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Vol.166 2018年2月20日
深化し続ける絆 ― 日メキシコ外交樹立130周年

日本とメキシコは,これまで400年以上にわたり友好的な関係を築いてきました。特に明治政府発足から20年後(1888年)に締結された「日墨修好通商航海条約」は,日本悲願の平等条約であり,当時の日本政府にとって,そしてその後の日本外交にとって,非常に大きな意味を持つものでした。外交樹立から130年を迎えた今,日本とメキシコ両国の,国と国,人と人との絆について改めて振り返ります。

メキシコとは

メキシコメキシコは,北アメリカ南部に位置する,立憲民主制による連邦共和国です。人口は約1億2,920万人(2017年国連/世界10位),面積は196万平方キロメートル(日本の約5倍)に及びます。メキシコは古代より様々な文化・文明が栄えた地としても有名であり,紀元前にはテオティワカン文明やマヤ文明が,14世紀にはメキシコ中央部にアステカ王国が出現し,高度な文明を築き上げました。しかし16世紀初頭にはエルナン・コルテス率いるスペイン人が侵入し,以降300年にわたりスペイン領時代が続きます。1821年に独立,1846年の米メキシコ戦争,1910年のメキシコ革命の動乱を経て,1917年には現行憲法を公布。1920年以降クーデターは起こらず,政情は安定化し,現在は2012年12月に就任したペニャ・ニエト大統領のもと,成長著しい新興国として国際社会での注目を集めています。

◇わかる国際情勢 Vol.28 メキシコ~先進国の仲間入りを目指す中南米の雄
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol28/index.html

 

400年を超える日本との交流史

アカプルコにある支倉常長記念碑日本とメキシコは,距離にすると約1万キロメートルも離れていますが,実は400年を超える交流の歴史を持つ「遠くて,実はとても近い国」です。その始まりは1609年9月,スペイン領フィリピン総督代理の任務を終えたロドリゴ・デ・ビベロら373名を乗せたサン・フランシスコ号が,当時スペイン領のメキシコへ向かう途中で嵐に遭遇し,千葉県御宿沖に漂着したときに遡ります。御宿の漁民たちは異国の遭難者たちを救出し,献身的に介抱をしました。その後ビベロは,駿府にいた大御所家康とも会見し,破格の歓迎を受けました。その4年後,主君である伊達政宗の命を受けた支倉常長が,メキシコ(当時のヌエバ・エスパーニャ)との直接通商の交渉を目的に約180人の乗員とともに太平洋を渡り,1613年1月にアカプルコ港に到着しました。しかしながらこの後日本は,鎖国の時代へと入ることになります。

 

金星観測隊をきっかけに日本初の平等条約締結!

それからおよそ200年後,再び諸外国に対して門戸を開くようになった日本は,1858年にアメリカと修好通商条約を,次いでオランダ,ロシア,イギリス,フランスと通商条約を結びます。ただしこれらは治外法権(領事裁判権)を認め,関税自主権のない,日本にとって不利な“不平等条約”でした。平等条約の締結は当時の日本の悲願だったのですが,それを実現するきっかけとなったのが,メキシコの金星観測隊でした。1874年,金星の太陽面通過を観測するために来日したメキシコ観測団のコバルビアス団長は,そのときの日本側の待遇に感激をし,本国への報告書において,日本の文化や産業などを紹介するに留まらず,外交・通商関係を結んだ場合のメリットを力説しました。これが契機となり,1888年に日本にとってアジア以外の国と結んだ初となる平等条約が締結されたのです(日墨修好通商航海条約)。現在の駐日メキシコ大使館は,国会議事堂や首相官邸がある永田町に位置していますが,日本の政治の中心部とも言えるこのエリアに広い敷地の大使館を構えていることからも,当時の日本にとってこのメキシコとの平等条約の締結が,いかに重要な出来事だったかが伺い知れます。

日メキシコ修好通商条約批准書(左)と,永田町にある在日メキシコ大使館(右)
 

メキシコに渡った日本人と「サムライ外交官」

日墨修好通商航海条約の締結から9年後の1897年,メキシコ南部のチアパス州に35人の榎本植民団が入植しました。これはペルーより2年,ブラジルより11年も早い,中南米への初の組織的移住となりました。以降日本とメキシコは,太平洋という広い海をまたいで,国と国,人と人との絆を大切に育んできました。当時の両国間の信頼関係を表すエピソードのひとつに「サムライ外交官」の活躍があります。メキシコ革命時の1913年,ウエルタ将軍がクーデターを起こした際,その標的となったマデロ大統領の親族たち20名以上が助けを求めて逃げ込んだのは,日本の公使館でした。当時の臨時代理公使だった堀口九萬一氏(詩人の堀口大学の父)は,公使館が攻撃される可能性もありながら,同親族を保護したのです。2015年にメキシコ上院議会は,両国間の平和と人道の証として堀口九萬一氏を顕彰する決議を採択。この史実は,メキシコ国民と日本国民の関係の歴史上,最も美しい1ページのひとつとして,今も現地で語り継がれています。

