わかる!国際情勢 トップページへ

Vol.69 2011年2月25日
金属鉱物資源をめぐる外交的取組~ベースメタルとレアメタルの安定確保に向けて

最近注目されているレアメタルは,低炭素化やハイテク技術を支える素材に不可欠な金属鉱物資源です。レアメタルを含む金属鉱物資源の安定供給の確保は,日本外交の重要な課題の1つです。2010年,日本は,インド,ベトナム,モンゴル,ボリビアなどとの首脳会談において,鉱物資源開発における協力に合意するなど,資源外交の推進に確かな成果を残しました。今回は,金属鉱物資源をめぐる国際情勢とともに,日本が進める資源外交の取組について解説します。

私たちの生活を支える金属鉱物資源(1)~鉄と非鉄金属

金、銅が含まれた鉱石

宝飾品から携帯電話,自動車,建築物まで,金属は私たちの豊かな生活に必要不可欠な材料です。金属とは一般的に鉱物(鉱石)から抽出される有用元素・成分のことで,産業界では,生産量が圧倒的に多い鉄(合金を含む)と,それ以外の非鉄金属に分類されています。さらに,産業利用される非鉄金属のうち,大きく分けて市場での取引量の多い銅や鉛,亜鉛などを「ベースメタル」,それ以外を「レアメタル」と呼んでいます。

 

私たちの生活を支える金属鉱物資源(2)~ベースメタルとレアメタル

ベースメタルのうち,銅は電線など,鉛はクリスタルガラスなど,亜鉛はアルカリ電池などにそれぞれ使用されています。では,報道などでしばしば取り上げられるレアメタルはどのようなものでしょうか。実はレアメタルの世界共通の定義はありませんが,(1)量が少なく希少な(=レア)金属(=メタル)(例:ジスプロシウム(用途:高性能磁石,光磁気ディスクなど))の他に,(2)量は豊富でも採掘や抽出などが技術的に困難で入手しにくい金属(例:チタン(用途:航空機,ゴルフクラブ,絵の具)),(3)これまで用途が少なく工業的に未開発な金属(例:オスミウム(用途:万年筆のペン先))などもレアメタルの定義に含まれます。レアアースは,スカンジウム,イットリウム及びランタノイド(原子番号57~71)の合計17元素の総称で,レアメタルの一種です。

金属の分類
 
 

私たちの生活を支える金属鉱物資源(3)~21世紀の経済成長や低炭素社会の実現に向けて

ベースメタルの中で,電線や電気製品の回路などに使用される銅は,中国インドなど新興国での需要の高まりに加え,スマートグリッドなど今後世界での需要が急伸すると思われる資源です。レアメタルも,低炭素社会に向けたグリーン・イノベーションを推進する鍵として脚光を浴びています。二次電池(蓄電池)に使用されるリチウム,高性能モーターに不可欠なレアアース(ネオジムなど),排ガスを浄化する触媒に使われるパラジウムなど,材料としてのレアメタルの重要性が高まっています。このように,21世紀の経済成長や低炭素社会の実現に欠かせないベースメタルやレアメタルは,いずれも安定供給が望まれるようになっています。

レアメタルの用途
 

安価な資源の時代の終焉

銅・金鉱山(インドネシア)近年,新興国の急速な経済発展などにより,世界で消費される金属鉱物資源量は大幅に増大。特に,中国の金属消費量は,2001~07年の6年間で,銅が2.1倍,鉛が3.6倍,ニッケルは4.0倍と急増しました。供給面に関しても,レアメタルは,ベースメタルの副産物として鉱山から産出されることが多く,主産物の生産状況の影響を受けるため,安定的に供給を確保することが容易ではありません。また,量が豊富とされてきた銅も,スマートグリッドや電気自動車の普及に伴い,世界的に需要の急増が見込まれ,枯渇の可能性が指摘されています。このような需要の増加及び供給不安に伴い,金属の国際価格についても上昇傾向が続いています。非鉄金属,特にレアメタルは,供給源が特定の国に偏っていることから,価格の高騰が起こりやすい傾向にあります。加えて,鉱物資源業界では,市場シェア拡大などを目的とする大型の企業買収・合併が進み,業界の寡占化が金属鉱物資源価格の高騰にますます拍車をかけています。

主なベースメタル・レアメタルの上位産出国
 
 

