世界の医療事情

サウジアラビア(ジッダ)

平成30年10月

1 国名・都市名(国際電話番号)

 サウジアラビア王国(ジッダ市)(国際電話国番号966)

2 公館の住所・電話番号

在ジッダ日本国総領事館 (毎週金土休館)
住所:Al-Islam St. No.32, Jeddah 21431(P.O.Box 1260)
電話:(012)-667-0676
ホームページ:https://www.jeddah.ksa.emb-japan.go.jp/j/別ウィンドウで開く

3 医務官駐在公館ではありません。

 在サウジアラビア日本国大使館医務官が担当

4 衛生・医療事情一般

(1)気候・地誌等

 サウジアラビアはアラビア半島のほぼ80%を占める,国土としては中東最大級の国家で,その面積は日本の5倍以上ありますが,その大半は砂漠や土漠で占められています。また,サウジアラビアは日本との関わりが深い産油国として広く知られているイスラム教国家です。サウジアラビア西部のマッカ州に位置するジッダは古くから紅海に開けた都市であり,かつては首都でした。

 ジッダは砂漠気候に分類されますが,沿岸部に位置するため,一年を通して比較的高温で,かつ湿度が高いことで知られています。特に夏期(6月~8月)は湿度が高い上に,最高気温が連日45℃を超えるため,大変蒸し暑くなります。一方,首都リヤドがある内陸部は典型的な大陸性砂漠気候で,一年を通して乾燥し,冬期は冷え込みます。サウジアラビアは地域や季節,日内間などによって,気候の変動が大きく異なる事も特徴の一つといえます。ジッダの外気が高温多湿と言えども,屋内では冷房に常に曝されていることが多く,逆に冷えや乾燥に気を付ける必要もあります。

 サウジアラビアはメッカとマディーナの二大聖地を抱えており,如何なることにおいても,イスラム教を最大に優先する社会です。1日に5回,お祈りの時間がありますが,お祈りを行う前後の時間帯は,商店,レストランなどが閉店となります。アルコール・豚肉は完全に禁止され,舞踊・音楽・芸術等についても日本とは大きく異なる考え方と規制が設けられています。女性の行動・服装に関する制約や習慣は日常からとても目立ちます。たとえ外国人であっても全身を覆う黒衣に近い服装が求められ,肌はほとんど見せません。

 医療の現場では,お祈りの時間であっても診療は中断しないとされますが,窓口業務を行う事務員の対応まで影響がないとは言えず,注意は必要です。

(2)医療水準・医療制度等

 サウジアラビアには,最新の医療機器を有している医療施設も少なからず存在します。国内には,たくさんのプライマリー・ヘルス・クリニック(PHC:診療所および保健所機能)や国立基幹病院等が整備されています。これらの公的医療機関は,サウジアラビア人であれば,原則無料で利用できるものですが,外国人に対しては緊急時以外の一般診療は通常行っていません。これらとは別に,大きな都市には,富裕層および一部の外国人を主な顧客とした高額な私立病院が複数あり,日本人の場合は,利用が先ず考えられます。これらの病院では,アラビア語よりも英語の使用が一般的です。

 実際の受診のシステムは,日本とは大きく異なります。支払いは基本的に全額先払いで,入院する場合はデポジットが必要となることがあります。通常,現金の他,クレジットカード,当地の銀行発行のデビットカードなどが利用できますが,先進国のような海外旅行傷害保険キャッシュレスサービスは普及していません。また,医療費は全額自己負担で,高額に及びますので,海外旅行傷害保険に加入しておくことを強く勧めます。

 病院も金曜日が休日です。また,イスラム暦のラマダン月(断食月)は,受診時間が通常と大きく変わるので,事前確認が必須です。日中の受付時間は病院ごとに異なりますが,ラマダン月においては,おおむね正午前後から3~5時間開き,午後4時くらいまでに一旦は閉まります。イフタール(日中の断食を解かれた日没後はじめての食事)を終えた後,午後9時ころから再開し,午前1~2時まで開くことが一般的です。夜間の受診の方が格段に患者も多く,診療時間帯の中心となります。ラマダン月か否かに関わらず,基本は完全予約制ですが,救急の場合は直接救急外来(ER)に行っても受診可能です。受診の際はイカーマ(滞在許可IDカード)あるいはパスポートの提示を求められます。多くの施設で待合室は男女別々です。

 医薬品は一般薬,処方薬とも比較的簡単に入手することが可能ですが,抗生剤などは必ず医師の処方箋を求められます。都市部にはたくさんの薬局があり,欧米系の医薬品も揃っています。

