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Vol.25 2009年2月4日
メコン地域の発展を目指して

2009年1月20日、日メコン交流年を記念したオープニング・レセプションが東京で行われました。日本はメコン地域諸国に対し、多岐にわたる分野での交流を深めてきましたが、そもそもメコン地域にはどのような国があって、日本にとってどのような存在なのでしょうか。

メコン地域との交流の始まりは琉球から

日本とメコン地域の交流の始まりは、およそ600年前に遡ります。当時日本では、琉球(沖縄)を中心に、メコン地域を含む東南アジアとの交易が活発となり、中国や朝鮮半島を経由する海上貿易ルートが形成されました。その後の朱印船貿易の時代には、多くの日本人がメコン地域に移り、アユタヤ(タイ)、ホイアン(ベトナム)、ウドン(カンボジア)を始めとする各地に、日本人町や日本人居住地ができました。

 

仏教国としての共通点

また、日本とメコン地域諸国は、仏教国であることでも知られています。大きく分けると、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイでは上座部(小乗)仏教を信仰する人が多いのに対し、ベトナムと日本では大乗仏教が主流となっています。同じ仏教国として文化的に共通項も多く、今日の日本とメコン地域諸国との友好関係の基盤にもなっています。では、メコン地域の国々とはどのような国なのでしょうか。

 

カンボジア その1~内戦から復旧・復興へ

1953年に旧宗主国フランスから独立。シハヌーク殿下の指導力によって1960年代まで平和で安定した時代が続きました。しかしながら、70年代のロン・ノル将軍によるクーデター以来長年にわたる内戦が続き、その間、ポル・ポト政権下の大規模な粛清等多くの国民の命が失われました。1991年にパリ和平協定が締結され、内戦は終結し、カンボジアは国際社会の支援を得つつ国土の復旧・復興への道を歩みます。また、1999年にはASEANに正式加盟し、国際社会への参画に取り組んでいます。我が国は、カンボジアの和平以降、最大の援助国としてインフラ整備を始め地雷除去、病院や学校の建設、法制度整備、人材育成など復興・発展と民主化のプロセスに積極的な役割を果たしています。

 

カンボジア その2~国家の安定と発展:アジア最大の親日国の1つ

カンボジアは、ASEANの中でも後開発国の1つですが、政治の安定の下で国土の復興と発展に取り組んだ結果、近年は目覚ましい経済発展を遂げています。2004年から2007年まで2桁の経済成長を続け、1人当たりのGDPは2003年で350ドルであったのが、2007年には594ドルまで上昇しました。2008年には日カンボジア投資協定が発効し、日本からの投資増加が期待されています。また、同年は両国の外交関係樹立55周年を迎えましたが、我が国がこれまで行ってきた同国の平和と発展のための援助は、カンボジア政府・国民から高い評価と賞賛を得るなど極めて好意的に受け止められており、今やアジア最大の親日国の1つといえます。

 
 

ラオス その1~内戦から市場経済へ

ラオスは、1353年にラオ族によってランサーン王国として統一されます。その後、フランスの植民地支配下でインドシナ連邦に編入された後、1953年にラオス王国として独立。しかし、東西冷戦の下、独立後もベトナム戦争と並行して、長期にわたって内戦状態が続きます。1975年、ラオス人民民主共和国が成立し、1986年以降は「新思想政策」を導入して経済開放化と市場経済原理の導入を進め、銀行制度や税制の改革、経済関連法の整備、外国企業の誘致に取り組んでいます。1997年7月にASEANへの正式加盟を果たし、2004年にはASEAN議長国としてASEAN関連首脳会議を主催しました。

 

