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1.基礎知識

問 1
香港の正式名称はどうなりますか
 答
「中華人民共和国香港特別行政区」が正式名称です

問 2
「SAR」とは何ですか
 答
1997年7月1日より香港は中国の「特別行政区(SpecialAdministrativeRegion)」になりました。 この特別行政区のことを英語の頭文字を取って略してSARと言います。

問 3
「一国両制(一国二制度)」とはどういうことですか
 答
一つの国(中国)の中で、二つの制度(社会主義と資本主義)が併存して実施されることをいいます。具体的には、社会主義国である中国がその特別行政区である「香港で社会主義の制度と政策を実施しないこと」(基本法序文)で、「香港特別行政区は社会主義の制度と政策を実施せず、従来の資本主義制度と生活様式を保持」(基本法第5条)することです。この状況は「50年間変えない」(基本法第5条)ことになっています。一つの国で社会主義と資本主義という異なる二つの制度が併存するのは、世界でも初めての試みです。

問 4
「共同声明」とは何ですか
 答
97年7月以降の香港の地位に関する中国と英国との間で84年に結ばれた合意文書です(1985年5月発効。8項目の声明と詳細な3件の付属文書から構成)。これにより、香港は中国に返還されることになりました。以下に重要な規定を列挙します。
-中国は97年7月1日から香港に対する主権行使を回復(第1項)
-英国は97年7月1日香港を中国に返還(第2項)
-香港を特別行政区とする(以下第3項)
-香港は高度の自治権を享受
-香港には行政権、立法権、独立した司法権と終審裁判権が与えられる
-香港政府は現地人によって構成、行政長官は現地で選出、中央政府が任命
-現行の社会・経済制度、生活様式を維持
-国際金融センターの地位を保持。香港ドルも使用。
-これらの方針と政策は50年間変更しない。
共同声明全文(英語)はこちらをご参照下さい

問 5
「基本法」とは何ですか
 答
共同声明の基本方針、政策を具体化した中国の国内法で、いわば香港の「憲法」ともいうべき法律です(1990年4月制定。9章160条と3つの付属文書から構成)。返還後の香港の制度的・法的枠組みはこの基本法で明らかになっています。
基本法全文(英語)はこちらをご参照下さい

問 6
「準備委員会」とは何ですか
 答
中国の全人代により設立された返還準備のための機関で、大陸の委員56名、香港の委員94名の計150名で構成されています。返還に伴う重要問題は基本的にここで審議され実行に移されることになっています。なお、97年7月に北京で第10回全体会議が開催され、96年1月の設立以来1年半余りにわたった準備委員会の活動の終了が正式に宣言されました。

問 7
「臨時立法会」とは何ですか
 答
返還後の香港において、基本法により定められた選挙による新たな議会(立法会)が成立するまでの間存続することを目的とした臨時の立法機関です。中国の全人代常務委員会が現在の香港の立法評議会を返還時に解散することを決定したことを受けて96年の3月に準備委員会が返還時から第一期立法会成立(98年前半の選挙を予定)までの間、臨時立法会を設立することを決定しました。定数は60名(今の立法評議会と同じ)で任期は第1回立法会成立までで98年6月30日を越えないことになっています。97年12月に選挙が行われ、現職の立法評議会議員の内33名が当選しました(但し、英国、香港政庁、民主党はそもそも臨時立法会には法的根拠がないとしてその設置には反対の立場を繰り返し表明しました)。
なお、臨時立法会が合法かどうかの問題については、97年7月にSARの高等法院上訴法廷は合法組織であるとの判決を下しています。
臨時立法会は98年4月7日、8日に最後の全体会議を行い、事実上その任務を終了しました。臨時立法会は96年12月の成立以来16ヶ月間に条例63、付属法令359、決議86を採択しました。

問 8
「行政会議」とは何ですか
 答
行政長官の諮問機関で、政務庁長官、財政庁長官及び法務庁長官以外のメンバーは行政長官が任命します。重要政策の決定、法案提出、立法会解散の際には諮問の義務があり、行政長官が行政会議の多数のメンバーの意見を受け入れない場合にはその理由を記録に残さなければなりません(基本法第54条、55条、56条)。

問 9
「合同連絡委員会(JLG)」とは何ですか。
 答
共同声明で設立された英中間の連絡協議機関です。2000年1月1日まで存続することとされています。英国法の香港法への切り替えや、居住権の問題、国際機構への継続参加、協定の継続適用、終審裁判所設置の問題等様々な問題について協議が行われてきました。97年12月には返還後初の会合が北京で開催され、ヴィエトナム難民、国連への人権報告等が議論されました。


2.政治

(1)返還後の主要注目点
問10
返還後の主要注目点は何ですか。
 答
返還自体と直接関係のない不動産等のコスト高や製造業からサービス業への経済構造の転換にどう対処するかといった問題も重要な問題ですが、返還自体と密接な関係のある政治制度の面では、今後以下の3点が特に注目されます。

1 第1期立法会選挙
 第1期立法会(定員60名)の選挙は98年6月30日までに実施される必要がありますが(臨時立法会の任期は最長で同日までとなっています)、97年5月、準備委員会は第1期立法会の選出方法の大枠を決定、返還後の7月にはSAR政府がこれに基づく具体的選出方法のガイドラインを発表し、9月には選出方法等を規定した「立法会条例」が臨時立法会で可決されました。その概要は次のとおりです。
(1)直接選挙(20議席)
 従来の小選挙区制に代えて比例代表制(5選挙区、各区定員3~5)を採用。
(2)職能団体別選挙(30議席)
 91年選挙から採用されていた職能団体別選挙区21はそのまま維持する一方、パッテン総督の選挙改革に基づき95年選挙で新設された9選挙区は構成を一新するとともに、原則として各団体の会員たる企業が1票を有することとなった(95年選挙では従業員にも選挙権を付与)。これにより職能団体別選挙の有権者数は、95年選挙の約270万人から約20万人に減少(なお、91年選挙では約11万人)。
(3)選挙委員会による選挙(10議席)
 選挙委員会は(a)商工・金融、(b)専門職、(c)労働・社会サービス・宗教、(d)臨時立法会議員・区域組織代表・全人代代表・政協代表の4分野各200名計800名の香港永住民で構成され、前3分野については主に職能団体別選挙の職能団体別選挙区から選出。
 選挙は98年5月末に実施される予定ですが、各政党の選挙に向けた動向、選挙結果等に注目が集まっています。

