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第3回アジア欧州会合(ASEM)
外相会合議長声明

(2001年5月24-25日、中国北京)
(仮訳)

平成13年5月25日

  1. 第3回アジア欧州会合(ASEM)外相会合は 、2001年5月24日から25日まで中国の北京において開催された。この会合には、アジアから10カ国の外相が、また、欧州から15カ国の外相が欧州委員会対外関係担当委員とともに出席した。会合では唐家セン中華人民共 和国外交部長が議長を務めた。江沢民中華人民共和国国家主席及び朱鎔基国務院総理がそれぞれ開会式及び閉会式において挨拶し、これら外相及び欧州委員会対外関係担当委員を迎えた。銭其シン中華人民共和国国務院副総理もこれら外相及び欧州委員会対外関係担当委員を歓迎する機会を得た。

  2. 外相は、新世紀におけるアジアと欧州のパートナーシップを強化するとのテーマに基づき、包括的、詳細かつ有益な議論を行った。外相は、アジアと欧州との間の関係がより緊密化し、広範かつ重要になっていること、また、ASEMが活力ある新たな発展段階に入ったことを確認した。アジアと欧州双方は、理解の一層の深化、共通の立場の拡大、協力の強化及びより緊密な関係の構築を強く希望した。外相は、対等なパートナーシップの原則に基づく、アジアと欧州の交流と協力を一層促進、強化するためには、ソウルの首脳会合の成果を基礎とすることが重要であることを強調した。外相は、ASEMが、国際連合憲章の目的及び原則と、他の普遍的に認められた国際関係の規範を堅持し、新たな国際政治経済秩序を構築する上で、活発かつ建設的な役割を果たすことを期待した。外相は、平和、安定、持続的発展、民主主義、法の支配、発展の権利を含む人権及び基本的自由の促進のために、国際的協力の一層の拡大を要請した。

  3. 外相は、ASEMプロセスの三本柱の1つである政治対話が、ASEM首脳会合によって定められた原則に基づき、前向きに進展し、相互理解の促進と深化、共通の立場の拡大、共通の利益の明確化及び協力の増進が進展したことにより、両地域に利益をもたらしたものと考えた。外相は、政治分野において両地域が係る対話と協力を更に促進することが極めて重要であることを再確認した。

  4. 外相は、共通の地域的関心事項につき意見交換した。外相は、アジアと欧州の良好な状況が、両地域における協力を強化したものと考えた。外相は、善隣友好、相互信頼、対話及び協力が東アジアの総意となったことに満足の意をもって留意した。ASEANプラス3首脳会議が、このような関係を育成するにあたり、重要な役割を果たした。ニース欧州理事会は、欧州連合(EU)の機構改革を可能ならしめることで、EU拡大への道を開き、更には欧州安全保障・防衛政策を進展させることで、国際舞台において十分な役割を果たす手段をEUに与えた。外相は、2000年11月24日から25日までシンガポールで開催された第4回ASEAN非公式首脳会議で立ち上げられた、ASEAN統合構想(IAI)を通じて行われるものを含め、ASEANの新旧加盟国の統合促進努力に、関心を持って留意した。外相は、第13回ASEAN・EU閣僚会議における、協力関係強化の決意表明を歓迎した。外相は、EUやASEANのような、アジア及び欧州のそれぞれの地域内での協力強化は、アジアと欧州双方の社会経済的発展に対し新たな刺激を与え、また両地域間の包括的かつ多面的な協力のための有利な条件を創出するものであると確信した。外相は、また、地域における対話と協力のための重要なフォーラムとして、ASEAN地域フォーラム(ARF)の継続した進展を歓迎した。外相は、グローバリゼーションと相互依存へと向かう状況において、アジア・欧州の平等かつ互恵的パートナーシップの増強は、両大陸の人々の利益であるのみならず、世界全体の利益となるものであると確信した。

