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Vol.6 2008年9月2日
台頭するインド・パワー インド経済とこれからの日印関係

高村外務大臣は2008年8月3日から5日にかけてインドを訪問し、マンモハン・シン首相をはじめインドの主要閣僚と会談を行いました。25年後にはGDPで日本を抜き、世界第3位の経済大国になると予想されているインド。今後インドが世界におよぼす影響と、これからの日印関係について解説します。

インド 台頭するグローバル・パワー

多様性を持つ人口大国インド

インドの人口は、現在約10億人以上。2050年には中国を抜いて、世界第一位の人口大国(約15億人)になると言われています。宗教はヒンドゥー教が主流ですが、仏教の発祥地であるとともに、タージ・マハルに代表されるようなイスラム教の影響も未だ色濃く、加えてキリスト教、ジャイナ教など、さまざまな宗教が混在しています。言語についても、公用語であるヒンディー語、イギリス植民地時代の名残である準公用語の英語のほか、地方によって多くの言語が使われています。国土の広さとも相まって、異なる文化・風習が集まる、多様性を持つ国家であるというのも、インドの特長の1つです。

インド 基礎データ
 
 

「ゆっくりと、しかし着実に」がインド流

インドと言えば、近年の著しい経済成長やIT産業、10憶人の巨大マーケットとして世界中から注目を集めていますが、その経済成長の鍵はどこにあるのでしょうか。先ず挙げられるのは、1991年の経済危機をきっかけに着手してきた経済改革が、ゆっくりと、しかし確実に功を奏してきたことです。具体的には、様々な規制緩和、外資導入、公的企業民営化などを通じて競争原理に基づく市場経済を整えたこと。そして、経済成長の恩恵を受けた人たちが購買力を持ち、これが新たな需要を生み出すというように国内需要が順調に拡大してきたことも挙げられます。また、多方面での外交関係を強化してきたことなど、様々な要因が重なり合って上向きに作用し、ここ数年で花開いているようです。

 

GDP成長率9.2%、人口の半分が若年労働層

インドのGDP成長率は過去10年間で7.5%以上になっていますが、ここ3年間(05~07年)では9.2%以上と、特に高い伸び率を示しています。加えて、人口の約半分が15~44歳の若い労働力人口であること、財閥による潤沢な民族資本があることもインド経済の強みと言えるでしょう。

 

カースト制度に縛られないIT産業

中でも、IT産業や金融をはじめとする第三次産業は成長が著しく、インド国内に「中間所得層」を創り出しました。第三次産業が発展したのは、カースト制度と関係があると言われています。カーストというインド古来の身分制度は世襲で職業を規定するものですが、カースト制度の中には、IT産業のような新しい職業は存在しません。このため、可能性を求めて優秀な若い世代の労働力がIT産業に集中し、競争が生まれ、更なる発展を促しています。

 

印僑の活躍とUターン現象

IT産業や金融業の発展に欠かせないのが、印僑(在外インド人)や留学生です。現在、米国に約200万人、世界全体では1,500~2,000万人の印僑がいると言われています。また、毎年8万人が米国に留学しています。インドの優秀な技術者たちの多くは米国をはじめとする先進国に活躍の場を広げ、在外インド人ネットワークを形成しています。さらに現在では、海外でキャリアを積んだ人たちがインドに戻って起業するUターン現象が起こっており、インド国内の産業を活性化させ、新たな雇用を生み出しています。

 

大工場では1人解雇するにも許可が必要

しかし、経済成長を維持するには解決しなければならない課題も山積しています。インフラ整備には、今後5年間で約5,000億ドルの外国直接投資(FDI)が必要だといわれている反面、分野毎に少しずつ比率が上げられているとはいえ、まだまだ合弁会社における外資の比率は低く抑えられており、外国からの投資を妨げる要因となっています。また、100人以上の従業員がいる工場などでは、1人を解雇するにも州政府の許可がいるなど、雇用の創出が見込まれる外資による製造業の振興を妨げる制度も残っています。さらに、6割を占める農業人口を第2次産業や第3次産業などに移行させ、1日1ドル以下で生活していると言われる人口の34%を占める貧困層(3億人以上)を削減することが急務です。急速に高まるエネルギー需要への対応、環境問題など、多くの経済的課題も浮き彫りになってきています。

 
 

確立された民主主義

インドは、独立以来軍事クーデターがなく、選挙によってのみ政権が交代するという、安定した内政運営を続けています。1998年にはインド人民党(BJP)を中心とするバジパイ政権が誕生し、経済自由化政策を促進し、高い経済成長を実現しました。しかし、経済成長の恩恵に与れない農村等の貧困層の不満が爆発し、民衆からの突き上げの結果、バジパイ政権は倒れ、2004年にはコングレス党を中心とするマンモハン・シン(UPA)政権が成立しました。現政権では、「社会的弱者に優しい政権」を目指しながら、経済成長を維持するための改革を推進しています。

多極化するインド外交
 

非同盟諸国の中心として~多極化するインド外交

インドの対外貿易額非同盟諸国の中心国としての地位を築いたインドは、国際社会での存在感を日に日に高めています。米国をはじめとする西側諸国との関係強化を進めるとともに、伝統的友好国であるロシア、隣国である中国、さらにはEU、ASEAN、中東、アフリカとの関係も深めていくなど、積極的かつ多極的な外交に取り組んでいます。また、これまでに三度の戦争を経験している隣国パキスタンとは、2004年以降、関係改善に向けた対話が継続しています。

 
 

日本の近代経済の基盤を作った日印貿易

日印関係の変遷1952年に国交を樹立して以来、日本とインドは友好的な関係を築いてきましたが、実はインドとの経済関係が日本の経済成長にとって大きな役割を担った時期がありました。最初は、明治時代。産業の近代化を進める上で、綿織物業の発展は重要な役割を果たしましたが、これを支えたものにインドの綿花、綿業がありました。明治末年にはインドとの貿易額は、日本の総貿易額の約10%を占め、インドからの輸入(綿花が80%以上)は日本の総輸入量額の15%に達しました。さらに、戦後、1950年代央から始まる日本経済の高度成長を支えたのは鉄鋼業でしたが、その発展にインドからの鉄鉱石の安価・安定供給が大きな役割を果たしました。インドは日本の近代経済の基盤作りに貢献したと言えます。

 

良好な日印関係

インドは、民主主義、法の支配、市場経済、言論の自由などの基本的価値を共有できる相手国であるとともに、日本にとってインドは、経済的にもエネルギー安全保障の点からも重要な位置を占めている国です。このため、1991年、経済危機に陥ったインドに対し、いち早く支援の手を差し伸べたのも日本であり、現在もインドは日本の円借款の最大の受取国です。

日印貿易の動向
 
 

両国の経済規模に見合った経済関係を目指して

日本とインドは、現在、それぞれアジア第1位と第3位の経済規模を持っています。にもかかわらず、インドにとって日本は、10番目の貿易相手国であり、日本にとってインドは、わずか27番目の貿易相手国にすぎず、極めて限定的な貿易となっています。このため、今後の日印関係を、両国の経済規模に見合ったものとすべく、2007年8月に、安倍総理が訪印 した際、首脳間で、2010年には総貿易額を200億ドルに発展させるという期待値を表明しています。さらに、両国は「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」に基づき、さらなる関係強化に努めています。

 
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