかなければいけないということですが、いろいろな状況の変化というのはあるわけで、それをどのように、どういう状況であったかというようなこととか、自衛隊を出す場合にどのような支援が可能だとか、あるいは受け入れの仕方、具体的なやり方、そういうことについていろいろ精査、検討していかなければいけないことはあるわけです。それを今きちんとやっているということですし、官房長官も述べていましたが、そのために必要な人も出すことを考えているということです。そういったことはきちんとやって、そこで見極めをきちんとしていくということは重要なことだと思っています。
(問)それはある程度、迅速さの問題と、トレードオフと言いますか。
(川口外務大臣)トレードオフということでもないと思います。基本的な姿勢というのは出来るだけ早く日本としてやることをやるということであるわけで、それに変わりはないです。もちろんそれがどのような形でやるのが可能なのかということは、これはずっと検討はしてきているわけですから。情勢の変化も踏まえてきちんと検討して、それがやれるという判断をした時にやっていくということだと思います。矛盾するということではありません。
(問)日本は7月以来、何度か調査団を出していると思うのですが、小出しに何回も調査団を出して、今度も自衛隊、行かれると思うのですが、いつ決定するのか非常に分かりづらいところがあると思うのですが、その状況が変化はしているのは確かなところですか。
(川口外務大臣)今までに出した調査団と、今度出すというのはだいぶ性格が違うと思います。今まではもっと一般的に、例えばどの辺の場所がいいかとか、もっと前提部分の、そもそもイラクにどういう需要があるのかということであったわけです。これはむしろそういう意味では、より具体的なことであるわけです。ですから、中心になるのも自衛隊だということです。
目次へ戻る
外務大臣会見記録 (平成15年11月4日(火)10:35~ 於:芝会見室)
閣議
(外務大臣)今日は閣議はありませんでした。
目次へ戻る
猪口軍縮代表部大使のエイボン女性大賞受賞
(外務大臣)猪口邦子軍縮代表部大使が、エイボンという女性の化粧品会社が長く実施してきている女性大賞というのがあり、これは本当に伝統ある賞ですが、その受賞が内定しました。7月に国連小型武器中間会合がありましたが、その議長として活躍された功績で、2003年のエイボン女性大賞の受賞が内定しました。猪口大使は、私もジュネーブに行って直接拝見しましたが、大変評価が高く、女性の大使が、女性だからということではないのですが、そこまで活躍をされて大賞を授与されるというのは私としてもとても嬉しいことです。
目次へ戻る
北朝鮮(6者会合、邦人の麻薬取引、亡命申請をした日本人女性)
(問)中国の国連大使が次回の6カ国協議について、年内にも開かれるのではないかという見通しを立てていらっしゃいますが、それに関連して政府の方でいろいろな話が今出ていまして、その見通しについてどうお考えですか。
(外務大臣)早く開催されればいいとずっと思っていますが、具体的に話が動いているということではありません。
(問)これに関連して、6カ国協議では拉致問題について必ずしも協議として取り上げるべきではないという話も一部で出ているのですが、これについて日本政府の立場はどうなっていますか。
(外務大臣)拉致問題は重要な問題ですから、いろいろな場で日本としてはずっと取り上げてきているわけです。それについて国際社会も含めてずっと訴えていくことが大事だと思っています。6者会合においてどのような形で進展するかについては、これは日本だけが決める話ではありませんので、具体的に何か決まったということではありません。
(問)6者協議の場でもそれは訴え続けていくという理解でよろしいでしょうか。
(外務大臣)日本としては取り上げたいと思いますが、具体的にどういう形になるかということは、いろいろな話し合いの中で決まることになると思います。
(問)北朝鮮の関係ですが、邦人で麻薬取引で拘束された人間とか、亡命申請をした日本人がいましたが、その後何か情報は。
(外務大臣)ありません。問い合わせはしています。事実確認をしたいと言っていますが、北朝鮮から回答はない状況です。
(問)今の確認ですが、回答がないというのは、向こうに答える意思も含めて全くないのか、それとも向こうはとりあえず答える意思は示しているものの情報が出てこないのか、その辺は。
