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Vol.163 2017年12月21日
マレーシアという国 ― 日・マレーシア外交樹立60周年

2017年は,日本とマレーシアが外交関係樹立60周年を迎えた記念の年でした。4月には,皇太子殿下がマレーシアをご訪問。ムハマド5世国王陛下をはじめ,マレーシアの王室,政府の関係者そしてマレーシアの人々から心温まる歓迎をお受けになられました。今回は,マレーシアという国について改めて紹介するとともに,両国間のこれまでの友好関係について解説します。

マレーシアとは

マレーシアは,東南アジアに位置する立憲君主制の国で,人口は約3,200万人,国土の面積は九州・沖縄を除いた日本の面積とほぼ同じ約33万平方メートルです。首都クアラルンプールは「KL(ケーエル)」の愛称で呼ばれ,積極的な外資の導入によりここ15年ほどで近代化を果たしました。クアラルンプールのシンボル「ペトロナス・ツインタワー」は,向かって右側の「タワー1」を日本企業が建設したことでも有名です。これらの近代建築群は,マレーシア発展のシンボルとして親しまれています。またマレーシアは様々な民族から成り立つ多民族国家で,マレー系が約69%,中華系が約23%,インド系が約7%で構成されています。イスラム教を信仰するマレー系が人口的には大多数を占めていますが,中華系やインド系などもそれぞれの文化や伝統を守りながら生活しており,複合多民族国家としてお互いを尊重しつつ共生しています。

マレーシア
 

日本人に人気の観光地・移住先

マレーシアは観光地としての人気が高く,世界中から年間2,500万人以上,日本からは約48万人が訪問しています(2015年)。国土の7割が熱帯雨林に覆われており,世界の生物種の約10%が生息している,生物多様性の豊かさでも知られる国のひとつです。エコツーリズムが盛んで,ジャングルトレッキングなどのアクティビティを楽しむことができます。さらに,レンゴン渓谷,ジョージタウン,マラッカ,キナバル国立公園,グノン・ムル国立公園などのユネスコ世界遺産も多数あります。また日本では,マレーシアが11年連続「移住したい国」「長期滞在希望先」の第1位に選ばれています。その理由は,最長10年の長期滞在ビザである「マレーシア・マイ・セカンドホーム(MM2H)プログラム」によって,海外からの長期移住者を誘致していることに加え,物価の安さや温暖な気候,多様な文化や料理,医療の充実などが挙げられます。近年では定年退職者に加え,子女の英語教育のための移住先としても注目を集めています。

クアラルンプールの市街(左)と,マレー語で「森の人」を意味するオラン・ウータン(右)
 

マレーシアの「食」

他のアジアの国同様,米が主食のマレーシアですが,多民族国家であるため,その食文化もバラエティに富んでいます。マレーシアで最も使われるあいさつのひとつに「スダ マカン?」という言葉があります。この言葉は「ごはん食べた?」という意味であり,多民族社会のマレーシアでは食がコミュニケーションの一端を担っていることがよくわかります。マレーシアの代表的な料理と言えば,米料理の「ナシレマッ」があります。ココナッツ風味のごはんに様々なトッピングがついており,朝昼晩いつでも,おいしく気軽に食することができます。また,豚肉を漢方のスープで煮込んだ料理「バクテー(肉骨茶)」もマレーシア発祥の料理であり,現地の人たちだけではなく様々な国の人から愛されています。

マレーシアの代表的料理「ナシレマッ」(左)と「バクテー」(右)
 

信頼性の高いマレーシアのハラル認証

JAKIM発行のマレーシアのハラル認証規格人口の半数以上がイスラム教を信仰するマレーシアは,アジアの中はもとより世界的に見ても,ハラル産業が発展している国と言えるでしょう。「ハラル(Halal)」とは,シャーリア(=イスラム法)に則った「合法的なもの」「許されたもの」を意味するアラビア語です。食に関するイスラム教のルールでは,豚肉・豚由来の成分を含むものやアルコールを摂取することが禁じられており,豚以外の鶏肉や牛肉などの肉類についても,ハラルのルールに則った解体法をしていないものは食べられません。マレーシアでは,政府機関であるイスラム開発局(JAKIM)が,ハラル食品やその他の製品の認証を担当しており,現地のハラルフードを提供するレストランや加工食品には,JAKIMの「ハラルマーク」が表示されています。このマレーシアのハラル認証の基準は,中東を含めたイスラム諸国の中でも,信頼性が高いものとして国際的に認知されています。日本でも現在,マレーシアのハラル認証をとることを目標としている企業や団体が幾つもあり,2020年の東京オリンピックを見据え,イスラム圏からの渡航者に安心して滞在してもらえるよう,環境整備を進めようとしています。