「1913年2月の苦難の日々における,その模範的な生き方とマデロ大統領家族に対する保護に関して,堀口九萬一と偉大な日本国民に捧げる」と刻まれた記念プレート(左)と,記念プレート除幕式の様子(2015年4月)
 

深化を続ける日本とメキシコの関係

現近年の日本とメキシコの関係は,他に類を見ない規模とスピードで深化を遂げています。2005年4月には日・メキシコ経済連携協定が発効され,日本としてはシンガポールに次ぐ2番目の自由貿易協定,農産物等の分野をも含んだ本格的なものとしては初めてのものになりました。これにより日本の自動車メーカーや自動車部品メーカーが続々とメキシコに新工場や販売会社を設置。北米自由貿易協定(NAFTA)による関税優遇や地理的優位性から,対北米輸出・製造拠点をメキシコに置く企業が増加しました。その後も日本企業の対メキシコ投資は加速度的に増加し,メキシコに進出した日本企業数は,2008年に366社だったのが2017年には1,182社と過去10年で約3倍以上に増え,在留邦人数も堅調に推移しています。このような状況を踏まえ,2016年1月には首都メキシコシティ近郊のグアナファト州レオン市に在レオン総領事館を開設。同年6月にはメキシコの航空会社・アエロメヒコがメキシコシティ-成田直行便を,2017年2月には全日空も同航路に週7便の直行便を就航し,人的往来もさらに活発化しています。

 

日本とメキシコの共通点(1) 世界に誇る伝統的食文化

メキシコのモーレ料理日本とメキシコの共通点のひとつに,伝統的な食文化を有するという点があります。2000年以上の歴史を持つと言われるメキシコ料理は,マヤ文明やアステカ文明の頃からの伝統食と,スペインなどのヨーロッパの食文化が混ざりあいながら育まれてきました。多くの野菜を使い,スパイシーな風味のメキシコ料理は日本でも人気が高く,2010年にはユネスコ無形文化遺産に登録されています。農作物の種類も豊富で,日本が輸入したアボカドの約92%がメキシコ産(2016年)であるほか,メロンやかぼちゃ,アスパラガスなど,多くの食材が日本に輸出されています。また,カカオもメキシコの生活に根付いた食材のひとつであり,「モーレ」と呼ばれるカカオにスパイスやトマト,玉ねぎ,ナッツなどの食材を混ぜ合わせたソースを使った料理が,日常的に食されています。

 

日本とメキシコの共通点(2) 同じ地震国として

また,どちらも世界有数の地震国であることも,両国の共通点のひとつです。ここ数十年の間にも,1985年のメキシコ大震災,1995年の阪神・淡路大震災,2011年の東日本大震災など,それぞれの国で大きな地震が起こる度,お互いに被災国に対し人員や救援物資,義援金などを送り合い,迅速な支援を行ってきました。記憶に新しいのは,2017年9月に起こったメキシコ地震です。日本政府は国際緊急援助隊・救助チームを派遣し,外務省,警察庁,消防庁,海上保安庁,JICA等から成る72名の隊員が現地で活動を行いました。国際緊急援助隊の活動は,メキシコ国内で非常に温かい歓迎を受け,団長が「我々はメキシコとともにあります」と発信・投稿したビデオメッセージは,再生回数が数百万を超えるほど現地で話題を集めました。同じ地震国として,相手国が困難にあるときはいち早く駆け付けて支援する。数々の災害を経験し,助け合ってきた両国だからこそ築かれた,特別な信頼の絆であると言えるでしょう。

ビデガライ外相からの挨拶を受ける日本の国際緊急援助隊の隊員(左),建物倒壊現場における捜索・救助活動の模様(右)
 

日メキシコ外交樹立130周年を迎えて

近年では要人の往来も活発化し,首脳会合や外相会合などハイレベルでの会談も頻繁に行われており,政治的な関係も良好です。特に安倍総理とペニャ・ニエト大統領との信頼関係は深く,お互いファーストネームで呼び合う仲でもあります。2018年は,日本とメキシコの間に外交関係が樹立してからちょうど130周年にあたります。これを機会に両国では様々な関連事業を行い,二国間関係のさらなる強化に取り組んでいく方針です。日墨修好通商航海条約は日本がアジア以外の国と最初に締結した平等条約であり,日本外交の地平線を開いたとも言える,日本にとって大きな意味を持つ条約です。日本とメキシコは,400年の交流の歴史に基づいた特別で緊密な“絆”を,これからも大切にしていきます。

日本・メキシコ外交関係130周年のロゴマーク(左)と,日・メキシコ首脳会談時にペニャ・ニエト大統領と握手を交わす安倍総理大臣(2017年11月)(写真提供:内閣広報室)
 
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