わかる!国際情勢 トップページへ

Vol.97 2013年2月15日
原子力安全に関する福島閣僚会議~原子力安全の強化と福島の復興を

2012年12月15~17日,福島県郡山市で「原子力安全に関する福島閣僚会議」が開催され,原子力発電所の安全対策強化の必要性に関する活発な議論と共に,福島の“今”について改めて国際社会の理解を深めることができました。 今回は,2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故から1年9か月を経て開催されたこの会議の意義,また3日間の協議や会期中に行われた福島の現状と魅力を発信する様々なイベント等について紹介します。

「原子力安全に関する福島閣僚会議」開催

会場となったビッグパレットふくしま 日本政府と国際原子力機関(IAEA)の共催による「原子力安全に関する福島閣僚会議」は,国際的な原子力安全の強化に貢献することを主な目的として,福島県郡山市にあるコンベンションセンター「ビッグパレットふくしま」(郡山市)において開催されました。この会議には117か国及び13の国際機関が参加し,そのうち46の国・国際機関からは閣僚や国際機関の長を含むハイレベルが参加しました。原発事故から1年9か月経過した福島に,これだけの人々が集結して国際会議が開催されたということは,福島の復興と現状について国際社会の認識を深める上でも大きな意味があったといえます。この会議の運営には,福島県や県民のボランティアも多数参加し,多くの会議参加者から地元のホスピタリティに対して高い評価をいただきました。

 

開催の意義~「国際的な原子力安全の強化」と「福島の復興」

今回の会議には大きく分けて二つのテーマがありました。まず第一に「国際的な原子力安全の強化」です。甚大な被害をもたらした東京電力福島第一原発事故から,日本は原子力安全に関する多くの知見や教訓を得ましたが,会議では「二度と繰り返さない」という強い決意のもと,そうした知見や教訓を国際社会と共有していくことを目指しました。また,放射線から人や環境を守る防護措置や原子力安全の強化に関する国際社会の様々な取組みの進捗状況についても活発な議論が交わされました。そしてもう一つ,この会議の重要なテーマは,「福島の復興」です。日本政府は風評被害対策としてこれまでも復興の進捗や県産品の安全性を国際社会に発信してきましたが,世界各国の閣僚や専門家に直接,現状を見てもらうことで,福島の力強い復興をアピールすることができました。さらにこの会議をきっかけに,原発事故当事者である福島県と原子力安全を統括する国際機関であるIAEAとの協力関係が強化されたことも大きな成果です。

原子力安全に関する福島閣僚会議日程

各国の会議参加者が福島の“今”を体験

サイトツアー「薄磯海岸(いわき市)」 写真提供:福島県
福島ワークショップ写真(試食風景)

会議前日の12月14日には,各国からの会議参加者を対象としたサイトツアー(現場視察)が実施されました。このサイトツアーは福島県内視察(「浜通り(いわき市)」「中通り(福島市,郡山市)」「会津(会津若松市)」の3コース)のほか,除染活動や東電福島第一原発事故現場の視察も行われ,各コースとも多くの参加者を集めました。また,同じ日に,福島県産品の風評被害対策として「被災地産品の安全性に関する福島ワークショップ」も開催されました。このワークショップは福島の農家や食品検査専門家らによる食品検査や除染活動に関するプレゼンテーションのほか,日本産品の輸入規制を撤廃しているカナダと輸入規制を維持しているタイ及びマレーシアの政府関係者が参加して,日本産品の輸入に関する各国の問題意識や日本からの情報提供に関する活発な意見交換が行われました。ワークショップ後には,料理や日本酒など福島県産品の試飲・試食が行われ,各国からの参加者が福島の味覚を堪能しました。

 

各国の思いが結実した成果文書を発出

本会合の様子 写真提供:福島 12月15日に行われた本会合では,玄葉外務大臣(当時)とファディラ・ユソフ・マレーシア科学技術革新省副大臣が共同議長を務めました。外務大臣の主催者演説に続いて,各国閣僚らがそれぞれの立場から原子力安全に対する見解を述べ,最後にその内容と趣旨を盛り込んだ成果文書「原子力安全に関する福島閣僚会議共同議長声明」が発出されました。その中には,今回の参加者が福島の復興を実際に見聞できたことに対する感謝や,復興に取り組む福島県と県民に対する賞賛なども盛り込まれています。また,事故を起こした原発の安定化や放射線量の低減,除染活動の進展についても触れており,その上で国際社会の原子力安全への新たな決意(緊急時対応,科学的で客観的な情報に基づく対応の重要性など)が表明されました。なお,会期中,日本の関係省庁,福島県立医科大学,IAEAとカナダ等による多彩なサイドイベント,及び福島県,IAEA,日本の関係省庁による会議場内でのパネル展示も行われ,会議と並行して福島の復興と原子力安全に関する幅広い知見を得る貴重な機会を提供しました。

