![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() | ||||||||||
|
トップページ > 各国・地域情勢 > アジア |
![]() |
||||||
![]() |
||||||
|
- 第一部 提言-21世紀のアジアと共生する日本を目指して
II.具体的提言
人材育成支援や人材交流の強化に向けて、我が国が人材の派遣と受け入れの両面で十分な環境整備に努めるとともに、21世紀の日本とアジア各国との双方向での人の交流を積極的に推進する包括的な施策を策定し、官民挙げて取り組むことが求められる。
- (イ)アジアの民間部門における人材育成努力への協力の強化
経済発展の基盤となる民間部門における人材育成は、最も重要な課題である。人材の育成が、産業のレベルアップと経済の活力の源泉となっているといっても過言ではない。特に、アジア諸国における産業の大半を占める中小企業の人材の育成は、今後のアジア経済の発展にとって重要である。これらの人材を育成するに当たっては、企業自身による個々の技術の向上のみならず、法務、会計、販売、マーケティング等のソフト分野における人材の育成にも配慮すべきである。戦後、中小企業の活力を一つの大きな推進力として経済成長を遂げた我が国が、アジア諸国の発展途上にある中小企業のために貢献できることは少なからずあると考えられ、こうした分野で我が国が人材を積極的にアジア諸国に派遣することで技術やノウハウの移転にもつながることが期待される。(ロ)我が国民間企業の活力を活用した人材育成協力の強化
アジア諸国と我が国との経済的な相互依存関係が深化する中で、日本の企業にとって、現地の人的資源の状況が、国際的な事業展開を行っていく上で極めて重要な要素となっている。このような状況の下、従業員や下請け取引先などの人的資源のレベルの向上は、日本の企業にとっても死活的な問題であり、アジア諸国の人材育成に対する日本の企業のニーズ、インセンティブは極めて高い。
このような民間企業のインセンティブ、活力を活用しつつ、日本の企業による自社の従業員やパートナー企業の従業員の育成への取り組みを支援することによって市場メカニズムに基づく効率的、効果的な人材育成への協力を実現していくことが可能となる。また、そのような取り組みは、日本の企業で高いレベルの技術、管理能力を修得しようとする意欲のあるアジア諸国の人々、日本の企業との取引を獲得しようとする現地企業、あるいは、日本の企業を誘致しようとするアジア諸国にとっても有意義である。(ハ)「シニア・ボランティア制度」などOB人材による協力の拡充
現在、日本では製造業を中心にして長年にわたり現場で活躍してきた数多くの技術者らが定年を迎える中で、第一線から身を引きつつある。しかし、彼らの多くは非常に優れた技能を有しており、依然として健康であり、まだまだ十分に働ける状態にある。これら技術者の技能をアジアの若い技術者に積極的に伝授することにより、引き続きアジアに対して貢献することが可能である。
例えば、国際協力事業団(JICA)の「シニア・ボランティア制度」を大幅に拡充すべきである。また、組織的人材育成のためには「シニア・ボランティア」を単独ではなく、グループとして派遣するべきである。同時に、アジアの受け入れ国側に対して、居住権や税制上の優遇措置を始めとする環境整備を働きかける必要がある。
- (2)アジアの人々に開かれた日本に
- (イ)人材交流の長期・大規模プログラムの策定と推進
アジアの特色は文化の多様性にある。アジアは多様性に富んでいるが故に、相互理解、連帯感の強化のためには、意図的かつ積極的な人材交流促進努力が必要である。また、人材交流の結果、アジアの多様性に基づく文化や価値観が生まれて来れば情報化時代には新しい魅力の源となろう。我が国とアジア各国との経済的な相互依存関係は経済共同体と言える程高まって来ており、これに見合う人材交流を推進すべく、我が国が総合的な21世紀の人材交流プログラムを発表し、日本とアジア各国との間に人材交流の厚い層で強い絆を作り上げていく必要がある。特に、将来、アジア各国の指導者となり得る若い優秀な人材を積極的に我が国に招待し、対日理解を促進するプログラムを策定し、推進して行くことが重要である。(ロ)留学生受け入れ拡充のための努力
