外務省員の声

ジブチ便り
(第9話)「ラマダン・ローン!?」

在ジブチ日本国大使館 杉尾 透


 あるとき,ジブチ唯一の国営テレビ局で流れたCMに目が止まりました。一組の夫婦が,「貴方,ラマダン期間中に限り,年6%でお金貸してくれるらしいわよ」,「そうか,それはお得だ,早速借りに行かねば。」と話しています。ジブチのフランス系銀行のCMですが(注:イスラム系銀行では金利を取ることは禁じられています),なぜ,ラマダンにお金がいるのでしょうか?

 イスラム教ではラマダンの月(イスラム暦で9番目の月を指します)に,断食を行う習慣があるのはご存じかと思いますが,今年は8月10日から約一か月間がその断食月でした。ジブチの8月といえば,日中,最高気温50℃になる酷暑期です。大使館の運転手も朝から飲まず食わずで苦しそうです。

 イスラムの人たちは,何故そんな辛い思いをしてまで,断食をするのでしょうか? 地元の人に聞いてみました。「うーん,みんなが断食しているから」「自分への挑戦だよ」「普段怠けているから」。千差万別ですが,最も多い答えは「願掛け」です。日本人も願い事をするときに自分の好きなものを絶ったりしますが,似ていると思いませんか?

 ラマダンは,家族の絆を再確認する時期でもあります。一日の断食が終わる日没後は,どんなに忙しい人でも家に戻り,家族,親戚と食事を共にします。その後は買い物などに街中へ繰り出し,賑わいは夜更けまで続きます。ラマダンの月の終了時には,親族一同で大きな宴会を催し,大人も子どもも衣服を新調し,綺麗に装って外出します。この時期は,喜捨(注:裕福な人が貧しい人に寄付すること)も励行されます。つまり,ラマダンにはお金がかかるのです。このため,冒頭のような「ラマダン・ローン」なるものも登場するのです。

 とはいえ,色々な人がいます。ラマダン中のある日,レストランで昼食を取っていた時,食事を済ませたあるジブチ人と出くわしました。よく見ると,ジブチ外務省の若手事務官のJ 君です。彼はニヤッと笑って「誰にも言わないでくれよ」と言いながらその場を去っていきました。不躾ではありますが,そのような人もいることを知って,妙にホッとした私でした。

わかる!国際情勢メールマガジン第25号<2010年10月>より転載)



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