なお,緊急時は救急車(電話:997)を利用することも可能ですが,道路状況により長時間(1時間以上)待たされたることがあるので注意が必要です。

(3)水質

 国内の水道水は,主に海水を淡水化処理したもので,カルシウムやマグネシウムなどの硬質成分の含有量が多いため,飲み慣れない人は腹痛や下痢を訴える可能性があります。通常飲料には,水道水ではなくミネラルウオーターの使用を勧めています。なお,比較的安価な飲食店では,溜め置きした水道水を使用する場合などがあり,しばしば食中毒等の原因となるため注意が必要です。

5 かかり易い病気・怪我

(1)交通事故

 電車,バスなどの公共交通機関が未整備のため,移動のほとんどが自動車となりますが,近年の自動車数の急激な増加に加え,運転マナーの極端な悪さなどから交通事故が多発しています。150 km/h以上の超高速車やウィンカーを使用せずに強引に割り込む車などは日常的で,また整備不良車も珍しくありません。自動車等の運転時や乗車時,歩行時にも常に注意が必要です。

(2)日焼けによる障害

①皮膚の障害

 短時間の日焼けであっても,強い日差しによる皮膚炎が起こりえます。日焼け止めクリームなどを使用し予防対策に留意してください。

②角膜の障害

 コンタクトレンズの使用は,当地においては砂塵が入り不潔になりやすいので十分な注意が必要です。重度の炎症や角膜潰瘍等を引き起こす場合もあり,眼鏡の使用が勧められます。

(3)熱中症

 夏季には日中の気温が50℃を超えることもあり,猛烈な暑さとなります。このため屋外での活動や運動の際は,熱中症に対して厳重な注意が必要となります。十分な水分補給と適切な休養を確保することが必須となります。

(4)神経症,抑うつ状態

 サウジアラビア滞在では,厳しい気候や著しい生活制限などから,ストレスや疲労が蓄積しやすく,神経症や抑うつなどの精神状態が引き起こされる可能性があります。このため,中長期滞在者にとっては心身の休養,リフレッシュは極めて重要となります。中長期滞在者は定期的な休息を確保し,心身のリフレッシュを心がけてください。

(5)中東呼吸器症候群-コロナウイルス(Middle East Respiratory Syndrome Corona Virus: MERS-CoV)

 2012年9月に初めて報告された新しい感染症です。第1例はジッダで確認され,ARDS(急性呼吸器不全)と急性腎障害を併発し死亡したと報告されています。その後,サウジアラビアを中心とする湾岸諸国などから2,000例以上の症例報告が続きました。2015年以降は,そのほとんどがサウジアラビア国内からの発症ですが,近隣諸国での報告も少ないながら存在します。中間宿主(ヒトへの感染の橋渡しをする生物)としてラクダが強く疑われています。ラクダからヒトへの飛沫感染(咳やくしゃみで,病原を持った唾液などが飛散し,感染すること)が最も考えられていますが,肉,ミルク,糞尿にもウイルスは存在しており,未だに感染経路すら正確に解明されていません。ヒトからヒトへの感染も多数報告されています。現在のところ,有効な治療法もワクチンもなく,一旦感染すると致死率が極めて高い危険な疾患です。当地のラクダに接触しないこと,肉を食べないこと,未殺菌ミルクを飲まないことの他,人混みに出た後に頻回の手洗いやうがい等,一般的な感染症予防対策が重要です。

(6)上気道炎

 気温の日内変動,夏の冷房,砂塵など呼吸器感染症の危険因子が多く,季節を問わず上気道炎等に十分な注意が必要です。特に砂嵐が発生しやすい春・秋にはマスクを着用するなどの防衛手段が大切です。

(7)季節性インフルエンザ

 冬期を中心にしばしば季節性インフルエンザが流行します。例年予防接種が推奨されています。

(8)感染性下痢症(サルモネラ,赤痢アメーバ症など)

 サルモネラなどによる食中毒が年間を通じて発生しています。リヤド,ジッダ,東部州(ダンマン,アルコバール)の都市部でもしばしば報告されているので,食品の鮮度や調理法などには十分な注意が必要です。赤痢アメーバ症は,汚染された食品や水が原因となり感染することがあります。主な症状は腹痛,下痢,粘血便などの腹部症状で,特にジッダ地方では多発することがあるので注意が必要です。

(9)腸チフス

 腸チフスが流行することがあります。食品等から経口感染し,発熱,倦怠感,下痢,血便などの症状を引き起こします。中長期滞在者にはワクチン接種が推奨されます。

(10)A型肝炎

 A型肝炎が流行することがあります。食物などからの経口感染症で,発熱や悪心,嘔吐,下痢,腹痛,黄疸などの症状を呈します。中長期滞在者にはワクチン接種が推奨されます。

