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Vol.170 2018年7月20日
ミクロネシア連邦とマーシャル諸島 ― 外交関係樹立30周年を迎えて

太平洋に浮かぶ美しい島国,ミクロネシア連邦とマーシャル諸島共和国は,歴史的に日本とのつながりが深く,日系人が多く活躍する親日国としても知られています。2018年に,両国と日本は外国関係樹立30周年を迎えます。この機会に,ミクロネシア,マーシャルという国々と,日本との関係について改めて紹介します。

ミクロネシアという国/マーシャルという国

ミクロネシア連邦は,607の島々と環礁から構成される島国です。西太平洋の赤道の北側に位置し,西はパラオから東はマーシャルまでの,広大な海域のカロリン諸島の中心に位置しています。面積は約700平方キロメートル(シンガポールよりやや小さい),人口は約104,937人(2016年世界銀行)。首都は,ポンペイ島のパリキールです。一方,マーシャル諸島は,同じく赤道の北側,ミクロネシア連邦の東側に位置する,29の環礁と5つの島が連なる島国です。面積は約180平方キロメートル(山手線内側の3倍弱),人口は約53,066人(2016年世界銀行),総人口の約半分が首都のあるマジュロ環礁に住んでいると言われています。輪の形を成して並んでいる環礁は,その美しさから「太平洋に浮かぶ真珠の首飾り」とも称され,世界中のダイバーたち憧れの地となっています。

ミクロネシアマーシャル
 

両国の歴史

ミクロネシア連邦やマーシャル諸島,そしてパラオ共和国などを含むこの一帯は「ミクロネシア地域」と呼ばれており,それぞれの島々で独自の文化や風習が継承されてきました。16世紀の始めに,スペイン人が現在のミクロネシア連邦の島々に来航。1885年にはマーシャルがドイツの保護領に,1886年にはスペインがマリアナ諸島,カロリン諸島の領有権を宣言しますが,1899年にはスペインがミクロネシアの島々をドイツに売却します。1914年の第一次大戦勃発後,日本はドイツよりマーシャルを含むミクロネシアの島々を占領し,1920年には国際連盟によって日本の委任統治が認められました。1945年,第二次世界大戦が終結すると米軍による占領が始まり,1947年,国連の太平洋信託統治領として米国の統治下に置かれることになります。それからおよそ40年後の1986年,10月にマーシャル,11月にミクロネシアが,米国との間で自由連合協定(コンパクト)を発効し,それぞれ独立を果たすことになります。

 

日本の食文化との共通点

ミクロネシアとマーシャルの島々のまわりには,インド洋,フィリピン海,太平洋の大きな海流が集結しており,豊かな漁場が形成されています。日本のカツオ・マグロ類の総漁獲量360,000トンのうち,約2割に当たる約76,123トンが同水域で漁獲されています(2016年)。その多くは鰹節の原料として活用されており,日本の食文化をこの両国の海が支えているといっても過言ではありません。現地の人々の食生活を見てみると,マグロ・カツオを始め,リーフ・フィッシュなどの魚介類を多く食することなど,日本人との共通点も多くあります。また,タロイモやヤムイモ,パンの実,パパイヤ,バナナ,ココナッツなど,南国の新鮮な果物や野菜を用いたローカルフードは観光客にも人気です。特にマーシャルでは,日本人移住者により米食が定着しており,「タクワン」や「サシミ」などが日常食となっています。

 

世界遺産に登録された「ナンマドール遺跡」

文化・観光面でのここ最近のトピックスと言えば,ミクロネシアのナンマドール遺跡が,ユネスコ世界遺産と,同時に危機遺産に登録されたことが挙げられるでしょう。ナンマドール遺跡は,ポンペイ島の南東部の浅瀬に建造された,世界でも類を見ない大規模な海上都市遺跡です。西暦1000年から1600年頃まで続いたシャウテルウル王朝の政治,宗教の中心であったと言われ,約90の島から構成されるナンマドールには,それぞれ王の住居,聖職者の墓,来客用のゲストハウスなど異なる使用目的が与えられていたと言われています。また,水中宮殿があるという説もあり,それが日本の「浦島太郎」伝説で語られる竜宮城であると信じている現地の人もいるそうです。日本はこのナンマドール遺跡に対し,推薦書作成支援や,現地でのワークショップの開催などを通して,世界遺産登録への支援を行ってきました。

ナンマドール遺跡
 

日比谷公園にある「石貨」

ミクロネシア連邦を形成する4州(ヤップ州,ポンペイ州,コスラエ州,チューク州)のうち,最も伝統的な生活が営まれているのが,ヤップ州です。ここでは「ライ」または「フェ」と呼ばれる石貨が,冠婚葬祭や土地の譲渡等の伝統的な取引,お詫びなどの気持ちを表す道具として,現在でも使われています。その価値は大きさや重さとは関係なく,その石が運ばれてきた背景やそれを語る人の表現能力によって,評価が変わると言います。現在では国外への持ち出しは禁止されていますが,日本の日比谷公園には,1925年に寄贈された石貨が今も展示されています。