留学生、即ち、より若い世代の交流が中心的な役割を果たすことは多言を要しない。昭和58年以来「留学生受け入れ10万人計画」を実施しているが、その達成度は未だ5割の数字に止まっている。その原因はアジアの経済危機等いろいろあると考えられるが、アジアの若者に日本で学びたいと思う気持ちを起こさせるような環境の整備や制度の充実が必要である。このような努力を通じて、大学レベルのみならず、高校レベルでの留学生の受け入れを増やすことは、アジアの若者の留学機会の幅を広げるだけでなく、日本の高校生や地域社会にアジアとの連帯感を育てる上でも有効であろう。さらには、高校や大学だけでなく、地域レベルでの人的交流、日本国内における技能修得の機会の拡大など、多様なチャネルの交流機会を構築していかなければならない。
- 留学生プログラムや奨学金プログラムの強化
- アジア各国と日本の大学間での共通単位の相互認定の確立
- ビジネス・スクールなどの実務的な大学の設置
- 大学での英語授業の拡充
- 留学希望者に対する大学等の情報の提供システムの構築
- 留学生の生活面でのサポートの充実
(例えば、ビザ取得、日本の学生とも交流ができる寄宿舎制度の拡充を含む宿舎対策等) 特に、私費留学生に対する支援策の強化- 卒業後の就職情報の提供
(ハ)外国からの労働力の受け入れ
外国からの労働力の受け入れには、たとえ我が国にとり有用である専門的・技術的分野の従業者であっても、厳しい制限が付けられているのが現状である。
急速に高齢化しつつある日本社会では、介護の問題が大きな社会問題となりつつあるが、介護要員については、そもそも、「介護」あるいはそれに類するものが現在の在留資格には存在していないという状況である。
我が国自身に介護要員が不足し、また多くの要介護者が介護をつけるための金銭的負担に耐えられない現実が深刻化しつつある時代に、このような制度は見直されるべきであろう。「介護人」については、在留資格として認めるとともに、相手国政府の付与する資格を大幅に認める等による在留資格要件や審査基準を緩和すべきである。また、看護婦についても、在留資格要件や入国審査基準を緩和すべきである。このような措置は我が国への無制限の外国人流入を認めることとは自ら異なる。今後、専門的・技術的分野の外国人労働者の範囲を柔軟に考えて受け入れることは我が国の経済・社会を活性化するためにも不可欠である。(ニ)羽田空港国際化など人的交流の制約の緩和
我が国とアジア各国との交流を規制している大きな要素の一つは航空輸送である。例えば、重要な隣国である韓国との関係で考えれば、東京-ソウルは飛行時間1時間50分の至近距離にありながら、実際には移動だけに丸一日近くが費やされている。日本がアジアに開かれた国としてアジアとのヒトの流れを活性化するためには、制約を抱えた成田空港だけでは十分ではなく、いずれは首都圏第三空港(東京湾)の建設が必要となるにしても、まずは、羽田空港の利便性を活用してその国際化を図る必要がある。特に、日韓間の往来は2002年のサッカー・ワールドカップ共催に向けて高まっていくと考えられ、この際、羽田-金浦間のシャトル便開設を認め、このための羽田空港の使用を認めるべきである。
- (3)社会的弱者支援
今回の通貨危機及びその後の構造改革のプロセスが、経済面への影響のみならず、社会面へも多大な影響を与え、婦女子・児童や貧困層への支援及び失業者対策といった社会的弱者への救済制度を整備する必要性が強く認識させられた。危機発生後、タイのスリン外相は、域内セーフティー・ネット構想を提示しているが、我が国は社会的弱者の救済分野における協力を一層強化すべきである。例えば、学校に行けない児童への支援、失業保険制度の整備や非就業者の職業訓練の分野における協力等を積極的に実施すべきである。
