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Vol.8 2008年9月25日
ICC(国際刑事裁判所)~注目されるその役割

初めての常設の国際刑事法廷として国際的な注目を集めているICC(国際刑事裁判所)。日本においても、2007年の正式加盟と最大の財政貢献、同年の齋賀富美子(さいがふみこ)人権担当大使のICC裁判官就任など、近年ICCに対する積極的な姿勢が目立ちます。ICCの成り立ちと役割について解説します。

ICCの起源

ICC(International Criminal Court=国際刑事裁判所)とは、国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した個人を処罰するために設立された常設の国際刑事法廷であり、裁判所はオランダのハーグに置かれています。第二次世界大戦での経験を踏まえ、1947年、国連総会は、重大な国際犯罪を裁く裁判所を設立するための、裁判所規程の草案を作ることを国際法委員会(ILC)に要請する決議を採択し、これが後のICC設立につながることになります。

 

冷戦後、ICCローマ規程が完成

しかし、東西冷戦中は、自国民が裁かれる可能性を危惧した各国の間で積極的な動きは見られませんでした。1990年代になって、旧ユーゴでの戦闘状態が激化し、大量虐殺などが行われた状況をふまえ、1992年、国連総会がILCに対して、改めて優先事項として国際刑事裁判所規程の草案作成に取り組むことを要請。その後、安保理決議による旧ユーゴ国際刑事裁判所やルワンダ国際刑事裁判所の設置の後、1998年、ローマ外交会議における交渉の結果、ついにICCを設立するためのICCローマ規程が採択されました。2002年7月1日に60番目の国が加盟したことによりICCローマ規程が発効し、ICCは活動を開始しました。

ICC加盟国の推移と地域別内訳
 
 

ICCが扱うのは、個人が犯した国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪

ICCが扱う犯罪には国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪、すなわち「集団殺害犯罪」「人道に対する犯罪」「戦争犯罪」「侵略犯罪(未定義)」があります。これらの罪を犯した個人を、国際法に基づいて訴追・処罰することにより、犯罪の撲滅と予防を目指し、世界の平和と安全に貢献することがICCの目的です。ICCローマ規程は、それを実現するために裁判の仕組みなどを詳細に定めています。よく、国連の主要な司法機関であるICJ(International Court of Justice=国際司法裁判所)との違いが挙げられますが、ICCが個人の犯罪を扱うのに対し、ICJの当事者は「国家のみ」、つまり国家間の紛争を扱うという部分に、大きな違いがあります。

ICCの機能
 

役割は「補完」

ただし、ICCの役割は、あくまで各国の国内刑事司法制度を「補完するもの」。関係国が被疑者の捜査・訴追を行う能力や意思がない場合のみ、管轄権が認められます。

 

管轄権が発生するケース

ICCに事態を付託できるのは、締約国又は国連安保理に限られますが、ICC検察官が自らの考えにより捜査を開始することもできます。ある事態が付託された場合、犯罪行為の実行地国又は被疑者の国籍国のどちらかが締約国ならば、ICCに管轄権が発生します。また、実行地国と国籍国、両者ともICCに加盟していないときでも、どちらか一方がICCの管轄権を認めれば、これを行使することができます。このほかに、国連安保理が憲章第7章に基づいた決議で付託した場合は、ICCの管轄権が認められます。

 

捜査協力は加盟国の義務

ICCの捜査が進み、被疑者の逮捕、引渡し、証拠の提出などの段階になったとき、その捜査協力を行うのは、加盟国の義務になります。そのため、例えば被疑者が非加盟国に逃亡してしまうと、逃亡先の国での捜査協力が得られないため逮捕できず、結局法廷を開くことができない、という事態も発生してしまうのです。今後ICCの実効性を高めていくために、加盟国を増やすことが必須条件とされるのは、この「ICCと締約国との間の協力義務」によるところが大きいと言えるでしょう。

 
 

付託されている事態~ウガンダ、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、スーダン

ICCでは現在、ウガンダ、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、スーダン(ダルフール)の4カ国おいて、捜査等の活動を開始しています。ウガンダでは反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」が行ったとされる、拷問や児童徴兵、強姦等の重大な人権侵害について。コンゴ民主共和国では、民兵組織の元指導者等による児童徴兵や無差別攻撃による戦争犯罪や人道に対する罪が行われたとされる民族紛争について。中央アフリカ共和国では、政府と反政府勢力との間に起こった、文民の殺害、強姦、略奪等が行われたとされる武力紛争について。それぞれ捜査の対象となっています。

現在のICCの活動
 

スーダン・バシール大統領の逮捕状請求

スーダン西部のダルフール地方では、アラブ系民兵と非アラブ系住民との間での民族紛争が2002年頃から激化し、大規模殺戮、組織的強姦、住宅破壊等が行われ、国連の推計によいれば20万人の死者と200万人難民、国内避難民数が発生しているとされています。2005年、国連安保理はこの事態をICCに付託する旨の決議を採択。07年、ICCは2名の被疑者を特定し、逮捕状を発付しました。翌08年7月には、ICC検察官はスーダンのバシール大統領に対する逮捕状を請求。ICC設立以来初めてとなる、現職の国家元首に対する逮捕状の請求に、国際社会の注目が集まる中、今後ICC裁判部が逮捕状を発付するかについて決定をすることになります。

 

ICCの課題~加盟国の増加と普遍性の確保

>2008年8月現在、106カ国がICCに加盟しています。日本は07年10月に世界で105番目、アジアで13番目の加盟国となりました。加盟国を地域別に見ると、ヨーロッパが圧倒的に多く、次いでアフリカ諸国の加盟が増えています。しかし米国、中国、ロシア、インド等の大国は未だ非加盟であり、アジア地域の加盟国数も伸び悩んでいます。

 

非加盟の理由

加盟をしない理由は各国さまざまですが、例えば海外に自国民の兵士を多数派遣している国の場合、自国民が国外の法廷で裁かれることへの懸念から加盟を見合わせている、とも言われています。しかしながら、ICCの真の実効性を高めるためには、国際社会のより多くの国がICCの加盟国となり、重大な犯罪を犯した個人を処罰する包囲網を広げる必要があります。今後いかに加盟国数を増やし、ICCの普遍性を高めていくかが、ICCの課題でもあります。

 
 

日本のICCへの加盟の意義~国際社会における「法の支配」の強化

国際社会における「法の支配」の徹底への貢献を目指す日本にとって、ICCへの加盟は、重大な犯罪を犯した個人への不処罰を許さず、処罰の包囲網の一翼を担うという日本の強い決意を国際社会に明確に表明するものであり、極めて大きな意義がある出来事でした。日本は今後、国際人道法・刑事法の規範作りやICCの運営への積極的な関与をしていくこと等を通じてICCの活動に更なる貢献をしていく考えです。また、アジアの先駆者としてアジア諸国のICC加盟を促していくとともに、ICCの活動にさまざまな価値観が反映されるよう、努めていく考えです。

 

人的貢献~日本人裁判官

日本は、また、ICCに対する最大の財政貢献国であるのみならず、日本人裁判官の輩出をはじめとする人的貢献にも積極的に取り組んでいます。2007年11月のICC裁判官補欠選挙では、齋賀富美子氏が、各国合わせて105票の有効票のうち82票を集めてトップ当選しました。日本人初のICC裁判官として、また、アジア女性初のICC裁判官として、活躍が大いに期待されています。

 
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