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非農産品市場アクセス交渉に関する日本の提案
(貢献文書)

平成14年8月2日

(総論/Background)
 累次のラウンドを通じて、非農産品の関税率は大幅に引き下げられ、市場アクセスは改善され、貿易の予見可能性、信頼性が向上している。しかしながら、さらなる改善の余地は大きいことから、我が国は、他のWTO加盟国と共にドーハ閣僚宣言に基いて本交渉に積極的に取り組んでいくこととしている。
 国際貿易は、ドーハ閣僚宣言にもあるとおり、経済開発の促進と貧困の削減のために大きな役割を果たすことができるものであり、この関連において、市場アクセスの改善は重要な役割を有するものである。
 非農産品市場アクセス交渉を通じて市場アクセスを改善することは、WTO全加盟国に裨益するものであるが、特に開発途上国、とりわけ後発開発途上国が貿易の拡大による世界経済の成長の中で、その開発ニーズに応じた利益を享受することができるということは、過去の様々なスタディにおいて示唆されてきたところである。WTO加盟国は、多角的貿易体制の更なる安定を図り、すべてのWTO加盟国が利益を享受できるよう、本交渉を推進すべきである。
 このような観点から、本ペーパーは、交渉初期のこの段階において、我が国を含め多くのWTO加盟国が関心を持っている項目を提示することにより、モダリティ合意に向けての必要な材料を提供することとしている。したがって、我が国としては交渉を巡る諸情勢の推移に応じて、更なる提案を行うことを留保するとともに、更なる貢献を積極的に行っていく用意がある。また、我が国は他のWTO加盟国からの早期の提案を慫慂する。

(各論/Proposal)
 以下の項目は、モダリティ合意を図る際に検討が不可欠な項目であり、我が国を含め多くの国が関心を有しているものであると信じる。ある項目はある国に不利な内容である一方、別の国には有利になることもあり、また別の項目はある国に有利な内容である一方、別の国には不利になることもあろう。いずれにせよ、全体のバランスが重要であり、ドーハ閣僚宣言の合意を踏まえ、交渉対象品目はあらかじめ例外を設けず、包括的な交渉とすることが必要不可欠である。但し、各個別品目を取り巻く状況にも配慮しながら交渉を進めることは当然である。
 なお、以下の項目は現時点で考えうる項目であり、これらに尽きるものではなく、今後更なる追加が必要であろう。

1.譲許率
 貿易の予見可能性と信頼性を確保するために譲許率の向上は重要である。WTO加盟国は可能な限り多くの品目(タリフライン)を譲許して譲許率の向上を図るとともに、譲許の質的向上を図るべきである。

2.目標関税率
 短期間に合意を得るとともに、重要分野の関税引き下げを効率よく実現できるようにすべてのWTO加盟国についてフォーミュラカットによる関税引き下げを検討することが一つの手段といわれている。
 一方で、ウルグアイラウンド終了後の各国の関税率が拡散している状況に鑑みると、WTO加盟各国の現行の平均関税率水準等の個別の事情を踏まえつつ、発展段階の度合いに応じた一定水準の目標値を定めて関税を引き下げることが公平な貿易の拡大には不可欠である。この目標値は、特に、後発開発途上国には十分な配慮が必要であり、また、開発途上国についてはそれぞれの発展段階や競争力をきめ細かく考慮する必要がある。
 いずれにせよ、目標関税率の具体的数値や設定方法等の詳細は今後議論されるものであり、我が国から更なる提案を行う用意があるが、各国からの提案も踏まえて、議論を深めていきたい。

3.タリフピーク、ハイタリフ、タリフエスカレーション
 2.のフォーミュラや目標関税率に沿った関税引き下げの検討と併せて、貿易歪曲効果の大きいタリフピークの効率的な是正が図られるべきである。同時に、ハイタリフの是正は、過去のスタディなどでも示唆があるとおり、開発途上国間における是正が図られる場合に貿易促進効果が期待される。タリフエスカレーションの是正についても、具体的な定義や評価が難しいが、検討の対象となろう。

4.ゼロゼロ/ハーモナイゼーション
 ウルグアイラウンドにおけるゼロゼロ/ハーモナイゼーションは一定の成果をあげていることから、2.のフォーミュラや目標関税率に沿った関税の引き下げの検討と併せて、以下を推進、検討するべきである。また、ゼロゼロについては、例えば貿易加重平均での平均ゼロ関税比率を各加盟国の発展段階の度合いに応じて上昇させることも考えられる。
 以下については、参加国の拡大が重要な課題であり、これを推進すべきである。
―情報通信機器の貿易拡大に資するためのITAの参加国の拡大
―化学品の関税率の平準化による透明性を高めるための化学ハーモの参加国の拡大

