世界一周「何でもレポート」

領事シニアボランティアとは、体験の記

平成19年5月

在フランス大使館
占部重行

 商社マンとして主にアフリカとのビジネスを担当していた私は、定年を前に会社を早期退職し、外務省が発表し募集していた第1回領事シニアボランティアに応募。幸いに合格し委嘱契約で在フランス日本国大使館に派遣され、2003年12月から2006年11月まで領事シニアボランティアの領事相談員として3年間パリに勤務して帰国しました。
 まだこの耳慣れない領事シニアボランティアとはどんなものなのか、ご存知でない方も多いのではないかと思い少し紹介致しましょう。

 JICAのシニア海外ボランティア活動が新聞やテレビで時々報道されていますが、領事シニアボランティアはその外務省版とも言えるかもしれません。しかし、仕事の中身は当然ながらだいぶ違っています。

 領事シニアボランティアは、外務省改革の一環として在外公館の窓口・領事業務を向上させるために、海外で実務経験のある中高年の民間人を、在留邦人の多い国の公館に派遣している制度です。第1回領事シニアボランティアが配置された都市は、上海、香港、ソウル、マニラ、バンコック、シドニー、ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンとパリの10個所の在外公館(大使館・総領事館)でした。(第2回はロンドンがなくなり中国(北京)になっています)
 とかく「不親切」「対応が冷たい」と不評が根強い大使館の窓口・領事事務の改革・イメージ一新がその目指すところでした。

 2003年に創設されたこの制度に、公募で60代を中心に中高年581人の応募があったそうです。選考試験を経て、男性9名と女性1名(44歳~66歳)が採用され、先に述べた世界10個所の在外公館にこの10名が赴任しました。

 大使館(外務省)の仕事は、外交、政治、経済など国民と接する事の少ない業務が多く、何をしているのか理解されにくい面があります。しかし領事業務は、殆どが海外在留邦人や日本人旅行者と日々の接触を通して行われるだけに、国民の大使館(外務省)への評価は領事業務を以って決まるとも言われる程です。国民とともに歩む外交をめざすには、国民との接点の大きな領事業務がいかに大事であるかが指摘される所以です。
 海外の国民の安全を守り、保護し、利益を増進する為の海外での行政サービスになりますが、領事業務と言っても実に幅が広く、出生の届け出から、結婚・離婚届け、死亡届けまでおよそ人生の万般に係わりがあります。
 その他、旅券、戸籍・国籍、査証、各種書類の証明、援護・支援、日本人学校、在留届け、一般相談事項(医療生活事情、教育事情、人生相談等)から在外選挙の登録・投票に至るまで、正に日本人の冠婚葬祭(所謂、ゆりかごから墓場まで)に携わります。

 海外で暮らすとなると心配事や苦労は避けて通れません。言葉の問題、生活習慣の違いから起こるトラブルや不安、悩みは日本以上に厳しいものです。
 大使館は日本人が海外で危険な目にあったり、問題があるときに相談を受け、必要であれば保護、援護します。
 トラブルに巻き込まれた人や、悩みがある人から話を親身になって聞き、問題解決のきっかけやヒントを考え、元気づけ励ましのアドバイスを行うのは相談員の役目。問題を共有し、同じ立場で一緒に問題の解決に努める。国民感情に疎くなっていた外務省のお役人意識に、民間の普通の感覚と目線で在留者や旅行者に接し、応対する気軽な相談相手を目指しました。

 健全な常識の意識改革と実践が、国民に顔が向いたサービスとして、外務省改革に求められていたのだろうと考え受け止めました。
 その取り組みのお陰もあったのか、敷居が高く近寄りがたいとお叱りを受け、気持ちが内向きで外を向いていない、つまり肝心な国民を忘れ、外務省・大使館の都合で仕事をしていると指摘されていた苦情や批判に変わって、このところ窓口や電話での応対の言葉使いや態度が、親切で丁寧になったと暖かいコメントを頂くまでになってきたのは喜ばしい限りでした。

 これまでの企業人生、海外体験が領事相談を通して社会に還元でき、少しは人の為になると思えばやり甲斐がありました。その意味で領事シニアボランティアは外務省・大使館を通しての立派な社会貢献だと思います。
 シニアの世代になり自分の人生を語り、価値観を次の世代に伝え引き継ぐ事は意義あることです。シニアのアドバイスが生き方のヒントを与え、問題を抱えている人に、立ち直るきっかけを与えるかも知れません。領事シニアボランティア活動は社会への恩返しにもなるのです。
 世の中の役に立ち、人から感謝されるボランティア活動は、シニア世代の社会貢献の場でもあります。領事相談員をして、謙虚に人の話を聞き、誠実に接する事の大切さなど、まだまだ学び教えられることが多くある事を実感した毎日でもありました。
 人生のベテランである我々シニア世代、まだまだ元気に頑張りましょう。国民とともにある明日の外務省のためにも、領事シニアボランティアの活躍を期待してエールを!

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