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Vol.64 2010年10月18日
ASEANと日本~アジアの平和と繁栄のために

東南アジア10か国から成るASEAN(東南アジア諸国連合)と日本は,30年以上にわたりアジア地域の平和と安定,発展と繁栄のために協力関係を築いてきました。2010年10月末には,第13回日・ASEAN首脳会議がハノイで開催されます。今回は日本との協力関係を中心に,ASEANの意義と役割について考えます。

私たちの暮らしの中に息づく「ASEAN」

今や日本人の暮らしにとって,さまざまな面でASEANは身近な存在です。タイ料理をはじめとする東南アジア各国の料理はすっかり日本人の食文化に溶け込んでおり,スーパーなどで入手できる果物や魚介加工品(缶詰など)もASEAN製品が大きなシェアを占めています。また多くの日用品,家電製品,自動車部品などもインドネシアタイマレーシアベトナムなどASEAN各国で製造されており,日本メーカーの「工場」としての大きな役割を果たしています。さらにインドネシアやブルネイは天然ガスや原油といったエネルギー供給国として大変重要な存在です。

日本人の暮らしに身近なASEAN
 
 

人的交流・文化交流も活発

世界遺産・ボロブドゥール寺院遺跡群日本人の海外旅行先としてもASEANは人気が高く,毎年約370万人の日本人観光客が,域内各国の美しいリゾート地や世界遺産などを訪れています。一方,ASEANの人々の間では日本のアニメやJポップなどポップカルチャーが大人気。インドネシア,タイ,ベトナムなど日本語学習熱が高い国も多く,日本に学びに来る留学生も増加傾向にあります。

 

意外と古い? ASEANとの交流史

石碑が建つアユタヤ日本人町の跡(タイ)日本とASEAN地域は古くから海上ルートによって結ばれていました。朱印船貿易の時代にはアユタヤ(タイ)の日本人町が繁栄し,ベトナム,カンボジアフィリピンなどにも日本人町・居住地ができました。ASEAN地域と縁の深い歴史上人物として,マニラで生涯を終えたキリシタン大名の高山右近,アユタヤ日本人町で活躍した山田長政などが有名です。江戸時代の鎖国政策後も,オランダの植民地だったインドネシアとは長崎出島での交易が続き,南米原産のジャガイモ(ジャガタライモ)は,ジャカルタ(ジャガタラ)経由で日本に伝わったと言われています。

 
 

ASEANの成り立ちと現在

後にASEANとなる国々は,唯一独立を守ったタイを除いて,20世紀に入っても英国,フランス,オランダなどの植民地支配を受けていました。第2次世界大戦中は日本の軍政下に置かれ,独立を果たしたのは戦後のこと。1960年代に入り,ベトナム戦争を契機にこれらの国々の間で地域協力の動きが活発化し,1967年の「バンコク宣言」によってASEANが設立されました。原加盟国はタイ,インドネシア,シンガポール,フィリピン,マレーシアの5か国でした。1984年にブルネイが加盟後,加盟国が順次増加し,現在は10か国で構成されています。地域協力としてのASEANは,GDPなどの面ではEU(欧州連合)やNAFTA(北米自由貿易協定)に及びませんが,5億7,000万人を超える人口規模では上回っています。また過去10年間に高い経済成長を見せており,今後,世界の「開かれた成長センター」となる潜在力が,世界各国から注目されています。

他の地域経済統合体等との比較(2009年)
ASEAN加盟国/ASEAN+3と東アジア首脳会議(EAS)の構成国
 

日本とASEAN(1)~最初の「対話国」として協力関係をスタート

日ASEAN関係略史日本は戦後,独立を果たしたASEAN諸国の国づくりに,ODA(政府開発援助)などを通じて多大な支援を行ってきました。1977年,当時の福田赳夫総理は,訪問先のフィリピン・マニラで,(1)日本は軍事大国にならない,(2)ASEANと「心と心の触れあう」関係を構築する,(3)日本とASEANは対等なパートナーである,という3つのASEAN外交原則(「福田ドクトリン」)を示しました。そしてこの年,他国に先駆けて日・ASEAN首脳会議を開催しました。翌1978年には日・ASEAN外相会議も開催され,日本はASEANにとって初の「対話国」として協力関係をスタートさせました。

 
 

