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Vol.34 2009年4月13日
アラブ首長国連邦~中東・アフリカ地域の物流ハブを目指して

世界有数の産油国であるアラブ首長国連邦(UAE: United Arab Emirates)は近年、石油資源に頼らない発展を目指すドバイの急成長で、世界中の注目を集めています。2007年の国民1人当たりGDP42,349ドル、GDP成長率16.5%と高い経済成長を遂げているアラブ首長国連邦とは一体どのような国なのでしょうか。

砂漠に覆われた連邦制国家

アラビア半島の東南端に位置するアラブ首長国連邦 は、アブダビ、ドバイ、シャルジャ、ラアス・ル・ハイマ、フジャイラ、アジュマン、ウンムルカイワインという7つの首長国から成る連邦制の国家です。ペルシャ湾に面し、国土の大半は砂漠に覆われています。人口は449万人(2007年)。公用語はアラビア語ですが、ビジネスの場では英語も共通語として使われています。アラブ人をはじめ、インド、パキスタン、イランなど外国籍の人々も多く居住しています。

アラブ首長国連邦
 
 

建国の歴史

現在のアラブ首長国連邦がある地域は、7世紀にイスラム帝国、次いでオスマン・トルコ、ポルトガル、オランダによって支配されてきました。18世紀、アラビア半島南部の部族がこの地に移り住み、アラブ首長国連邦の基礎ができあがりました。現在の北部首長国周辺の人々は、ペルシャ湾を航行するヨーロッパ勢力と対立していましたが、1853年にイギリスと恒久休戦協定を締結。1892年にはイギリスの保護領となりました。1968年、イギリスがスエズ以東からの撤退を宣言したため、アブダビやドバイなど6首長国は1971年、アラブ首長国連邦を結成。翌年、ラアス・ル・ハイマ首長国が参加し、現在の7首長国による連邦制国家となりました。

 

7首長から成る連邦最高評議会

アラブ首長国連邦を構成する7つの首長国には、それぞれ首長がいます。これらの7首長によって国の最高意思決定機関である「連邦最高評議会」が組織されています。ここで大統領が選出されますが、建国以来、大統領はアブダビ、副大統領はドバイから選ばれています。主に外交や国防の分野では連邦政府が政策を実施していますが、経済分野などでは各首長国の独立性が強くなっています。

 

石油資源が豊富な首都アブダビ

アラブ首長国連邦は石油生産量が日量297万バレル(2006年)を誇る世界有数の産油国です。その大部分がアブダビで生産されています。日本は、石油輸入量の4分の1をアラブ首長国連邦から輸入しており、国別ではサウジアラビアに次いで2位の輸入相手国となっています。「建国の父」として国民に慕われている故ザーイド大統領は、潤沢な“オイルマネー”をインフラ整備に投入するとともに、砂漠の緑化政策を推進し、現在の緑豊かなアブダビの発展の基礎を築きました。

世界の原油確認埋蔵量(2005年)
 
日本の原油輸入先
 

急成長を遂げるドバイ~ジャバルアリー・フリーゾーン

アブダビに比べて石油資源量が少ないドバイでは、早い段階からエネルギー産業に頼らない首長国を目指してきました。ドバイは1985年、古くから中継貿易の港として栄えたジャバルアリー地区に、世界最大規模の貿易港を持つフリーゾーン(経済特区)を開発。物流のハブとしてドバイ経済発展の原動力とするため、外資100%、無税、海外送金の自由などを保障し、外国企業の誘致を積極的に進めました。その結果、世界中から約6,000社(うち日本企業は約120社)が、中東地域のビジネス拠点をドバイに置くまでになりました。このほか、インターネットシティ、メディアシティ、ファイナンシャルセンターといった産業分野ごとの特別区域の開発にも力を入れています。

 

中東・アフリカ地域の物流ハブを目指して

1985年にはドバイを本拠地とする「エミレーツ航空」が創設されました。航空機2機だけで最初の航路を飛行したエミレーツは、現在では126機を所有し、世界で61か国、101以上の目的地に飛行(エミレーツ航空ウェブサイトより)するまでに急成長しました。これに伴い、ドバイ国際空港の拡充整備にも着手。2008年には第3ターミナルが完成し、年間約7,000万人の旅客需要に対応できる中東・アフリカ地域のハブ空港として、ドバイの経済発展を支えています。また、ジャバルアリー・フリーゾーンの近くには、滑走路6本を有する新しい巨大空港の建設も進められており、完成すれば、空と海の物流が10分でつながる世界最大の物流ハブが誕生することになります。

 

ドバイのユニークな大型プロジェクト

ドバイ「パーム・ジャバルアリー」ドバイでは、近年の開発ブームの波に乗り、ユニークな大型プロジェクトが次々と進められています。例えば、世界一高いとも言われるタワー「ブルジュ・ドバイ」、椰子の木の形をした埋め立てリゾート「ザ・パーム」(パーム・ジャバルアリーなど3か所)、世界最大のレジャー施設「ドバイ・ランド」、200以上の高層ビル群を有する「ビジネス・ベイ」などがあり、国内外の投資家らの注目を集めることに成功しました。また、アラブの美しい海と暖かい気候は、ヨーロッパや他の中東諸国をはじめ世界中の人々を惹きつけており、近年、ドバイを訪れる観光客が増えています。

 
 

日本とアラブ首長国連邦の友好関係

アラブ首長国連邦に居住する日本人は、中東・アフリカ地域で最多の約3,600人(2008年10月)。石油、自動車、建設など様々な分野の企業がビジネスの拠点を構えており、ドバイの両端を結ぶ「ドバイ・メトロ」(全自動無人運転鉄道)など、日本企業が中心となって建設が進められている現地政府プロジェクトもあります。また、アブダビでは1978年、ドバイでは1980年に日本人学校が開校するなど、日本人をはじめ外国人が暮らしやすい環境も整備されています。2006年には、ムハンマド・アブダビ皇太子の強い希望により、アブダビにある日本人学校の付属幼稚園で、アラブ首長国連邦人児童の受け入れも始まっており、次世代に続く日本とアラブ首長国連邦の友好の象徴として、日本文化や教育の伝播にも力を入れています。

 

国家間の更なる連携強化に向けて

2007年4月、安倍総理(当時)がアラブ首長国連邦を訪問した際、両国の経済関係強化に向けて、「日・アラブ首長国連邦合同経済委員会」が創設されました。同年12月には第1回会合が開催され、両国間の貿易・投資・事業機会の増大を目的としたビジネス環境改善のための具体策などを、今後協議していくことで合意しました。これにより、これまで民間レベルで積み上げたビジネス関係に加え、国家間での連携を更に強めていきます。

 
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