(11)マラリア

 南西部のジザン,イエメン国境近くの紅海沿岸地帯などを中心にマラリアの国内発生が見られます。一方,輸入マラリア患者は都市部でも多く見られています。マラリアはハマダラカという蚊を介して感染し,雨の多い時期に比較的多く発生します。現在,国内での予防内服は推奨されていませんが,服装やスプレーなどで防蚊対策を万全にすることが重要です。

(12)デング熱

 ジッダ地方などでしばしばデング熱の流行が見られます。デング熱はネッタイシマカ,ヒトスジシマカ(蚊)によって媒介され,発熱,筋肉・関節痛,発疹などを引き起こします。重症型は死に至るケースもあるので,十分な防蚊対策が必要となります。

(13)リフトバレー熱

 感染家畜との接触や蚊の媒介などによってリフトバレー熱が発生することがあります。発熱などのインフルエンザ様症状を引き起こします。

(14)B型肝炎

 消毒が不十分なカミソリ,性行為,汚染された医療器具,輸血などによってB型肝炎に感染することがあります。中長期滞在者にはワクチン接種が推奨されます。また,不衛生と思われる理髪店や歯科医院などを避けることが予防に繋がります。

(15)結核

 国内各地で結核の報告があり,注意が必要です。

(16)髄膜炎菌性髄膜炎

 髄膜炎菌性髄膜炎は髄膜炎菌による感染症で,軽度な感冒様症状から痙攣,意識障害などの重篤な症状まで多彩な症状を呈します。ジッダ地方では大巡礼の時期などにしばしば流行が見られるので,特に注意が必要です。中長期滞在者にはワクチン接種が推奨されます。

(17)ビルハルツ住血吸虫症

 南部地域などを中心にビルハルツ住血吸虫症が報告されています。川や湖での作業,水浴びなどによって,皮膚より感染が起こります。症状は皮膚炎,発熱,血尿,排尿時痛などで,放置すると尿路系に障害を残すこともあります。

(18)アルクルマ(Alkhurma)出血熱

 メッカ近郊の(アル)クルマ市にて,1994年に初めて症例報告されました。現在は散発する程度ですが,過去数年間で,40症例以上の患者が国内で報告されています。ダニ媒介ウイルスであるFlavivirusAlkhurma hemorrhagic fever virus (AHFV)によって引き起こされます。ヒトはダニに噛まれるか,感染したダニを潰したときに感染します。2-4日の潜伏期の後に,熱,頭痛,関節痛,食欲低下,気分不良,下痢,吐き気といった非特異的インフルエンザ様症状に3-8日見舞われます。一部は,神経症状や出血症状を示し,多臓器不全になると死亡することがあります。有効な治療方法も予防法も確立されていません。ペットや家畜に接触しないこと,流行地のダニがはびこる地域に近づかないことが重要です。

6 健康上心がける事

(1)高温に対する対策は常に必要です。特に熱中症に注意が必要です。水分補給,温度管理は極めて重要となります。なお,夏季には冷房が常時必要となりますが,就寝時には体温調節機能が落ちるので,寝室の冷房を切って,廊下の冷房を利用する(間接冷房)なども一考です。

(2)蚊やハエなどへの対策に注意が必要です。サウジアラビアには蚊やハエをはじめとする羽虫がたくさんいて,マラリアやデング熱などさまざまな感染症の原因となりえます。また,砂漠地域に足を運ぶ場合には,サソリや蛇に咬まれないように長袖,長ズボン,靴を着用し,岩場,ブッシュなどでは注意してください。

(3)野生動物や家畜,ペットには極力,近づかないように注意しましょう。特に,ラクダを感染源とする中東呼吸器症候群は致死率も高く,非常に危険です。野生であっても家畜であっても感染源となりえます。また,アルクルマ出血熱などの人獣共通感染症も存在します。

(4)水道水は飲用可能の基準を満たしていますが,硬水でカルシウムやマグネシウムなどが多く,腹痛や下痢を起こす可能性があります。通常はミネラルウオーターの使用が推奨されます。

(5)春・秋を中心にしばしば猛烈な砂嵐が発生します。砂塵の粒は非常に細かく,無意識のうちに吸い込んでしまい,呼吸器疾患やアレルギー性疾患の原因となります。砂嵐発生時の不要不急な外出は避け,マスクの着用等が推奨されます。

