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Vol.58 2010年6月3日
国連安全保障理事会の役割

2010年4月,岡田外務大臣は米国ニューヨークの国連本部で,日本が安全保障理事会(安保理)の議長国として開催した「紛争後の平和構築」に関する公開討論に出席し,日本の外務大臣としては初となる議長を務めました。安保理は,近年,国際情勢の変化に伴って,その役割と重要性が増してきています。安保理がどのような役割を担う機関なのか,最近の動きや日本の貢献などとあわせて考えます。

安保理公開討論「紛争後の平和構築」

公開討論で議長を務める岡田外務大臣

UN Photo⁄Evan Schneider日本は2009~2010年の2年間,国連安全保障理事会で通算10回目となる非常任理事国を務めています。その安保理で2010年4月16日,日本は「紛争後の平和構築」をテーマとする安保理公開討論を開催しました。これは日本が同4月の1か月間,安保理議長国としてイニシアティブをとる機会を最大限に生かしたものです。この公開討論では,日本の平和外交を示すため,岡田大臣が自ら議長を務めるとともに,日本の平和構築に対する考え方や具体的な取組について発言しました。この公開討論には,安保理理事国以外の国・機関も参加することができます。このため,特定のテーマに沿った意見を国際社会に表明できるとても貴重な場として位置づけられています。今回の公開討論では,アフガニスタン,ボスニア・ヘルツェゴビナ,東ティモール,シエラレオネの閣僚が参加し,自国の経験に基づく発言を行ったほか,平和構築に関する包括的な議論が交わされ,討論の最後には安保理議長声明が発出されました。この議長声明では,安保理として政治,治安,開発など,統合的な平和構築に取り組む戦略の必要性を指摘した上で,当事国のオーナーシップ尊重や治安部門改革の重要性などを強調しています。公開討論に参加した国・機関からは,こうした日本の平和構築に対するイニシアティブを評価する声が多く聞かれました。

 

国連安全保障理事会とは?

そもそも「国連安全保障理事会」とは一体どのような組織なのでしょうか。安保理は,国連憲章によって国連加盟国により国際の平和と安全の維持に関する主要な責任を託され,国連加盟国は安保理の決定を受諾し,履行しなければならない,と定められた機関で,経済社会理事会などとともに国連主要6機関の1つとされています。安保理メンバーは,常任理事国5か国(米,英,フランス,ロシア,中国)と非常任理事国10か国(任期2年,毎年半数が改選,連続再選不可)で構成されています。193か国が加盟している国連の中で,この計15か国が世界全体の平和と安全に関するさまざまな意思決定(安保理決議の採択など)を行うため,とても重い責任を負った機関です。これまでに安保理が採択した決議は1,900を超えています。(もっと詳しく知りたい方は「国連安全保障理事会(安保理)とは」をご覧ください。)

地域別国連加盟国数・非常任理事国数と常任理事国

ニュースでよく見る安保理議場の風景

国連本部の安保理本会議場

UN Photo⁄Sophie Paris米国ニューヨークの国連本部にある安保理議場は,ノルウェー人建築家アルンスタイン・アルネベルクが設計したもので,壁の大理石などと共にノルウェー政府から寄贈されました。正面の大きな壁画はノルウェー人画家ペール・クローグの作品で,北欧伝説をモデルに争いなき世界への闘いが描かれています。安保理の議長国は,国名の英語のアルファベット順で各理事国が1か月交代で務めることになっており,公式会合では,大きな馬蹄形のテーブルの中央に議長国が着席する形で各国がアルファベット順の右回りに着席し,議長の交代に伴い1か月ごとに席が左へ移動します。この1か月交代のルールに従うと,非常任理事国が議長を務められる機会は,任期中(2年)に多くて2回しか回ってきません。このため,各メンバー国は限られた機会で最大限のイニシアティブを発揮できるよう取り組んでいます。

 

常任理事国が持つ「拒否権」

安保理の歴史は国連が創設された1945年までさかのぼりますが,国際社会における安保理の役割が現在のように大きなものになったのは1990年代以降,すなわち冷戦終結後のことでした。安保理はもともと第二次世界大戦の連合国陣営(米,英,フランス,ソ連,中国)を「常任理事国」としてスタートしており,米ソ両陣営の対立軸が国際社会の安全保障を決定づけていた冷戦時代においては,安保理はその役割を十分に果たすことができませんでした。というのも,安保理の決定は,「拒否権」を持っている常任理事国のうち1か国でも反対があった場合は成立しないことが,あらかじめ国連憲章に規定されているからです(手続的な決定事項を除く)。このため,冷戦中はこの「拒否権」の行使によって決定できない案件もありました。しかし,ソ連崩壊によってこの状況は一変し,安保理は国際社会の平和と安全により大きな役割を発揮できるようになりました。

