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Vol.43 2009年8月18日
にほんごできます! 世界の日本語事情

海外では最近、アニメやマンガなど日本のポップカルチャーをきっかけに日本語学習を始める人が増えています。日本は世界中でさまざまな日本語教育支援を行っていますが、海外での日本語教育はなぜ大切なのでしょうか。"ソフト・パワー"の観点に着目して考えます。

ポップカルチャー人気で高まる日本語学習熱

「ドラえもんを吹き替え無しで見たい!」「連載マンガの続きを翻訳無しで早く読みたい!」。海外に住む外国人の日本語学習動機と言えば、これまでは「留学」や「就職」といった実利が主な目的でしたが、それが最近、アニメマンガ、ゲームソフト、ポップミュージック、ファッションといった日本のポップカルチャーをきっかけに、日本語を学び始める人たちが増えています。特徴的なのは、大人よりも子どもたち(年少者)の間での学習熱が高くなっていることで、それが日本語、ひいては日本への関心につながっているのです。

海外の日本語学習者の学習目的(教育段階別)
 
 

日本語を学ぶ外国人は世界に300万人

では、実際に世界中でどのくらいの人が日本語を学んでいるのでしょうか。国際交流基金の海外日本語教育機関調査によると、日本への関心の高まりを反映して学習者は年々増え続け、2006年には133か国・地域で約300万人に上っています。調査を開始した30年前に比べて、教育機関数は11.9倍(13,639機関)、教師数は10.8倍(44,321人)に増加。学習者は韓国、中国、豪州などに集中しています。日本語能力試験は2008年度、52か国・地域173都市で実施され、国内外の約56万人が受験していますが、学習者数増に対応する形で、2009年度からは一部の試験会場で実施回数が年1回から2回に増えています。

海外における日本語学習者数の推移 日本語学習者数上位10か国の前回調査との変化
 

“ソフト・パワー”の観点から見た日本語

そもそもなぜ外国の人たちに日本語を学んでもらい、日本を知ってもらうことが重要なのでしょうか。それは、海外での日本語教育が、国家間の交流の担い手を育て、友好関係の基盤を築く上で重要な要素となるからです。その国の国民に「日本語」を通じて直接的、間接的に働きかけることで、日本に対する理解を深めたり、イメージを向上させたりすることができ、それが日本の政策への支持や日本人の海外での安全確保につながります。さらには、世界の人材や投資の流入を通じた社会経済の活性化にまで拡大しています。文化や価値観の魅力によって他者を自分の望む方向に動かす力をソフト・パワーと呼びますが、相手国の政府に対してだけでなく世論や一般市民などに直接働きかけるパブリック・ディプロマシー(対市民外交)を効果的に展開する上で、日本語の普及は、こうした魅力がソフト・パワーの源泉としての効果を発揮するのに有効だと考えられています。日本は国際交流基金を通じて、日本語教育を始めとする様々なパブリック・ディプロマシーを展開しています。

 

世界各国の言語普及政策

日本の国際交流基金、英国のブリティッシュ・カウンシルのように、海外での自国語教育などを促進する文化交流機関を持っている国も少なくありません。例えば、植民地支配の歴史を持つフランスは、古くから海外での仏語教育に熱心に取り組んでおり、アリアンス・フランセーズを19世紀後半に創設。 "共通言語"としての仏語の地位を守るため、5大陸で仏語教育を実施する世界最大級の組織となっています。また、最近では、成長著しい中国が、2004年から世界中の有名大学などに孔子学院を次々と設立(2009年4月現在、81か国・地域326施設)。教師派遣、教材提供、運営費補助のほか、中国理解講座の開設やオンライン教育の拡充も進めています。

 

海外の日本語教育を巡る課題

しかしながら、国によっては日本語教材の入手が困難だったり、現地語を使った教材がなかったりするなど、学習環境が学習者増に追いつかない現状があります。前述の海外日本語教育機関調査では、海外で日本語教育を行う上での問題点として、「適切な教材の不足」(40.4%)、「施設・設備が不十分」(30.2%)、「教材や教授法に関する情報の不足」(26.5%)、「教師不足」(19%)が指摘されています。日本語普及を通じたパブリック・ディプロマシーを進めるうえで、これらの課題の解決が急務と言えます。

 

国際交流基金を通じた日本語教育支援

このため、日本は国際交流基金を通じて、様々な日本語教育支援を行っています。例えば、映像教材(「エリンが挑戦!にほんごできます。」は世界10か国以上でテレビ放映)やインターネットを活用した教材(教材制作のノウハウや素材を提供する「みんなの教材サイト」など)の開発、日本語教育専門家(日本人)の海外派遣、外国人日本語教師や専門家などの訪日研修、世界各地の日本語教育機関を結ぶ「JFにほんごネットワーク」(さくらネットワーク)(2010年までに、世界100か所以上を結ぶ予定)の構築などに力を入れています。

写真(左):豪州の小学校での授業風景(提供:国際交流基金)

写真(右):インドでの日本語教師養成プログラム(提供:国際交流基金)

国籍、民族、文化の違いを超えた日本語コミュニケーションを促す

日本語でのコミュニケーションには、日本人と外国人の間のコミュニケーションだけでなく、世界各国の日本語を母語としない学習者同士のコミュニケーションもあります。国籍、民族、文化の違いを超えたコミュニケーションを促す「相互理解のための日本語」という考え方も出てきます。「相互理解のための日本語」を通じ、学習者は複数の言語や文化に触れる機会を得、また新しい視点も生まれ、人間的な豊かさを得られると考えられています。国際交流基金は、「相互理解のための日本語」を理念として、「JF日本語教育スタンダード」を開発しています。その際参考にしているのが、ヨーロッパの言語教育政策「言語のためのヨーロッパ共通参照枠」です。ヨーロッパでは、統合が進み始めた30年前頃から、域内の留学や就職などの人の移動を念頭に、域内で使用されている複数の言語の学習・教育・評価のための枠組みが作成され、活用されています。

 
 

ボランティアが伝える日本語の魅力

国際交流基金を通じた日本語教育のほかにも、世界的な日本のポップカルチャー人気の高まりを活かした取組として、ポーランドで日本語の授業を行うボランティア日本人がボランティアで日本文化を紹介しながら日本語を教える日本文化発信プログラムがあります。これは、EUへの加盟などに伴い青年海外協力隊の派遣が終了したハンガリーポーランドブルガリアルーマニアの中・東欧4か国で行われており、日本人ボランティア26人が2009年1月から2年間の予定で派遣されています。ボランティアはそれぞれの国の社会に溶け込み、現地の人々と同じ目線に立って日本語や日本文化の魅力を発信しています。

 

日本語は時間をかけてじっくりと

言葉の習得は一朝一夕にはいかず、学習(教育)の効果が現れるのには相当な時間がかかります。だからこそ、将来のために今、海外の日本語教育を充実させることがとても大事であり、ニュージーランドの中学生が初めて取り組んだ書道(提供:国際交流基金)子どもの頃から興味を持って日本語を学び続けていけるよう、アニメやマンガなどポップカルチャーを活用した日本語教育が求められています。日本語を学ぶことは、日本の「こころ」を知るための初めの一歩です。世界中の人たちが時間をかけてじっくりと日本語を学んでいけるよう、日本はさらに取り組んでいきます。 

 

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