ラオス その2~小さな内陸国の新たな挑戦

ラオスは、インドシナ半島の中央に位置する人口約600万人の内陸国です。海に面していないので、陸上交通の中心地としての発展を目指しています。最近は、恵まれた自然条件を活かした農業、水力発電、鉱業などの分野が注目されつつあります。ASEANの中では、最も開発が遅れている国の1つですが、2007年の1人当たりのGDPは678ドル、成長率は7.9%を達成しました。日本からの投資は増加傾向にあり、2008年には日ラオス投資協定が発効し、「日ラオス官民合同対話」の場では、政府と企業が協力し合って投資環境の改善を進めています。

 

ミャンマー その1~社会主義政権から軍事政権へ

11世紀半ば頃に最初のビルマ族による統一王朝パガン王朝が成立。その後タウングー王朝、コンバウン王朝などを経て、1886年に英領インドに編入され、1948年にビルマ連邦として独立。1962年には社会主義政権となります。1988年、全国的な民主化要求デモにより26年間続いた社会主義政権は崩壊しますが、国軍がデモを鎮圧し、国家法秩序回復評議会を組織し政権を掌握。1990年には総選挙が実施され、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟が圧勝しますが、政府は民政移管には憲法が必要であるとして政権を移譲しませんでした。その後、現在に至るまで3度にわたり、政府はスー・チー氏を自宅軟禁しています。2008年5月、新憲法草案採択のための国民投票が行われ、新憲法が承認されました。

 

ミャンマー その2~豊かな天然資源を持つメコン地域最大の国

ミャンマーは、メコン地域最大の面積を持ち、天然ガスや石油、ルビー、ヒスイなどの天然資源に恵まれた国です。軍事政権後も、日本はミャンマーの民主化及び人権状況の改善を促すため、ミャンマーを国際社会の中で孤立させるのではなく、現政権とスー・チー氏を始めとする民主化勢力の双方との関係を維持し、双方に対し粘り強く働きかけていく独自の外交方針を取っています。また、2008年5月に起こったサイクロン被害に対しては、テントや毛布、発電機等の緊急援助物資の供与や、国際機関を通じた緊急支援、国際緊急援助隊医療チームの派遣などを実施しました。ミャンマーは1997年、ラオスと共にASEANに加盟しました。

 

タイ その1~長い歴史を持つ王国

タイは、13世紀のスコータイ王朝によりほぼ現在の地域に国として成立し、その後アユタヤ王朝、トンブリー王朝を経て現在のチャックリー王朝に引き継がれています。伝統的に柔軟な全方位外交を展開して、東南アジアの中で唯一、欧米諸国の植民地にならず独立を守った国です。また、現在のプミポン国王は在位60年を越え、国民から非常に尊敬されています。メコン地域では唯一のASEAN原加盟国で、人口規模でも経済水準の高さでも、この地域で群を抜いています。

 

タイ その2~東南アジアにおける日本の生産拠点

タイから見ると日本は、貿易額、投資額、援助額ともに第1位であり、非常に緊密な関係を築いています。また、日本にとってタイは、東南アジア地域の重要な生産拠点であり、多くの日本企業が進出しています。2007年には、日・タイ経済連携協定が結ばれ、また、日タイ修好120周年を迎えて、ますます交流が盛んとなりました。

 
 

ベトナム その1~千年を越える中国支配と戦争の歴史

長い間の他国の支配と、戦争を乗り越えたのがベトナムです。まず、秦の始皇帝以降、千年にわたって中国の支配下にありました。このため、言葉や料理など、強く中国文化の影響を受けています。その後もフランスの植民地支配下にあったり、ベトナム戦争があったりと苦難の歴史が続きました。1976年に南北が統一されますが、78年のカンボジアへの侵攻は、中国との戦争、国際社会からの孤立へとつながり、91年のカンボジア和平の成立まで更なる困難な時代が続きました。1995年、アメリカとの国交正常化、ASEAN加盟を果たし、1986年に採用したドイモイ政策を軌道に乗せたベトナムは、復興と安定を遂げ、今日の目覚ましい発展につながっています。

 