 また、可能な限り多くの国が参加し、意味あるものとなることを前提に以下についても検討すべき。
―ウルグアイラウンドで十分検討し尽くされず積み残しとなっている次の品目についてのゼロゼロ:家電、自転車、ゴム及びその製品、ガラス及びその製品、陶磁器、カメラ、時計、玩具
―繊維及び繊維製品に係るハーモナイゼーション

 さらに、ITA品目(ゼロゼロ)の対象範囲の拡大についても、例えば、いわゆるデジタル家電を対象に含めることを検討すべき。また、自動車のようにグローバル化している産業については、当該産業が成熟している貿易メンバー間(例えば先進国間)でゼロゼロを実施することも考えられる。
 なお、これらの品目は例示であり、これらに尽きるものではなく、また、対象品目については、そのHS番号を含め、詳細は今後議論されるものである。一方で、ドーハ閣僚宣言に言及されている途上国の輸出関心品目もこの例示に含まれているものと信じる。

5.交渉のベース
 交渉のベースは、HS2002を活用し譲許税率を基本とする。他方、譲許税率と実行税率との著しい乖離を是正していくことも重要であり、意味ある市場アクセス改善の観点から各国の実行税率の現状にも留意する必要がある。自主的自由化のクレジットについては、評価方法が難しく恣意的になりがちであり、慎重な対応が不可欠である。
 IDB・CTSといったデータベースを整備することは加盟国が144か国に拡大した今回の関税交渉の進展に大いに寄与するところ、データの未提出国の早期提出やそのための所要のキャパシティ・ビルディングを慫慂する。
 なお、事務局が各国の関税率、貿易動向をまとめた資料を早急に作成することを求めたい。

6.関税率表
 複雑な関税率表は貿易阻害要因にもなると考えられることから、例えば関税率表の可能な限りの簡素化(譲許税率が同じ国内細分を支障の無い範囲で統合)について検討することも市場アクセス改善に必要である。

7.実施期間・ステージング
 実施期間・ステージングは、激変緩和措置として更なる関税引き下げを慫慂するものであり、また、特に開発途上国及び後発開発途上国については、先進国との関係で特別かつ異なる待遇(S&D)のコアであると認識している。2005年1月の合意期限を踏まえて、その後の実施期間を、前ラウンドの例にならって原則最長5年とすることが考えられる。その際、全体のバランスの中で、開発途上国及び後発開発途上国への配慮が考えられる。

8.非関税措置
 意味ある市場アクセス改善という観点から非関税措置への対応は重要である。様々な国際フォーラにおける検討を踏まえつつ、各国が今後、関心のある個別分野をリクエストとして表明していくことが考えられる。その際、輸入国側の国境措置のみならず、輸出国側の措置で貿易歪曲的効果があるものは然るべき形で取り上げる必要があり、例えば、輸出税、輸出規制は検討に値する。関税交渉との対比でそれら非関税措置交渉を非農産品市場アクセス交渉全体のバランスの中でどう評価していくかが課題である。

9.特別かつ異なる待遇(S&D)
 実施期間・ステージングが特別かつ異なる待遇のコアであるが、さらに2.で示したとおりフォーミュラや目標関税率で差を設けることも検討に値する。また、授権条項に基づくGSPについては、特恵供与国の自らのイニシアティブとして、各品目の競争力に応じた改善と、後発開発途上国産品に対する市場アクセス改善を検討する。

10.キャパシティ・ビルディング
 本非農産品市場アクセス交渉の成功のためには、後発開発途上国が効果的に交渉に参加することが不可欠であり、適切なキャパシティ・ビルディングを行っていく必要がある。この意味で、5月末に開催された事務局主催の関税セミナーは有益であり、事務局の努力を多としたい。必要があれば、途上国に対し市場アクセスの改善が経済発展にもたらす効果等を説明するような途上国が交渉に積極的に参加するためのインセンティブを与えるような内容のセミナーを、本年秋にも再度開催することも一案であろう。

11.環境物品の市場アクセスを含む環境保護及び持続可能な開発
 ドーハ閣僚宣言(パラ6)にあるとおり、環境保護と持続可能な開発の促進の観点に留意する必要がある。このような観点から、我が国としては、同閣僚宣言(パラ31)に基づく環境関連の物品の市場アクセス拡大については、関係各国と協力して、対象になる環境にやさしい品目のリストづくりを検討していく用意がある。当然のことながら、これらのリストに基づく譲許は、交渉結果全体の中で評価されるべきである。また、同様の見地から、地球規模の環境問題及び有限天然資源の持続的利用の観点を踏まえて対応すべき品目については、その市場アクセスを検討する際に特別の配慮が必要である。この点については、更なる提案を行う。


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