わかる!国際情勢 トップページへ

Vol.65 2010年11月5日
モンゴル~良き隣人としての絆

近年,大相撲でのモンゴル出身力士の活躍や豊富な資源に,日本でも注目が集まっているモンゴル。2010年は,首脳・外相レベルの会談が頻繁に持たれ,また日本人のモンゴル短期滞在に際してビザ(査証)が免除になるなど,ますます両国間の絆が深まりを見せています。モンゴルとはどのような国なのか,歴史や日本との関わりなどとともに見ていきます。

誇り高き遊牧の民が築いた草原の国

モンゴル 伝統的な移動式住居「ゲル」

モンゴルは,南北を中国,ロシアという大国に挟まれたモンゴル高原北部に位置する内陸国です。日本の約4倍(156.4万平方km)の国土面積に,京都府とほぼ同じ約270万人が暮らしており,その約4割(約111.2万人)が首都ウランバートルに居住しています。地方では現在でも伝統的な移動式住居「ゲル」に暮らす遊牧民が多いのですが,近年は携帯電話の普及や衛星放送による大相撲中継観戦など,遊牧生活の現代化が進んでいます。民族構成は約95%がモンゴル人で,少数民族としてカザフ人もいます。1992年の新憲法では信教の自由が保障され,社会主義時代には衰退していたチベット仏教や伝統的なシャーマニズムがモンゴル人の間で復活。カザフ人は主としてイスラム教を信仰しています。

 
 

モンゴル帝国の創設から世界で2番目の社会主義国へ

モンゴル略史12世紀末,モンゴル高原に群雄割拠していたモンゴル系諸部族を統一したのが,有名なチンギス・ハーンです。1206年にモンゴル帝国を建国した後,チンギスとその後継者たちは,アジア,ヨーロッパにまたがる大帝国を築き上げました。チンギスの孫であるフビライ・ハーンが派遣した元軍は,日本にも二度襲来(元寇)しています。このように世界を席巻したモンゴル帝国(元朝)ですが,やがて漢民族の明朝に追われてモンゴル高原へ撤退。17世紀からモンゴルの諸部族は清朝の支配下に入りました。1911年の清朝滅亡(辛亥革命)によって独立を宣言しますが,まもなく中国軍閥の支配を受けるようになりました。1921年には,ロシア革命(1917年)の影響を受けた知識人が結成したモンゴル人民党が,チベット仏教の活仏(かつぶつ)を元首とする君主制人民政府を樹立。1924年,活仏の死去に伴って,ソ連に次ぐ世界で2番目の社会主義国として,モンゴル人民共和国が誕生しました。

 

「モンゴル国」の民主化を支援した日本

発展するウランバートル市街1980年代末の東欧革命による民主化の波は,モンゴルにも押し寄せました。1990年に複数政党制を導入し,社会主義から大統領制に移行しました。1992年には新憲法が施行され,国名も「モンゴル国」に改め,名実ともに民主化への道を踏み出しました。当初は体制転換の混乱により経済の低迷が続きましたが,日本をはじめとする各国からの経済支援や国際通貨基金(IMF)の資金援助によって,1994年に経済成長率がプラス(2.3%)に転換。また,1991年,先進国首脳として初めて日本の海部総理(当時)がモンゴルを訪問し,同年日本の提唱で第1回「モンゴル支援国会合」を東京で開催するなど,日本は,国際社会における対モンゴル支援でイニシアティブを発揮してきました。

 

牧畜から資源立国を目指す経済

大規模炭田の開発モンゴルの主要産業は,伝統的な牧畜業(カシミア,羊毛,皮革など)から豊富な鉱物資源を背景にした鉱工業が中心になりつつあります。1990年代半ばより,早くから採掘が行われてきた銅やモリブデンを中心とする鉱物資源の輸出で活況を見せていたモンゴル経済ですが,2008年の世界金融危機の影響や銅の国際価格急落などが経済を直撃。日本や国際機関により緊急財政支援が行われたものの,2009年の実質成長率は前年の8.9%から一気にマイナス1.6%に落ち込みました。さらに,2009年末から2010年にかけてモンゴルを大寒波が襲った結果,この犠牲となった家畜は約600万頭とも言われ,依然としてGDPの約20%を占める農牧業に打撃を与えました。今後,ほとんど未開発の大規模炭田や注目を集めるウラン,レアアースの開発が進めば,モンゴル経済は名実ともに鉱物資源大国として大幅に浮揚することが期待されます。

 
 

多面的・多角的な外交戦略を展開

社会主義時代はソ連との関係が深かったモンゴルですが,現在は,国境を接する中国とロシアの2大国に対してどちらにも偏らないバランスを保持しつつ,「第3の隣国」と位置づける日本,米国,欧州などとの関係強化を図ることを外交・安全保障の基本方針に据えています。2007年,エンフバヤル大統領(当時)は,日本,フランス,韓国,キルギス,米国など12カ国を公式訪問し,精力的な外遊が注目を集めました。一方,ノモンハン事件70周年にあたる2009年にロシアは首相と大統領が相次いでモンゴルを訪問,中国も2010年に16年ぶりに首相がモンゴルを公式訪問するなど,両国はモンゴルに対して積極的な外交を展開し,モンゴルにとって政治・経済両面で大きな位置を占めています。モンゴルはまた,非同盟諸国会議への加盟,ASEAN地域フォーラム(ARF)への参加,中東湾岸諸国との関係の重視など,安全保障の見地からも多面的・多角的な外交を展開しています。