(6)日差しは非常に強烈で,紫外線によって皮膚や眼球等に障害を起こすことがあります。極力肌の露出を少なくし,サングラスや日焼け止めクリームなどの使用が推奨されます。

(7)世界各国から200万人以上の巡礼者を迎える大巡礼の時期には,他地域からの感染症の持ち込みにより,しばしば髄膜炎菌性髄膜炎などが流行することがあるので,特にこの時期は巡礼者などが大勢集まる場所に行くのは避けたほうが無難です。

(8)道路は非常に自動車が多く,しばしば大渋滞となります。加えて交通マナーが劣悪で,時速150キロメートル以上の超高速車や強引な割り込み車が後を絶たず,交通事故は日常茶飯事です。自動車の運転時,乗車時は常に細心の注意が必要です。

(9)厳しい気候に加えて,日常生活上制約の多いサウジアラビアでは,人によっては強いストレスを感じます。中長期滞在者は定期的に国外旅行をするなどリフレッシュや休養が強く推奨されます。とりわけ制約の多い女性にとっては,積極的なストレス解消が不可欠となります。

7 予防接種(ワクチン接種機関を含む)

 現地のワクチン接種医療機関等についてはこちら(PDF)別ウィンドウで開く

(1)赴任時必要な予防接種

 サウジアラビア入国のために接種が必要なワクチンはありません。感染のリスクから,赴任する方々には,成人はA型肝炎,B型肝炎,破傷風の予防接種を,小児では日本の定期接種の他に,A型肝炎 B型肝炎をまずは推奨します。当地で感染のリスクがある髄膜炎菌性髄膜炎,腸チフスも接種を推奨します。また,WHOでは狂犬病の低リスク地域とされますが,周辺を高リスク地域で囲まれており,都市部であっても野犬や野良猫を多く見かけることから,狂犬病ワクチンも検討してください。

(2)サウジアラビアの小児定期予防接種一覧

  初回 2回目 3回目 4回目 5回目
BCG 出生時        
ポリオ(IPV) 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月    
ポリオ(OPV) 6ヶ月 1歳 1歳6ヶ月 6歳  
DPT 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 1歳6ヶ月 6歳(DT)
麻疹 9ヶ月        
MMR 1歳 1歳6ヶ月 6歳    
A型肝炎 1歳6ヶ月 2歳      
B型肝炎 出生時 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月  
Hib 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 1歳6ヶ月  
水痘 1歳6ヶ月 6歳      
肺炎球菌 2ヶ月 4ヶ月 6ヶ月 1歳  
4価髄膜炎菌 9ヵ月 1歳      
ロタウイルス 2ヶ月 4ヶ月      

(注)ポリオは先に不活化ワクチン(IPV)を接種して,免疫の付いた後に経口生ワクチン(OPV)を接種します。

(3)

 学校へ入学・転入する際は上記ワクチンの接種証明が必要となることがあります。

8 病気になった場合(医療機関等)

(1)Dr. Soliman Fakeeh Hospital
所在地:Palestine Street,在ジッダ日本国総領事館から車で5分ほど。
電話:(012)-665-5000 (代表) FAX:(012)-660-8013
診療科目:全科(歯科を含む)
概要:613床の大規模私立総合病院です。日帰り手術から開胸・開頭手術などに加え生体肝移植手術といった先進医療まで行っています。24時間体制で診療する救急科は24床からなります。クレジットカード利用可能。
(2)International Medical Center
所在地:Hail通り,Ruwais Local Park横。
電話:(012)-650-9000 (代表) FAX:012-650-9001
診療科目:全科(歯科を含む)
概要:300床の中規模私立総合病院です。日帰り手術から開胸・開頭手術といった難易度の高い手術まで行っています。24時間体制で診療する救急科は18床からなり,交通事故などによる重傷外傷専門のトラウマチームも編成されています。クレジットカード利用可能。

9 その他の詳細情報入手先

(1)在サウジアラビア日本国大使館ホームページ:https://www.ksa.emb-japan.go.jp/別ウィンドウで開く

(2)在ジッダ日本総領事館ホームページ:https://www.jeddah.ksa.emb-japan.go.jp/j/index.htm別ウィンドウで開く

(3)サウジアラビア保健省ホームページ:https://www.moh.gov.sa/en/Pages/default.aspx別ウィンドウで開く

10 現地語・一口メモ

 前述の通り,日本人の利用が主に想定される私立病院では英語が一般的です。むしろ,アラビア語が通じにくいことも少なくありません。医療機関で役立つ英語表現として,世界の医療事情の冒頭ページの一口メモ「もしもの時の医療英語1&2」をご利用ください。


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