「資源ナショナリズム」の台頭

「資源ナショナリズム」とは,自国内の天然資源の国家管理を強化しようとする動きのことで,豊富な資源の恩恵と利益をもっと自国に還元したいという資源産出国の思いが背景にあります。こうした資源ナショナリズムの傾向は,資源産出国であると同時に一大消費国でもある中国やリチウムで注目を浴びているボリビアなどでも見られ,これらの国では単に資源そのものを売るだけでなく,国内で加工・製品化するなど資源に関連する高付加価値産業を育成する動きも顕著になってきています。このような資源ナショナリズムが,金属鉱物資源,特に市場が小さいレアメタルの需給に与える影響は決して小さくありません。

 

「資源の呪い」を乗り越えるために

天然資源に恵まれた国ほど,資源を保有するがゆえに,貧困が深刻化するというパラドックスを表す「資源の呪い」という言葉があります。実際に,アフリカ,南米,東南アジア,中東諸国の資源産出国では,資源の権益をめぐる汚職などの腐敗や暴動・紛争などによって,社会が不安定化し,貧困を一層深刻化させてきた歴史があります。また,鉱山開発のため,先住民が強制的に移転させられたり,生活を奪われたりといった人権問題,児童労働や危険な労働環境などの労働問題,さらに鉱山開発に伴う自然環境や生態系の破壊も深刻です。こうした「資源の呪い」を克服するための1つの方策として提案されたのが,「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)」です。

 

責任ある資源開発を~採取産業透明性イニシアティブ(EITI)

「EITI(採取産業透明性イニシアティブ)」の歩み
国際セミナー「責任ある資源開発に向けた新たな潮流~投資国と資源国のWin-Win関係を目指して~」(平成22年1月29日)

採取産業透明性イニシアティブ(EITI)は,英国のブレア首相(当時)が2002年に提唱し,発足しました。EITIは,石油や鉱物資源などの開発に関わる採取産業から資源産出国政府への資金の流れの透明性を高めることによって,資源産出国の腐敗や紛争を予防し,経済成長と貧困削減につながる責任ある資源開発を促進しようとする多国間協力の枠組みです。このため,EITIへの参加は,資源産出国,資源採取企業,市民社会に平等に広く開かれています。日本はEITI支援国として参加し,アゼルバイジャン,東ティモール,モンゴルなどEITI実施国33か国を支援しています。2010年1月には東京で,EITI事務局長などの出席の下,外務省主催国際セミナー「責任ある資源開発に向けた新たな潮流~投資国と資源国のWin-Win関係を目指して~」を開催し,日本政府の積極的な姿勢が国内外に示されました。各国首脳も,2003年以降のG8及びG20サミットでEITIへの支持を表明しており,EITIの重要性は国際的に認識されています。

 
 

金属鉱物資源の安定供給をめざす日本の戦略

日本は世界でも有数の金属鉱物資源の消費国であり,その大部分を海外からの輸入に依存しています。2010年秋に中国からのレアアースの日本向け輸出が一時滞り,国内の産業界に衝撃が走りましたが,重要な資源を限られた特定国からの輸入に頼ると,どうしてもその国の政策や政情に左右されるリスク(カントリー・リスク)が高くなります。こうしたリスクを低減するため,日本政府は,供給源の多角化を図るなど外交的取組を進めており,2011年1月,前原外務大臣は,レアアースを含む鉱物資源について「官民連携の下,多角的な資源外交を推進し,資源国との間で協力関係を強化」するとの外交の基本方針を示しました。また,このような外交的な取組に加え,代替品開発やリサイクルの研究など国内的な取組も進めています。

金属鉱物資源 日本の輸入相手国
 

加速する日本の資源外交

資源外交は,相手国との良好な関係を基盤に進められるものであり,各国に置かれている日本の在外公館の日々の活動や情報収集が重要な役割を担っています。外務省は,資源国に所在する日本大使館で資源問題を担当する館員を東京の外務本省に集め,2010年1月及び2011年1月に金属鉱物資源に関する「資源問題担当官会議」を開催しました。各国の資源政策動向や開発状況などの報告の後,いかにして日本への安定供給を確保するか,そのための在外公館の役割,具体的な資源確保戦略などについて活発な議論が交わされました。この会議で検討された金属鉱物資源をめぐる国際情勢や各国の動向などの情報は,関連する日本企業にも提供され,企業活動に活かされます。日本は,産業に必要不可欠な金属鉱物資源を安定的に確保するため,官民連携の下,今後もさらに力強く,資源外交を進めていきます。

 
 
メルマガ登録希望の方はこちらからお申込みください。
ご意見ご感想もお待ちしています。 (外務省国内広報課)
このページのトップへ戻る
目次へ戻る