 

国連PKOへの積極的参加と非核への思い

モンゴルは国策として明示的に国連平和維持活動(PKO)などへの参加を掲げています。国軍の規模は総兵力約1万人に過ぎませんが,これまでにイラク,アフガニスタン,シエラレオネ,中央アフリカ・チャドなどに派兵してきました。モンゴル国内にはPKO国際演習場が設置されており,毎年夏に,各国が参加する演習が行われています。また,モンゴルは1992年に「一国非核の地位」を宣言しており,非核化に積極的な国としても知られています。同宣言については,1998年以降累次にわたり同宣言を歓迎する決議が国連総会で採択され,また,2010年5月の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議の最終文書でも歓迎されています。

 
 

深まる日本への親しみ

日本に関するアンケート現在のモンゴルは極めて親日的な国です。民主化後のモンゴルにとって最大の援助供与国である実績への評価とともに,大相撲でのモンゴル人力士の活躍などによって,広く国民の間に日本への親しみが広がっています。2004年に在モンゴル日本国大使館が実施した世論調査においても「日本に親しみを感じる」との回答が全体の7割を占め,「最も親しくすべき国」として日本が第1位に挙げられました。こうした日本に対するモンゴルの人々の思いは,日本語学習熱の高まりや日本への留学生増加としても表れています。日本人にとっても,モンゴルは魅力的な自然風土と文化,歴史を備えた国。大学でモンゴル語を学んだ司馬遼太郎をはじめ,開高健,椎名誠など多くの日本人がモンゴルという国を愛してきました。

モンゴルの国技「ブフ」(モンゴル相撲)

スポーツの祭典ナーダム2010年秋場所現在,大相撲では,横綱白鵬や大関日馬富士をはじめ33人のモンゴル出身力士が活躍していますが,モンゴルの国技も「ブフ」と呼ばれる相撲競技です。日本の相撲と異なり土俵がないブフには,押し出しや寄り切りといった決まり手はありません。頭,肘,膝,背中のいずれかが地面につけば負けですが,手のひらをついても負けにはなりません。モンゴルでは毎年7月11~13日に国民的なスポーツの祭典「ナーダム」が開催され,この時行われるブフのトーナメントの勝者は,国民的な英雄となります。ちなみに横綱白鵬関の父はナーダムで6回の優勝経験を有しています。

 
 

鉱物資源開発においてモンゴルと日本は協力を推進

モンゴル国内には,レアアースをはじめ未開発の鉱物資源が多く,今後の開発がモンゴル経済の将来のカギを握っています。あわせて鉄道などのインフラの整備や,資源に付加価値を付ける加工産業の確立なども急務と言えるでしょう。現在,豊富な金・銅の埋蔵量が見込まれるオヨー・トルゴイ鉱区や世界最大規模の埋蔵量と言われているタバン・トルゴイ石炭鉱区の本格的な開発に向けた動きが開始され,前者はカナダの企業が投資,後者は日本を含む各国企業が開発への参入を目指しています。モンゴル国内には外資に依存した開発への警戒感もありますが,レアアースをはじめとするレアメタル共同調査についての協力覚書を締結(2010年7月)するなど,モンゴル政府は,鉱物資源開発における日本との協力関係構築に前向きな姿勢を示しています。2010年9月に来日したバトボルド首相は,モンゴル政府は日本企業の高い技術力への期待と日本からの投資を政策的に支援していると述べました。

主要鉱物資源の分布図
 

日本とモンゴル,さらに緊密なパートナーへ

日・モンゴル首脳と日本企業との懇談会外相会談首脳会談,そして11月のエルベグドルジ大統領来日など,日本とモンゴルの間で活発なハイレベル交流が行われている2010年,これまで両国が幅広い分野で築いてきた「総合的パートナーシップ」を,今後「戦略的パートナーシップ」を目指した関係へとより一層拡充・発展させていくために努力していくことで合意しています。日・モンゴル経済連携協定(EPA)に関しては官民共同研究が行われており,また 日本人の短期滞在でのビザ(査証)免除が決定するなど,ビジネスや人の交流の面でもモンゴルと日本はさらに近づきつつあります。安保理改革や日本の常任理事国入りへの支持など,モンゴルは国際社会において日本のかけがえのない友人。今後,より一層緊密なパートナーシップのもと,相互理解と協力関係を深めていきます。

 
メルマガ登録希望の方はこちらからお申込みください。
ご意見ご感想もお待ちしています。 (外務省国内広報課)
このページのトップへ戻る
目次へ戻る