  5. 外相は、ASEM第3回首脳会合において採択された朝鮮半島の平和のためのソウル宣言を想起し、2000年6月の第1回南北首脳会談以降、韓国及び北朝鮮の双方が、南北共同宣言を実施するに際してとった前向きな措置に対する評価と支持を表明し、韓国と北朝鮮との間の第2回首脳会談の早期開催を含め南北対話の強化と、和解と協力のプロセスにおいて、更なる進展が得られることへの期待を表明した。外相は、欧州理事会議長、共通外交・安全保障政策上級代表及び対外関係担当欧州委員による最近の朝鮮半島訪問の結果を歓迎し、朝鮮半島における和解、ミサイル発射実験のモラトリウム及び関連する安全保障上の問題、人道上の問題、人権その他の議題に関する南北両首脳との会談における前向きの結果についての欧州側の報告に留意した。外相は、これら及びその他の問題に関する北朝鮮とASEM参加国との更なる対話を期待し、朝鮮半島の平和、安定及び将来の来たるべき統一への全面的支持を再確認した。

     外相は、バルカン諸国において、一層の国内的な安定と国民の和解を達成することが必要であることを強調した。バルカン地域のEUへの統合への趣旨は、安定化及び連合のプロセスにより具体化している。このプロセスにおいて、バルカン諸国は、ザグレブ首脳会合において強調されたように、民主主義、法の支配、地域的な和解と協力、国際的国境の尊重、あらゆる民族及び少数者の権利を含む人権の尊重を推進することが求められている。
     外相は、バルカン地域のすべての国の主権及び領土的一体性並びに国際的に認知されたその国境の不可侵性を強く支持した。
     外相は、国際社会、特に南東欧安定協定が、改革の履行、経済発展並びに地域的安全保障及び協力の強化に向け重要な貢献を行っていることを強調した。EUは、南東欧安定協定の創設を呼びかけた機関であり、率先的に行動をとり続ける。

     外相は、東チモールが成功裡に独立に向け移行していくために必要な条件を醸成していくことの重要性を強調した。外相は、また、東チモールの独立後も、国際社会が東チモールの和解と国造りのプロセスを支持するため積極的に参画し続けるべきことについて認識を共有した。外相は、また、東チモール難民の問題という未だ残された問題について重要な措置がとられたこと及びこの問題を緊急に解決すべきことを認識した。

     外相は、中東における懸念すべき状況につき議論した。外相は、状況が悲劇的に悪化することを阻止するために当事者が必要な全ての措置をとることを求め、また当事者が停戦に向けて取り組むことを求めた。外相は、シャルム・エル・シェイク事実調査委員会(ミッチェル委員会)及びエジプト・ジョルダン提案による報告及び提案を歓迎し、支持を表明した。

  6. 外相は、国連ミレニアム宣言を想起し、代表性及び参加に関し最も普遍的な政府間機関である国連の役割の向上は、全ての国の共通の利益であることを強調し、国連の強化、国連改革、国連平和維持活動の様々な側面、開発、軍縮、軍備管理及び人権の分野における国連の役割につき議論した。外相は、また、世界的な戦略的バランス及び安定を維持すること並びに大量破壊兵器の軍備管理、軍縮及び不拡散に関する地域的及び世界的なイニシアティブを強化することの重要性を強調した。外相は、軍備管理、軍縮及び国連改革の分野におけるASEMの対話を更に進展させることに合意した。国連により取り扱われる問題に関する協力の強化のため、外相は、国連総会会期の前に、ASEM参加国がニュー・ヨークあるいは他の合意された場所において、適切なレベルで議題に関し意見交換を行うため、協議を開催することを決定した。このような協議は他の合意された形式で行うこともできる。

  7. 外相は、ASEM参加国間のより緊密な経済関係が、アジアと欧州との間の強力なパートナーシップの基礎を形成するものであることを強調した。外相は、ASEMが、アジア・欧州間の互恵的経済関係を優先し、そのために努力すべきであるとの意見を共有した。外相は、アジア経済の回復とユーロ地域の安定を歓迎した。これにより、情報通信技術の分野を含めた両地域の経済・貿易協力を強化し、両地域共同の繁栄を増進するための、好ましい条件が創出された。

