わかる!国際情勢 トップページへ

Vol.54 2010年3月5日
テロのない世界を目指して

2009年のクリスマス、米国で同時多発テロ事件「9.11」をほうふつとさせる航空機爆破テロ未遂事件が発生し、米国民はもとより世界中の人々に大きな衝撃を与えました。「9.11」から8年以上が経過した現在でも、テロは途絶えることなく発生し、連日のように悲惨なニュースが報じられています。テロの現状と国際社会の取組について見ていきます。

「9.11」の悪夢ふたたび

2009年12月25日、米デトロイト上空を飛行中のオランダ・アムステルダム発デトロイト行きノースウェスト航空253便で、ナイジェリア国籍の男が機内で爆発物に着火し、取り押さえられたというニュースが世界中を駆け巡りました。クリスマスの日をねらった航空機爆破テロ未遂事件の発生は、2001年に米国ニューヨークで起きた同時多発テロ事件「9.11」を思い起こさせるものでした。イエメンを拠点にサウジアラビアへの活動拡大を企図する国際テロ組織「アラビア半島のアル・カーイダ」が、事件への関与を認める声明をインターネットで発信する一方、年末を迎えて大混雑する世界中の空港では、一層の保安検査強化が図られました。今回の爆破行為は未遂に終わりましたが、また「9.11」のような自爆テロがいつどこで起きてもおかしくありません。もはやテロはニュースで見る遠い国の出来事ではなくなっています。

 
日本人が巻き込まれた主なテロ・誘拐事件
 
 
 

世界中で続くテロ事件

世界におけるテロの動向「9.11」から8年以上が経過した今も、世界中でテロ事件は頻発しています。米国国家テロ対策センター(NCTC)のテロ報告書(2009年4月)によると、2008年には世界各地で11,770件のテロ行為があり、54,000人以上が死傷しています。全体の40%近くが中近東地域、35%がアフガニスタンパキスタンを含めた南アジア地域で発生しています。テロの犠牲者15,765人は、主に「爆破」「武力攻撃」「自爆テロ」などによって命を落としていますが、最も多いのが民間人、次いで警察官、兵士などとなっています。また、米国航空機爆破テロ未遂事件後には、イエメンが「テロの温床」となっているとの指摘もあり、国内情勢の不安定化から、2010年1月には日本を含めた在イエメン各国大使館が、一時的に閉鎖や業務停止する事態も起きています。

 

日本人が抱くテロの不安

このようなテロ事件の発生は、日本にも大きな影を落としています。内閣府が2009年に実施したテロに関する意識調査(詳しくは国政モニター課題報告)では、99%が「9.11」の発生を衝撃的に感じており、66%がいまだに鮮明に記憶していました。また、61%が国際的なテロが日本で起きる可能性が高いと感じており、50%が、国際テロ組織「アル・カーイダ」など過激思想に基づく組織のメンバーが、国内に潜伏してテロを起こす可能性があるのではないかと考えていることがわかりました。このことからも、テロ対策をめぐる国際情勢を背景に、多くの日本人が「他人事ではない」とテロを不安に感じていることが読み取れます。

テロに関する日本国民の意識
 
 

多岐にわたるテロ行為

しかし、一言で「テロ」といっても、すべてがアル・カーイダによる犯行ではありません。テロに国際法上の定義はありませんが、一般的には、「特定の主義主張に基づいて、国家などにその受け入れを強要したり、社会に恐怖を与える目的で殺傷・破壊行為(ハイジャック、誘拐、爆発物の設置など)を行ったりすること」を指します。言い換えれば、「テロ」とはとても広範囲で多岐にわたる行為を含むものであり、その形態には実にさまざまなものがあります。例えば、「9.11」に代表されるイスラム過激派によるテロ行為のほかにも、イスラエル・パレスチナ問題に見られる中東和平の文脈のなかで繰り返されるテロ、民族間の対立に起因するテロ、さらには一国内での過激思想勢力が引き起こすテロなども、広く「テロ」の範ちゅうに含まれます。この意味で、テロ対策は「9.11」が起きるはるか以前から、国際社会にとってとても大きな課題の1つでした。

 

なぜテロはなくならないのか

そもそも、なぜテロはなくならないのでしょうか。これは、国際社会に突きつけられたとても大きな課題です。テロの背景には、宗教や民族、政治的対立による紛争、克服されない貧困、脆弱な統治機構など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。例えば、アフガニスタンの場合、旧ソ連軍撤退後の戦乱から台頭した「タリバーン」が、国内でアル・カーイダに潜伏先や訓練場所を提供していたことが、2001年の米国の同時多発テロの原因の1つとなりました。東南アジアの場合は、同地域一帯に暴力的手段を用いてイスラム国家建設を目指す「ジュマ・イスラミーヤ」の一部が、アル・カーイダに影響されて、インドネシアやフィリピンなどでテロ事件を起こしています。また、最近では、裕福で高学歴の若者が、正義感や使命感でテロに加担したり、貧困国からアメリカやイギリスなどに移住した移民の2世、3世が、インターネット情報などに感化されてテロを起こしたりするケースも見られます。

 

テロ撲滅に向けた国際社会の取組

テロ防止関連13条約テロは多くの人に悲しみをもたらすだけでなく、終わりのない怒りの連鎖を引き起こします。このため、国際社会は、さまざまな角度からテロをなくす方策に力を注がなければなりません。軍事的な掃討作戦やテロリストへの大量破壊兵器の拡散防止はもとより、国際的なテロリスト処罰法規の強化、テロ資金対策、出入国管理など、テロリストが国境を越えて自由に活動できないようにすることがとても重要です。国際社会では、国連、G8サミット、ASEAN(東南アジア諸国連合)APEC(アジア太平洋経済協力)といった多国間の枠組みで幅広い国際協力が進められていますが、これまでに爆弾テロや核テロを防止する条約など「テロ防止関連13条約」の締結促進のほか、紛争の平和的解決と平和の定着に向けた外交上の働きかけ、PKO(国連平和維持活動)などテロの根源となる問題への対処が行われています。

 

テロのない世界を目指して

さらに、日本は途上国に対して、テロに負けない力を高める支援をさまざまな形で行っています。例えば、アフガニスタンに対する支援では、タリバーンの資金源になっているケシ(麻薬の原料)栽培を他の作物の栽培にシフトできるよう、農業分野での技術協力を行っています。また、東南アジアでは、空港保安訓練や出入国管理セミナー、税関職員研修の実施、港湾の大型X線貨物検査機や巡視船の供与、警察の能力向上プログラムなどを行い、テロに負けない社会、テロリストを生み出さない社会づくりを側面から支援しています。こうした地道な取組が、紛争や貧困、脆弱な統治機構といった世界の不安定要素を取り除き、ひいては日本の平和と安定につながっていきます。テロのない世界を目指して、国際社会の結束した取組が今、もとめられています。

 
メルマガ登録希望の方はこちらからお申込みください。
ご意見ご感想もお待ちしています。 (外務省国内広報課)
このページのトップへ戻る
目次へ戻る