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Vol.19 2008年12月10日
Vol.19 アフリカにおける紛争の現状と平和構築~PKOセンターへの支援

講義の様子12008年11月、エジプト・カイロの平和維持活動(PKO)センターに2名の自衛官が講師として派遣され、イラク復興支援や海外の災害に対する緊急援助などの取組とそこから得た教訓などについて講義を行い、高い評価を受けました。PKOセンターへの支援という、日本にとって初めてとなるプロジェクトの意義と、アフリカの平和構築に対する日本の支援について解説します。

紛争の数は減っているものの、続いている紛争は深刻化

アフリカは世界の紛争多発地域と見られていましたが、近年、紛争の数自体は少なくなってきており、大部分の国は平和の定着と復興の兆しを見せています。他方で、スーダンやソマリア、コンゴ民主共和国東部など、一部の国々については、事態がより深刻になっており、現在でも多くの死者や難民が出ています。

平和が定着が進行している国と情報が不安定な地域
 
 

民族的・文化的・宗教的な違いが火種となり国境を越えて拡

アフリカにおいては、その国境の多くが植民地時代に定められたものであり、必ずしも1つの民族を基に国家が形成されているわけではありません。このため、紛争がその国の中での民族的・文化的・宗教的な違いを火種として発生し、その規模が国境を越えて拡大する傾向があります。例えばスーダン・ダルフールでは、かねてよりアラブ系民族とアフリカ系民族との紛争がありましたが、近年はその激しさが増し、隣国のチャドに拡大する傾向にあります。ダルフールの反政府勢力を隣国のチャドが支援し、逆にチャドの反政府勢力をスーダン政府が支援するという状況に発展しています。

 

平和構築のステップ:停戦・和平合意→治安維持→持続可能な平和の実現

平和構築のステップこうした紛争の終結やその後の持続可能な平和の実現には、概ね次のステップを辿ります。まずは調停活動を通じて紛争当事者間で停戦合意が結ばれます。さらに和平後の国づくりのあり方を含む和平合意が成立する場合もあります。こうした停戦・和平合意を維持するための活動として国連等によるPKOミッションが展開され、治安維持等にあたります。また、紛争後の国は国連開発計画(UNDP)、ユニセフ等の国連機関と協力しながら荒廃した国を復興していきます。これまで、和平合意ができた後に国際社会の支援が必ずしも継続して行われなかったため、荒廃したままの国の中で民衆の生活が直ぐには立ちゆかず、紛争が再発する例も少なくありません。このため、近年では、持続可能な平和の実現にはPKOの展開や緊急人道支援、復興支援を継ぎ目なく行うことが極めて重要となっています。この一連の、非常に広範囲にわたる取組が、「平和構築」と呼ばれる活動です。

 

アフリカ主導によるPKOの強化

多くの紛争の現場において、PKOは和平実現に重要な役割を果たしています。その効果が十分に発揮されるために、派遣される部隊が十分な能力(要員の質や装備等)を持っていなければなりません。国連PKOでは、その人件費は国連分担金により手当されますが、基本的な装備は派遣国自身で調達する必要があり、それは派遣国にとっても相当の負担となっています。さらに、近年、国連PKO予算の急増に象徴されるように国連PKOに対する需要が増大し、供給を上回るようになりました。そのようななか、近年、アフリカの紛争をアフリカ自身の手で解決するようアフリカに努力してもらおう、そのためにアフリカ自身の平和維持活動の能力強化を支援しよう、という動きが主流になりつつあります。

 

アフリカの平和維持活動能力を強化するPKOセンター

アフリカ各国政府により設立されたPKOセンターは、アフリカ自身の平和維持活動を実施する能力を強化するため、PKOにこれから派遣される人や幹部候補生などを各地から集め、PKOの様々な活動に関する研修を行っています。現在、アフリカには20近くのPKOセンターがあり、アメリカやイギリス、フランスなどの退役軍人や、元PKOミッション幹部などが講師を務めています。武器の取扱方から武装解除の方法、国際法の知識など、具体的なテーマに沿って指導が行われています。

 

