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Vol.21 2008年12月24日
金融・世界経済に関する首脳会合 ~世界経済を巡る動きと日本の提案

サブプライムローン問題に端を発する金融危機に対処するため、2008年11月15日、金融・世界経済に関する首脳会合がワシントンDCで開催されました。世界経済を巡る最近の国際社会の動きについて解説し、史上初となる金融・世界経済に関する首脳会合の場で日本が行った提案と、会合の成果について紹介します。

米国経済と新興市場経済の関係(~2007年まで)

2007年までの米国経済は、低金利政策に加えて、規制緩和と金融技術の発展から金融市場が活発化し、世界中の資金を吸収しながら発展していきました。豊富な資金は、米国内の住宅ブームと共に内需を拡大させ、新興国はその影響で米国への輸出主導型の経済発展を実現してきました。米国では巨額の経常赤字が生まれますが、新興市場国が貿易で得た資金は米国の金融市場に還流し、さらに米国の金融市場が膨張するという循環を続けていました。

資金の循環
 

サブプライムローン(低所得層向け住宅ローン)問題から金融危機へ(2007年~2008年)

ところが、サブプライムローン問題が起こります。サブプライムローン問題とは、簡単に言うと:値上がりを続けた住宅価格が高くなり過ぎ、買い手が少なくなると、今度は住宅価格が下落を始めます。こうなると日本のバブルと同じで、住宅ローンを組んだ人や所得の低い人が見込んでいた住宅の値上がり益を得られず、ローンを返せなくなってきます。特に高金利のサブプライムローンの返済が停滞します。このため金融機関の資金繰りも悪化し、経営状態が悪化すると、当然金融機関の株価が下落します。

 
 

サブプライムローンの証券を組み入れた金融商品が世界中で売買される

米国のサブプライムローン問題が世界中に波及する原因の1つは、返済の信用度の低いサブプライムローンを自分だけで抱えるとリスクが大きいため、米国の金融機関はこの商品を組み込んだ金融商品を作って販売し、しかもそれらの金融商品に対して米国の信用格付会社が高い格付けを設定したため、世界中の金融機関がこれをどんどん購入したことです。こうして米国だけでなく、世界中の金融機関の経営状態が悪化し、株価が暴落しました。そして、2008年9月米国の投資銀行・証券会社リーマン・ブラザースの経営破綻をきっかけに、本格的な金融危機へと発展しました。

 

首脳会合開催決定までの経緯

この危機的状況を受け、9月23日、サルコジ仏大統領は国連総会にて、金融危機に関する首脳会合の開催を提案しました。その6日後には、米下院が7,000億ドルの金融危機対策法案を否決したことにより、世界的に株価が暴落。後日修正法案が可決されましたが、株価は続落する一方でした。10月10日のG7行動計画や各国の金融対策の結果、株価は一時的に回復しましたが、景気減速への警戒感が強まり、引き続き株価が下落傾向にあったため、フランスを始めとする欧州諸国は、米国に対して首脳会合の開催を強く働きかけました。

 

G20での開催

そこでブッシュ大統領は、11月15日に金融・世界経済に関する首脳会合を、ワシントンDCで開催することを発表しました。ここに参加したのは、G7(日、米、英、独、仏、伊、加)に中国やインドなどの新興国を加えた20の国と地域(G20)と国際機関です。G20は財務大臣の会合としては既存の枠組みでしたが、金融問題に関して20名もの首脳が一堂に会するのは史上初めての出来事であり、世界経済を大きく変える、新たな国際金融体制の構築に向けた一歩として、注目を集めました。

参加国と機関
 

麻生総理は、IMFに対する1,000億ドルの融資を表明

首脳会合に先立つ14日、ホワイトハウスで行われた夕食会で、ブッシュ大統領は各国首脳に先立んじて麻生総理に発言を求めました。これに対し麻生総理は、(1)金融危機に対処するためには、IMFの役割を新しい時代に即したものとする必要があり、特に新興国・中小国への支援と、早期警戒機能の強化が重要である、(2)IMFへの各国の出資を現在の3,200億ドルから6,400億ドルに増やす必要がある、(3)この増資には時間がかかるので即効性のある対応を行うため、日本が1,000億ドル融資する用意があるとの発言を行いました。その後も活発な議論が行われ、予定時間を上回っての閉会となりました。

麻生総理の提案
 
 

日本が存在感を示す

翌15日、首脳会合が行われ(財務大臣も同席)、(1)今回の金融危機発生の原因、(2)これまでに各国のとってきた措置及び今後とるべき措置、(3)金融機関への規制・監督にあたっての基本原則及び優先度の高い行動等について話し合われました。この日も麻生総理は、「危機の克服」と題した提案を行い、10年前に日本が経験したバブル崩壊とその後の再生について触れつつ、ドル基軸通貨体制のあり方と地域協力等について言及しました。

 

参加首脳の共通認識が一致

首脳会合で特に強調された点は(1)金融機関の規制・監督について国際社会が協調して取り組む必要性、(2)IMF等の国際機関の強化、(3)世界経済が減速している状況下での景気刺激策の必要性、及び(4)自由な貿易や投資の重要性であり、この4点についてはほとんどの首脳の発言の中で、共通して触れられていました。

 

途上国の発言力を強化

一方、途上国側は、先進国から端を発した今回の経済危機において、途上国は被害を被っている立場であるという認識を強調。途上国の首脳からは、途上国の発言力を強化していくとともに、IMFや世界銀行等の国際機関及び先進国による支援を求める声が多く寄せられました。

 

WTOドーハ・ラウンド交渉の加速化

また、全体会合後の昼食会では、自由な貿易・投資に焦点を当てた議論が行われました。この結果、首脳会合宣言の中に、保護主義を拒否し、今後12か月の間に、投資・貿易に対する新たな障壁を設けず、新たな輸出制限も課さず、WTOに反する輸出刺激策もとらないことを約束しました。また、WTOドーハ・ラウンドでのモダリティ(具体的な数字を入れた各国に共通して適用されるルール)合意を年内に達成できるよう、首脳が貿易大臣に指示を出すことも約束しました。

 

首脳会合の成果:宣言と47項目の行動計画

今回の首脳会合では、先進国及び新興国の間で、今回の金融危機に対する短期、中長期の対策等について、大変有意義な議論が行われました。首脳会合での議論の内容は、「金融・世界経済に関する首脳会合宣言」にまとめられ、さらに47項目に及ぶ改革のための原則を実行するための行動計画が発出されました。

G20首脳会合
 

今後とるべき措置

同宣言には、今後とるべき処置として、(1)金融システム安定のためにあらゆる必要な追加的措置をとる、(2)新興国・途上国の資金調達を支援する、(3)IMFなどが機能を果たすために十分な資金基盤を確保することなどが盛り込まれました。

 
 

金融市場の改革ための共通原則

金融市場の改革のための共通原則としては、(1)複雑な金融商品や金融機関の財務状況の開示を求め、金融市場の透明性を強化する、(2)金融市場・商品・参加者が適切に規制され、信用格付会社を含め監督の対象となることを確保する、(3)規制当局が国際金融市場において協調・連携を強化するなどの点が盛り込まれています。

 

2009年4月に第2回首脳会合開催を決定

同時に、この宣言において合意された原則と、決定の実施をレビューするための第2回会合の開催がこの会合の場で約束されました。11月26日、英国のブラウン首相は、麻生総理とも密接に連絡をとった上で、2009年4月2日に第2回会合をロンドンで行うことを発表。それによると、オバマ米次期大統領も出席することが予定されます。

 
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