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Vol.145 2016年5月23日
「非核特使/ユース非核特使」とは

2016年3月27日,G7広島外相会合のプレイベントとして「ユース非核特使OB・OG広島フォーラム」が行われ,岸田外務大臣は,被爆の実相に対する理解を世代と国境を越えて拡げることの重要性を強調し,「ユース非核特使の国際ネットワーク化構想」を発表しました。今回は「非核特使」「ユース非核特使」について紹介するとともに,その目的と意義について解説します。

「非核特使」のはじまり

広島と長崎の惨禍を,世代と国境を越えて継承することは,唯一の戦争被爆国である日本の使命です。現在高まりを見せている「核兵器のない世界」に向けた取組を強化していく上でも,市民社会の熱意と関心の維持は不可欠であり,被爆者の高齢化が進む中,政府と市民社会との効果的な連携が益々求められています。このような機運の中,2010年8月6日の広島平和記念式典及び8月9日の長崎平和祈念式典において発表されたのが,「非核特使」の委嘱事業です。

 

非核特使の活動

「非核特使」として活躍する被爆者の方々この制度は,それまでは独自に,または政府を含む各団体とともに被爆体験証言に取り組んでこられた被爆者の方々に,日本政府が「非核特使」という名称を付与し,海外における「原爆展」や,国内外で開催される国際会議やイベント,外国政府要人や関係者による広島・長崎訪問の際など,様々な国際的な機会を通じて,自らの実体験に基づく被爆証言を実施していただくというものです。「非核特使」という名称を使っていただくことにより,証言を聞く人々に対する強いアピールになることはもちろん,これらの活動に関する国内外への発信力を高めることにつながることが期待されています。2010年9月の第1号案件以降,2016年4月現在までに計80件,延べ252名の方々に委嘱しています。

 

軍縮・不拡散教育の大切さ

近年国際社会において,「軍縮・不拡散教育」の重要性が,広く認識されてきています。きっかけは,2000年にニューヨークで開催された国連軍縮諮問委員会です。この会合において,現在の核軍縮の停滞を打破するためには,若い世代の教育から精力的に取り組む必要があるのではないか,という問題提起がなされました。それを受けて,同年に開催された第55回国連総会で,軍縮・不拡散教育の研究を行うよう,事務局長に要請する決議案がコンセンサスで採択されました。この決議に基づいて翌年に設置された政府専門家グループは,2002年に「軍縮・不拡散教育に関する報告書」をまとめ,以降,国連総会では軍縮・不拡散教育の重要性を強調する決議が,隔年でコンセンサス採択されています。

 

日本の取組

日本はこれまでにも,唯一の戦争被爆国として,また,国際的な軍縮・不拡散体制の強化を主要な外交課題と捉える立場から,軍縮・不拡散教育について積極的に推進してきました。前述の「非核特使」の派遣をはじめ,被爆証言の多言語化や各国若手外交官の被爆地研修,その他,国内にとどまらない市民運動の展開や,メディアを通じた世論喚起など,様々な取組を行ってきています。また日本は1983年以来,「国連軍縮フェローシップ・プログラム」参加者を広島・長崎に招待しており,各資料館の視察の他,被爆者による被爆体験講話等を通し,原爆被害の実相に対する理解を深めています。現在,世界の軍縮外交の第一線で活躍する各国外交官の中には本プログラムの出身者も多く,その多くが広島・長崎の訪問に非常に感銘を受けたと述べています。

国連軍縮フェローシップ・プログラムにて,広島・長崎を訪問する各国若手外交官等
 

「ユース非核特使」とは

このように,被爆者の方々が様々な機会を通じて,自身の被爆体験とその想いを伝えることにより,核兵器の非人道性を広く世界に訴えることにつながっています。しかし一方で,戦後70年を越え,被爆者の高齢化が進む中,戦争の悲惨さや被爆の実相をどのようにして伝え続けるかということが課題となっていました。そこで次世代を担う若者への継承を目的として,2013年4月に創設されたのが「ユース非核特使」です。「被爆者や戦争体験者から平和のバトンを受け継ぎたい」,「もっと被爆者の話を聞いてその思いを後世に伝えたい」という意思を抱く,概ね高校生以上・30歳未満の若者たちに「ユース非核特使」という名称を付与し,彼らの活動を後押ししています。2016年4月現在までに計14件,延べ136人に委嘱しました。

 

ユース非核特使の活動

日本の若者たちは,これまでにも軍縮・不拡散に関する様々な機会で活躍してきました。1998年,インドパキスタンの核実験を契機に,長崎の平和団体で組織する「ながさき平和大集会」(当時。現在は「高校生平和大使派遣委員会」)が,核兵器の惨禍を知る被爆地長崎の声を世界に届けるため,高校生を国連に派遣。以来,毎年公募で選ばれた国内各地の高校生約20名が,ジュネーブを訪れ,ジュネーブ軍縮会議(CD)を傍聴したり,国連の軍縮関係者と意見交換を行ったりしています。2015年4月には,24名の「ユース非核特使」がニューヨークで行われたNPT運用検討会議に参加しました。また同年8月には,22名の「ユース非核特使」がスイス・ジュネーブの国連欧州本部に,核兵器廃絶に向けた約16万人分の署名を提出し,軍縮会議において,日本の代表として,被爆地の思いや被爆地訪問に関するスピーチを行いました。

「高校生1万人署名活動」の様子(左)と,「ユース非核特使」として国連欧州本部での軍縮会議においてスピーチする様子(右)(2015年8月)(写真:「日本の軍縮・不拡散外交」(第七版)より
 

ユース非核特使OB・OG広島フォーラム
 (ユース非核特使の国際ネットワーク化と1000人以上の広島・長崎招致計画)

2016年3月27日,ユース非核特使経験者が100名を超えたことを踏まえ,G7広島外相会合プレイベントとして「ユース非核特使OB・OG広島フォーラム ―核兵器のない世界の実現のために,今,若者にできること―」が広島市で開催されました。岸田外務大臣は,「『核兵器のない世界』を目指すという国際的機運を,広島の地から再び盛り上げていきたい」と述べ,「ユース非核特使の国際ネットワーク化構想」と「1,000人以上の広島・長崎招致計画」を発表しました。フォーラムに参加したユース非核特使経験者代表からは,岸田大臣に対し,「世界のリーダーとして核兵器廃絶を進めて欲しい」と,4月の広島でのG7外相会合に向けた熱いメッセージが伝えられました。
フォーラムの第2部では,核兵器のない世界の実現のために若者に何ができるかをテーマに,ユース非核特使経験者による活動報告が行われました。また,米国の若者から届いたビデオメッセージの上映の他,被爆者の方を交えたパネルディスカッションも行われました。唯一の戦争被爆国として,核兵器使用の惨禍の実相を,世代と国境を越え,国際社会及び将来の世代に継承していくことは,日本の使命です。「核兵器のない世界」の実現に向けて,日本はこれからも「非核特使」「ユース非核特使」と連携しながら,引き続きリーダーシップを発揮していきます。

G7広島外相会合プレイベントユース非核特使OB・OG広島フォーラムの様子(2016年3月27日)
 
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