2 人権法関連法令の改廃問題
 人権法は天安門事件後の香港市民の不安を背景に人権保障をより手厚くするたるため制定されたものです。しかし、中国側は制定前から人権法に違反する法令を無効とする部分は基本法の最高法規制に反する等批判していました。
 97年2月、全人代常務委は、準備委員会の提案に基づき、基本法160条(香港の現行法令は全人代常務委が基本法に反すると宣言したものを除きSARの法令として採用)を根拠に、人権法のうち同法が他の法律に優先する旨定めている規定、人権法に基づき改正された法令のうち、社団条例、公安条例の改正された規定(社団設立を登録制から届出制に変更、デモの許可制を届出制に変更等)は基本法に違反するため返還後は不採用とする旨決定しました。
 これを受けたSAR行政長官事務所は、97年4月、不採用により生じる法的空白を埋めるための社団条例及び公安条例改正に関する諮問文書を発表し香港各界の意見を聴取、その結果を踏まえ、当初案より規制を相当程度緩和した改正案を臨時立法会に提出し可決されました(主な改正点は、(イ)社団設立の登録制を復活、(ロ)政治組織の外国政治組織との連係を禁止(ハ)社団設立及びデモの禁止理由に「国家の安全」(中華人民共和国の領土保全及び独立自主)を追加、(ニ)デモを実質的な許可制に近い届出制に変更等)。
 この改正については英国・政庁、民主派は現行法改正の必要はなく人権保障の後退であると批判し、米国も懸念を表明していたことからも今後の具体的運用等が注目されます。

3 基本法第23条関連立法問題
 基本法23条は、反逆、国家分裂、反乱煽動、中央人民政府転覆、国家機密窃取等の行為を禁止する法律の制定をSAR政府に求めています。董建華行政長官は、この件については新選挙制度により選出される第1期立法会で決定したいとの考えを示していますが、言論の自由、報道の自由との関連で、今後行われる立法の内容が注目されます。

(2)返還後の行政組織

問11
返還後の行政機関の組織はどうなりましたか。
 答
香港特別行政区政府(SAR政府)は、一部名称が変更される以外は香港政庁の組織が基本的に維持され、香港政庁の公務員が留任しました(主要高官の名簿についてはこちらをご参照下さい)。

(3)人民解放軍と香港
問12
中国の軍隊はどのような役割を果たすのですか。
 答
香港の防衛については今までは英国が責任を有しており、英国軍が駐留し、その任務にあたっていました。返還後の香港の防衛は中国が担うこととなり(基本法第14条)、今まで英国軍が駐留していた施設に今度は中国人民解放軍が駐留することになります。

問13
街の中では人民解放軍をよく見かけるようになりましたか。
 答
全くと言っていいほど見かけません。人民解放軍の司令部は香港の市街地にありますが、兵士は軍服で街に出ることは原則として許されておらず、また、駐屯部隊も郊外にある駐屯地内を殆ど出ていません。従って、返還後の香港では、返還前よりも軍服姿の軍人を見かけることが少なくなり(返還前は軍服姿の英国軍人を見かけることはありました)、たまに街中で軍服姿を見かけても、実は香港に寄港している外国の軍用船舶の乗組員であったというのが現状です。

問14
駐留軍人の犯罪は誰が裁くのですか。
 答
一言で言えば、勤務外と勤務中により香港の裁判所が審理するか大陸の軍事法廷で審理するかが決められることになっています(駐軍法)。

問15
徴兵制度はとられるのでしょうか。
 答
防衛はそもそも香港特別行政区の管轄外です。香港の防衛は中国人民解放軍が行い、軍隊は中央政府から派遣されます(基本法第14条)。従って香港の住民は今まで同様、香港特別行政区政府、または中央政府に徴兵されることはありません。
問16
香港警察は人民解放軍の下部組織になるのですか。
 答
違います。香港警察は現在の組織、指揮系統のまま香港政府の機関として存続します。また、人民解放軍は香港の地方事務に介入しないことが基本法で定められています(基本法第14条)。

(4)治安情勢
問17
返還後、治安状況は変化するのでしょうか。
 答
近年、香港の犯罪発生率は低下しており、97年は過去24年間で最低の水準となりました。また、返還後もこうした良好な治安状況を守ってきた警察組織がそのまま維持されており、入国(入境)管理についても返還前同様厳格な管理が行われています。従って、今後の経済状況等にもよりますが急速に治安が悪化するような具体的な要因は今のところ見あたりません。

(5)入境管理
問18
香港・中国(大陸)の「国境」はなくなるのですか。
 答
香港・中国(大陸)の間の「国境」のフェンスは返還後も存続しています。そして、香港・大陸間では返還前同様の厳格な「出入境管理」が行われています。

問19
不法入境者が増えているのではないですか。
 答
返還前から、大陸で生まれた香港永住民の子女が基本法24条に基づき香港永住権を付与されることを期待し多数不法に香港に入境してきている問題があります。この問題に対応するため臨時立法会は97年7月入境条例の改正案を可決しました。これによりこれらの子女は事前に香港入境処発給の「居留権証明書」を申請・取得し、かつ大陸当局発行の香港移住のための許可書を取得して入境しない限り当局により強制送還されることになりました。この一方でSAR政府は現在の合法移民1日50人の枠のうち子供の比率を現在の66人から90人に高め、2年以内には移住を完了させたいとの方針を発表しています。

(6)司法・法律
問20
返還前の法令はそのまま適用されるのですか。中国の法律が適用されるのではないですか。
 答
返還前の法令は基本法と抵触するか、SARの立法会が改正したものを除き返還後も適用されます(基本法第8条)。中国の法令は基本法に定められている極わずかな例外を除き適用されません。しかも、これらの例外も直接適用になるのではなく、香港が公布するか立法化して実施します(基本法第18条)。(ちなみにこれら例外は中国の国都、紀年、国歌、国旗に関する決議、国慶日に関する決議、国章に関する命令、中国の領海に関する声明、国籍法、外交特権及び免責条例です)(基本法付属文書3)