PKOセンターに期待される効果

アフリカ諸国の軍隊の要員は、それぞれの国を守る活動を中心に教育されており、他国に派遣されて停戦を監視したり、平和を維持したりするような活動については十分に教育を受けていませんでした。そのため、PKOセンターでの研修を通じて、要員の、このような停戦監視を始めとする諸活動に関する知識や能力を強化することが期待されます。また、PKOセンターにアフリカ中から軍人、警察や文民が集まり、一緒に研修を受けることによって、彼らの中に共通の認識と連帯意識が生まれます。研修後、彼らは部隊や職場に戻ってそれぞれの任務に就きますが、いざアフリカのPKOが形成される際に、これら研修を受講した要員が派遣されれば、共通の知識の下、1つの組織として動きやすくなるという効果も期待されます。

 
 

PKOによる、DDR等の人道復興支援活動

PKOセンターでは、従来の軍事監視に関する研修だけでなく、人道復興支援活動、例えば、武装解除・動員解除・社会復帰事業(DDR)の専門家から、その意義、ノウハウを学ぶというものがあります。DDRとは、武器を回収し(Disarmament)、彼らを除隊させ(Demobilization)、社会に復帰させる(Reintegration)プログラムです。金銭や食料、地位、職業などを提供するかわりに武器を回収し、除隊させ、その後一般の人として生活できるように職業訓練等の支援をします。これまでのPKOは停戦監視などが主な任務でしたが、近年ではこのような武装解除や人道復興支援活動など、これまで民間の人たちが主導してきた活動も、軍民が連携して実施するケースが増えてきていることから、研修のニーズが高まっています。また、小型武器管理の分野についても同様です。日本は、これらの分野においても、アフガニスタン等で蓄積した経験を活かしてアフリカの平和維持能力の向上に貢献できるのです。

 

平和構築につながる人材育成への初めての支援

日本がアフリカのPKO強化の支援を行う上で、これまで1つの課題がありました。日本がこれまでアフリカに対して行ってきた支援は、ODA(政府開発援助)が中心でした。ODA大綱では、我が国政府による援助実施の原則の一つとして、ODAの軍事的用途への使用を回避すると定めています。このため、日本政府は国際社会の平和と安定に寄与するPKOの強化に資するものであっても、軍や軍人を対象とし得る事業への支援には非常に慎重に対応してきました。一方で、アフリカでの一部の紛争はより深刻化している状況があり、G8サミットの議長国として日本のより積極的な貢献が求められていました。そこで、日本政府は、初めての試みとして、平成19年度の非ODA予算により、UNDPとの協力の下、アフリカの平和構築に関わる人材育成の要(かなめ)である、PKOセンターへの支援(総額約18億円)を行うことを決定しました。具体的には、エジプト、ケニア、ガーナなど5か所のPKOセンターに対する機材供与、施設整備、研修の実施などのプロジェクトを実施するものです。

 

日本への高い評価につながる支援の形

金額は突出したものではありませんが、この試みが国内外に与えたインパクトは大きく、6月30日の福田総理(当時)と潘国連事務総長との会談において、スーダンに展開する国連PKO(UNMIS)への自衛官の派遣とともにこのPKOセンターへの支援を発表しました。日本が、軍事に関係する支援を行えなかった制約を越えてこのような支援を開始したことは、国連やアフリカ諸国、さらには先行してこの分野での取組を進めていた先進国からも歓迎されました。日本は、他の先進国同様、平和構築の初期段階(平和維持や初期の復興支援等)から比較的後期の段階(開発支援)まで、幅広く支援を行っていくこととなったのです。

 

日本の経験をアフリカへ

こうした支援を実施するにあたっては、日本の経験をアフリカ諸国の平和維持活動能力強化に大いに役立てたいと考えています。日本の自衛隊は、2003年からイラクで人道復興支援活動に従事しており、現地住民との接し方など、現場での経験を多数積んできています。センターでの講義の模様2アフリカ諸国による平和維持活動の実施においてもこのノウハウを活かしてもらおうと、2008年11月、2名の自衛官をカイロのPKOセンターに派遣し、イラク・サマーワでの復興支援活動の経験に基づいた講義を行いました。参加者からは、「自衛隊の取組や経験に基づく講義は大変示唆に富み、大いに参考となった」、「欧米諸国とは異なった日本独自のアプローチに学びたい」など高い評価を受けました。講義を行った自衛官自身も、参加者からの反響が予想以上に大きく、アフリカのPKOセンターに対して自衛隊として更に積極的に支援できる余地があることを実感したようです。 また、我が国には、平和構築の文民専門家が多数活躍されています。これら専門家の知識と経験もまたアフリカの平和維持活動の能力強化にとって有益であるため、現在、日本政府は、こうした専門家の方々の御理解・御協力を得て、講師としてPKOセンターに派遣しています。

