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Vol.17 2008年12月3日
国際保健問題と開発

G8北海道洞爺湖サミットにおいて日本は議長国として国際保健の課題における国際的連携を主導しました。国際保健をめぐる国際社会の議論と日本の取組について解説します。

G8九州・沖縄サミットと世界基金の設立

G8サミット史上初めて、感染症問題が主要議題として取り上げられたのは、2000年の九州・沖縄サミットでした。当時の森総理が中心となり、HIV/エイズ、結核及びマラリア等の感染症の問題について、具体的目標値を掲げ、取組を強化することで合意に達しました。この後、感染症対策を含む国際保健の課題は、地球規模で解決していくべき問題として、国際会議の場で繰り返し対策が話し合われるようになります。2002年には世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)が設立されました。

世界の保健問題に関する取組
 

ミレニアム開発目標:21世紀の国際社会が取り組むべき課題

さらに、21世紀の国際社会が取り組むべき課題として国連が掲げたミレニアム開発目標(MDGs)では、感染症対策に留まらず、乳幼児死亡率の削減や妊産婦の健康の改善などを含め、具体的な目標値が設定されました。

 
 

先進国と比べると、乳幼児の死亡率は26倍、妊産婦の死亡率は100倍

しかしながら、現在のところ、保健関連MDGsの達成に向けた進捗 は、充分とは言えない状況です。サハラ以南のアフリカでは、1,000人中157人の子どもが5歳の誕生日まで生き延びることができません(2006年現在)。また、毎年50万人の女性が、妊娠中又は出産中に、治療又は予防可能な原因によって亡くなっています(2006年現在)。さらに、発展途上国におけるHIVの有病率は横ばいなのに対し、サハラ以南のアフリカではエイズによる死亡率はむしろ高まってきているのです。

母子死亡率
 

「保健と開発」に関するイニシアティブ

こうした状況を踏まえ、日本は保健関連のMDGs達成に貢献するため「保健と開発」に関するイニシアティブを発表。2005年からの5年間で約50億ドルの支援を行うことを表明し、包括的取組を着実に実施しています。

 

TICAD IV及びG8北海道洞爺湖サミット

こうした状況の中、2008年、日本はTICAD IV 及び北海道洞爺湖サミットにおいて、国際保健を再び取り上げました。TICAD IVでは、国際社会が一丸となって取り組むべき保健の課題を横浜行動計画として発表。また、G8北海道洞爺湖サミットでは、「国際保健に関する洞爺湖行動指針」を公表しました。

 
 

G8北海道洞爺湖サミットの成果

G8北海道洞爺湖サミットにおいて公表された首脳文書の国際保健に関する部分では、アフリカ諸国で、保健従事者の比率を1,000人当たり2.3人に引き上げること、母子保健を強化すること、マラリア対策として2010年までに1億張の蚊帳(かや)を提供することなどを宣言しています。また、前年のハイリゲンダム・サミットでは、感染症、保健システム強化などのために600億ドルをコミットすることが合意されましたが、洞爺湖では、それを5年間で履行することが明確化されると同時に、フォロー・アップ・メカニズムを設置することも合意されました。

乳幼児の死亡原因
 

北海道洞爺湖サミットのフォローアップ:保健システムの強化を目指して

2008年11月、東京にて、G8北海道洞爺湖サミットのフォローアップの一環として、「保健システム強化に向けたグローバル・アクションに関する国際会議」を開催しました。世界各国の学術関係者や国際機関、NGO、政府関係者など約150名が参加し、保健システムの重要な要素である「保健情報」、「保健財政」、「保健人材」の3分野に関する議論が行われました。

 

日本自身の経験~蚊帳と母子健康手帳

このように、日本は国際保健分野において国際的リーダーシップを発揮すると同時に、現場において独自の経験を活かした協力も積極的に行っています。その好例が、蚊帳と母子健康手帳の普及です。蚊帳は古くから日本で使われてきたものですが、最近では、日本の企業が開発した、糸に殺虫剤を練りこんだ蚊帳が、世界的にもマラリア予防のために活用されています。また母子健康手帳とは、妊婦検診の結果を記入してもらい、赤ちゃんが生まれたら、子どもの体重や身長、予防接種の記録などを書いてもらうものです。これにより、子どもの病院が変わっても継続して、適切なケアを受けることができます。日本では当たり前のシステムとして一般に浸透していますが、世界では、妊娠・出産から幼児期までの健康記録をまとめた手帳の存在は珍しいものです。

 
 

世界に広がる母子健康手帳の輪

この日本発のコンセプトである、母子健康手帳を普及しようとする取組が、国際協力機構(JICA)ユニセフ、NGOなどの協力を受けて、世界に徐々に広がろうとしています。例えばインドネシアでは、1993年にJICAプロジェクトとしてインドネシア版母子健康手帳を開発。2004年には保健大臣令により、インドネシアのすべての母親と子どもは母子健康手帳を持つ必要があると定められました。また、識字率が低い国ではイラストを多用するなど、それぞれの国の経済状況や文化的背景によって、内容に変化を持たせる工夫も必要です。

各国の母子健康手帳
 

人材育成とシステム構築に実績を誇る日本の援助

ただし、母子健康手帳は単に配布するだけでなく、それを活用するためのシステムを整え、人材を育成しなければ、真の効果にはつながりません。日本は、現地に専門家などを派遣して実地指導を行っています。その他にも現地でのトレーニングや啓発活動、日本での研修に加えて、アジアなどの「先輩国」の知恵と経験をも学ぶため、第三国における研修も熱心に行っています。日本の支援は、資金援助や機材供与に留まらず、実際に医療専門家や青年海外協力隊員が現地に赴き、実地で人材の育成と現地の実情を踏まえたシステムの構築に尽力しているところに特徴があります。この保健分野の人材育成・システム構築に関して、日本は世界でも屈指の実績を持つ支援国なのです。

 
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