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Vol.94 2012年11月9日
中央アジア~アジアと欧州が出会う場所

2012年11月10日,東京において「中央アジア+日本」対話・第4回外相会合が開催されます。この会議は「中央アジア諸国」と「日本」の対話と協力の枠組みとして,2004年に立ち上げられました。なお,今年は中央アジア諸国と日本の外交関係樹立20周年という記念すべき年でもあります。そこで今回は,中央アジア地域と5か国それぞれのプロフィール,そして日本と中央アジア諸国の関わりについて解説します。

「中央アジア」とは?

「中央アジア」とは,ユーラシア大陸中央の内陸地域で,それぞれ旧ソ連の構成国だったウズベキスタンカザフスタンキルギスタジキスタントルクメニスタン の5つの国で構成されています。この地域は,古来からシルクロードを介して文化交流,物資の往来が盛んで,現在もロシア中国アフガニスタンイランなどと国境を接し,欧州とアジア,中東地域を結ぶ十字路として地政学的に重要な地域と考えられています。中央アジア5か国はいずれもイスラム教(スンニ派)国で,それぞれの国の言語が公用語となっていますが,旧ソ連の構成国だったこともあり,各国で都市部を中心にロシア語も広く通用します。また各国とも日本への関心が高く,外交関係樹立20周年を迎えた本年は,各国で様々な記念行事が開催されています。

中央アジア
 

豊富なエネルギー資源を有する国々

中央アジアは地政学的な重要性に加え,隣接するコーカサス地域とともに豊かなエネルギー資源(石油,天然ガス,ウラン)や鉱物資源(金,銀,銅,レアメタル等)に恵まれた地域でもあります。独立後20年を経て,こうした資源を背景に順調に経済成長を遂げている国から目立った産業がなく発展途上にある国まで多様化が進んでおり,地域協力によって地域全体の発展をめざすことが望まれています。カザフスタンやトルクメニスタンなどには欧州などへのエネルギー輸送ルートである原油,天然ガスのパイプラインが設置されており,この地域の安定と繁栄は国際エネルギー安全保障の観点からきわめて重要といえます。

ウズベキスタン~人々を魅了するシルクロードの要衝

紀元前からオアシス都市として栄えた古都「サマルカンド」

青色タイルに彩られ,別名「青の都」と呼ばれています

ウズベキスタンは,古来からシルクロードの要衝であり,多様な文化の交差点でした。8世紀以降はイスラム化が進み,14世紀後半にティムール帝国の中心として栄えます。イスラム文化が花開いた時代の面影は,今も青いタイルに彩られたモスク(イスラム寺院)が建つ古都サマルカンドのほか,ブハラ,ヒヴァ,シャフルサーブスといった世界遺産でうかがうことができます。また,画家の平山郁夫氏や小説家の井上靖氏などはウズベキスタンの風土を愛したことで知られており,平山氏は日本とウズベキスタンの芸術交流発展にも大きな役割を果たし,また井上氏の著書「遺跡の旅・シルクロード」はロシア語に翻訳され,ウズベキスタン国内で出版されています。ソ連から独立後,ウズベキスタンは経済管理を重視する「斬新主義」路線を歩み,旧ソ連諸国の中では独立後の生産性の低下が少なく,ここ5年は7~9%程度の堅実な経済成長を維持。綿花を中心とする農業のほか,金,ウラン,天然ガス,モリブデン等の鉱工業が主要産業となっていますが,今後は産業の高度化を図り,第一次産業主体の経済構造からの脱却を図ろうとしています。

カザフスタン~中央アジアで最も豊かな国

首都アスタナのシンボルタワー「バイテレク」

カザフスタンは,ソ連からの独立後,石油,天然ガス,ウランなど豊富なエネルギー資源によって,急速な経済発展を遂げ,一人あたりGDPが中央アジア5か国でもっとも大きい豊かな国です。しかし,2008年の世界金融危機や資源価格下落はカザフスタン経済にも大きな打撃となり,今後は天然資源依存型の経済からの脱却が課題となっています。外交政策では,中央アジア各国やロシアのほか,中国,米国,欧州ともバランスの取れた外交関係を維持し,地域機構を通じた活動にも積極的に参加。2010年には旧ソ連諸国で初めて欧州安全保障協力機構(OSCE)議長国に就任しました。1997年に首都がそれまでのアルマティから北方のアスタナに移されましたが,この首都建設に際して行われた国際コンペでは日本の故黒川紀章氏が優勝し,JICA(国際協力機構)の支援のもと新首都建設のマスタープランが作成されました。2005年にオープンしたアスタナ空港ターミナルビルも黒川氏の設計によるものです。

 