  8. 外相は、リスク及び課題とともに機会を提供するグローバリゼーションの過程が、全ての者にとって望ましい利益を実現するため、幅広くかつ慎重な監視を必要とすることに合意した。協力の強化を通じて、ASEM参加国は、全ての国家による平等と互恵の享受に向け、グローバリゼーションの機会を一層活用し、課題に立ち向かうことが可能であり、また、敗者の無いグローバリゼーションを増進するために、共に行動することが可能である。外相は、2000年7月27日にバンコクにおいて開催された第7回ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合が、グローバリゼーションの安全保障上の影響につき議論し、この問題に関する地域の対話に貢献したことを確認した。外相は、また、グローバリゼーションが、技術的発展と世界経済への効果的統合の展望を拡大し、諸国、特に最貧国や最も脆弱な国の繁栄および潜在力の増大に寄与することを確認した。ASEM参加国は、参加国間及び国内の発展格差を縮小させ、貧困生活者の人口を削減すること、また、国際経済の非対称性と不均衡を減少させ、引き続き懸念され注意を必要とする国際金融システムの安定を促進することに、共に努力することにより、グローバリゼーションの課題に対処するとともに、その機会を活用すべきである。外相は、ASEMが、重要なパートナーシップとして、先進国及び開発途上国の共通の発展に貢献し、また、最大の利益と最小の副作用をもたらすグローバリゼーションに向けての努力において、より重要な役割を果たすことが可能であることを指摘した。

  9. このことを背景として、外相は、各国の経済成長と繁栄を増進する多角的貿易体制の役割を念頭におきつつ、カタルのドーハで開催される第4回WTO閣僚会議において、全WTO加盟国の利益を考慮し、バランスの取れた幅広い議題をもって、多角的貿易交渉の新ラウンドを立ち上げる努力を強化する。外相は、全てのASEM参加国のWTOへの完全な参加が、WTOを強化することを再確認した。

  10. 外相は、2001年9月10日から11日までハノイで行われるASEM第3回経済閣僚会合の開催に期待するとともに、この会合においては、貿易円滑化行動計画(TFAP)及び投資促進行動計画(IPAP)の下で行われる諸活動の実施強化の方策が議論されることに留意した。外相は、この会合が、アジアと欧州との間の協力、特にAECF2000(アジア欧州協力枠組み2000)に定められた関連の優先分野での協力を強化するものと期待した。外相は、また、ASEM第2回科学技術大臣会合が早い時期に開催されることを期待した。外相は、アジア欧州間の民民対話・協力及び官民対話・協力の促進面において、アジア欧州ビジネス・フォーラム(AEBF)の建設的な役割を賞賛した。外相は、AEBFが成長と繁栄を追求するアジアと欧州の中小企業への支援努力の継続を奨励した。外相は、デジタル・オポチュニティに関するASEMセミナーの積極的な成果を歓迎し、デジタル・デバイド(情報格差)への取り組み努力の継続を支持した。外相は、WTO貿易円滑化セミナーが2001年6月にクアラルンプールで開催されることに留意した。外相は、情報通信技術に関するASEMセミナー及びグローバリゼーションに関するASEM円卓会議が、有効な成果を収めることを期待した。情報通信技術とグローバルな電子ネットワークは、ASEMのパートナーシップが推進すべき、成長と持続的発展への真の機会を提供するものである。外相は、トランスユーラシア情報ネットワークの創設及び、電子商取引とロジスティクス(物資管理システム)に関する会合の開催に対する期待を表明した。

  11. 外相は、金融分野におけるアジアと欧州との間の協力の拡大が、国際金融の発展と安定に貢献するものであることを強調した。アジアと欧州は、金融の監督と規制を強化し、秩序ある金融自由化の原則を実現するための互恵的協力と対話を拡大する。外相は、神戸で行われたASEM第3回財務大臣会合において、アジアと欧州との間の経済・金融協力の強化を含む問題につき、詳細な議論が行われたことを確認するとともに、この分野における対話、調整及び協力を積極的に続けることが合意されたことを歓迎した。外相は、ASEM信託基金Ⅱ(ATFⅡ)の運用方式の決定と、共通関心事項に関する地域間の共同調査及び研究を促進するための神戸リサーチ・プロジェクトの創設を含む、神戸会合のフォローアップとして開始された具体的なイニシアティブを歓迎した。

  12. 外相は、社会、文化、教育その他の分野でのアジア・欧州間の協力を全ての社会セクターを含めた形で増進することの重要性を強調した。この点に関し、外相は、2000年12月に行われた、伝統医療と現代医療の融合に関するASEM会議の有益な成果を歓迎した。外相は、ASEM参加国における人材養成は、アジアと欧州の包括的な発展のための基礎と保証であることを強調した。プロジェクトは、両地域における能力向上を強化すべく発展させることができる。アジアと欧州は、学者、シンクタンク及び学生の間のネットワーク構築を一層推進し、学術的及び文化的な交流を実施する。この関連で、外相は、DUO/ASEMフェローシップ・プログラムの開始に向けて、ソウルで行われた専門家会合における重要な進展を歓迎した。外相は、また、ASEM教育ハブの設立とアジア欧州研究所によって開始された活動の進展を歓迎した。