アジア諸国が「モノ作り」の大切さを忘れ、短期資本を不動産、金融資産等の非生産的な投資に投入するなどバブル経済を発生させたことがアジア経済危機の一因である。アジアの経済発展はアジアの「モノ作り」の能力に支えられてきており、依然としてアジアの強さを発揮できる分野であることから「モノ作り」を重視する姿勢が必要である。将来に亘るアジア経済発展の望ましい姿を念頭に置くと、今後とも外資を受け入れることが必要不可欠であることは言うまでもないが、同時にこれを触媒として国内的に貯蓄を活用し、自らのイノベーションの芽も育てつつ、地道に産業の根をおろしていくことが従来にも増して重要となってきている。この点は製造業、非製造を問わず共通する課題であるが、まずは原点である「モノ作り」のあり方から見直すことを提案したい。
- (イ)モノ作りのための人材育成
「モノ作り」を支えるための「ヒト作り」は重要な課題である。「モノ作り」を強化するためには、単に設計図、マニュアル、設備だけでは不十分であり、その間にはノウハウが必要である。ノウハウ獲得には与えるもの、受けるもの双方の努力が必要であり、「学び取る」姿勢を持った人材を、じっくりと組織的に育成する必要がある。
今後産業が視野が広くかつ根をおろすような発展を遂げていくことを期待するとすれば、国内的にその担い手が育っていくことが大切である。それも一般労働者のみでなく、技術者、経営管理分野にも人材輩出が求められる。(ロ)中小企業・裾野産業の育成
アジア地域においては、通貨危機以降、経済に回復の兆しが見られるものの、今後、中長期的かつ自律的な経済発展を実現していくためには、経済の活力源となるべき中小企業や裾野産業の育成を図っていくことが喫緊の課題となっている。アジア地域における中小企業・裾野産業については、技術系や管理職レベルを中心とした人材不足や、経営マネジメント能力の欠如による資金調達難など、構造的な問題を抱えているため、このような課題を解決し、中小企業・裾野産業の発展を促進するため、民間の活力を生かしつつ、必要となる政策面の支援を講じていくことが必要である。
以上のようなアジア地域における中小企業・裾野産業の育成に向けた取り組みに対して、我が国の経験を最大限生かしつつ、顔の見える支援を積極的に展開していくことが必要である。特に、アジア地域における各国政府ハイレベルの強力なリーダーシップの発揮による改革への取り組みが重要となる中で、ヴィエトナムの「石川プロジェクト」やタイの「水谷プロジェクト」のような成功例もあることから、我が国としても、ハイレベルの専門家を派遣し、中小企業政策、裾野産業育成策に関する具体的な政策提言を行っていくことが引き続き必要である。
また、政策面における企画・立案だけではなく、併せて、その具現化の段階における支援を講ずることが重要であり、アジア地域で整備されつつある中小企業関係団体の機能向上をはじめ、民間分野における取り組みへの支援を強化していくことも必要である。
なお、以上のような支援に当たっては、我が国の民間部門の知見・経験を最大限活用することが極めて有効であり、また、「シニア・ボランティア」による活動も期待される。(ハ)直接投資の呼び込み
アジアの経済発展においては、これまで海外からの直接投資などの動きがその大きな原動力となってきている。今後は国内の貯蓄、投資メカニズムをより強く作動させるべく工夫を凝らしていくとしても、引き続き外資や外国からの技術の導入が果たすべき役割は大きい。その意味で、受け入れ国がインフラ等の投資環境整備や国内産業の活性化により、海外からの直接投資を積極的に呼び込む努力を行うよう働きかけるとともに、我が国が投資促進のための投資協定の締結に向けて努力することが重要である。(ニ)日本企業の役割
