外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 報道・広報 外務省員の声
外務省員の声

北米総領事便り


在マイアミ日本国総領事 島内 憲

2000年3月

島内総領事  前回の総領事便りでは、中南米出身者が人口の過半数を占め、事実上「中南米の首都」としての機能を果たしているマイアミの様子についてご報告しました。今回は、南フロリダのヒスパニック(中南米のスペイン語圏にルーツを持つ米国人)社会の特徴について、もう少し掘り下げて考えてみるとともに、「もう一つのフロリダ」(非ヒスパニックのフロリダ)をご紹介したいと思います。

1.ヒスパニック化する米国社会とフロリダ

 近年、米国では、ヒスパニック系の人口が急速に増大しています。数年以内には、アフリカ系米国人を抜いて最大のマイノリティー(少数民族)グループになり、2050年には、 全米国人の4人に1人は、ヒスパニック系になると言われています。中南米系の人口がそこまで増えたら、米国はどういう国になるのでしょうか。南フロリダの現状を観察していると50年後の米国の輪郭が浮かんでくるような気がします。そこで、フロリダのヒスパニック社会の特徴について少し述べてみたいと思います。
スペース・シャトルの打ち上げ(ケネディ宇宙センター。 中部フロリダ東海岸)」  その前に、米国全体のヒスパニック社会の状況をもう少し概観してみましょう 一言でヒスパニック系と言っても、様々な歴史、文化、人種構成などを持ついろいろな国の出身者から成り立っています。たとえば、カリフォルニアやテキサスではメキシコ系が圧倒的多数を占めています。ニューヨークでは、プエルトリコ系、ドミニカ系が多いといわれています。フロリダ、特にマイアミは、キューバ人が最大グループですが、ニカラグア、コロンビア、ベネズエラ等それ以外の幾つかの国の出身者がそれぞれ10万人単位のかなり大きなグループを形成していることがもうひとつの大きな特徴です。人口構成に多様性があるという意味で、フロリダのヒスパニック社会は、全米のヒスパニック社会の縮図になっているという面があります。
 米国でヒスパニック系が急増している背景としては、中南米諸国の政治経済状況、米国経済の好調がもちろんあるわけですが、これからは、米国に定着済みのヒスパニック系社会、特に彼らが集中する一部地域の「吸引力」がますます大きな要因になるといわれています。すなわち、米国の市民権を取った人々が次々と家族を呼び寄せるでしょうし、また、米国でよりよい生活を求めて、特に、スペイン語がよく通じ居心地のよい地域にひきつけられて、米国にやってくる中南米の人々が増えると見られます。
 マイアミでもこのような傾向が顕著であり、更なる「ヒスパニック化」が進んでいます。最近の調査によると、マイアミ・デード郡の総人口215万人中、ヒスパニック系はなんと60%に達しています。街では、英語よりスペイン語が聞こえてくることが多いですし、一部地区の町並みもなんとなく中南米的なところがあります。政治、経済、マスコミ等各界の指導層も中南米系(特にキューバ系)が多数を占めています。このためか、米国全体と異質な部分を持った自己完結性の強い社会を形成している面があります。こうしたヒスパニック化は、マイアミが中南米への「窓口」として機能する上では大きな利点になっていますが、一方で、これこそ、マイアミの真の国際化を阻む要因であるとか、マイアミをむしばむ「汚職のカルチャー」の原因であるといった厳しい見方をする人もいます。
・『広大なディズニー・ワールドへの入園ゲートオーランド)  また、最近では、米国内で、キューバ問題をめぐって、マイアミのキューバ人の「身勝手さ」を公然と批判する動きも出ています。すなわち、以前は、マイアミのキューバ人の対カストロ強硬姿勢は米国内の支持や理解を相当程度得ていましたが、東西冷戦が終了し、「キューバの脅威 」が消滅した現在では、このような強硬論は、一般米国民に対する説得力を持たなくなっています。むしろ彼らのデモ等の行動が交通渋滞を起こすなど一般市民に迷惑をかけたり、彼らの主張がキューバ人の特別扱いを求めるものと受け止められる場合には、厳しい世論の批判にさらされることが多くなっています。こういった状況変化の中で、ヒスパニック(特にキューバ)系の政治指導者は、従来以上に非ヒスパニック系(あるいは、非キューバ系)の声に耳を傾け、一般の米国人にわかりやすい政治を行うことを求められています。
 また、海外日系人社会と同様、米国のヒスパニック系も二世の世代までは、出身国の言語風習を守りますが、三世になると言葉のみならず価値観まで急速にアメリカ化し、ヒスパニック社会から離れる傾向が強まります。ちなみに、他の移民グループに比べ、ヒスパニック系の女性は、他のエスニックグループの男性と結婚する割合が高い(三世で57%)そうです。
 米国のヒスパニック化と同時に、ヒスパニック社会の「アメリカ化」も起きているわけです。 マイアミのキューバ人を中心とするヒスパニック系は経済面のみならず政治分野でも全米で有数の「ヒスパニック王国」を築きましたが、キューバ系の世代交代(及びこれに伴うキューバ問題に関する考え方の穏健化)、米国市民としての成熟、キューバ以外の中南米出身者の数と発言力の増大などにより、今、大きく変化しつつあります。今後のマイアミの動向は、米国・キューバ関係の文脈においてのみならず、米国全体のヒスパニック社会の将来を占う先行指標としても注目していいのではないかと思います。

2.「もうひとつ」のフロリダ

タンパ湾を突き抜けるSunshine Skyway Bridge(中部フロリダ西海岸)  マイアミがフロリダのすべてではありません。このことは、北に向かって車を1時間も走らせれば、すぐ気がつきます。マイアミの北隣は、フォート・ローダーデール(1960年代の人気映画「ボーイハント」に出てくるリゾート地)があるブラワード郡ですが、ここではスペイン語を話す人は少なく、街に中南米的な雰囲気は全くありません。その北側のパーム・ビーチ郡に入ると、さらに、ヒスパニック色が薄まり、完全にアングロ・アメリカの世界になります。マイアミから一歩外に出ると、もうそこには別のフロリダがあるのです。
 英語圏フロリダは非常に多様性に富んでいます。ジョージア、アラバマ両州に接する北部フロリダは、歴史、文化、言葉(強い南部訛)、人口構成などあらゆる面で、他の南部諸州と多くの共通点を持っています。いわゆるディープ・サウスの一部なのです 。ここの住民に言わせれば、北部こそ「本物のフロリダ」なのだそうです。事実、最近まで、州政治の主導権を握っていたのはこの地域です。
眩いばかりの白砂が続くクリアウォーター・ビーチ(中部フロリダ西海岸)  北部と南部の間に挟まれているのが、ディズニー・ワールドで有名なオーランドがある中部フロリダです。ここは、米国内からの移住者が多いのが特徴です。中部フロリダの西海岸はシカゴなど中西部の出身者が、東海岸は、ニューヨーク、ニューイングランドなど北東部からの移住者が多いと言われています。新しいアメリカを代表する地域の一つといえるでしょう。
 スペイン語圏のみならず多様な英語圏からなるフロリダをまとめていくのは容易ではなく、州全体としてのアイデンティティーも確立しているとはいえません。在マイアミ総領事館としても、三つの州(さらに、二つの国?)を相手に仕事をしているような面があり、戸惑いを感じることもあります。しかし、この多様性こそがフロリダの魅力ですし、将来、その活力の源泉になっていくような気がします。



BACK / FORWORD / 目次


外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省