  13. 外相は、設立以来、人と人との交流、文化的及び知的交流を通じて、一層の理解と協力に貢献してきたアジア欧州財団(ASEF)の活動を賞賛した。外相は、ASEF事務局長による財団の将来の目標および優先事項についての報告に留意した。この点に関し、外相は、参加国の新たな一連の拠出が、コペンハーゲンでのASEM4(ASEM第4回首脳会合)に間に合うように、ASEF予算に対し行われることを支持した。

  14. 外相は、国際組織犯罪への深い懸念を表明し、両地域における移民の重大性を認識するとともに、国境を越えた犯罪との闘いにおけるASEM法執行機関の協力に関するシンポジウム、汚職との闘いにおける協力、資金洗浄対策イニシアティブを注意深く見守っていく。外相は、アジア欧州移民管理協力に関する閣僚会合の準備について留意した。外相は、これに関連するアジア欧州協力のためのより効果的なメカニズムと方法が、それらのイニシアティブを通じて設立されることを希望した。

  15. 外相は、女性と児童の密輸が全ての者にとって益々大きな懸念となってきていることを認識し、国連国際組織犯罪条約及びその議定書を歓迎した。ASEM参加国は、人の密輸の被害者、特に女性と児童の権利の尊重と保護を確保するため、人の密輸という憎むべき犯罪と闘うための協力を強化する。外相は、女性と児童の密輸に関するASEMイニシアティブのコア・グループ専門家会合が作成した行動計画を歓迎した。

  16. 外相は、中国で開催予定のASEM第1回環境大臣会合が、アジアと欧州の間の環境協力のプロセスに貢献することを希望した。21世紀における汚染と生態系被害の課題に鑑み、外相は、環境悪化を継続的な経済成長から切り離すことの必要性のみならず、環境への圧迫を持続可能な開発と両立可能な水準まで弱めることの必要性についても合意した。外相は、地球温暖化は国際社会全体が足並みをそろえた協調的な行動をとるべき深刻な課題であるとの見解を共有した。この点に関し、外相は、京都議定書は、先進国の排出にとって必要な方向転換を実現するための重要な第一歩であることを強調した。外相は、現在の多くの傾向が持続可能なものでないことを認識し、より長期的には、健全な環境が経済発展、人類の福祉及び貧困の軽減の基礎となるものであることを強調した。外相は、2002年の持続可能な開発に関する世界サミットの成功に向けた作業を行う決意を表明した。外相は、また、環境協力の強化におけるアジア欧州環境技術センター(AEETC)の過去2年間の役割に留意した。

  17. アジア欧州協力枠組み2000は、新しい千年紀の最初の10年間におけるASEMプロセスの協力の原則、目的、優先事項及び仕組みを設定した。外相は、ASEM第3回首脳会合によって承認されたイニシアティブについて検討を行い、2001年4月にストックホルムで開催された高級実務者会合の提言に基づき、以下をASEMの公式イニシアティブとして承認した。

    • 神戸リサーチ・プロジェクト
    • ASEM公的債務管理フォーラム
    • ASEMイニシアティブ及び活動に対するSOMの情報交換、監視、検討メカニズム
    • 生涯学習
    • メコン川流域の人材養成への情報技術の適用についてのアジア欧州協力に関するセミナー

  18. 外相は、ASEMにおける今後の対話の形態、特にASEM首脳会合の形態について議論した。これに関連し、外相は、ASEMの非公式性かつ双方向性を高める方策について意見交換し、この目的のためにより効果的な方法を引き続き探求することに合意した。ASEMプロセスの全体的調整役として、外相は、高級実務者に対し、AECF2000が完全に実施されることを確保するよう指示した。外相は、高級実務者に対し、現状把握を継続し、ASEMの対話と協力に貢献し得るイニシアティブをテーマ別に特定するよう奨励した。

  19. ASEM第3回首脳会合の成果に従い、外相は、ASEMへの参加につき意見交換を行い、アジア側参加国の意見に留意し、次回の外相会合において再度本件を取り上げることに合意した。

  20. 外相は、ASEM第4回外相会合を、2002年6月にスペインで開催することに合意した。


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