問21
返還前に臨時立法会で可決された法令は返還後は有効になるのですか。
 答
97年7月1日未明に臨時立法会が召集され、そこで返還前法令の確認を行う法令(復帰条例)が提出・可決されました。梁愛詩法務庁長官は、それにより返還前に臨時立法会で可決された法令は有効となるとの説明を行っています。

問22
裁判の手続は変わるのですか。
 答
返還前に英国の枢密院にあった終審権は返還後は香港特別行政区に与えられました(終審裁判所の創設)。この他は、返還前の司法体制はかわりません(基本法第81条、第82条)。但し、使用言語については返還前は英語のみであったのが、返還後は中国語と英語の双方が公式に使われるようになりました(基本法第9条)。

問23
中国(大陸)のように死刑が行われるのですか。
 答
香港では既に死刑は廃止されています。返還後も変わりません。

(7)政党
問24
共産党は合法化されますか。
 答
一般論として香港の住民は結社の自由を享有しています(基本法第27条)。従って政治団体の活動は基本法上、認められています。但し、外国の政治的組織、団体の香港での政治活動は禁じられています(基本法第23条)。なお、今のところ中国共産党は表だった活動は行っていません。

問25
香港の公務員はみんな共産党員になるのですか。
 答
そんなことはありません。香港の公務員の資格については基本的には香港の永住民であること以上に求められていません(基本法第99条)。特定の政党の所属は公務員となるに必要な要件ではありません。

問26
民主党はどうなりますか。
 答
民主派政党である民主党は返還前最後の立法評議会の最大政党でしたが、臨時立法会に参加しなかったため現在SARの政策決定には基本的に関与していません(但し、区域組織には参加)。民主党は臨時立法会設立、人権関連法令改正等に強硬に反対しているほか、97年4月には訪米したマーチン・リー主席が大統領、副大統領等と会談し米国の支援を要請し中国政府からは香港問題への外国の介入を招くものとして強く批判されました。
香港の世論調査によれば民主党への香港内での支持は依然として高く、相当の民意を反映していると見られていますので、第1期立法会選挙への取り組みを含め今後の活動が注目されます。

(8)言論の自由
問27
旅行者が香港で中国共産党批判をすると逮捕されますか。
 答
基本法では言論の自由(第27条)の観点からは、批判しただけでは処罰の対象とはなりえません。

問28
デモは今までどおり続けられますか。
 答
基本法第27条は香港住民に対しデモ等の自由を認めています。実際、返還後もデモなど抗議活動は返還前と同じように行われており、「天安門事件」の活動家の釈放を求めるデモも支障なく行われました。
問10 「返還後の主要注目点」もご参照下さい

問29
報道の自由は守られますか。
 答
言論、報道、出版の自由は基本法(第27条)により保障されています。
問10 「返還後の主要注目点」もご参照下さい

(9)大陸・台湾との関係
問30
政府の重要ポストには中央政府から人が派遣されるのですか。
 答
中央政府の役人が香港に天下りや出向でやってくるわけではありません。返還後の香港特別行政区の政府の重要ポストには香港政庁の職員が引き続き任命されました。因みに香港の主要政府職員となるには15年以上香港に居住していることが要件となります(基本法第61条)。従って仮に中央政府が中央から人を派遣しようとした場合には、その人はまず15年間は香港に在住しなければ要職につく資格は発生しないことになります。

問31
香港における大陸側の代表機関はどうなりますか。
 答
返還前は新華社香港支社が香港における実質上の中国(大陸)側代表機関であり、香港政庁との連絡、中資企業の管理、台湾関係事務等を行ってきましたが、返還後新支社長に姜恩柱・前外交部副部長(前駐英大使)が就任しました。また、返還後香港に関連する外交事務を処理するため基本法に基づき外交部香港事務所が新設され、代表に馬毓真・前国務院新聞弁公室副主任(元駐英大使)が就任しました。
姜支社長、馬代表ともにSARが自治権を有する事務には介入しないことを強調していますが、新華社香港支社及び外交部香港事務所の今後の具体的役割、SAR政府との関係等が注目されます。
なお、姜支社長は中央通信社の取材(97年10月下旬)の中で、返還後の新華社香港支社の役割について「中央から授権された組織として香港駐在中資組織との連絡に責任を負い、香港・大陸の経貿、科技、教育、文化等の分野における交流を促進し、香港各界人上と広範に連絡しあい、香港・台湾往来に関する事務等を処理していく」と述べています。

問32
香港からも全国人民代表大会(全人代)に地区代表を送れるのですか。
 答
送れます。香港住民中の中国公民であれば基本的に立候補の資格があります。次期全人代の各地区代表の選出は98年1月末までに行われることとされていますが、香港地区代表(36名)についてはその特殊性を考慮して特別の選出方法が定められました。(ちなみに、従来から全人代には香港地区代表が選出されていましたが(これまでは28名)、その選出に香港人は基本的に関与できませんでした)。
具体的には、行政長官及び臨時立法会議員を選出した推薦委員会の委員中の中国公民、香港住民である全国政協委員及び臨時立法会議員中の中国公民で組織される「選挙会議」(約420名)が代表を選出します。97年12月に姜恩柱新華社香港支社長他36名が選出されました。
なお董建華行政長官は全人代常務委員会の招待により北京での第9期全人代第1回会議の開幕式及び閉幕式に出席し、主席台上に列席することが発表されました。

問33
香港・台湾関係はどうなりますか。
 答
香港・台湾間の返還後の航空問題については双方航空便の相互乗り入れ継続を確認する新協定が96年6月調印され、海運問題についても97年4月から両岸間の貨物船の実質的直航が開始されたことを受け調整が進められた結果、5月の協議で旗の問題等につき合意に達しました。また返還後の香港・台湾間の出入境手続はどうなるのか、中華旅行社等香港における台湾の事実上の代表機関の機能は維持されるのか等については返還後も今のところ従来どおりであり、とりあえず問題は生じていません。
返還直後に行われた董建華SAR行政長官と辜振甫台湾海峡交流協会董事長との会談では葉国華・行政長官特別顧問と鄭安国・中華旅行社総経理とが連絡を取り合っていくことが合意されていますので、今後の対台湾事務に関するSAR政府と新華社香港支社との役割分担がどうなるか等も注目されています。
(なお、「双十節」における台湾「国旗」の掲揚については、ポール・イップ行政長官特別顧問は公開の場では掲揚しないことなどについて、SAR政府は当地中華旅行社(実質的な台湾の香港駐在代表)及び親台湾団体との間で合意していると述べています。)