(外務大臣)何をもって答える意思というかということですが、それはこちらの言っていることは向こうは聞いているということです。それで本国に取り次ぐということですが、その後の返事がないということです。
目次へ戻る
東南アジア友好協力条約
(問)東南アジア友好協力条約についてですが、先月のASEAN+3で小泉総理がASEANの首脳から加入要請があった際に非常に消極的な答えをしているのですが、改めて政府側のスタンスを御説明いただけますか。
(外務大臣)働きかけは私自身もASEANの大臣からは頂いています。今、いろいろな角度から検討していて、今の時点でこうしますということを申し上げられることではありません。
目次へ戻る
イラク情勢
(問)イラクで米軍のヘリが打ち落とされましたが、これを受けて、現在のイラクの治安が果たして回復しているのかという大臣の今の見通しと、これから日本が自衛隊の派遣も含めて復興を支援していくことの影響をどういうふうに。
(外務大臣)イラクについて、治安は一つの課題であり、政治的なプロセスをずっと進めていくことも課題であり、債務の問題をどうするかというのも課題である。そういう意味では課題であるわけです。この前ブレマー大使と話をしましたが、イラク全土がそうかと言うとそういうことではないわけです。ブレマー大使の話では、現に1万4千件もの契約が成立して動いている、市町村でどんどん選挙が行われているとか、そういう状況もあるわけです。電力についても戦争の前の状況に戻っているということもあるわけです。残念ながらそういうことはあまり報道されないので、治安が危ないのではないかということだけが前に出てしまう感があります。いろいろなことがイラクでは起こっているということだと思います。従って、自衛隊との関係で言えば、法律の条件に合うような場所もあるわけですから、治安が課題であるということは引き続きそうでありますが、それは前から申し上げています。それでは、全土がそうなっているかというと、決してそうではないということです。
目次へ戻る
中国における邦人留学生に対する騒動事件
(問)西安の大学の事件ですが、デモが起きて現地では大きなこととして報道されました。日中関係でどのようなことが背景にあると大臣はお考えですか。
(外務大臣)あの事件については、留学生として行った人間が相手の国の風習やいろいろな習慣、あるいは何がその社会として受け入れられることかということについて十分な理解を持って行動するというのは、留学生として行くからには当然であると私は思います。そういう意味では非常に無感覚であるとしか言いようがないと思います。日米関係を見ても分かるように、日米関係は今非常にいい関係で推移していますが、一時期、10年以上前ですが、例えば嫌米とかそういう言葉が新聞紙面を飾った時期もあったわけです。ですから2国間の関係というのはいろいろなアップダウンがあるということだろうと思います。重要な2国間関係ですから、やはり長期的に両国がこれを良くしていくための努力をずっとし続けなければいけない。双方ともその努力をすることが大事だと私は思います。そういう努力が足りなかった。今まで十分でないということが背景にあると思います。
(問)一部、今回はデマと言うか、必ずしも事実ではないことが広がって暴動のようになったというのもありますが、政府としてということは何か考えていらっしゃいますか。中国の人たちに対するPRというか広報活動を。
(外務大臣)双方が長期的に両国の関係を大事だと思って良くしていくための努力が、今まで必ずしも十分ではなかったということであって、それをずっとやっていかなければいけないということだと思います。これは政府のレベルだけの話ではなくて、国民一般それぞれのレベルのところでもそうだろうと思います。やはり努力をしていかないと。そういう意味で、日米関係もそういう時期がいろいろあるわけですから、どこの国との関係でもそうだろうと思います。
目次へ戻る
日墨FTA
(問)メキシコとのFTAの交渉、事務レベル協議なんですが、どういうふうな展開を予想されていますか。
(外務大臣)とりあえず行うのは整理、何がどういう状況で話があるかを確認するところから始まると思います。出来るだけ、とにかく年内にということになれば一番いいと思いますが、ずっと今までそう言ってきたわけですから、出来れば早くやりたいということだと思います。
目次へ戻る
|