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Vol.37 2009年5月29日
紛争後の国づくりを支える~平和構築の文民専門家

第二次世界大戦後の世界を二分した「冷戦」の終結後、国際社会における紛争の形態は変容し、平和構築のあり方も大きく変わってきました。平和な社会を再建するために必要な協力とは何か、近年重要性が増している文民専門家と日本の取組をもとに考えます。

冷戦後の世界と紛争

東西冷戦が終結すると、世界では国家間の紛争よりも、国内の異なる民族、人種、宗教などを火種とする武力紛争が頻発するようになりました。これらの地域・国内紛争の多くが、アフリカ中東などの途上国で起き、各地で大量の難民・避難民が発生しています。さらに、2001年の米国同時多発テロ事件(9.11)以降は、紛争地域が国際テロ組織の温床となる恐れがあることが改めて認識されており、紛争の様相は大きく変わってきています。

 

国連平和維持活動(PKO)の大規模・多機能化

紛争の多様化・複雑化に伴い、軍事力だけでは紛争の根本的解決に結びつかないことが指摘されるようになりました。紛争で政府の統治機能や生活基盤が破壊された国では、高い失業率やすぐには改善されない生活環境に対する住民の不満が反政府勢力と共鳴し、再び紛争状態に逆戻りしてしまうケースもあります。このため、"平和の定着"から"国づくり"に至るまでの平和構築における包括的な取組が必要だと認識されるようになったのです。このため、国連は平和維持活動(PKO)の展開数を増やし、大規模で多機能なものへと変化させてきています。また、PKOは、2001年からの8年間で、PKO軍事・警察要員は2.3倍の約9万人に拡大、PKO予算は3倍以上の約76億ドルに増加。国連PKO以外でも、多国籍ミッションによる国際平和協力活動が、アフガニスタンやイラクなど世界各地で行われています。

平和構築の流れ
 
 

平和構築における文民専門家ニーズの高まり

国連PKOや多国籍ミッションが国づくりに関与し、任務が多様化すると、治安の安定化を担う「軍事・警察要員」に加えて、国の行政基盤確立などを担う「文民専門家」の果たす役割が極めて重要になってきました。平和構築の現場では、人道支援、開発、教育、法整備の支援などの直接的な活動や、これらの活動を支えるための後方支援(安全、会計、人事など)や広報・PR、物資調達など幅広い分野で専門家が必要とされています。冷戦直後のPKOで働く文民専門家は約600人でしたが、現在では10倍の約5,900人に増加しています。しかし、一方で、国連PKOや多国間による取組が急速に拡大されたことで、現場での文民専門家の不足が指摘されています。

国連PKOおよび政治・平和構築ミッションの展開状況(2009年3月末現在)
 

文民専門家育成に向けた日本の取組~平和構築人材育成事業

このような国際情勢を踏まえ、日本は2007年、平和構築の現場で活躍する文民専門家を育てるための平和構築人材育成事業を立ち上げました。講義とワークショップによって実践的な専門知識・技術を習得する「国内研修」と、平和構築の現場で活動する国際機関などで現場経験を積む「海外実務研修」から構成され、2年間で日本人30人とアジア人30人の計約60人が研修を修了しています。2009年度からは、これまで実施してきたコース(本コース)の海外実務研修の期間の延長や官民を問わず、シニアの活力を平和構築で活用するシニア専門家向けコースの新設などでこの事業を拡充します。

平和構築人材育成事業の流れ
 

経験を積んで『一人前』に

大井さん

1期生の大井綾子さんは、国連開発計画(UNDP)東ティモール・ディリ事務所で海外実務研修を行い、修了後も引き続きアソシエート・エキスパートとして勤務を続けています。大井さんは「平和構築の分野で働くには、どこかで経験を積んで『一人前』になっている必要があります。研修で得た紛争や平和構築の専門知識が、現場でプロジェクトの調整を行う際にとても役立っており、自信を持って仕事ができています」と話しています。

 
 

平和構築の現場で活躍する修了生たち

この事業では、海外実務研修後の平和構築分野での就職支援も行い、修了生は、東ティモールスーダンコソボなど、世界各地の平和構築の現場で活躍しています。国連や国際機関、NGOなどの職員として働く場合、ほとんどのポストで関連分野の専門知識や語学力に加えて一定の実務経験が求められますが、海外実務研修で国連ボランティアとして勤務することで、平和構築の現場での経験として評価されます。研修中に築いたネットワークが、将来のキャリア形成にもつながっています。

現場での実務経験とネットワークが鍵

2期生の手島正之さんは、企業で働きながら平和構築分野の就職を希望していましたが、「『フィールド経験のなさ』がたたり、箸にも棒にもひっかからなかった」と言います。平和構築人材育成事業に参加し、コソボの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で現場経験を積んだことで、「今までの経験を平和構築の現場に関連づける作業がスムーズにできました」と振り返っています。UNHCRエチオピア事務所で研修した南部成子さんは「難民支援の実態を学び、多くのUNHCR職員とネットワークを構築する機会を得ました。このことにより今現在、選択肢が広がってきています」と話しています。

 
 

平和構築における日本の役割

2008年7月のG8北海道洞爺湖サミットにおいても、軍、警察、文民の平和構築能力を世界的に強化するイニシアティブが表明されるなど、平和構築は日本のみならず、国際社会にとっても重要な課題です。日本は、これからも平和構築の現場で活躍できる文民の育成などを通じ、国際社会とともに、平和構築に積極的に取り組んでいきます。

 
 
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