(10)諸外国等との関係

問34
香港は返還後も独自に条約を結べますか。
 答
結べます。香港特別行政区は経済、貿易、金融、海運、通信、観光、文化、スポーツ等の分野において、「中国香港」の名で独自に世界各国、各地域、関係する国際機構と取極を締結し、履行することが出来ます(基本法第151条)。

問35
返還前の香港において有効だった英国の多数国間条約は返還後どうなるのですか。
 答
引き続き適用されます。国際協定によっては中国が締結しないものもありますが、それらについても引き続き香港に適用することができることを基本法は明言しています(基本法第153条)

問36
香港における外交事務はどのように処理されますか。
 答
返還後の香港においては外交は中央政府の管轄であり、香港内には新たに中国国務院外交部の事務所(特派員公署)が設置されました。初代代表(特派員)には馬毓真元駐英大使が任命されました。

問37
米国における香港に対する見方はどうですか。
 答
米国では、臨時立法会問題、人権関連法令改廃問題等をめぐり、議会等を中心に返還後の香港の民主・人権に対する懸念が広がりました。そうした状況を反映し、香港への監視を強めることを目的とした香港返還法が97年3月下院を通過しました。
しかし、このような動向は米国経済界の香港に対する見方には大きな影響を与えていないとも見られており、97年9月の董建華SAR行政長官の訪米が注目されました。クリントン大統領をはじめ、政界財界等の有力者と会談した訪米の成果についての米国・香港のマスコミの論調は様々ですが、董長官自身は「米国の友人から返還後の香港において物事が順調に推移していることにつき祝福を受けた」、「何人かは来年の立法会の選挙に関して懸念を表明したが、香港は民主主義にコミットしていること、来年の選挙は公平かつ開かれたものとなること、また、香港における今後10年の政治面での進展は既に基本法にて規定してあることを説明し、大丈夫であると答えた」と述べています。また米国ホワイトハウスの報道官は「 董長官に対しクリントン大統領は選挙改革に逆行する決定が行われたことに失望を表明する一方、返還後の香港において表現・報道の自由、デモの自由等の基本的自由が効果的に守られていることについては勇気づけられたと述べた」と発表しています。
97年11月、米上院の香港問題タスクフォースは香港返還に関して初めての報告書を発表し、「これまでのところ状況は良好である」と評価しています。 (香港返還に関する米国政府の公式の立場についてはこちらをご参照下さい。また、董建華行政長官訪米についてのSAR政府の発表についてはこちらをご参照下さい。)

問38
英国は返還後香港においてどのような影響力を有するのですか。
 答
返還後、英国は他国と同様に総領事館を香港に設けました。2000年までは合同連絡委員会(JLG)が残り、その後も英国は、中英共同声明の一方の当事者として返還後の香港の将来について関心を持ち続けることは当然であるとの立場をとっています。
7月30日、英国政府は第一回目の「香港に関する報告書」を国会に提出しました。同報告書の内容は合同連絡委員会(JLG)の作業、共同声明の履行状況、香港での人権保護に焦点をあてており、英国は今後も半年に1回、JLGの期限である2000年1月1日まで、報告書の提出を継続するとしています。
 98年1月には返還後初となる第2回目の報告書が議会に提出されました。同報告書には報道の自由、政治活動の自由、法の支配が引き続き保障され、中央政府の介入も見られない等記述されており、返還後の香港の状況を高く評価する内容になっています。

3.経済

問39
返還後は香港ドルは使えなくなるのですか。
 答
返還後も香港ドルは香港の通貨として引き続き流通します。このことは基本法に明記されています(第111条)。

問40
返還後は香港でも人民元も使えるようになりますか。
 答
香港における法定貨幣は返還後も香港ドルのみです。但し、今でも人民元を店によっては受け取ってくれる場合があるのは周知の事実です。こうした状況は返還後も変わっていません。

問41
返還後の為替レートはどうなるのですか。
 答
返還前と同じ1米ドル=7.8香港ドルの米ドルリンク制が維持されます。

問42
香港ドルは米ドルと今のレートでリンクし続けられるのでしょうか。
 答
SAR政府は米ドルとのリンク制を維持することを重視しており、董建華行政長官も「香港経済のファンダメンタルズは大変良好である。我々は現在の為替レートのメカニズムを維持することについて強い決意があり、今後とも維持できると確信している」と述べています。(香港の外貨準備高についてはこちらをご覧下さい。)
また、IMF執行委員会は、均衡財政政策、対ドルぺッグ制維持等の現在SAR政府の政策を完全に支持する旨表明しています(98年2月)。

問43
返還に対して香港の株式市場はどのような反応をしていますか。
 答
株価については市場が既に返還を織り込み済みであったことから、返還自体を材料にして、過度に悲観的に捉えたり、あるいは過度に楽観的に捉えたりする目立った動きはみられないとするのが関係者の一致した見方といえましょう。

問44
返還後の香港が直面している経済面での課題は何ですか。
 答
香港経済は個人消費の回復やインフレ率の低下などを背景に、不調であった95年の状況を脱却し、回復基調にありましたが、97年10月下旬の金融・株式市場混乱の影響により、今後経済は減速するものと見られています。SAR政府は97年の実質成長率を5.5%と予測しています(97年11月末)が、董建華行政長官は98年については約4%になるとの見通しを示しています(香港経済概観についてはこちらをご参照下さい)。
 また、香港経済は構造的に以下のような課題を抱えており、その対応ぶりが注目されます。