直接投資などを通じてアジア各国でネットワークを構築しアジア経済との相互依存関係を深めてきた日本の製造業は、経済危機の影響にも拘わらず、撤退せず現地に踏みとどまっており、アジア経済に果たす役割は非常に大きい。今後は、日本の製造業が長期的な視点からアジアの発展を図る中で自社の発展も図っていくとの視点が重要である。(ホ)ASEAN自由貿易地域(AFTA)、ASEAN産業協力スキーム(AICO)への取り組み
AFTA、AICOの成功は、アジアにおける貿易・投資拡大に向けての動きを維持、促進して行く上で重要である。また、貿易自由化に伴い、競争力を持った産業の育成、比較優位の確立が必要となるが、AFTA、AICOへの取り組みによりマーケットの決定による域内産業配置の環境整備が可能となる。これらの観点から、ASEANが例外品目を設けず、自由化に積極的に取り組むことが期待され、我が国政府としても引き続きASEANのこのような努力を慫慂して行くことが重要である。(ヘ)農林水産業の重視
増大する人口と食糧問題の観点に加え、通貨危機の際には、農村が都市の失業者の受け皿となるなど社会的安定化に果たした役割が再確認された。このような観点から、農林水産業にも力を入れて行くことが重要であり、我が国としては引き続きこの分野での協力を積極的に進めて行く必要がある。
- (2)自由貿易協定構想
韓国、ASEANを中心とする東アジアと我が国との経済関係の強化、深化を目指した自由貿易協定構想については、韓国との二国間自由貿易協定構想について、韓国とまず話し合いを始め、さらにシンガポールをはじめこの構想に前向きな他の国とも共同研究などを通じて地域全体で議論と理解を深めるべきであろう。また韓国とは既に交渉を開始している投資協定の早期締結、相互認証協定(MRA)の推進を図る。また、ASEANについては経済の持続的発展のためには域内の制度の共通化などによる域内統合の推進が重要であり、我が国官民を挙げてこれを積極的に支援する必要がある。
アジア各国からは日本の輸入拡大に対する要望が強く、ミッション訪問時にはヴィエトナム、タイ、マレイシア、フィリピンにおいて、特に日本の農産品市場の開放に関する大きな期待が相次いで表明された。
我が国は、ウルグアイ・ラウンド農業交渉において農産品の関税引き下げや特恵シーリング枠の拡大等市場アクセス改善につき合意し、その着実な実施を進めているところである。上述の通りアジア経済回復に向けた日本の輸入拡大に対する期待は大きく、日本の食糧安全保障を考慮しつつも、我が国がアジアの一員としての役割を果たして行く上で、日本の市場アクセス改善に更に積極的に取り組むべきである。
なお、日本市場へのアクセスについては、工業製品やサービスについても、更なる改善努力が必要と考えられる。それも単に貿易や取引の自由化というレベルのみでなく、日本企業についてもグループ内利益優先のような取引慣行の改革に及ぶ必要がある。
アジアで大きなウエイトを占める日本の市場がより開放的となり、吸収力(アブソープション)を大きくしない限り、アジア地域の水平分業は実現し難い。金融危機の経験からすべてのアジア諸国は金融・通貨の安定に強い関心を抱いている。特に、適切な為替相場制度の採用と緊急時の地域的融資制度の導入について具体的なスキームを作ることは我が国にとっても課題であり、この観点から、例えば円を含む通貨バスケットなど、速やかに具体的提案を作成する必要がある。その上で、ASEAN+日中韓の場で地域内の議論を開始することが望ましい。また、各国の情況が同じでないことを踏まえ、二国間の協議を同時に行うことが必要である。また、我が国の政府・民間の研究機関によるアジア各国経済の分析とその結果の公表も更に強化する必要がある。
