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Vol.18 2008年12月8日
クラスター弾に関する国際的取組

2008年12月3日から4日にかけて、ノルウェーのオスロにて「クラスター弾に関する条約の署名式が行われ、日本を含む94か国が署名しました。近年、人道上の被害が問題となっているクラスター弾の概要と、規制をめぐる国際社会の取組について解説します。

世界の紛争を抑止するための国際努力

世界では依然として武力紛争が無数に起こっており、武器の製造、取引が行われていますが、その一方で、国際社会は、紛争を解決に導き人道上の被害を食い止めようとする不断の努力を続けています。兵器に関する国際的規制もその1つです。例えば地雷については、地雷問題・対人地雷禁止条約(オタワ条約)等の取組があります。

 

特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の発効

こうした規制の1つとして、対人地雷や焼夷兵器などの通常兵器による民間人への被害を防ぐため1983年に発効したのが、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)です。この条約は、過度に傷害を与え、または無差別に被害を及ぼす怖れがある通常兵器の使用を禁止・制限することを目的としており、現在日本を始め、世界108か国が締結しています(2008年12月現在)。

CCW(特定通常兵器使用禁止制限条約)
 
 

CCWの議定書が規制対象となる通常兵器を特定

クラスター弾CCWは主として条約の手続などの基本的事項について規定しており、具体的に対象となる兵器の種類、規制については、兵器ごとに、条約に附属する議定書によって定められています。現在、X線で検出できない破片によって傷害を与える兵器や、地雷・ブービートラップ、焼夷兵器など、5つの議定書が作成、締結されています。そしてクラスター弾等の不発弾のもたらす問題については、従来より、CCWの枠組みで議論されてきました。

 

頻繁に使用されるクラスター弾

クラスター弾の散布イメージクラスター弾とは、複数の子弾が集束しているもので、戦闘機等から投下・発射されると子弾が散布され、広範囲の目標に損害を与えることができる兵器です。第二次大戦時から使用され始め、近年では、イラク(91年、03年)、コソボ(99-00年)、アフガニスタン(01-02年)、レバノン(06年)で使用され、さらにはグルジア紛争(08年) でも使用されたとも言われています。現代における紛争では頻繁に登場する兵器であり、また、防衛上の目的で保有している国もあります。

 
 

面制圧に有効なクラスター弾

クラスター弾は、通常の爆弾が不得意とする「面」の制圧、すなわち、地上の広い範囲に対して短時間に大量に散布したい場合に適した兵器です。国境が他国と面している国では、国境線付近の攻防戦などにも用いられます。また、日本のように山が多くて海岸線の長い国では、海上からの侵略者を水際でブロックする際に効力を発揮すると言われています。

 

不発弾による深刻な被害

不発弾による被害しかし一方でクラスター弾の子弾は、湿地に落ちたり、木や建物などに引っかかったりして不発弾となったり、そもそも性能が低く不発弾となる確率が極めて高いため、文民にも被害を与えていることから、人道上の問題が指摘され続けてきました。例えば、退避していた住民が帰ってきたときに被害にあったり、復興のために必要となる地域に不発弾がたくさん残ってしまい、復興が遅れるなどのケースがあります。また、クラスター弾の子弾の中には大きさがコンパクトで色味もカラフルなものもあるため、子どもが誤って手にとって被害にあうケースも出てきています。

 

CCW不調によりオスロ・プロセスが始動

このような状況を踏まえ、2006年、CCWではクラスター弾に関する国際約束の作成に向けて交渉を始めることが提案されました。しかしCCWには、米国、中国、ロシアなど、クラスター弾の主要生産国・保有国が参加していることも影響し、交渉開始は決定できませんでした。そこで、ノルウェーやアイルランドなどの賛同国やNGOが中心となって、CCWとは別の枠組みでクラスター弾規制に向けた議論を始めたのが「オスロ・プロセス」です。2007年2月にオスロ宣言が発出され、2008年までにクラスター弾を禁止する国際約束を作ることが提唱されました。

CCW オスロ・プロセス
 

クラスター弾の定義などで交渉は難航

オスロ・プロセスでは、3回の国際会議を経て、2008年5月にダブリン会議 が開催されました。この会議において、これまで各国の見解の相違が大きかったクラスター弾の定義、貯蔵弾廃棄、不発弾除去、被害者支援などについて合意が得られ、クラスター弾に関する条約が採択されました。この条約では、(1)爆発性の子弾が10個未満で、(2)それぞれの子弾が4kgよりも重く、(3)単一の目標を探知し攻撃できるよう設計がされており、(4)不発弾となった時に、自己破壊装置及び(5)自動的に爆発機能を止められるような自己不活性機能を備えているものは、条約上のクラスター弾には該当しないものとされ、禁止されていません。

 
 

条約の柱:クラスター弾の廃棄と被害者支援

そのほかにも、(1)自国で貯蔵しているクラスター弾を条約発効後原則8年以内に廃棄するとともに、自国の管轄・管理下にある地域の不発弾を10年以内に除去して廃棄することが義務付けられていること、(2)被害者支援に力を入れ、クラスター弾の直接の被害者のみならず、その家族や地域社会も被害者の定義とすることなどが、この条約のポイントとして挙げられます。2008年12月4日の条約署名式の閉会時点で、ノルウェーのオスロにて、日本を含む97か国がこの条約に署名をし、クラスター弾に特化した初の国際的規制に向けた取組が具体化することになりました。

「クラスター弾に関する条約」の主なポイント
 

オスロ・プロセスへの主要国の不参加とCCWでの交渉

オスロ・プロセスもCCWにおける交渉も、クラスター弾が抱える人道上の問題を扱っていることに変わりはありません。しかし、オスロ・プロセスには、主要生産国・保有国である米国、中国、ロシアなどが参加していないため、その実効性についてどこまで期待できるのか、という疑問を唱える声も少なくありません。一時はオスロ・プロセスに水をあけられた形になったCCWも、2007年から政府専門家会合等を開催し、クラスター弾の人道的影響に早急に対応するため、締約国間での交渉を継続しています。

 

日本の取組

日本が署名したクラスター弾に関する条約については、できるだけ早期にこの条約を締結できるよう準備を進めていきます。また、被害者への支援を含むクラスター弾等の不発弾対策支援を引き続き推進し、クラスター弾に関する取組に積極的に関与していく考えです。同時に、日本は、CCWの枠組みにおいて、クラスター弾の人道上の懸念に対処するための実効的な国際約束が作成されることを重視しており、引き続きCCWでの交渉に積極的に参加していく方針です。

 
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