1 経済構造の転換
 現在、香港経済は一大転換期にあります。産業については製造業からサービス業中心へと移行しており、今後どのような産業が香港を支えていくのかは香港経済にとって切実な問題です。董建華行政長官は97年10月8日の施政方針演説で、今後はサービス業の成長を促進するとともに高付加価値製造業とハイテク産業を推進し、情報産業への投資を奨励すると表明しています。
 輸出については中継貿易及び委託加工貿易が伸び悩み、香港と中国(大陸)との貿易の伸びが鈍化しています。こうした中で地場輸出から再輸出、更にはトランス・シップメントへの移行が進行しているのが現状です。(貿易の動向についてはこちらをご参照下さい)。

2 国際競争力の維持
 人件費、不動産の高騰という状況下で如何にして国際競争力を維持するかは大きな課題です。董建華行政長官も前述の演説の中で、競争力維持の重要性を指摘しています。

3 中国ビジネス拠点としての地位の確立
 香港は中国ビジネスのオペレーション・センターとしての性格を強めていますが、中国(大陸)との貿易の伸び悩みという現象の中で今後如何にして中国ビジネス拠点としての地位を維持していくかは重要な課題となっています。
なお、香港経済は貿易、投資をはじめ、中国経済と密接不可分の関係にあります。このことは、香港経済が中国経済の動向に大きく左右されることを意味し、中国自身が改革開放政策を堅持し、持続的経済発展を遂げるか否かも香港経済を占う意味で重要なポイントと言えましょう(中国との経済関係についてはこちらをご参照下さい

問45
土地賃貸権はどうなりますか。
 答
返還前に認可、決定、延長された全ての土地契約及び土地契約に関連する権利はSARの法律に基づいて引き続き承認、保護されます(基本法第120条)。

問46
返還を越える民事契約は有効ですか
 答
返還後も何の支障もありません。

問47
返還後は中国流ビジネスがまかり通るのではないですか。汚職が蔓延するのではないですか。
 答
基本的には返還前の香港政庁の役人がそのまま残るわけであり、法制度にも変わりはありません。同じ制度の下で97年7月1日から急に運用方針・態度が変わるとは考えられませんし、実際に変わっていません。

問48
国際金融センターとしての地位は大丈夫ですか
 答
香港には国際金融センターとして以下のメリットがあり、これらは返還後も簡単には変わらないものです。
-地理的優位性(東アジア経済圏の中心、背後に中国)
-資金は国内外に自由に移動(内外が一体化)
-比較的緩い規制
-低率で簡素な税制
-質の高い会計・法律制度
-整備されたインフラ
また、基本法にも香港特別行政区政府は香港の国際金融センターとしての地位を維持するために適切な経済・法律環境を提供することが明記され(第109条)、外国為替管理政策を実行しないこと、資金の内外への自由な流動も基本法で保障されています(第112条)。

問49
台湾の会社は香港でビジネスができなくなるのですか
 答
民間の活動には問題は生じません。

問50
外国人に対する税金は増えるのではないですか。
 答
基本法は香港の税金は引き続き低い水準であるべしとしています(第108条)。返還後の香港の将来につき諸外国の理解を得ることに全力をあげている香港が、返還後に外国人に対してのみ増税するとは到底考えられません。また、そうした情報もありません。

問51
香港での税金は中央政府にも納められるのですか
 答
香港特別行政区政府の財政収入は中央政府には上納しないことが基本法で定められています(基本法第106条)。また、中央政府は香港では徴税できません(基本法第106条)


4.社会

(1)国籍
問52
香港人の国籍はどうなるのでしょうか
 答
97年7月1日より、香港には中国の国籍法が適用になりました(基本法第18条及び付属文書3)が、香港の特殊性を考慮して、国籍法の香港適用に際しては特別な解釈がとられることになっています。それによりますと、香港在住の「民族的に」中国人である香港人(永住民。連続7年以上居住等が永住民の要件。基本法第24条)は皆一律に中国の国籍を有するとみなされます。他方、国籍法では二重国籍は認められません。そこで問題となるのは、「民族的」には中国人に違いはないものの、英国を含む外国の国籍を既に取得し、外国の旅券を所持して香港に住んでいる人達の国籍です。こうした人たちには二つの選択があります。一つは何も特別な手続をとらず、中国国籍を「維持」すること。もう一つは中国の国籍を離脱し取得している外国国籍に「変更」することを香港特別行政地区政府の入管当局に登録することです。但し、香港においては中国国籍とみなされても、既に取得している外国の旅券を引き続き所持することは認められますので、香港から外国に出る際にはその旅券を使用して差し支えないことになっています。そうなりますと、そうした人達は香港及び中国では中国人とみなされ、どの国の領事保護も受けられませんが、外国では所持している旅券(香港を出る時に私用した旅券)の「国籍」を有する者とみなされ、例えばカナダの旅券を持っている人は外国ではカナダ人としてカナダの領事保護が受けられるという奇妙な状況が発生することになります。

問53
日本(国内)での香港人の国籍の取り扱いはどうなりますか
 答
香港人が日本に入り上陸審査を受けるときや日本国内において外国人登録をするときなどの国籍の取り扱いは、他の外国人の場合と同様にその所持する旅券に基づき決定されます。即ち、SAR旅券(または「身分証明書」(CERTIFICATE OF INDENTITY))を所持する場合は「中国」とされ、BNO旅券を所持する場合は「英国」とされます(BNO旅券を所持する場合については、これを所持する香港人は、日本においては英国の領事保護を受けることができるとされていることなどを考慮したものです)。なお、これら2つを含む複数の旅券を所持する場合は、入国審査官から受けた上陸許可証印、在留資格取得許可証印等のある旅券に基づいていずれの国籍として取扱うかが決定されます。

問54
香港人の配偶者との間に返還後香港で生まれた子供は、日本国籍と中国国籍を有することになるのですか
 答
香港人の配偶者の国籍如何によります。返還後、香港の領域内では、たとえ外国旅券を所持していても、「民族的に」中国人である香港人は中国国籍とみなされます(中国国籍の変更の登録を入管当局にしている場合はこの限りではありません)。中華人民共和国国籍法第4条には、「父母の双方または一方が中国の公民で、本人が中国で生まれた場合には、中国の国籍を有する」とあり、親の一方が中国の公民であり、他の一方が日本国民である場合において、その子が中国国内で生まれた場合には、日本と中国の二重国籍となります。よって、子の出生の日から3ヶ月以内に日本国籍を留保する旨を記入した出生届を提出しなければなりません。