金融危機後、アジア諸国の中には円の役割の拡大を望む声も出ている。日本経済の将来にとり、円がアジアの主要通貨となることは極めて重要であるので、この好機を逸すべきではない。
円の国際化は市場参加者が円を望ましい通貨として選択することによってのみ実現する。そのために我が国は政府と民間が協力して国内金融・資本市場の改善や決済システムの整備を急ぐ必要があり、民間企業・金融機関は円建取引拡大のために一致して努力する必要がある。金融危機への反省から、アジア諸国には投機的な外国資本への依存を抑え、国内貯蓄の活用を図るために債券市場の育成を期待する声が強くなっている。
我が国はサムライ債発行の促進、決済システムの整備と共に、国際協力銀行によるアジア諸国国債の保証機能を活用して債券市場育成努力を支援すべきである。また、資金・証券の域内クロスボーダー決済システムが将来円滑に構築されていくよう、各国監督機関、中央銀行間の検討、協議を促進する。
民間金融機関は一日も早く自らの財務体質の改善を終え、アジアにおける投融資活動を活発化するとともに、各国の債券市場育成に人材や知識の面で貢献することが望ましい。アジア通貨危機の原因のひとつは、域内諸国の資金調達の脆弱性であり、今後、通貨危機の再発を防ぐためには、新興市場国において金融システムを強化するとともに、先進国からの大規模な資金の移動をモニターし、状況に応じそれに即した対応をする必要がある。
我が国はマニラ・フレームワーク等の地域協力のメカニズムに積極的に取り組むとともに、アジア域内におけるグローバルな金融システムと整合性のとれた効率性の高い市場と効果的な金融仲介機能の創設、育成にイニシアティブを発揮していく必要がある。グローバリゼーションに対応し、企業会計を国際標準化の方向に沿って改めていくよう、各国の推進母体が各国間の連絡、協調を密にすることが必要であり、我が国がこの分野で協力して行くことが重要である。
情報のグローバリズムの進展の中で発生したアジア通貨危機を克服して来るべき21世紀を迎えるためにも、急速にアジアを席巻しつつある情報化の波に乗り遅れることなく、我が国のイニシアティブにより、アジアにおける情報化に向けた努力を促し、大きな流れを作っていくことが焦眉の急である。21世紀の競争力を維持していく上でも、日本が情報化の分野で積極的なイニシアティブを打ち出すことがアジアを活性化し、国際社会に向けての強いメッセージともなり得る。
情報通信技術の発展とともに、新しい産業が芽生える可能性が急速に大きくなってきている。その一つの例として、米国において既に成長過程に入っており、日本においても萌芽がみられるのがネット産業(コンテンツ産業ともいう。情報の内容、特に画像や音声などの素材を生み出す産業)である。アジアの多様なカルチャーをベースにしたネット産業の集積地が日本で育つよう条件整備を進めることが必要である。
(3)「アジア・ジャパン・センター」による日本語・日本文化の普及
日本以外の主要先進国は、アメリカン・センター、ブリティッシュ・カウンシル、アリアンス・フランセーズ、ゲーテ・インスティテュート等の機関を擁して自国文化の普及に努めている。これらに比べれば、現在、我が国が世界の主要都市においている文化会館や文化センターは未だ小規模のものが多い。また、アジアの市民の日本語熱には旺盛なものがあるが、適当な学習場所と授業料が見出せないのが現実である。我が国は欧米先進国の機関に劣らない施設と陣容を備えた無料の日本語教育プログラムを含む「アジア・ジャパン・センター」として拡充・強化する必要がある。また、「アジア・ジャパン・センター」が我が国政府による留学生プログラムと有機的連携を保ち、留学関係の情報システムを構築することも考えるべきである。
