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Vol.74 2011年6月21日
第4回日中韓サミット~東日本大震災復興支援で再確認された隣国の絆

2011年5月22日,東京で開催された第4回日中韓サミット。この会議の前日,東日本大震災の被災地に足を運んだ中国,韓国の両首脳は,日本の復興を力強く支援することを表明。震災の経験を踏まえて,原子力安全や防災分野,さらに再生可能エネルギーやエネルギー効率化の推進,観光促進などの分野での協力を強化することを確認する首脳宣言が発表されました。隣国の絆が再認識された「第4回日中韓サミット」の概要を紹介します。

「日中韓サミット」

これまでの「日中韓サミット」日本,中国韓国の三か国首脳が集う「日中韓サミット」。2008年に福岡・太宰府市で第1回会合が開催され,その後,中国・北京市,韓国・済州島と持ち回りで開催されました。第4回となる今回は日本での2度目の開催が5月に予定されていましたが,前々月の3月11日に東日本大震災が発生。震災直後より,中韓両国はいち早く被災地に緊急援助隊を派遣し,物資支援などを提供してくれました。こうした親身な支援ぶりに日本国民が隣国としての絆の強さと大切さを再認識する中,両国の首脳は予定どおり日本を「日中韓サミット」出席のために訪れました。

 
 

日中韓首脳が協力して風評被害を防止

被災者に語りかける菅総理と温中国総理(写真提供:内閣広報室) 被災者に語りかける菅総理と李韓国大統領(写真提供:内閣広報室)

来日した中国・温家宝(オン・カホウ)国務院総理と韓国・李明博(イ・ミョンバク)大統領 は,会議前日の5月21日,宮城県の被災地を訪れて献花した後,菅総理とともに原発事故の避難所となっている福島県の体育館を訪れ,被災者を見舞いました。震災後,外国の首脳が福島県を訪問したのは初めてのことでした。また,福島県では,風評被害に悩まされる福島県産の農産物を首脳3名が自ら食する場面がありました。
そして翌日の日中首脳会談で,温総理は日本産品の輸入規制緩和を表明しました。

 
 

震災後,開催された「第4回日中韓サミット」

第4回日中韓サミットの成果文書

東京で行われた日中韓サミットの冒頭,菅総理の呼びかけで参加者全員が震災被害者に黙祷を捧げました。菅総理は,中韓両国の支援と前日の両首脳の被災地訪問に対し,深い謝意を表明するとともに,震災被害や原発事故への日本の対応,復興に向けた決意を両国首脳に説明しました。そして三国の首脳は災害などの困難に直面した時,互いに助け合うことの大切さを確認。会議後,日中韓が原子力安全や防災など幅広い分野での協力を強化することを確認する首脳宣言と3つの付属文書が発表されました。原子力安全に関する合意文書中には,日本産品の安全性に関して「科学的証拠に基づき必要な対応を慎重にとる」ことが明記され,中韓両国が風評被害に惑わされず,日本を支援する姿勢が打ち出されました。

サミットの冒頭,震災の犠牲者に黙とうする出席者(写真提供:内閣広報室)
 
 

原子力安全とエネルギーに関する三国の協力

首脳宣言と共に発表された付属文書「原子力安全協力」では,原子力エネルギーが多くの国にとって「重要な選択肢」であることを認めながらも,その安全確保が「必要条件」であることを確認しました。原子力安全の情報共有等を通じた三国間協力の重要性を踏まえて,原発事故などの緊急事態の際に三国が互いに迅速に通報する枠組みや専門家の交流についての協議を開始することが決定されました。一方,付属文書「再生可能エネルギーとエネルギー効率の推進を通じた持続可能な成長」では, 気候変動の問題や天然資源の制約を考慮して,再生可能エネルギーやエネルギー効率の分野でも緊密に連携することで合意しています。

 

震災の経験と教訓を踏まえ,防災協力を強化

中国の緊急援助隊(写真:中国国際援助隊公式HPより) 韓国の緊急援助隊(写真提供:韓国外交通商部)

防災協力」は,第1回日中韓サミットから継続して話し合われてきたテーマです。今回は東日本大震災の経験と教訓を活かして,(1)訓練の実施・能力の向上,(2)災害発生時の迅速かつ円滑な意思疎通の確保,(3)緊急援助チームや物資の派遣・受け入れ調整の円滑化,(4)防災に関する技術の推進や情報共有の強化,といった具体的な取組が付属文書に明記されました。さらに,三か国の災害予防や復旧・復興の専門家で構成される共同研究チームによる被災地の実地調査なども検討されることになりました。なお,これらの防災対策の拠点として日中韓協力事務局(2011年韓国に開設予定)の活用が検討されています。

 
 

観光促進など経済成長への取組

日本の復興を中長期的に考えた場合,中韓両国をはじめとする成長著しいアジア経済のパワーを取り込むことは必要不可欠です。日中韓サミットでは,これまでも議論してきた投資協定合意への努力が確認され,2012年に終了させるとしていた日中韓FTA産官学共同研究も本年中に終わらせるよう加速化することに合意しました。また,震災のため大きなダメージを蒙った日本の観光部門のためにも三国間の観光促進が重要であるとの認識で一致。2010年の第5回日中韓観光大臣会合で設定された「2015年までに人的交流規模を2600万人に拡大」するという目標を首脳があらためて支持しました。そのほか,三国間の大学間交流促進に向けた「キャンパス・アジア」など,人的交流や文化交流についても活発な話し合いが行われました。

 

中国,韓国両首脳との個別会談も実施

菅総理は,日中韓サミットの他,温中国総理,李韓国大統領と個別に会談を行い,それぞれの国の支援への感謝を述べました。中韓両首脳はいずれも被災者の毅然とした態度,冷静さ,忍耐心などを賞賛し,原子力安全,防災,復興支援・観光促進などの分野での協力を約束。会談後にその具体的な内容を「復興支援・観光促進に関する日中協力(ファクト・シート)」(日中首脳会談),「東北地方復興・観光のための日韓パートナーシップ」(日韓首脳会談)として発表しました。

握手を交わす菅総理と温中国総理(写真提供:内閣広報室) 握手を交わす菅総理と李韓国大統領(写真提供:内閣広報室)
 

日中韓三国間協力の深化

日中韓サミット共同記者会見に臨む日中韓首脳(写真提供:内閣広報室)宮城県や福島県で被災者に親しく語りかけた中国の温総理と韓国の李大統領の姿は,東アジアの隣国同士としての強い絆を多くの日本人に感じさせました。今後も日本の復興に中韓両国の協力と支援は欠かせません。そして,世界が日本の復興と経済再生に期待し,注目しています。北朝鮮問題など,北東アジアの安定にも日中韓三国の協力が必要不可欠です。日中韓の三国は,東アジアの隣国同士としての絆をあらためて認識しつつ,未来志向の関係を築いていく努力を続けていきます。

 
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