(2)言語
問55
返還後、英語が使えなくなるというのは本当ですか
 答
返還後も英語は中国語とともに公用語として正式に使えます(基本法第9条)。ただし、街の中でどれだけ英語が通じるかは別問題で、返還前でもあまり通じないと実感されている方が多いのではないでしょうか。因みに1995年12月には香港の教育委員会は語学力向上策を盛り込んだ報告書をまとめており、この中では義務教育における「普通語」の推進とともに英語能力の向上策も打ち出しています。董建華行政長官も97年7月1日の香港特別行政区祝賀式典でのスピーチにて中国語とともに英語の水準を引き上げる旨述べています。

問56
返還後、公用語は北京語になりますか
 答
公用語は中国語と英語です(基本法第9条)。中国語といった場合、香港においては基本的に広東語を意味しますが、いずれにせよ公的な文章表記は繁体字と簡体字の違い以外、香港も大陸も変わりがありません。

問57
新聞、看板等の漢字は簡体字に変わってしまうのでしょうか
 答
漢字は簡体字を使わねばならないといった法的な義務が返還とともに発生するわけではありません。因みに、商店の看板の文字をどうするかは店の人の自由です。

問58
返還後、英語の地名や通りがなくなるというのは本当ですか
 答
各地区の市議会・区議会の決定によることになりますが、返還後直ちに修正されることが予定されている地名は承知していません。

問59
返還後、英語のラジオ、TV、新聞はなくなるのですか
 答
英語は引き続き公用語です。需要がある限り英語のメディアも続いていくものと思われます。

問60
地下鉄の車内放送に北京語も加わりますか。英語の放送はなくなりますか
 答
英語の放送がなくなることはありません。また、現在、北京語の放送も加えた方がよいのかどうか検討しているそうです。

(3)教育
問61
香港の義務教育はどうなるのですか。「中国公民」教育となるのですか
 答
香港の義務教育のカリキュラム自体が返還を機に中国と同じになるわけではありません。他方、前の問でも説明しましたとおり、教育委員会は義務教育における「普通 語」の教育を推進することを提唱していますので、現在幾つかの小学校で既に開始されている「普通 語」の教育がより多くの学校で実施されることが予想されます。なお、董建華行政長官は10月8日の施政方針演説で学校のカリキュラムに触れ、科学、数学の知識の重要性を強調するとともに中国の歴史と文化を学ぶことを奨励したいと述べています。

問62
教育制度は変わりますか
 答
10月8日の施政方針演説にて董建華行政長官は「我々の教育制度の全体の構造について非常に慎重な検討を行う必要があると確信している。我々は教育制度が次の世紀に向けてどのように進展すべきかを決める必要がある」と述べ、来年には教育委員会に対して教育の全ての段階について就学期間、就学年齢、カリキュラム、相互の関係等のレヴューを開始するよう要請する旨明らかにしました。

(4)宗教
問63
キリスト教は禁止されるのですか
 答
返還後も香港の住民には宗教信仰の自由が認められています(基本法第32条)。また、香港特別行政区の法律と抵触しない宗教活動は制限されないことになっていますので(基本法第141条)特定の宗教が禁止されることはありません。

(5)スポーツ・娯楽等
問64
オリンピック等の国際競技で香港は独自のチームを出せますか
 答
「中国香港」の名のもとに独自に国際競技に参加できます(基本法第149条)。

問65
スポーツの国際大会は今までどおり香港で開催できますか
 答
何の問題もありません。

問66
映画や娯楽雑誌のポルノ規制は強化されるのでしょうか
 答
規制は返還前のとおりとされています。

問67
ナイトクラブ、カラオケバーは規制されますか
 答
規制は返還前のとおりとされています。

問68
競馬はどうなりますか
 答
公営の競馬は引き続き公認されます。

問69
ミス・コンテストは継続できるのでしょうか
 答
主催者が継続したいと考えていれば、それを妨げるものはありません。ちなみに、97年7月に返還後初のミス香港が選ばれました。返還後初の97年ミス香港は大学生のヴァージニア・ユンさんです。

(6)その他
問70
返還後多数の中国人が香港に移住するというのは本当ですか
 答
中国(大陸)からは返還前からも毎日150人まで合法的に香港に移住することが認められています。今のところこの人数を増やすような動きはなく、そうであれば、返還後に急に中国(大陸)からの移住が増えるというようなことはありません。
問19「不法入境者が増えているのではないですか」もご参照ください。

問71
香港人の英語名はなくなるのですか
 答
英語名をつけるかどうかは純粋に個人の自由の問題です。返還後も同じです。


5.生活関係

問72
車は左側通行のままですか
 答
特に返還後、右側に変えるというような情報には接していません。

問73
道路名や地名は変更になりますか
 答
今のところそういった動きはありません。

問74
カレンダーは旧暦に戻るのですか
 答
返還前同様、西暦のままです。

問75
クリスマスやイースターの休日はなくなるのですか。祝日は中国(大陸)と同じになるのですか
 答
97年5月に開催された臨時立法会にて「休日(1997年及び1998年)条例」が可決されました。
これによりますと、返還後の香港の休日(日曜日以外)は次のようになります。
1997年(7月以降)の休日
7月1日 香港特別行政区成立記念日
7月2日同翌日
8月18日抗日戦争勝利記念日
9月17日中秋節翌日
10月1日国慶節
10月2日国慶節の翌日
10月10日重陽節
12月25日クリスマス
12月26日クリスマスの翌日
1998年の休日
1月1日1月最初の日
1月28日旧正月
1月29日旧正月二日目
1月30日旧正月三日目
4月6日清明節の翌日(清明節は日曜日)
4月10日受難節
4月11日受難節の翌日
4月13日イースター
5月30日端午節
7月1日香港特別行政区成立記念日
8月17日抗日戦争勝利記念日
10月1日国慶節
10月2日国慶節の翌日
10月5日中秋節翌日
10月28日重陽節
12月25日クリスマス
12月26日クリスマスの翌日

問76
クリスマスのバーゲンセールはなくなるのですか
 答
返還後もクリスマスは休日のままですし、バーゲンセールも今までどおりでしょう。なお、恒例の夏のバーゲンセールも例年どおり行われました。