キルギス~民主化へ大きく前進する親日国

「第1回キルギス国際マラソン大会」スタート地点のようす

国土の90%を山岳地帯が占め,農業・牧畜業を主要産業とする自然豊かなキルギス。中でも琵琶湖の約9倍の面積を有し,透明度はバイカル湖に次いで世界第2位,湖面標高も海抜1,606mで世界第2位のイシク・クリ湖は,風光明媚な避暑地として観光客の人気を集めています。また,水資源が豊富なため,水力発電の潜在力が有望視されています。2010年に,親族支配や汚職に対する国民の不満から当時の大統領が追放され野党勢力による暫定政府が樹立,その後オトゥンエヴァ移行期大統領のもとで,議会選挙(2010年)と大統領選挙(2011年)が行われました。現在はアタムバエフ大統領のもとで民主化推進へ大きく踏み出しています。外交政策は米国,ロシア,中国とのバランス外交を標榜しており,1998年,旧ソ連諸国で初めてWTO(世界貿易機関)に加盟しました。日本人に似た容貌のキルギスの人々はとても親日的で,今年5月に開催された第1回キルギス国際マラソン大会には東日本大震災の被災地から招待された選手団を含む50名の日本人選手が招待されました。

タジキスタン~風光明媚な山岳と豊かな水の国

タジキスタンの美しい湖「イスカンダル・クル」

タジキスタンはキルギスと同様に国土の約9割を山岳地帯が占める山岳国で,世界有数の大氷河のほか大小合わせて1,300以上の湖があり,河川の総延長は28,500km(地球の円周の7割)。こうした豊かな水の恵みを活かし,国内では水力発電が盛んで,1979年から稼働するヌレク・ダムの堤防は土石積みの堤防としては世界一の300mの高さを誇っています。タジキスタンの人口の約8割を占めるのはタジク系民族ですが,その祖先のひとつとされるソグド人は,かつてシルクロードの商人であり,文化の伝播者として活躍したと言われています。現在のタジキスタンの主要産業は綿花栽培を中心とする農業およびアルミニウム産業で,旧ソ連の共和国の中では豊かとはいえませんが,IMF(国際通貨基金)世界銀行などの支援を受けながら経済発展・開発を進めています。経済および軍事面ではロシアとの関係が強いのですが,米国もアフガニスタン復興の見地から,アフガニスタンと長い国境を接するタジキスタンとの外交関係を重視。また,アフガニスタンからの麻薬,武器,テロリストなどの流入を防ぐ「防波堤」として,この地域の安定化は国際社会の大きな関心事項となっています。

 

トルクメニスタン~新しい国づくりがはじまった名馬の国

首都アシガバットの夜景 中央アジア最大のメルブ遺跡など,数多くの遺跡が存在するトルクメニスタン。古来より名馬アハルテケを産出する国として知られてきましたが,現在は豊富な天然ガス(世界第4位)や石油の輸出と綿花生産を基盤に,着実な経済成長を遂げています。2008年には東南部マルィ州の天然ガス田に対する国際調査の結果,世界有数の埋蔵量評価(4兆m³~14兆m³)が示され,世界的に大きな注目を集めました。また,天然ガスルートの多角化を図っていくために,TAPI(トルクメニスタン-アフガニスタン-パキスタン-インド)パイプラインや,カスピ海を通じて欧州に至る輸出ルートが検討されており,国際的なエネルギー安全保障の観点からもこの国の重要性が高まっています。「積極的中立政策」という独自の外交方針を掲げるトルクメニスタンは,国連以外の多国間機構等には参加せず,二国間関係に基づく外交を展開しています。ソ連時代からの統制経済的な性格が強いため,外国企業の貿易投資環境の整備が今後の課題と言えるでしょう。また,2012年2月に97%という圧倒的多数の得票率で再選されたベルディムハメドフ大統領は開放路線を歩んでおり,教育分野の重視やインターネットの普及など新しい政策を進めています。

「中央アジア+日本」対話

「中央アジア+日本」対話の歩み
地域協力のための5本柱

2004年8月,中央アジア諸国との対話と協力のプラットフォームとなるべく立ち上げられたのが「中央アジア+日本」対話です。この対話枠組は地域協力があまり進んでいなかった中央アジア5か国の政治対話,人的交流,経済協力などを通じた関係強化を図るために,日本がバックアップして開催しているもので, 2004年の第1回外相会合はカザフスタンのアスタナで開催されました。中央アジアが「開かれた地域」として安定・発展していくこと,域内国が共通の課題に共同で対処することが重要であるとの考えから,「中央アジア+日本」対話において,日本はあくまでも「触媒」としての役割に徹しています。2012年11月には東京で第4回外相会合開催され,地域協力のための5本柱(図参照)について話し合われる予定です。

 

ますます深まる日本と「中央アジア」との絆

日本にとって中央アジア諸国は石油,天然ガス,ウランなどのエネルギー資源,レアメタルなどの鉱物資源供給国であるばかりでなく,国連安保理改革など国際場裡でのかけがえのないパートナーです。また2011年の東日本大震災後には,中央アジア各国からの温かい支援がさまざまなかたちで届いています。2012年,5か国との国交樹立20周年,そして第4回「中央アジア+日本」対話外相会合を経て,今後,政府から民間レベルまでさまざまなかたちで日本と中央アジアの国々との結びつきを深めていきます。

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