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Vol.146 2016年6月13日
日本イタリア国交150周年 - さらなる友好関係の深化に向けて

2016年は,日本とイタリアが1866年に日伊修好通商条約を締結してから150年目にあたる記念の年です。国交樹立以来,あらゆる分野で良好な関係を築いてきた両国の交流の歴史を振り返るとともに,これからの二国間関係について解説します。

イタリアという国 - 欧州を牽引する文化大国

イタリアは地中海に面した南ヨーロッパの国で,ブーツの型をしたイタリア半島と,シチリア島やサルデーニャ島など約90の島々から成り立っています。首都ローマは,ローマ帝国時代には「世界の首都」として繁栄し,14世紀にフィレンツェで始まったルネサンスは,その後ヨーロッパ全土に広がり,文学・思想・美術などあらゆる分野に多大な影響を及ぼしました。現代においてもイタリアは,絵画や彫刻,建築に留まらず,文学,哲学,オペラなどの舞台芸術,映画など,様々な芸術・文化の中心地として,世界をリードし続けています。

わかる!国際情勢 Vol.39 イタリア~都市国家の歴史を受け継ぐ社会経済

レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」(左)と,ボッティチェリ「プリマヴェーラ」(右)(イタリア政府観光局ホームページより)
 

世界で愛されるイタリア料理

日本とイタリアの文化の共通項として,“食”と“ものづくり”の伝統が挙げられます。南北に長いイタリアには,それぞれの土地に根付いたバラエティ豊かな地方料理があり,多彩な食文化を育んできました。素材そのままの持ち味を活かすという,日本料理にも通じる部分を持つイタリア料理は,世界に広く浸透しています。日本でもイタリア料理は大変愛されており,「真のナポリピザ協会」が認めるピザを提供するピザ屋は,世界に500軒ほどありますが,そのうち約60軒は日本にあると言われています。

イタリアを代表する料理「ピザ」
 

“ものづくり”の国の伝統

またイタリアには,通称「3F(ファッション/Fashion,フェラーリ/Ferrari,家具/Furniture)」と呼ばれる,世界に誇るブランドが数多くあります。これらのブランド力を支えているのが,“Made in Italy”,すなわち伝統的で革新的な職人たちが産み出す,高い技術力です。特にフィレンツェには,革製品を始めとする職人の“ものづくり”の伝統が根付いており,同じく“Made in Japan”として高い評価を受けている日本の職人たちの“匠の技”とも,相通じるものがあります。その他,世界有数の自動車メーカーや,欧州を代表する航空宇宙・防衛グループ,世界的なガス・石油会社,大手電力・エネルギー会社など,高い競争力と技術力を併せ持つ優良企業が多数存在するのも,イタリアの強みのひとつであり,欧州においては,ドイツに次ぐ製造業の生産力を誇っています。

 

欧州の経済・政治大国として

一方でイタリアは,世界第8位の経済規模を誇る,欧州の大国としても存在感を発揮し,EUの原加盟国として,またG7の一員として,EU及び国際社会に対して強い発言権を有しています。外交的には,地中海や中東地域との関係を重視し,頻繁な要人往来や,レバノンイラクへの派兵等を通じ,政治・経済面での関係を強化しています。特に旧植民地のリビアは,歴史的にも地理的にも関係が深く,難民の通り道となっているリビアの安定化は,イタリア外交における最優先課題のひとつとなっています。

 

日本との交流史

ローマに残る「支倉常長像」日本とイタリアとの交流の歴史は古く,ベネツィア出身のマルコ・ポーロが13世紀末に西欧世界に初めて日本を紹介したことに始まり,今からおよそ400年前には,支倉常長が率いる我が国初の「公式使節団」である慶長遣欧使節団が1613年に仙台を出港し,1615年にローマに到着しました。1861年に国家が統一され,イタリア王国が成立すると,そのわずか5年後,今から150年前の1866年8月25日に,日伊修好通商条約を締結。以降,日本とイタリアは,様々な分野での交流を続けてきました。例えば1871年に日本を出発した岩倉使節団は,1873年の5月から6月までイタリアに滞在し,様々な都市を訪問。それらの見聞が,のちの文明開化に大きく貢献したと言われています。戦後は,国民投票で王制が廃止され,イタリア共和国が成立。同じ民主主義的価値観を共有する国として,それぞれ新たな出発をすることになったイタリアと日本の両国は,政治面,経済面,文化面において,再び交流が活発化することになります。

 

レンツィ首相の就任

2014年2月,レンツィ首相が史上最も若い39歳で就任。イタリア首相として初めて議会にパソコンを持ち込んだり,SNS等を駆使し情報発信するなど,イタリアの政治の世界に新しい風を吹き込んだとして,注目を集めています。就任以降は,解雇規制緩和や選挙法改正など,断続的に改革を断行。特に上院改革を積極的に推し進めており,2016年4月,上院の議員数を315名から100名へ削減する憲法改正法案が成立し,10月にはこの点に関する国民投票が行われる予定です。外交的にはイタリア企業の海外進出を優先事項とし,その他難民問題や,リビアの安定化,文化振興等に取組んでいます。「文化」は,レンツィ政権にとって重要な外交テーマです。2015年11月のパリ連続テロ事件後には,「テロに対するイタリアの答え」として,安全対策に10億ユーロを拠出するのと同時に,文化振興にも同額の10億ユーロの予算を割り当てることを発表。「文化」を通じてテロリストを生まない社会を築くという,イタリアの揺るぎない姿勢を示しました。

レンツィ首相
 

近年の二国間交流

2015年には,「食」をテーマにした「2015年ミラノ国際博覧会」がイタリア・ミラノで開催され,国内外から多くの人々が訪れました。このミラノ万博で日本館は,展示デザイン部門で金賞を受賞するなど大盛況を博し,近年のイタリアでの日本食ブームをさらに盛り上げるきっかけとなりました。また民間企業間の連携も進んでおり,両国企業が有する技術力,ブランド力,販路等を活かした事業を世界各地で展開しています。

「2015年ミラノ国際博覧会」日本館の様子
 

日本イタリア国交150周年を迎えて

2015年8月,安倍総理は,公式実務訪問賓客として訪日したレンツィ首相と首脳会談を実施。ミラノ万博の盛況と,経済分野等での協力の深化を歓迎するとともに,2016年の日本イタリア国交150周年を通じて,幅広い分野で日イタリア関係を深めていくことを両国で確認しました。2016年には,イタリアでは日本を紹介するイベントが,日本ではイタリアを紹介するイベントが数多く開催されています。5月には,日本イタリア国交樹立150周年を記念し,ローマのコロッセオが,両国の国旗などをあしらった光の芸術に包まれるイベントを実施。点灯式・レセプションには,秋篠宮同妃両殿下を始め,多くの人々が出席しました。日本においてもレオナルド・ダ・ヴィンチ,ボッティチェリ,カラヴァッジョなど,ルネサンスを代表する芸術家の展覧会が相次いで開催される他,様々な記念事業が行われています。日本とイタリアは,この国交150周年を契機に,これまで培ってきた両国の友好関係をさらに発展していくことが期待されています。

レンツィ・イタリア首相と握手する安倍総理(2015年8月,日伊首脳会談)(左)と,日本イタリア国交150周年の公式ロゴ(右)

150周年を記念して日本人アーティストによってライトアップされたコロッセオ(2016年5月)
 
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