問77
ブランド品の買い物に影響がでますか
 答
香港は返還後も引き続き自由港です(英中共同声明)。約束した水準を超えて一方的に関税を引き上げるようなことは香港の国際約束違反になりますし、ブランド品をねらい打ちにした新たな税を新設するとの情報にも接していません。従って、何の問題も生じません。

問78
返還後、フィリピン人家政婦を雇えなくなるというのは本当ですか
 答
フィリピン人家政婦は雇用主との個人契約に基づき労働査証を取得し、香港で働いています。従って、こうした外国からの労働者を認める入国管理政策が変わらない限り、フィリピン人家政婦を雇えることに何ら変わりはありません。他方、返還前フィリピン家政婦を雇っている人が返還後に中国人家政婦に雇い換えることはあるかもしれませんが、そのこと自体も返還とは直接関係ない個人的選択です。そうなると、今まで雇われていたフィリピン人は別の人と新たな雇用契約を結ばない限り香港に滞在することはできなくなります。しかし、こうした状況は返還前も同じです。

問79
郵便はすべて検閲を受けるようになるのですか
 答
受けません。返還後も香港の住民の通信の自由と通信の秘密は法律に基づいて保護されます(基本法第30条)。検閲は返還前同様、刑事犯罪捜査等の必要のため以外は認められません(基本法第30条)。

問80
現在の英女王の切手やコインは使えなくなるのですか
 答
切手については97年1月に香港島の風景デザインの新切手が発行され、従来の英女王の切手は返還後(97年7月1日以降)は使用できなくなりました。硬貨については、英女王の図柄のものも返還後使用することができます。ただし、返還前に市場に流通していた大半は現在は収集家の手元にあるようです。

問81
中国(大陸)と香港を結ぶ電話、郵便は国内扱いとなり安くなりますか
 答
中国(大陸)-香港間の通信は、返還前と同様、香港域内とは区別した料金体系となります。

問82
インターネットは制約を受けますか。内容を検閲されますか。
 答
返還前と変わりません。返還後も香港の住民の通信の自由と通信の秘密は法律に基づいて保護されます(基本法第30条)。検閲は返還前同様、刑事犯罪捜査等の必要のため以外は認められません(基本法第30条)。

問83
新聞・雑誌は今までどおり購入できますか
 答
返還前に購入できたものについては返還後も引き続き購入できます。店頭の様子も特に返還前と変わりありません。

問84
97年7月1日に香港にいないとIDカードを没収されるのですか。7月1日に滞在していた人のみに新しいIDカードが発行されるのですか
 答
97年7月1日に香港にいらっしゃらない方、ご安心下さい。IDカードは没収されることはありません。また、新しいIDカードが発行される予定も今のところありません。返還後も今お持ちのIDカードがあれば無事香港にお戻り頂けます。


6.旅行・滞在

(1)香港滞在のための査証
問85
返還後は香港に来るのに査証が必要となるのですか
 答
邦人の査証面での取り扱いについては、97年5月に香港政庁は返還後も現状の査免措置を継続する旨発表しました。またその翌日には中国政府も現在査証免除となっている国・地域については返還後も査証免除の取り扱いを原則として変更しない旨発表しました。

問86
返還後、長期滞在査証はどこに申請すればいいのですか
 答
在外での査証申請の受付窓口は各国にある中国大使館、総領事館が行います。但し、実際の審査業務は全て香港の入国(入境)管理当局が一括して行うことになります。

(2)中国(大陸)・台湾との往来
問87
返還後香港と台湾の間を自由に渡航できなくなりますか
 答
香港の住民には旅行と出入国の自由があり、法律により制止されない限り香港を自由に離れることが認められています(基本法第31条)。

問88
返還後香港と大陸の間は自由に往来ができますか。返還後も大陸に行く際には査証が必要でしょうか
 答
中国(大陸)と香港の間の入境管理は返還後も返還前同様に行われることとなっています。従って従来同様、香港から大陸に入る度に中国(大陸)の査証が必要になります。

(3)その他
問89
返還後中国人の日本入国査証も香港で申請できますか
 答
返還前からも香港で申請可能です。返還後も変わりません。(本問については皆様からのお問い合わせがありましたので補足してお答えします。中国旅券をお持ちの方の日本への入国査証の申請は、他の旅券所持者の場合と同様に申請者が居住されている場所を管轄する大使館、総領事館で受け付けています。従って、在香港総領事館では香港に居住されている方(旅行者は含まれません)の査証申請を受け付けています。例えば深センにお住まいの方の入国査証の受付は、在香港総領事館ではなく、深センを管轄する在広州総領事館で受け付けています)。

問90
香港の人は中国のパスポートを持つのですか
 答
違います。中国国籍の香港の永住民(基本法第24条)には香港特別行政区が発行する中国旅券とは異なるSAR旅券が発給されます(97年7月3日に最初のSAR旅券が発給されました)。なお、返還後の香港人の旅券、国籍の詳細については4. 社会(1)国籍の問をご参照下さい。

問91
返還後、香港への日本人観光客は減少しているのですか
 答
返還直後の7月、8月を前年同月比で見る限り、過去最高を記録した96年に比べ日本から香港への観光客数が減っていることは事実です。原因については現在円安の状況にあることや返還による影響も考えられますが、香港は返還前と何ら変わっていないことが国内でも広く認識されていけば、香港を訪れてみようと思われる方も多くなるのではないでしょうか。また、香港側も日本からの観光客の減少を深刻に受け止めていますので、日本の観光客にとって香港旅行がますます魅力あるものにするための努力は惜しまないと思います。

問92
返還後も査証の取得については英国人に有利な措置が取られるのですか
 答
97年4月1日より、英国人については以下の措置が取られることになりました。
観光目的の場合:6ヶ月以内の滞在であれば査証免除。
観光目的以外(例えば就労、6ヶ月を超える留学、移住等)の場合:他の外国人と同様の手続で査証を取得する必要があります。但し、既に香港に7年以上居住し、居住権を取得した英国人については、返還前と同じように香港に入境・滞在することができます。(7年以上居住していない英国人については過渡的措置として現在有している滞在許可の有効期限までは査証なしで滞在することができます。)