 

日本とマレーシアの交流史

2017年に外交樹立60周年を迎えた両国は,1957年8月31日,マレーシアの前身であるマラヤ連邦が独立を宣言したまさにその日に外交関係をスタート。以降,緊密な友好関係を築いてきました。ただし日本とマレーシアの人々との交流は,それ以前からずっと続けられてきています。その歴史は古くは16世紀にさかのぼり,当時マラッカを経由してキリスト教や鉄砲が日本に伝わったとされており,その後17世紀には,朱印船による交易の記録が残されています。また20世紀初頭には,ゴム栽培や鉄鉱石の採掘,漁業に携わる多くの日本人がマレーシアを訪れ,中には移住した人々もいました。現在では,約2万1千人の日本人が,マレーシアに在住しています。

 

「東方政策」による留学生たちの交流

マハティール首相(当時)は,1981年の就任直後に,日本の労働論理,経営哲学を学ぶため「東方政策」を提唱しました。東方政策の柱の一つは,マレーシアから日本に留学生や研修生を派遣する事業です。1984年に初めてマレーシアから日本に留学した学生はわずか39名でしたが,それから30年以上の月日を得て,今日までに1万6千人もの優秀なマレーシアの学生が留学生や研修生として日本に派遣されています。東方政策の留学・研修経験者は,マレーシアの日系企業等で活躍しているのはもちろん,マレーシアの経済の発展に貢献し,両国の相互理解,友好促進にも大きな役割を果たしています。また,日本人のマレーシアへの留学者数も増加しており,現在約1,600人もの日本の若者がマレーシアに留学しています。

 

日本との密接な経済関係

現在マレーシア政府は,経済社会開発構想「ビジョン2020」(2020年までに先進国入りをめざす計画)を達成するため,様々な経済政策を進めています。マレーシアにとって日本は,主要な輸入先のひとつであり,過去の累積投資額(製造業)で第1位を占めるなど,重要なパートナーになっています。それは日本にとっても同様で,マレーシアの安定した政情,英語の通用度,市場経済,基礎インフラの充実などから,アジアの製造拠点として大きな期待が寄せられています。実際にマレーシアに進出を果たした日系企業は,現在1,400社に上ります。また,日本の輸入原油の90%がマレー半島とスマトラ島を隔てるマラッカ海峡を通過しており,マレーシアはシーレーン上においても,日本にとって地政学的な重要性を占めているのです。

日本との密接な経済関係(インフラ協力)
 

躍進するパートナーシップ -日・マレーシア外交関係樹立60周年

近年では,要人往来も活発化しています。2015年5月にナジブ・ラザク・マレーシア首相が訪日し,地域や国際社会の幅広い課題について,今後一層協力を強化する「戦略的パートナーシップについての日マレーシア共同声明」を発出。2016年には両首脳で戦略的関係を一層強化すべく,引き続き協力する旨の合意がされました。2017年4月には,皇太子殿下がマレーシアをご訪問。ムハマド5世国王陛下をはじめ,マレーシアの人々から心温まる歓迎をお受けになられた他,日本語教育の拠点となっているマラヤ大学にて元留学生の方々とご懇談をされました。11月には,ASEAN関連首脳会議出席のため訪問中のフィリピン・マニラにおいて,安倍総理とナジブ首相が首脳会談を行い,両国の「戦略的パートナーシップ」をさらに深化させていくとともに,ハラル分野をはじめ,今後も様々な分野で協力関係を強化していくことを確認しました。2017年には,「日・マレーシア外交関係樹立60周年」にあたる記念の年として,両国間で幅広い分野を対象とする数々の交流事業が実施されました。これらの機会を活かし,日本とマレーシアの関係は,政府間,そして民間においても,今後ますます深まっていくことになるでしょう。

日本との密接な経済関係(インフラ協力)
 
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