一部のアジア諸国との間には定期的な幾つかの対話の場が既に存在するが、更に幾つかの知的交流の場をアジア各国(例えば、今回のミッション訪問で積極的な反応が示されたタイ、フィリピン等)との間で持つことが望ましい。また、韓国との関係でも、現在、大きな役割を果たしている日韓フォーラムに加えて、若い世代の間で日韓共通の国際的案件を議論する場を設定することが望ましい。留学生の受け入れの拡大、更には日本人学生のアジア諸国への留学促進のため、日本・アジアの大学相互の単位取得の相互承認(ツイニング)が進められつつあるが、こうした動きの中から、日本・アジア双方の大学の協力関係の強化、研究交流の本格化も期待される。国費留学生制度、国際交流基金や円借款などの政府開発援助はそのために一定の役割を果たしているが、更に、日本の大学の国際化、知的交流を進めるためには、こうした現行の支援の拡充を始めとする更なる支援を実施する必要がある。その際、各国の研究・開発を我が国が支援することは、21世紀のアジアの繁栄に向けての有意義な「投資」であり、研究・開発支援基金を設けて、各国の学者や民間の努力を促すことが重要である。
英語は現在、世界共通語であると言って過言ではない。アジアにおいても同様に、各国が独自の言語を有しているものの、お互いの国同士では共通語として英語を利用している。我が国はアジア諸国の中では相対的に英語の普及率が低く、世界で最も英語が不得手な国とされている。21世紀において、我が国が国際社会、特に、アジアの一員として他のアジア諸国とコミュニケーションを強化するには、英語に習熟することが必須である。日本人が英語を不得手とする一つの大きな原因として、英語を習い始める年齢が高すぎる点が挙げられる。中学校に入学してから数学や化学等と同様に「教科」として英語を勉強するため、また、それが大学受験に直結した重要な科目であることを意識してしまうため、英語はその時点から外国人とコミュニケーションを図るための道具ではなく、試験で良い成績を取るための「勉学対象」でしかなくなっている。他方、幼稚園や小学校低学年から米国などで暮らす日本人子女の多くは、驚くほど早く英語を習得する。これは、彼等の英語が「文字」ではなく、「音」から入るためであり、また「勉学」としてではなく、「コミュニケーションの手段」として覚えていくからである。従って、我が国においては少なくとも小学校、出来れば幼稚園から英語を教えていく必要がある。そのためには、教師の養成や大学入試の改革(コミュニケーション手段としての英語を試験する)が喫緊の課題である。また、近年、英語を共通言語とするインターネットを通じて世界とコミュニケーションが出来るようになっているが、これを学校教育の中に取り入れることも検討に値する。
ヒト、モノ、カネ、情報の流れを円滑にするための取り組み
入管、検疫、税関等の手続を簡素化・迅速化するとともに、書式が国毎に異なっているのは不便であるので、出来る限り統一する。なお、ビザは極力不要とする。また、ビザを要する場合も、一定期間数次入国を認める扱いを原則とする。また、検疫については、集団疫病発生といったような場合を除き、国毎に異なる扱いとすることをやめるべきである。
行政サービスの向上や行政手続の簡素化、迅速化、透明化を一層進める必要があり、我が国駐在のアジア各国大使館メンバーで構成する苦情処理申し入れ委員会を設けるなどして苦情処理を促進する。また、市場開放問題苦情処理体制(OTO)等の一層の活用を図るべきである。更に、税関等の行政手続、環境基準、各種機器の規格等の標準化を図ることがヒト、モノ、カネ、情報の流れを円滑にする上で有益である。
事業活動や通商貿易の円滑化のため、治安維持策を強化する(海賊の取締り強化、警察のノウハウの交流)。マラッカ海峡を始めとする東アジア海域における海賊行為の頻発は我が国の輸送ルートへの脅威となっているばかりでなく、沿岸国の近海交易も阻害するものである。我が国としては海上輸送の安全確保のためにマラッカ海峡沿岸部等の関係国と緊密な協議を行うとともに、必要な技術的資金的協力を供与することが望ましい。
BACK / FORWORD / 目次 |
| ||||||||||
![]() |