問93
香港に労働査証なしで居住している英国人は本国に帰るのですか
 答
97年4月1日より香港で就労を希望する英国人については他の外国人と同様に労働査証が必要となりました。但し、返還前に労働査証なしで香港に滞在中の英国人(居住期間7年未満の英国人)についてはその時点で有していた滞在許可の有効期限までは査証なしで滞在することができます。期限を越えて香港に滞在することを希望する場合には労働査証を取得する必要があり、その許可がない場合には不法な就労となります。

問94
香港のホテルは日本人に差別価格を適用しているのですか
 答
香港のホテルの割高感は香港を訪れた多くの方がお感じになっているのではないでしょうか。返還の際の価格設定についても疑問に思われた方も少なくなかったと思います。いずれにせよ、日本のマスメディアが投げかけたこの問題を香港側は重視しており、先の訪日の際も董建華行政長官は「慎重に検討するよう調査を命じた。この種の問題はあってはならない。調査の結果、慣例として日本人のみを特に差別した事実はないと聞いている。他方、個々の料金設定は各ホテルが行うことから、一部に悪質なケースがあったかもしれない。」と発言しています。今後とも注意深く見守っていくべき問題だと思います。


7.総領事館関係

問95
返還後在香港総領事館がなくなるというのは本当ですか。返還後在広州総領事館と在香港総領事館は統合されるのですか。規模は縮小されますか
 答
返還後も中国と正式な外交関係を樹立している国が香港に設けている領事機構は存続できます(基本法第157条)。97年3月末、日中両政府間で香港返還後も在香港日本国総領事館が維持されることが確認されました。従って、在香港日本国総領事館は存続します。また、広州の総領事館と統合されることもありません。規模の縮小も予定されていません。

問96
返還後の在香港総領事館の正式名称はどうなりますか
 答
返還後も返還前と同じく「在香港日本国総領事館」が正式名称です。

問97
返還後マカオに日本の領事館は出来るのでしょうか。マカオの邦人の保護はどこの在外公館が行うのですか
 答
マカオの業務についても引き続き在香港総領事館が行います。従ってマカオに新たに日本の在外公館はできません。


8.その他

問98
SARの行政長官である董建華氏とはどんな人ですか
 答
董建華氏は1937年5月29日、上海に生まれました。海運業を営む董浩雲氏の長男で弟が1人、妹が3人います。1947年、10歳の時に家族で香港に移り住みました。高校卒業後、英国リバプール大学に留学し、1960年に海洋工学理学博士を取得し卒業しました。
 その後、約10年間、米国に滞在し、ジェネラル・エレクトリック社等で働き、1969年に香港に戻り、父親の会社の経営に加わりました。
 また、董建華氏は香港特別行政区準備委員会副主任、中国人民政治協商会議第8期全国委員会委員、香港事務顧問であり、92年~96年にかけては行政局議員、基本法起草委員会委員、基本法諮問委員会委員を務め、在香港モナコ名誉領事も務めました。
 この他、港米経済協力委員会主席、港日経済協力委員会委員、米国国際戦略研究センター在外幹事、スタンフォード大学国際問題研究センター監事委員会委員、同大学フーバー研究所監事委員等を歴任しました。
 1996年12月11日に香港特別行政区行政長官に当選し、同月16日、行政長官に任命されました。
 趙港娉夫人とは1961年に結婚し、3人の子供と2人の孫娘がおり、全員香港に住んでいます。
 余暇には伝記、歴史、経済、国際関係の書物を読み、スポーツも愛好しています。英米で生活したことから、サッカー、バスケットボール、アメリカン・フットボールのファンになり、暇があれば、ゲームを見ています。ハイキング、太極拳、水泳も好みます。何よりも家族と過ごすのが一番の楽しみらしく、特に2人の孫娘と遊ぶのが好きなようです。

問99
植民地の象徴は全てなくなるのですか
 答
結論から言いますと、植民地の象徴と見なされるものがすべてなくなると言うことにはならないでしょう。外部の人間から見て植民地の象徴と思われるものであっても、香港の人々にとっては既に生活や歴史の一部となっているものまでもなくしてしまうことはないでしょう。むしろ、返還との関係で法的・制度的に最小限何を変えねばならないかとの視点で見ていく方が実態を把握しやすいのではないでしょうか。
そうした意味でまず変わるのは基本法で定められている事項であり、具体的には香港の旗です(第10条)。次に変わるのは英国王室に関連する事項です。特に香港には「ロイヤル」の名を冠した組織がいくつかありますが、こうした組織の名については、返還により香港は英国の管轄下ではなくなるため、「ロイヤル」の名を付与する根拠もなくなり、組織の名から「ロイヤル」の名を取るところがあります。例えば、ロイヤル・ジョッキー・クラブはジョッキー・クラブとなりますし、ロイヤル・香港警察は香港警察となります。また、切手についても英国女王の肖像の図柄のものは7月1日以降は使用できないこととなっています。なお、王室ゆかりの名を冠する地名等については変更があるのか否かは今のところ明確ではありません。

問100
総督府の建物はなくなりますか
 答
97年5月、董建華初代行政長官は、総督府の建物については香港を訪れたVIPのためのゲストハウスとして各種社交行事及びチャリティ行事の会場に使用するほか、一部は博物館とする旨発表しました。
(総督府の解説についてはこちらをご参照下さい)

問101
王室や歴代総督の名が付けられた地名、通り等の名は変わるのでしょうか。
 答
今のところ変わるという情報には接していません。

問102
ビクトリア・パークの女王の像はなくなるのですか
 答
当初は英国総領事館に移すとの考えもあったようですが、返還前に香港政庁に照合したところ、当面は女王の像をビクトリア・パークから移動する計画はないそうです。因みに、ビクトリア・パークには新たに返還を記念して青銅の鼎が設置されました。

問103
大砲はどうなりますか
 答
存続すると聞いています。

問104
アメリカ第七艦隊は香港に寄港できなくなるのですか
 答
外国の軍用船舶が香港に入港する場合には中央人民政府の特別な許可が必要となります(基本法第 126条)。97年4月の米中外相会談で、返還後も引き続き寄港が認められることが合意されました。97年8月には第7艦隊の返還後最初の寄港が行われれました。

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