 
 

冷戦後の世界と安保理の役割(1)平和構築

冷戦終結後,国際社会はさまざまな情勢の変化を経験することになりましたが,なかでも世界の安全保障を考える上でとりわけ重要なのが,"紛争の形態"の変化でした。以前は国家間あるいは地域間で起きていた紛争が,冷戦後は国内の異なる民族,人種,宗教などを火種として頻発するようになり,一度紛争が収まってもまた紛争状態に逆戻りしてしまったりするなどの問題点も指摘されるようになりました。安保理は冷戦時代から国連平和維持活動(PKO)の設立を通して停戦の監視や武装解除などを行ってきましたが,こうした国際情勢の変化に対応するには,紛争の背景にある根本的な課題,つまり,貧困や若者の失業,教育,難民支援,社会基盤・経済インフラ整備などへの取組を含めた,幅広い分野での継ぎ目のない支援が必要だとの認識が高まってきました。これが21世紀の安保理が取り組むべき「平和構築」の考え方であり,日本が2010年4月に安保理公開討論で「紛争後の平和構築」をテーマとして取り上げた大きな理由です。平和構築はもはや安保理理事国だけでなく,国際社会全体として議論し,取り組んでいかなければならない課題の1つとなっています。

 

冷戦後の世界と安保理の役割(2)テロや大量破壊兵器拡散への取組

また,2001年の米国同時多発テロ事件(9.11)を境に,一気に現実味を帯びるようになったテロの脅威や,北朝鮮による核実験・弾道ミサイルの発射のような大量破壊兵器拡散の懸念など,国際社会が直面する新しい課題への対応にも安保理は取り組んでいます。例えば,国際テロ活動にかかわるテロリストの移動を規制したり,活動資金を凍結したりする制裁措置を安保理で決議することにより,国連加盟各国に決定事項の遵守を求めています。

 

叫ばれる安保理改革の必要性

(詳細は安保理改革の経緯と現状を参照)

一方で,こうして近年重要性を増してきた安保理のあり方について,代表性や実効性などの観点から,安保理改革が必要だという声も高まっています。なぜなら,1945年の国連創設以降,加盟国が51か国から4倍近くの193か国に拡大した一方で,安保理の構成は非常任理事国が6か国から10か国に拡大されたのみで,常任理事国は当初の5か国から変わっていません。これでは,地域的な「代表性」が保たれないだけでなく,安保理の決定が加盟国によって着実に実施される「実効性」が確保できないなどといった指摘があります。このため,国連総会は1993年に安保理改革に関する作業部会(OEWG)を設置し,改革に向けた本格的な議論をスタートさせました。理事国の議席数や地域ごとの比率など,安保理のあり方については実に様々な意見がありますが,昨年2月に開始された政府間交渉においては,改革の早期実現に向けた活発な議論が行われています。(もっと詳しく知りたい方は「なぜ安保理改革が必要か」をご覧ください。)

 
 

日本の国際貢献と常任理事国入り

日本は安保理の非常任理事国をこれまでに計10回(ブラジルと並んで最多)務めていますが,これは東ティモールやアフガニスタンの復興開発,アフリカの平和構築支援,北朝鮮の核問題,核兵器のない世界を目指す取組など,国際社会の安全保障に対する日本の国際貢献に裏付けられたものだと言えます。日本はこうした平和外交の実績などを基に,安保理改革の早期実現と日本の常任理事国入りを目指しています。そうすることで,安保理の決定により大きな正当性と信頼性を持たせることができ,日本周辺を含むアジア地域と国際社会全体の平和と安定に,一層大きな貢献を果たすことができると考えています。(もっと詳しく知りたい方は「常任理事国入りと日本の国際貢献」をご覧ください。)

 

国際社会の平和と安全の責任を担う

21世紀の国際社会には,様々な紛争,テロ事件,大量破壊兵器の拡散,核兵器開発問題への対処など,世界全体の平和と安全を実現するために,各国が足並みをそろえて取り組んでいかなければならない課題がたくさんあります。安保理は,世界の現状に即した迅速かつ適切な決定を行う機関として,その役割を果たすよう国際社会から期待されています。日本はその安保理において,国際社会の平和と安全に恒常的な貢献ができるよう,これからも積極的に取り組んでいきます。

 
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