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外務省員の声

文化外交最前線
―第6号―

2004年8月1日
近藤誠一  
はじめに

言うまいと 思へど 今日の 暑さかな


という川柳が思い出される毎日です。

今月のテーマ:パブリック・ディプロマシー

<外務省の機構改革>

 8月1日付で、外務省の機構改革が実施されました。久しぶりの大きな改革です。私の文化交流部も、世論調査や外交政策の広報などを担当するユニットを合体させて、「広報文化交流部」になりました。

<パブリック・ディプロマシーとパラダイム・シフト>

 最近英米を中心にpublic diplomacyという言葉をよく耳にします。政策決定への市民の参加の増大、IT技術の急速な進歩、グローバリゼーションの進展などを背景に、外交の役割が、外国政府を相手にするだけではなく、相手国民に直接・間接に働きかけることによって自国の理解・イメージを向上させ、自国の政策の支持、自国民の海外での安全確保、世界の人材や投資の流入を通した社会・経済の活性化にまで拡大しているということです。そしてpublic diplomacyは外務省のみならず、地方自治体、民間交流団体、NGO、NPOなどさまざまな担い手が相互にネットワークをつくることによって、最も効果的に実施されるのです。

 組織や人間活動のあり方が、これまでのようにある個人や組織がトップに立つピラミッド型の統治機構ではなく、水平で平等なネットワーク型になっていくという、最近起こりつつある人間社会のパラダイム・シフトを表す典型的な例です。

 広報文化交流部の設置は、まさにこの世界的流れに添ったものと言えます。Public diplomacyという言葉は、60年代半ばのアメリカで始まった用語ですが、これにもぴったりの日本語がありません。対市民外交、世論外交、広報文化外交などいろいろ工夫しても、いずれも行動の主体に政府のみならず多くの担い手が「パブリック」を意識して加わるとの意味合いが出ないことが欠点です。私のポストの英語のタイトルはDirector-General for Public Diplomacyにしました。

<国際交流基金も変わる>

 国際交流基金は昨年10月1日に独立行政法人になりました。外務省が進めるpublic diplomacyの最良のパートナーとして、これまでに蓄えたエキスパティーズとさまざまな交流の担い手とのネットワークを生かして、国際文化交流の中心的役割を果たすことになります。基金も独法化を機会にいろいろな改革をしています。

 機構改革やエレガントなロゴの制定、そして特筆すべきは今般国民とのネットワークを深めるため、「JFサポーターズクラブ」という制度を始めたことです。外務省の機構改革と基金Japan Foundationの改革がそろって、いよいよ日本のpublic diplomacy の新しい幕開けです。

<ソフト・パワー>

 広報文化外交を論じるとき、目的を遂げるために必要なものとして必ず指摘されるのが、国のもつ理念や文化の魅力です。ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が1990年の論文で「ソフト・パワー」と定義づけたものです。軍事力や経済力などのハード・パワーに対する概念です。これもぴったりの日本語が見つかりません。理念・文化力ということでしょうか。

 ナイ教授は近著『ソフト・パワー』(2003年)の中で、ソフト・パワーの源泉となるものとして、文化、政治的価値、外交政策の3つを挙げています。アメリカのポップ・カルチャーの魅力、民主主義や人権尊重などの価値、そして外交政策の中身とやり方などが組み合わされて力を発揮するということです。

 しかし難しいのは、特定のソフト・パワーがいつも同じ効果をもつという訳ではないこと、そして軍事力のように政府がすべてを制御できないことです。効果は相手や状況に応じて変わり、また短期と長期でも影響が異なることがあります。アメリカのポップ・カルチャーはアジアの若者のあこがれですが、フランスの知識人には受けがよくありません。アメリカによる民主主義の宣伝は東独の民衆を動かしましたが、中東では少なくとも現時点では押しつけとして反米感情を醸成しています。

<日本のソフト・パワー>

 日本のソフト・パワーとは何かを考えるとき感じるのは、文化と理念と政策を明確に分かつことはできないということです。問題は、その国がソフト・パワーの源泉としてどのような基本的価値観をもっているか、文化・芸術の表現であれ、政府の政策であれ、国民の行動形態であれ、その価値観をどの程度うまく表現して効果的な「力」に変える能力があるかということに尽きるのではないでしょうか。

 さらにナイ教授はソフト・パワーとハード・パワーをひとつのスペクトラムの両端にある概念ととらえ、両者の間に明確な境はないとも述べています。賛成ですが、同時にハード・パワーの行使自体が、マイナスのソフト・パワーになるのも事実ではないでしょうか。日本が憲法第9条により軍事力を国際紛争解決の手段として行使しないことを誓ったこと、その経済力をODAによって行使するときも欧米のような注文や条件(コンディショナリティー)をあまりつけず、相手国の希望するプロジェクトを支援することなど、いわゆる「押しつけ」をしないこと自体が、日本についての良いイメージを与えたと思われるからです。