ベトナム その2~中国に代わる日本の工場

そして、1990年代から日本企業の進出が活発になり、この「ベトナムブーム」は今日まで続いています。理由は、2003年からベトナムにおける投資環境改善に関する「日越共同イニシアティブ」が実施され、ベトナムの投資環境が改善されてきていること、また、それまで中国進出を進めていた企業が、中国の経済成長に伴う人件費の高騰等により、地理的に近く、より人件費が安く、若くて豊富な労働力を有するベトナムに生産拠点を移すパターンが増えてきたことなどが挙げられます。さらに、2008年12月には「日・ベトナム経済連携協定」が署名され、経済分野における日越関係の更なる活性化が期待されます。また、ベトナムにとって日本は最大の援助国であり、道路や橋を始めとするインフラ整備や、病院や学校の建設と人材育成など、日本のODAによる多くのプロジェクトが展開しています。

 

メコン地域諸国との二国間関係

日本はこれまでメコン地域諸国に対し、ODAやNGOとの連携による支援を数多く行ってきました。また経済面でも、日本企業の進出などを通じ緊密な関係を築いています。最近では日本とメコン地域諸国との間に、経済連携協定(EPA)や投資協定が次々と結ばれ、二国間関係は、ますます強化されています。メコン地域諸国への投資は、市場の成熟化を促し、将来的には日本経済の活性化につながることも期待されています。

 

ASEANの域内格差是正を目指して

ASEANは、日本にとって色々な意味で大切なパートナーです。ASEANの繁栄が日本のより大きな繁栄と安定につながることは間違いありません。そして、ASEANの発展と安定、今後のASEAN統合を考えた時に、いくつかの阻害要因が考えられますが、その中の1つとして上げられるのが域内格差です。ASEANの中で開発の遅れている国をCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)と呼んでいますが、この4か国は1人あたりのGDPが1,000ドルを下回っています。これらの国がメコン河流域にあることから、この地域を面で捉え、地域の特性を踏まえた支援を行うことが効果的ではないかという発想で行われているのが、メコン河流域開発です。メコン地域全体の経済成長を促すための支援として、「開発の三角地帯」「東西経済回廊」「南部経済回廊」と呼ばれるプロジェクトが展開されています。

メコン流域に対する我が国の協力
 
 

開発の三角地帯

「開発の三角地帯」とは、CLV(カンボジア、ラオス、ベトナム)の国境付近に位置する一帯を指し、メコン地域の中でも特に開発が遅れているとされています。日本はこの地域への協力のため、日ASEAN統合基金を通じた約2,000万ドルの支援を表明。道路・橋梁の建設や学校・病院建設、上水システム整備等の実施が決定されています。

 

経済回廊の物流効率化

経済回廊とは、各国を横断(もしくは縦断)し、国境を越えて人とモノが活発に移動できるようにする、道路や橋梁等の運輸インフラのことです。現在日本は、ベトナム~ラオス~タイを結ぶ「東西経済回廊」と、タイ~カンボジア~ベトナムを結ぶ「南部経済回廊」への支援準備を進めています。

 

プロジェクト成立に向けて

具体的には、X線検査機等の導入による通関・税関機能の強化、荷物積み替え用ターミナルの整備、「道の駅」を始めとする付帯インフラの整備、人材育成の4つの柱のプログラムが検討されており、この実施に際し、日ASEAN統合基金を通じた1,000万ドルの拠出が予定されています。これに加え各国からの提案によるプロジェクトについても、1,000万ドル規模の拠出を予定。2009年中には各プロジェクトが決定し、順次開始されることになります。

 

ASEAN統合を支援する

日本は、ASEAN統合を支援する立場で、メコン地域諸国への支援事業を拡大し、日CLV日メコンの枠組みを重視しています。また経済協力以外でも、2009年を日メコン交流年と定め、政治、経済、文化、観光等様々な分野における交流を促進しています。

 
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