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Vol.4 2008年8月6日
三大感染症対策~日本の取組と世界基金

中世に流行したペストとの闘いから、現代の新型インフルエンザとの格闘に至るまで、人類の歴史とは、感染症との闘いの歴史でもありました。なかでもHIV/エイズは、ペストが中世にもたらした被害を上回る、史上最悪の感染症となりつつあります。感染症に対する国際社会の取り組みと、日本の支援について紹介します。

世界三大感染症

エイズ、結核、マラリア、これを「三大感染症」と呼んでいます。 感染症は、単に人々の生命を脅かす保健や医療の問題だけにとどまりません。感染者や死亡者が増えれば、労働力が低下し、経済活動は低迷します。感染者の家族にとっては、働き手や収入の道を失うだけでなく、治療費も大きな負担となります。その結果、さらに貧困にあえぐことになり、それがさらなる感染を拡大させるという悪循環を生んでいます。国にとっても労働力の低下は国家の発展の妨げとなり、治療費は大きな財政負担となります。同時に、孤児の発生や母子感染、感染者の人権問題など、深刻な社会問題をも引き起こします。まさに人々の健康なくして、途上国の経済、社会の発展はないのです。

三大感染病
 
 

九州沖縄サミットで注目を集めた感染症対策

効果的な治療法や対策があるにもかかわらず、途上国においては多くの人々が感染症で死亡しています。感染症による労働力の低下と治療に必要な費用は、個々の家計、さらには国家の財政をも圧迫し、貧困の大きな原因となっています。感染症は、被害の規模や対策にかかる経費の大きさから、一国のみで解決できる問題ではなく、世界各国が協力して対策を進めなければならない、地球規模の問題です。2000年7月の九州・沖縄サミットで、日本はサミット史上はじめて、途上国の感染症問題を主要議題の1つとして取り上げました。
日本は、感染症対策の国際的な関心を喚起するとともに、2000年度から2004年度までの5年間に、総額約30億ドルの感染症対策支援を行うとする「沖縄感染症対策イニシアティブ」を発表しました(実際には約58億ドルを拠出。)。その後、日本は、「『保健と開発』に関するイニシアティブ」を発表し、2005年から2009年までの5年間で感染症を含む保健分野の支援に約50億ドルの支援を行うことを表明しました。このイニシアティブを通じて、日本はミレニアム開発目標(MDGs)の達成に貢献するため、感染症対策、保健システム強化、関連分野の支援など、包括的な支援を実施しています。

 

世界基金の設立

2000年に日本が議長を務めた九州・沖縄サミットがきっかけとなり、感染症問題への国際社会の関心が高まり、2001年のジェノバ・サミットを経て、2002年1月の「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」の設立につながりました。世界基金は、現在、感染症に対する国際社会の取り組みの要(かなめ)となっています。

 

世界基金のユニークな支援策形成プロセス

2002年に設立された世界基金は、三大感染症の予防、治療、ケア等の対策に対して資金を支援する基金であり、これまで世界の136カ国において約250万人の命を救うなど、途上国における感染症対策の「最大の資金供給者」です。また、援助国と援助を受ける国だけではなく、国際機関、民間企業や財団、NGO、学界、感染症に苦しむ地域の人々などが一緒に支援策を検討し、基金に対して申請を行うという「全員参加型」のスタイルが特長です。

世界基金の実績
 
 

250万人の命を救った!~世界基金の成果とインパクト

世界基金の設立により、三大感染症対策のための国際的な資金協力が大幅に増加しました。その結果、抗レトロウィルス治療が普及してHIV感染者数とエイズ患者の死亡数が世界で減少傾向に転じ、結核患者の死亡数も減少するなどの成果が上がっています。さらに殺虫剤を練り込んだマラリア蚊帳の普及などにより、マラリア感染率もタンザニア、モザンビークなどで減少しており、国、市民社会、国際機関など幅広い関係者の間で、世界基金を通じた支援の実績が評価され、更に連携が強化されてきています。

国際的な三大感染症対策支援総額に占める世界基金の支援額の割合
 

沖縄から洞爺湖へ~世界基金への日本の支援

2008年、日本は再びサミット議長国として、感染症対策に関する新たな展望を国際社会に向けて発信していくため、5月23日~24日、東京・赤坂にて「国際シンポジウム-沖縄から洞爺湖へ-『人間の安全保障』から見た三大感染症への新たなビジョン」を開催しました。国内外から130名もの参加者が集まり、三大感染症を中心とした国際保健協力のあり方や、世界基金が国際保健協力に果たす役割について討議が行われました。福田総理はこのシンポジウムの演説において「アフリカをはじめとする途上国にとって、感染症を含む保健問題への取組みが、開発における最重要課題の1つである」と改めて明言しました。ミレニアム開発目標の達成に向けて努力することは、日本が推進する「人間の安全保障」の実現にもつながります。日本は世界基金の「生みの親」として、設立以来8.5億ドルを拠出してきた世界基金に、更に5.6億ドルの追加拠出を行うことを約束しました。世界基金の三大感染症対策における着実な成果を評価し、日本はこれからも世界基金への協力を進めつつ、感染症対策の強化や、途上国の貧困削減に向けて中心的な役割を果たしていきたいと考えています。

 
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