<ソフト・パワーの日米比較>

 この考えの裏にあるのは、日本は「第3号」、「第4号」で述べた「目に見えぬものの価値」、すなわち美意識、自然観、調和の精神、相手を敬う道徳心などをもち、それが武道、古典芸能のみならず、現代文化、日本人の行動様式、ODAや国連重視などの外交政策などの形を通して現れていること、それが徐々に、しかし着実に良い効果を生んでいるとの確信です。サマーワの自衛隊員も、イラク国民と共に汗を流すことで、ソフト・パワーを発揮しているとも言えます。日本の芸術の形態や、政策のサブスタンス自体ではなく、そこを貫く理念・思想が力の源泉となり、それがさまざまな経路を通して、「自然体で」世界に伝わっているということです。

 そしてアメリカは自由、民主主義、人種差別への真剣な態度などの価値観をもち、それゆえに多くの学生、アーチストを惹きつけ、自由と民主主義の拡大と冷戦の終了に貢献しました。しかし善意に基づいているとはいえ時として傲慢と思える説教をしたり、言動にギャップがあってダブル・スタンダードという批判を受けたり、単独(行動)主義的介入という「押しつけ」をしてしまうことで、折角のソフト・パワーの源泉を浪費してしまっていると思われるのです。アメリカ文化の形態や、政策のサブスタンス自体ではなく、その奥にある個人の自由の尊重、民主主義という理念が力の源泉であり、それらの使い方、伝え方が時として相手に否定的な受けとられ方をして、その力を減じてしまっているということです。

<再び西欧の普遍主義>

 ただしこれは非西欧からの見方であって、欧米の目から見れば、国際体制から便益を受けた日本が、絶対的価値である民主主義拡大のために安全保障などで「応分の」貢献をしないことや、ミャンマーのような軍事体制に「甘い」態度をとることは好ましくないことであり、また中東が「正義」のために戦うアメリカを嫌うのはそれ自体「間違い」なのかも知れません。前回のテーマである、西欧の普遍主義と、東洋の多様主義(とでも言うべきもの)に関係がありそうな気がします。

今月の資料

 外務省(PDF)と基金の改革を示す資料を同封します。

今月の引用

米国のパブリック・ディプロマシー担当タットワイラー国務次官(当時)は今年2月4日、議会で日本の経済援助(ODA)についての広報文化政策が優れていることについて証言しました。
「the most glaring and vivid example to me is...the people in Egypt that they interviewed are aware that the Japanese built their opera house, but regrettably could not name something that we have done, and we all know the amount of assistance over many years that we have sent to Egypt」
今月の数字

 「第2号」で、外国人を受け入れる必要性とそれに対する日本人の抵抗感(ホスピタリティーの欠如)について、「第4号」で日本の総人口や総学生数に対する外国人の比率の低さについて触れました。ここでは最近の内閣府「外国人労働者の受入れに関する」世論調査(今年5月実施)から抜粋します。外国人労働者の増加を肌で感じている人はまだ半数程度ですが、増加への不安は強く、またそれは経済問題よりも、コミュニケーションの難しさに起因する社会問題に対して強いようです。
●外国人労働者が増加していると感じるか
   感じる  51.0%    感じない  45.6%
●外国人労働者問題への関心(()内は4年前の調査結果)
   関心がある  53.1% (48.8%)
   関心がない  45.7% (50.4%)
●外国人労働者に求めるもの
   日本語能力  35.2%  日本文化に対する理解  32.7%
   専門的な技術、技能、知識  19.7%
●単純労働者の受入れを認めない理由(複数回答)
   治安が悪化するおそれがある           74.1%
   地域社会の中でトラブルが多くなるおそれがある  49.3%
   日本人の雇用情勢に悪影響を与える        40.8%
今月のクイズ

: 6月28日―7月7日に、中国の蘇州でユネスコの世界遺産委員会が開催され、高句麗古墳(領有権を争う中国と北朝鮮が同時に申請)が認定されました。政治を越えた協力の裏には平山郁夫先生のお力がありました。その時日本の紀伊山地の霊場と参詣道も世界遺産に認定されました。では、日本のお城のうち、すでに世界遺産に登録されているものは次のどれでしょうか?
(正解は次号)

 1.大阪城  2.名古屋城  3.京都二条城  4.彦根城  5.姫路城

 前回のクイズ(米国における世論調査で、日、英、独、仏、中国の中で米国人が価値観を共有していると考える国の順位)の答は以下の通りです(数字は複数回答で回答したものの割合)。

1.英国(83%)、 2.日本(80%)、 3.ドイツ(74%)、4.フランス(56%)、 5.中国(44%)

後記

このニュース・レターは、広報文化交流部長が仕事を通じて感じたことを、個人の資格と責任で書いたものであり、外務省の公式見解ではありません。ご意見やコメントは以下のいずれかにお寄せください。

郵便:100-8919 千代田区霞ヶ関2-2-1 外務省広報文化交流部総合計画課
Fax:03-5501-8126
E-mail:seiichi.kondo@mofa.go.jp


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