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Vol.90 2012年8月1日
世界防災閣僚会議 in 東北~「21世紀型の防災」を世界へ

2012年7月3日,4日の2日間,東北3県を舞台に「世界防災閣僚会議 in 東北」が開催されました。世界に衝撃を与えた東日本大震災の被災地を舞台に,各国の閣僚級が「21世紀型の防災」について話し合われたこの国際会議の模様は,マスメディア等でも大きく報道されました。今回は「世界防災閣僚会議 in 東北」開催の経緯と成果,そして大規模自然災害の防災をめぐって,これから日本と世界がどのように取り組んでいくかについて紹介します。

2012年7月「世界防災閣僚会議 in 東北」開催

「世界防災閣僚会議 in 東北」開催地
会議風景(パネル討論の様子)

「世界の英知を被災地に,被災地の教訓を世界に」をスローガンに開催された「世界防災閣僚会議 in 東北」。全体会合は仙台市(宮城県)で行われ,そのほか一関市(岩手県),石巻市(宮城県),福島市(福島県)で,テーマごとの分科会が開催されました。近年,スマトラ沖大地震・津波災害(2004年)や東日本大震災などの発生により,多数の人命を脅かし,国際経済への影響も大きい大規模自然災害に対する防災への国際的な関心が高まっています。日本が呼びかけた今回の会議に関しても,ニュージーランドインドネシアスリランカといった大規模自然災害の被災国をはじめ,63か国もの閣僚級を含む代表,14の国際機関の代表,そのほか国際・国内NGOや民間団体代表など約500人が参加しました。また,全体会合が行われた仙台市では,会議と並行して産・官・学・民による様々なサイドイベントが同時開催されました。

 
 

東日本大震災で得た知見や経験を世界と共有する端緒に

この「世界防災閣僚会議 in 東北」は,東日本大震災直後に松本外務大臣(当時)が,日本で防災に関する国際会議を開催する意志を表明し,そして2011年5月に開催された国連主催の「第3回防災グローバル・プラットフォーム会合」に出席した東内閣府副大臣(当時)が,参加国に対して防災に関するハイレベル会議開催を日本政府で検討していることを発表し,多くの賛同を得て今回の開催に至りました。開会式に駆けつけた野田総理は,「この会議が大震災で得た知見や教訓を国際社会と共有していく大きな端緒となる」と挨拶し,被災国日本が防災面での国際貢献を積極的に行っていく決意を力強く表明しました。

 

生々しい地震・津波被災体験が語られた基調報告

開会式に続く基調報告では,まず平野復興大臣が東日本大震災後の復興に向けた取組の現状を報告。続いてスリランカのピーリス外務大臣はスマトラ沖大地震とインド洋津波について,ニュージーランドのブラウンリー震災復興大臣は東日本大震災の直前に起きたクライストチャーチでの地震について,それぞれの経験とそこから得た教訓について報告。さらに東日本大震災の被災者代表として,宮城県女川町立女川第一中学校2年生2名が登壇。自らの被災体験と社会科の授業を通じて生徒みんなで考えてきた津波対策への提言を行い,世界から集まった人々に深い感動を与え,大きな拍手が送られました。

「世界防災閣僚会議 in 東北」開催日程
 

世界の人々の心を動かした女川町の中学生の体験と提言

基調報告で発表する女川町立女川第一中学校の生徒

人口約1万人の8%以上の人命が奪われた宮城県女川町。同町の女川第一中学校の生徒2人が基調講演で登壇しました。同中学校では多くの生徒が親族や友人などを失っています。2人の報告では現在も行方不明である曾祖父母,いとこ2人への思いなどが語られ,辛い震災体験を通じて得た「勇気」について語られました。そして過酷な被災生活を送る中,中学生たちが社会科授業を通して震災体験について考え,話し合ってきたことを語り,授業を通じて導き出された,「三陸の豊かな海の恵みに支えられた暮らしを1000年後まで残す」ために,「ぜひ実現したいこと」を3つ発表しました。その3つとは,「互いの絆を深めること」,「高台へ避難できる町づくり」,そして大震災の出来事を「記録に残す」こと。日本のメディア(TV,新聞)でも大きく取りあげられた2人の報告は,外務省ウェブサイト内にも掲載されています。

 