各国のエキスパートが集結した専門家会合

専門家会合の様子 写真提供:福島県閣僚級による本会合とともに会議の大きな柱となったのが,12月16,17両日に行われた専門家会合でした。この会合は「東電福島原発事故からの教訓」,「東電福島原発事故を踏まえた原子力安全の強化(緊急事態に係る準備及び対応を含む)」,「放射線からの人及び環境の防護」という3つのテーマのもと,各分野のエキスパートが意見交換を行い,最終的に話し合いの内容は議長サマリーとしてまとめられました。このうち「放射線からの人及び環境の防護」をテーマとする会合には,福島県の内堀副知事がパネリストとして出席し,放射線被害の実態や県の取組について紹介し,各国の専門家からの質問に答えました。

 

福島県とIAEAとの協力関係も本格始動

署名式の様子12月15日の会議初日には,佐藤福島県知事と天野IAEA事務局長による「東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた福島県とIAEAとの間の協力に関する覚書」への署名が行われました。今年から,IAEAと協力の下,福島県における放射線モニタリング及び除染,人の健康,並びに緊急事態の準備及び対応の分野におよぶ数々の具体的なプロジェクトが始動する予定です。また,外務省とIAEAとの取り決めによって福島県に「緊急時対応能力研修センター」を設置することも決まりました。このセンターは,原発事故などの緊急事態に対応できる国内外の専門家を養成することを目的としています。

福島県とIAEAとの間の協力に関する覚書の概要

「ふれあいの場となった福島県知事主催レセプション」

会議初日の15日夜には,会場で福島県知事主催のレセプションが開催されました。このレセプションでは料理や日本酒など県産品の試飲・試食のほか,福島の高校生による合唱や伝統芸能の披露,様々な復興支援イベントで活躍してきた“フラガール”による催し物も行われ,世界各国からの会議参加者が,福島の今を知り,福島の人々とふれ合う素晴らしい時間となりました。

写真提供:福島県

 

日本だからこそできる原子力安全への国際貢献を!

原子力安全は決して終わりのない取組です。今回の会議において日本は (1)引き続き事故の知見・教訓を共有 (2)IAEA安全基準や原子力安全関連条約等の原子力安全に関する規範構築に貢献 (3)IAEAの緊急時対応援助ネットワーク(RANET)の強化等,緊急時援助の分野においても貢献することを国際社会に約束しました。現在進められている東電福島第一原発での「廃炉」や県内の「除染」のプロセスは,これまで世界が経験したことがない未知の取組です。今後も日本はそのプロセスで得た知見をオープンに発信し,卓越した原子炉技術と放射線医療を背景に,原子力安全等の研究開発や健康影響評価の分野で積極的に国際社会に貢献していきます。

福島の再生に向けた大きな一歩

サイトツアーの様子(鶴ヶ城) 写真提供:福島県 本会合冒頭の主催者演説で「全力で被災者・被災地の再生に取り組む決意」「福島の再生なくして日本の再生なし」と外務大臣が述べたように,日本政府は「原子力安全に関する福島閣僚会議」開催を福島の復興と再生を加速させる大きな一歩としても位置付けていました。今回の会議で多くの参加者が,2011年3月に東日本大震災と東京電力福島第一原発事故に遭遇した福島でこれだけ大規模な国際会議が開催されたこと,そして地元福島の人々が力強く復興に取り組んでいる現況に賛嘆の声をあげました。しかし,依然として厳しい生活を余儀なくされている方々も多くおられます。これからも続く復興への道のりの中,今後も様々な形での国際社会からのサポートが必要であることも事実です。日本は福島県,そして国際社会と連携しながら,福島の再生に向け引き続き全力で取り組んでいきます。

わかる!国際情勢メールマガジン配信中!メルマガ登録希望の方はこちらからお申込みください。
ご意見ご感想もお待ちしています。 (外務省国内広報室)
このページのトップへ戻る
目次へ戻る