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Vol.83 2012年2月10日
国連気候変動枠組条約 COP17~ポスト京都議定書へ確かな前進

2011年11月28日から12月11日まで,南アフリカ・ダーバンで国連気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)が開催されました。参加国の利害をめぐって議論が紛糾し,会期が1日半延長するなどしましたが,各国の粘り強い交渉の末,全ての主要国が参加する新たな法的な国際枠組みの構築に向けた大きな前進を得ることができました。今回はCOP17の意義と議論の経緯,今後の課題について解説します。

南アフリカ・ダーバン開催「COP17」が目指したこと

COP17会場内の様子これまで,国際社会は「京都議定書」という法的枠組みによって気候変動問題に取り組んできました。しかし,この京都議定書は2012年末で約束期間が終了します。また,京都議定書では,世界全体の排出量の約24%をしめる中国を含む開発途上国に温室効果ガス排出量削減義務がなく,また同じく約18%を占める米国が参加していないため,温室効果ガス排出削減に向けた取り組みとしては不十分な点があると指摘されていました。これまで国際社会は2009年のCOP15「コペンハーゲン合意」,2010年のCOP16「カンクン合意」と“ポスト京都議定書”の枠組みの構築に向けて,各国の利害の対立を越えて一歩一歩進んできました。今回,南アフリカ・ダーバンで開催された「COP17」でも, 2013年以降の新たな法的枠組みをどうするかが会議の最大の焦点でした。さらに前回の「カンクン合意」を着実に実施するためのさまざまな決定も会議の重要なテーマとなりました。

 

異例の会期延長の末,大きな前進となる合意

COP17 4角成果
将来の法的枠組に向け,前進

今回のCOP17には,日本からは細野環境大臣のほか中野外務政務官,北神経産政務官らが出席。前半は条約作業部会など各国の事務レベルの交渉が行われ,12月6日より閣僚級での協議がスタートしました。従来のCOPと同じく先進国と途上国との対立や,先進国間ないし途上国間でも意見の相違が生まれ,議論は紛糾し,異例の会期延長となりましたが,各国とも最終日ぎりぎりまで粘り強い交渉を続けました。その結果,米国や中国を含むすべての主要国が参加する公平かつ実効性のある新たな国際枠組みの構築に向け,そこに至る道筋が示される等,大きな前進を得ることができました。

 

「COP17」の成果(1)~“ポスト京都議定書”への道筋が明確に

COP17のもっとも大きな一つ成果といえるのが,将来の枠組みに関し,法的文書を作成するための新しいプロセスである「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」が設置されたことでした。この作業部会では,遅くとも2015年中に作業を終え,2020年に新しい枠組みを発効させ,実効に移すための議論がなされます。新しい作業部会の立ち上げは,日本が今次会合中に行った提案であり,日本の建設的な貢献が評価された結果です。

ポスト京都議定書への工程表
 
 

「COP17」の成果(2)~京都議定書第二約束期間設定に向けた合意

交渉が進まないことに対するNGOのデモ活動現在の京都議定書は2012年末で第一約束期間を終えます。そこでCOP17では2013年以降の京都議定書第二約束期間設定に関する合意もなされました。他方,すべての国が参加しない京都議定書は公平性,実効性に問題を抱えているとの観点から,第二約束期間には参加しないとの日本の立場に変わりはなくCOP17では,同様に不参加を表明していたロシアカナダと共に日本は第二約束期間には参加しないことになり,成果文書にも日本の立場が反映されています。

 

「COP17」の成果(3)~「緑の気候基金」とカンクン合意の着実な実施

シエラレオネでの日本の水プロジェクトCOP16で採択された「カンクン合意」の実施に関しても,着実な成果が得られました。今回のCOP17では各国の温暖化ガス排出削減対策のMRV(測定・報告・検証)に関するガイドラインの策定,途上国支援のための「緑の気候基金」の基本設計及び適応委員会の活動内容などカンクン合意の主要な要素につき進展させることができました。今後,気候変動対策を推進していくための国際社会の協力体制が整いつつあります。

 

世界における低炭素成長に向けた日本の提言

2011年12月7日,COP17閣僚級会合で演説する細野環境大臣(環境省ホームページより)
COP17期間中の日本の脆弱国支援に関するサイドイベント

細野環境大臣は演説を通して,東日本大震災という国難にあっても,日本が気候変動問題に積極的に取り組む姿勢を世界にアピールするとともに,新しいエネルギー・ベストミックス戦略計画に向けた検討と今後の温暖化対策の検討を表裏一体で進めることを説明しました。また,日本は気候変動対策に効果的に取り組むために,先進国,途上国が連携して,技術,市場及び資金を総動員し官民一体となって世界低炭素成長を実現すべきとの考えのもと「世界低炭素成長ビジョン~日本の提言」の発表や「アフリカ・グリーン成長戦略」の骨子案発表などを行い,日本独自のイニシアティブを打ち出しました。さらに,2012年までの途上国支援として表明した150億ドルのうち,すでに官民あわせて125億ドル(2011年10月末時点)以上の支援を実施しており,今後も国際交渉の進展状況及び国内の復興状況も踏まえ,着実に実施していくことを表明しました。

 
 

日本が提案する新たな地域協力と二国間市場メカニズム

世界のCO2排出量に占めるEAS諸国の割合(2009年) 世界経済の成長センターであり,温室効果ガスを多く排出する国が集まる東アジア。日本は,東アジアサミット(EAS)を活用し,経済成長と温暖化対策の両立を図る地域協力の枠組みとして「東アジア低炭素成長パートナーシップ構想」を提案し,2011年11月に開催されたEASにおいて各国首脳の賛同を得ました。現在,2012年4月に日本で開催する各国政府関係者と有識者等による国際会議に向けた準備が進んでいます。また,日本の低炭素技術等を通じた途上国における温室効果ガスの排出削減・吸収への貢献を適切に評価し,日本の削減量として認定する「二国間オフセット・クレジット制度」も日本は提案しています。この制度は途上国における排出削減と経済成長の両立に繋がる効果的な仕組みとして,京都議定書に基づくCDM(クリーン開発メカニズム)を補完するもので,現在インドインドネシアベトナムカンボジアなどの国々と協議を行っているところです。

 

2012年カタール・ドーハ開催のCOP18に向けて

COP17後,日本がとるべき今後の対応2012年のCOP18は,カタール・ドーハで開催されます。今後,日本は「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」において,すべての主要国が参加する法的な枠組みの構築に向けた交渉への積極的貢献を果たすと共に,震災後のエネルギー政策の検討を踏まえた国内の温室効果ガス排出量削減努力を引き続き実施していかなければなりません。また,前述のカンクン合意の着実な実施をはじめ,日本のイニシアティブによる途上国支援,二国間・地域協力の推進を通じて,国際社会と連携しながら地球規模の気候変動問題に多面的な貢献をしていきます。COP18に向けて,今,日本と世界の一層の努力が求められています。

 
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