 
 

アフリカ自身による平和構築の確立に向けて

平和維持活動の分野におけるアフリカの人材育成は、2004年のG8シーアイランド・サミット で提唱された、「2010年までに約75,000人の要員」を育成するという目標を実現させるために、大変重要な活動です。現在、アフリカ連合(AU)は、国連と協力し、アフリカ自身の平和維持活動能力を強化するため、AUの下でアフリカ待機軍を組織し、東・西・南・北・中央5つの地域に配置するべく、準備を進めています。このように、アフリカの平和構築がアフリカ自身の手によって行われてようとしているなかで、日本はPKOセンターへの支援という形でアフリカの「オーナーシップ」の確立を応援しているのです。

エジプトPKOセンターへの講師派遣
(自衛官(高橋2佐、榮村2佐)、篠田准教授の所感)

●PKOセンターで行った講義の内容

  • ○(自衛官)民軍協力をスムーズに進めていくための基本的留意事項を軸に、イラク(サマーワ)における民軍協力の事例、災害派遣(国際緊急援助活動)の事例(スマトラ等)を紹介するとともに、教育訓練の体制としての陸上自衛隊の国際活動教育隊について講義した。
  • ○(篠田准教授)国際平和協力活動における人材育成、及びオーナーシップをテーマに2回講義した。前者は初日に行い、現代国際社会の平和築活動においてどのような人材が求められているのかを総論的に概観した。後者についてはオーナーシップ育成が平和活動の政策立案においてどのような重要性を持っているのか、について講義した

●講演等に対する参加者の反応

  • ○(自衛官)自衛隊の国際平和協力活動への取組の経験や教訓に基づく講義は大変示唆に富み、大いに参考となったようであった。欧米諸国とは異なった日本独自のアプローチに学びたいと述べていた。
  • ○(篠田准教授)特に国際平和協力活動とオーナーシップの関係については、参加者自身が、各自の境遇に引き寄せて関心を持っていたようであった。

●PKOセンターに関する自衛官の印象、セミナーの成果

  • ○(自衛官)この度、講師としてエジプトPKOセンターに貢献するとともに、アフリカ諸国からの参加者と貴重な意見交換ができ、極めて有意義であった。特に自衛隊の国際平和協力活動への取組の経験や教訓に対する参加者の反響は予想以上に大きく、欧米諸国とは異なる日本独自のアプローチが高く評価されていることを再認識した。同センターは、教育プログラムの改善について試行錯誤中とのことであり、より良いプログラムを作るために、自衛隊として更に積極的に関与できる余地があると認識した。また、アフリカ等各国から講師や専門家が参加しているため、自衛隊にとっても、アフリカにおけるPKO等の実情を把握する絶好の機会であると認識した。
  • ○(篠田准教授)エジプトは過去に国連事務総長を輩出した国でもあり、もともと国際平和協力活動への関心は高かったと言える。他のPKOセンターに先駆けて1995年に設立されたエジプトPKOセンター(CCCPA)が、その後活動停滞期を迎えたのはアフリカ全体のPKO能力底上げの観点からは残念であった。今回の同センターへの支援は現地でも強い関心を有しており、エジプト政府外務省も再建に向けて本腰を入れようとしているが、今後3年間で同センターの基盤強化が図れるかどうかは、日本の支援の1つの試金石となるだろう。同センターにはエジプトからだけではなく、アフリカ大陸全域から参加者がある。エジプトだけでなくアフリカ全体のためにも、今回のセミナーの成果を更に発展的に活かしていってほしい。

 
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