ミクロネシア連邦・ヤップ島にある石貨(左)と,東京の日比谷公園にある石貨(右)
 

ミクロネシア/マーシャルの中の「日本」

ミクロネシア・マーシャルの両国では,今でも様々なシーンで「日本」を感じることができます。ミクロネシアへの日本人移住の始まりは,南島商会が支店を開設した1890年に遡ります。1891年には,戦国武将の末裔・「冒険ダン吉」の主人公のモデルとなった森小弁(高知県出身)がトラック諸島(チューク州)にわたり,彼の子孫は現在2000人を超えるともいわれ,モリ前大統領や在京大使館のモリ公使もその子孫の一人です。第二次世界大戦の戦時下,そして終戦後に,多くの日本人は南洋群島から去りましたが,残った日本人も大勢いました。現在でも人口の約2割は日系人です。当時の日本語教育の名残で「フトン」「ジドウシャ」「デンキ」「ベントウ」など,多くの単語が現在も日常会話で使用されています。またマーシャルにも日系人は多く,カネコ保健福祉大臣やモモタロウ天然資源・商業大臣など,政界では多くの日系人が活躍しています。ミクロネシア同様,現地に根付いた日本語も多く,例えば「アミモノ」はマーシャルの手工芸品の総称として広く用いられています。

 

クワジェリン米軍基地と核実験

マーシャル諸島のクワジェリン環礁は,世界最大級の環礁であり,第二次大戦中の日米両軍の激戦地でもありました。戦後,クワジェリン環礁は米軍基地として使用され,1959年以降は「ロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛実験場」となっています。同基地では大陸弾道ミサイル実験のみならず,人工衛星監視や宇宙開発支援も兼ねており,NASAの任務を地上から支援しています。また,マーシャル諸島北部のエネウェタック環礁およびビキニ環礁では,これまでに計67回の核実験を実施してます。1954年3月,ビキニ環礁にて行われた水爆「ブラボー」実験では,地元住民の他,日本のマグロ延縄漁船「第五福竜丸」乗組員23人が被曝したことでも,現地,そして日本の人々の記憶に刻まれています。

 

日本との友好関係と技術協力 ― リアカーがつなぐ絆

1988年12月,日本はミクロネシア,そしてマーシャルと,外交関係を樹立しました。それ以来両国は,友好的な関係を築いています。日本は幅広い分野での協力関係を推進しており,特に経済協力の分野では,単に建物等を建設するだけではなく,地元の人々の生活向上に貢献する草の根レベルでの支援を続けています。例えば,マーシャル諸島ではココナッツ等の収穫にリアカーが重宝されており,2017年にはマーシャル初となるリアカー製造会社がマジュロ環礁に設立されました。日本のリアカー製造会社にて研修を実施し,溶接のノウハウを伝えるなど,マーシャルの人々の産業として根付くよう様々な角度からの支援を行いました。現在までに約100台のリアカーがマジュロにて製造されており,製造されたリアカーは,主にガソリン等のエネルギー不足が深刻な離島での運搬用に活用されています。

マーシャル諸島・マジュロ環礁にて製造されたリアカーとリアカー製造工場
 

太平洋・島サミット(PALM)と外交関係樹立30周年

ミクロネシア・マーシャル両国を含む太平洋島嶼国は,大変親日的であり,国際社会において日本の立場を支持するなど,日本にとって大変重要な国々です。日本がこれらの国々との関係を強化する目的で開催されているのが「太平洋・島サミット(PALM)」です。2017年11月には,2015年開催のPALM7での議論を受けて,マーシャルにて「日・マーシャル貿易投資セミナー」を開催。日本企業とマーシャル企業が事業内容,関心分野について相互にプレゼンテーションを行い,両国企業間での意見交換を行いました。2018年の5月には,福島県いわき市のスパリゾートハワイアンズにて,第8回太平洋・島サミット(PALM8)が開催され,ミクロネシアやマーシャルを始めとする島嶼14カ国,ニュージーランド,豪州に加え,新規参加のニューカレドニア・仏領ポリネシアの2地域を含む19か国・地域の首脳等が参加。「繁栄し自由で開かれた太平洋に向けたパートナーシップ」というキャッチフレーズのもと,「法の支配に基づく海洋秩序,持続可能な海洋」「強靱かつ持続可能な発展」「人的往来・交流の活性化」「国際場裡における協力」の4つの議題を中心に議論を行い,議論の成果として「PALM8首脳宣言 」を採択しました。2018年は,日本がミクロネシア・マーシャルと外交関係を樹立してから,30周年目にあたる記念すべき年でもあります。太平洋・島サミットの開催,そして外交関係樹立30周年という機会を活かし,日本とミクロネシア・マーシャル両国は,それぞれの関係を一層強化していく予定です。

第8回太平洋・島サミット(PALM8)での記念撮影の様子(左)と,発言する安倍総理大臣(右)(2018年5月)
 
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