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スロバキア


1.基本的事項に関する説明

(1) スロバキアの京都議定書に基づく温室効果ガス(以下「GHG」)排出削減目標値は、90年比マイナス8%である。重要な要素として、04年5月のEU加盟後のスロバキアの動向は大きく変わることが予想される。過去8年間、GDPは伸びている一方、実際のGHG排出量は横ばいであり、削減目標値を安定して下回っている。

(2) 02年1月、スロバキア政府は、短期(03年まで)・中期(04年から07年まで)・長期(08年から2020年まで)に分かれた京都議定書に関する戦略を決定しており、中期戦略期間中に、国内的・国際的両方の二酸化炭素(以下「CO2」)のCAP&Trade制度を導入予定である。長期戦略としては、議定書に基づく排出削減目標より更に5%の排出削減を行い、合計で90年比で13%の削減として第二約束期間にむけてベースを作り、2015年以降はGHGの排出量を安定させることを目指している。

(3) 京都メカニズムに関しては、第一に排出量取引(以下「ET」)を最も強く支持しており、それに次いでJIを支持している。なお、スロバキアは割当量単位(以下「AAU」)の余剰が見込まれるため、CDMは活用する必要がないと考えている。ETを支持する理由としては、(イ)排出削減単位(以下「ERU」)とAAUとは等価であると考えること、(ロ)排出削減は97年以前になされたものであろうと97年以降になされたものであろうと環境的には大きな違いはないと考えていること、(ハ)ETはJIに比し制度的にも実務的にも費用対効果に優れていることが挙げられる。国際的に移転可能な削減量としては、第一約束期間(08~2012年)においては、ET及びJIに計10MtCO2(1年当たり2MtCO2)と試算している。


2.JIを含む京都メカニズムに関する政策等

(1) JI

(イ) JIプロジェクトの基準としては、国家の環境戦略に適合していること、京都議定書に基づく「追加性」の要件を満たしていることが必要である。具体的には、新たに実施されるプロジェクトであり、例えば既にプロジェクトが進捗中の場合、それを行っても追加性が加わるとは認められないのでJIとしては認められない。また、EU基準に合致したスロバキアの環境規制に適合していなければならない。また、新しい技術を用いたプロジェクトの場合、当該技術はBAT(今ある最善の技術:Best Available Technology)でなければならない。

(ロ) 希望価格としては、CO21トン当たり5米ドルを希望しているが、交渉可能である。

(ハ) プロジェクト実施により生み出されるERUのうち、最大80%、特例として90%が移転可能である。ERUの10~20%は、自国のクレジットとして残しておきたい。

(ニ) モニタリングのための経費をスロバキア政府は負担しないので、当該経費はプロジェクトの予算に組み込んでおいてほしい。

(ホ) JIプロジェクトとして高い優先度を付しているのは、再生可能エネルギー源であり、就中バイオマスを重視している。木材製品、木材チップ、麦藁等の利用が該当するが、非常に大きな潜在力があると考える。第二は地熱エネルギー利用である。このほか、省エネのプロジェクト、例えば石炭からガスへの燃料転換のプロジェクトもあり得るが、再生可能エネルギー源利用のプロジェクトに比し削減量は少ない。植林、再植林等はJIプロジェクトとして支持しない。

(ヘ) 環境省はJIプロジェクトのリストを保有していないため、JIの実施者は、プロジェクトの選定・発掘を自ら行う必要がある。JIの手続としては、希望するプロジェクトを環境省に対し申請し、環境省の承認を受けることとなる。その際環境省は、PDD(Project Design Document)、ベースラインスタディ等を評価し考慮に入れる。評価の結果、肯定的な結果が得られれば、政府は関連国政府と連絡をとり、ERU移転についての交渉を開始する。ERUの価格は、一義的にはプロジェクトの実施者(実施企業・投資機関)が決定するが、政府もフォローし、妥当な価格等についての提言等を行う。政府は、合意に向けて交渉するが、合意の形態については、政府が強制する定型はなく、様々な最終的形態があり得る。

(2) ET

(イ) CAP&Trade制度については、既に二酸化硫黄(以下「SO2」)の国内排出量取引に関する法的枠組を有しており、SO2国内排出量取引の経験を参考にしてCO2の排出量取引を行うことを企図している。SO2に関する制度がそのまま当てはまるというものでもないが、CO2のCAP&Trade制度設計も既に最終段階にあり、あと二週間もあれば完成するはずである。制度設計を了した後、法案を作成して政府に提出する予定である。国内的なCAP&Trade制度が導入されれば、企業に対し排出量の割当が行われ、企業は割当量に余剰がある場合は売却することができるようになる。排出割当の方法はGrandfathering(注:無料で割り当てる方式)を予定している。

(ロ) CO2の国際排出量取引制度はまだ開始していないが、スロバキアとしては自国のAAUを次のような体制で売却することとした。すなわち、国際的な取引算入者に対しては、国内における排出削減プロジェクトに基づく排出削減量を売却する。例えば、政府として10万トンのAAUを売却する場合、そのAAUはスロバキア国内の排出削減量をもたらす実際のプロジェクトに基づいているということである。

(ハ) ETを行う際の基準は、JIの場合と若干異なり、CO2の排出源となる者が直接関わっていることが必要だが、他方、既に進捗中のプロジェクトであっても、将来のプロジェクトに関連を有する場合であっても認められる。また、追加性も必要とならない。ある排出源の閉鎖自体は対象とならないが、化石燃料から地熱燃料への転換によるボイラーの閉鎖といった場合は受け入れられる。国家が支援しているプロジェクト、例えば市町村が地区暖房のために行っているような事業が排出削減をもたらした場合、一定割合のみが取引の対象となる。

(ニ) ETの分野で望ましいと考えている事業としては、JIと重なる部分があり、化石燃料から再生可能エネルギーへの燃料転換のプロジェクト、化石燃料の使用を削減するためのプロジェクト、炭素含有量の少ない燃料への転換のプロジェクト等である。

(ホ) ETの手続としては、まず、売り手が環境省に対し申請を行う。環境省は、当該申請に添えられたベースラインスタディを検討し、CO2の排出削減量等が基準を満たしている場合、承認する。環境省は承認されたプロジェクトに対し確認書(Confirmation letter)を発出し、同確認書に基づき、京都議定書の発効後に排出量が移転される。

(ヘ) ETにおける価格決定は、売り手と買い手間の合意により、政府は関与しない。



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