日本とASEAN(2)~かけがえのない経済パートナーとして

統計で見る日本にとってのASEAN日本とASEANは,ビジネスパートナーとしても緊密な関係を築いています。日本にとってASEANは中国,米国,EUと並んで重要な貿易相手であり,また,ASEANにとっても日本は主要な貿易相手国です。さらに,ASEANにとって日本はEUに次ぐ投資国で,日本とASEAN双方がかけがえのない経済パートナーとなっています。貿易や投資等の自由化・円滑化を推進するために,2002年,日本にとって初めての経済連携協定(EPA)をシンガポールと締結し,その後インドネシア,タイ,ブルネイ,フィリピンの各国とも二国間EPAを締結しています。2008年には日・ASEAN包括的経済連携(AJCEP)も発効し,日本とASEAN各国間の貿易・投資のさらなる活性化や協力の促進が期待されています。

日本アセアンセンター(東南アジア諸国連合貿易投資観光促進センター)

1981年,ASEAN加盟国(当時)と日本によって東京に設立された国際機関。ASEAN から日本への輸出の促進,日本とASEAN の間の投資と観光の促進を目的に,ASEAN 商品の展示・商談会や各種セミナー,ワークショップの開催,ミッションの派遣・招聘,人材育成,ASEAN 文化交流イベント,各種出版物の発行および情報提供など,多彩な事業活動を展開しています。事務局には常設展示場がありますので,興味のある方は是非訪れてみて下さい。

所在地:〒105-0004東京都港区新橋6-17-19 新御成門ビル 1階
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(月~金曜日)
ウェブサイトURL:https://www.asean.or.jp/ja/

 
 

日本とASEAN(3)~アジア大洋州地域の平和と安定で協力

豊かで安定し開かれたアジア大洋州地域の実現は,日本の安全と繁栄にとって不可欠です。そのため,アジア諸国における平和と安定,そして成長が持続的に実現できるよう,強固な日米関係を基盤とし,積極的なアジア外交を進めることが重要です。日本は,この地域における平和と安定を確保するため,東アジア首脳会議(EAS)ASEAN+3日・ASEAN日中韓協力といった東アジアにおける地域協力の枠組みや,APECASEAN地域フォーラム(ARF)アジア欧州会合(ASEM)といった域外国が広く参加する枠組みに積極的に関与し,地域協力を推進しています。

 

ASEANの統合に向けた日本の支援

日本はASEAN最大のODA供与国として,社会インフラ整備から遺跡の修復まで幅広い分野で協力してきました。近年は,メコン地域(カンボジア,ラオスミャンマー,ベトナム)など開発が遅れている地域の社会インフラ整備や人材育成に力を入れ,ASEANの域内格差是正に尽力しています。また,2005年に小泉総理(当時)がASEANの統合に向けた支援として表明した「日・ASEAN統合基金(JAIF)」による防災,感染症,テロ対策など多岐にわたる支援も継続的に続けており,ASEAN共同体,さらにその先にある日本が提唱する東アジア共同体構想に向けた連携とネットワーク強化を図っています。また,アジアの強固な連帯にしっかりとした土台を与えるため,2007年1月に開催された東アジア首脳会議(EAS)において安倍総理(当時)は「21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYS)」を発表し,JENESYSの下,ASEAN域内の青少年の日本への招へい,日本の青少年のASEAN各国への派遣事業を行っています。

ASEAN連結性向上に向けた日本の貢献
 
 

2015年ASEAN共同体構築に向けて

ASEANは,2015年までに「政治・安全保障共同体」,「経済共同体」,「社会・文化共同体」の3本柱から成る「ASEAN共同体」の実現をめざしています。当初は2020年の実現を目標としていましたが,インドや中国とのグローバル競争を意識して域内統合を加速化。2003年の「ビエンチャン行動プログラム」でASEAN共同体実現に向けた具体的な措置が示され,2008年発効の「ASEAN憲章」では,ASEAN機構の強化や意志決定プロセスの明確化などが打ち出されました。

 

アジアの新たな成長のための日ASEANパートナーシップ~連結性強化

ASEAN共同体構築のための最重要課題とされているのが「連結性強化」です。運輸,情報通信,エネルギー網などの「物理的連結性」,貿易,投資,サービスの自由化・円滑化などの「制度的連結性」,そして観光・教育・文化における「人と人との連結性」の3つの要素から成るこの連結性強化のためのマスタープランが,2010年10月の第17回ASEAN首脳会議に提出されます。連結性強化に向けた取組に対しては,パッケージ型インフラ海外展開を推進するとの新成長戦略を掲げる我が国による貢献が可能です。日本は「結束したASEANが地域協力のハブとなることが,日本とASEAN,さらに東アジア全体の安定と繁栄にとって重要」との考えから,連結性強化に向けたASEANの努力を全面的に支援しています。

ASEAN関連外相会議(2010年7月)
 
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