「21世紀型の防災」とは?(1)~災害に強い社会と人づくり

会合議長を務めた玄葉外務大臣

2日間にわたる全体会合は,「東日本大震災及び最近の大規模自然災害の経験の共有」を共通テーマとして,仙台市青葉区「仙台国際センター」にて開催されました。この会場は,震災直後に被災した外国人への情報提供を担った「災害多言語支援センター」が設置されていた場所でもあります。玄葉外務大臣とヘレン・クラーク国連開発計画(UNDP)総裁の議事進行により,全体会合1日目は,グローバルからローカルまで,さまざまな場面で「防災」を重要課題と位置づける「防災の主流化」と,大規模災害からの迅速な復旧が可能となる「強靱な社会の構築」をテーマとして話し合われました。また,議論の中では強靱な社会の土台となる「人間の安全保障」の重要性,特に子ども,高齢者,病人,障がい者など弱者への配慮の大切さが強調されました。

 
 

「21世紀型の防災」とは?(2)~多様性と連携の新しい防災へ

会議2日目の午前中には,各国の代表らが東日本大震災被災地を視察。視察先は分科会会場に近い岩手県平泉町の中尊寺,宮城県石巻市の万石浦や石巻漁港,そして福島県伊達市にある民間工場の3か所で,参加者はあらためて日本の力強い復興への取組に感銘を受けている様子でした。その後,一関市で行われた分科会では,「予防,減災」をテーマにハードとソフトを組み合わせた「防災の最大化」や防災教育についての議論が行われました。石巻市では「緊急対応,復旧・復興」をテーマに,政府,地方自治体,民間など幅広い関係者の垣根を越えた連携や早期復旧の課題が議論されました。また,福島市では「気候変動・都市化など」をテーマに,ゲリラ豪雨や干ばつといった近年クローズアップされてきた問題や人口が集中する都市部でのインフラや衛生の課題など,新たな災害リスクへの対処について,きわめて真摯な議論が交わされました。

「21世紀型の防災」
一関分科会視察(平泉・中尊寺)


石巻分科会視察(万石浦)
 

ポスト「MDGs」に防災分野の取組を

福島分科会視察(富士通アイソテック工場)

2日目の午後には,「防災の新たな国際行動枠組みに求められることとは」と題する全体会合も開催。この会議では,2015年に防災分野の国際的指針である「兵庫行動枠組」が期限を迎えることから,「ポスト兵庫行動枠組」の策定に向けた議論が行われました。また,同じく2015年にミレニアム開発目標(MDGs)が達成期限を迎えるにあたって,参加国は2015年以降の国際開発目標(ポストMDGs)の策定に際しては明確に防災を位置づけるべきとの認識で一致しました。今回の会議はこうしたグローバルな「防災の主流化」推進への大きな第一歩となりました。

 
 

日本の主導で新たな国際行動枠組策定へ

「世界防災閣僚会議 in 東北」において,日本は国際社会の防災分野の取組を主導していく決意の表明として,まず2013年から3年間で30億ドルの資金援助を表明しました。これにより日本の先進的な防災技術を世界各国で役立て,グローバルな防災力強化に一層貢献していくことになります。同時に,日本は2015年開催予定の「第3回国連防災会議」のホスト国として改めて名乗りをあげ,多くの国々から支持を得ることができました。この第3回国連防災会議では,前述した「ポスト兵庫行動枠組」についての議論と策定が行われる予定です。

同時開催された多彩なサイドイベント

サイドイベントには,関係省庁,国際機関,自治体のほか民間企業,市民団体,大学など,産・官・学・民あわせて50以上の団体が参加。ブース,展示,講演会/ワークショップの3形態で多彩な催しが行われました。サイドイベントには誰もが参加可能で,2日間での来場者は実に1,400人以上。全体会合の議事進行を担当した玄葉外務大臣とクラークUNDP総裁も会場を訪れ,被災地での飲料水供給に役立つ日本企業による汚水浄化剤の実演を興味深く視察しました。

サイドイベントの模様サイドイベントの模様
 

国際社会への恩返しとして,防災分野での国際貢献を

開会式にてスピーチを行う野田総理(写真提供:内閣広報室)

野田総理は開会式のスピーチにおいて,「大震災からの復興に懸命に取り組むことは,我が国が内向きに閉じこもってしまうことを意味するものではありません。各国から寄せられた支援や励ましに『恩返し』をする意味でも,我が国は,これからも,国際社会に貢献する道を模索してまいります」と述べました。参加国による真摯で前向きな議論を通じ,「21世紀型の防災」を被災地である東北から世界に向けて発信した「世界防災閣僚会議 in 東北」。日本はその成果を「ポスト兵庫行動枠組」や「ポストMDGs」につなげていくために,今後,国際社会で主導的な役割を果たすことを世界の国々から期待されています。

 
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