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Vol.140 2016年3月10日
「世界津波の日」の制定

2015年12月に行われた国連総会で,11月5日を「世界津波の日」に制定することが決定されました。「世界津波の日」は日本をはじめ,142か国が共同提案国となって制定されたものです。この「世界津波の日」制定の意義と,津波をはじめとした防災分野における日本のこれまでの取組について解説します。

津波はどうして起こるのか

津波とは,「津」=「港」の波,つまり海岸を急に襲う大波のことです。地震が起こると,震源付近では地面が持ち上がったり下がったりしますが,震源が海底の場合は,周辺の海水が短時間に持ち上がったり下がったりします。この押し上げられた水の塊が津波となり,周りに広がっていきます。地震以外でも,火山噴火や沿岸の山崩れ,海底地すべりなどによって,津波が発生することもあります。通常の海の波が,表面だけがうねって発生するのに対し,津波は海底から海面までの海水全てが移動するため,大変スピードが速く,かつエネルギーが大きい波になります。そのため津波は勢いが衰えぬまま連続して沿岸に押し寄せ,岸に到達すると沿岸での津波の高さ以上の標高まで駆け上がります。しかも浅い海岸付近では,その波が急激に高くなるという特徴があります。

津波の発生
 

甚大なる津波の被害

津波は他の災害に比べると,発生頻度は少ないですが,インドネシアのスマトラ沖地震による津波や東日本大震災のように一度発生すると甚大な被害をもたらすという傾向があります。大地震とそれに伴う巨大津波は,今後も起こり得るものです。ただし,それがいつなのかを正確に予測したり,発生自体を防いだりすることは,今のところできません。そのため,特に日本のような島国,海岸線を有する国では,津波が「いつ来てもいいように」備え,その被害を最小限に食い止めることが大切なのです。

2004年12月スマトラ島沖地震による津波被害(左)と,2011年3月東日本大震災時の岩手県宮古市の様子(右)
 

世界各地で繰り返される津波

地震によって引き起こされる津波の被害は,後を絶ちません。1960年のチリ,1976年のフィリピン,1998年のパプアニューギニア,1999年のトルコ,2001年のペルー,2004年のインド洋の沿岸諸国,2009年のサモア及びトンガ沖,2007年と2013年のソロモン諸島沖,そして2011年の東日本大震災の際には,多くの人々が犠牲になり,様々な被害が発生しました。津波の脅威は,世界の多くの国で共有されている懸念です。津波による犠牲者を減らすためには,国際社会が津波への理解を深め,津波対策の重要性について意識を高める必要があります。

津波の被害地図
 

津波の被害を食い止めるには

速やかな情報伝達と共有,すなわち「早期警報」は,今も昔も変わらない重要な津波対策です。津波は発生から海岸への到達まである程度の時間がかかるので,情報をいち早く得ることができれば,避難することが可能です。そのためには,より迅速で,かつ正確な津波警報の発令など,情報の伝達体制を整備するとともに,津波の危険性についての周知を徹底し,住民の「早期避難」の意識を高めるなど,ハード・ソフト両面による津波対策が求められます。

 

「より良い復興(Build Back Better)」という考え方

日本には,幾多の災害の経験や教訓により,防災に関する様々な知識や技術が培われています。2015年3月に,日本がホスト国となり開催された「第3回国連防災世界会議」では,「仙台防災枠組2015-2030(PDF)」を採択。この防災に関する新しい国際的指針の中には,防災投資の重要性,多様なステークホルダーの関与,より良い復興(Build Back Better)など,日本が提案した考え方が数多く取り入れられました。自然災害の対応について,以前は人道支援や復旧など,災害後の対応に焦点が当たる傾向がありましたが,災害大国である日本は自らの経験から,事前の防災への投資の重要性を強調。災害復旧・復興に関しても,単に災害前の状態に戻すのではなく,災害前よりも強靱な社会づくりを行う必要性を訴えました。また安倍総理は,日本の貢献策として「仙台防災協力イニシアティブ」を発表し,今後4年間で計40億ドルの協力を実施するとともに,4万人の防災・復興リーダーを育成することを表明しました。

わかる!国際情勢 Vol.124 第3回国連防災世界会議・防災の主流化の実現に向けて

第3回国連防災世界会議の様子(2015年3月)
 

「世界津波の日」制定を目指して

第3回国連防災世界会議で,我が国は,11月5日が日本の「津波防災の日」であることに触れ,世界中の防災意識の向上のため「世界津波の日」を制定することを提案しました。「津波防災の日」とは,江戸時代後期,安政元年(1854年)11月5日に起こった安政南海地震に由来するものです。この大地震により紀伊半島に大津波が襲来した際,現在の和歌山県広川町で,村人が自ら収穫した稲わらに火を付け人々を高台に誘導したという「稲むらの火」という逸話に基づき定められました。「世界津波の日」についても,過去に大きな被害が発生した日ではなく,早期警報と伝統的知識の活用によって人々の命が救われた成功例にちなんだ日であってほしいとの願いに基づき,「世界津波の日」の制定に向けての活動が始まり,日本が中心となって,各国間への支持要請が重ねられました。また,日本国内においても有志国会議員が100か国を超える在京大使館を往訪し,働きかけるなど,本件への支持が確実に広がりました。

「稲むらの火」
稲むらの火 現在の和歌山県広川町の村民・梧陵(ごりょう)は,海水のひき方や井戸水の急激な減少により,大津波を予期。村民を避難させるため,自分の田んぼで収穫された稲わらに火を投じ,急を知らせ,村人を救ったとされる。
 

防災意識のさらなる向上に寄与

その他にも日本は,防災分野における国際社会の議論を主導するとともに,ODA等を通じた防災協力を積極的に推進してきました。そのような動きの中,2015年 9月に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では,17のゴールのうち4つのゴールで防災の視点が盛り込まれています。前身である「ミレニアム開発目標(MDGs)」には,防災の視点がほとんど反映されていなかったことからも,改めて日本が提唱する国際防災協力の重要性が,国際的に認識されていることがわかります。

わかる!国際情勢 Vol.134“誰一人取り残さない”世界の実現-「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の採択

SDGs(持続可能な開発目標)
 

「世界津波の日」制定の意義

2015年12月に行われた第70回国連総会で,11月5日を「世界津波の日」として定める決議(PDF)が採択されました。この決議は,日本をはじめ142か国が共に提案したものであり,第3回国連防災世界会議及び持続可能な開発のための2030アジェンダのフォローアップとして位置づけられています。今後は「11月5日」に合わせて,津波防災への啓発活動が世界的に展開されることが期待されており,その結果,津波から1人でも多くの尊い命が救われることが望まれています。日本はこの「世界津波の日」の制定を契機に,これからも防災分野におけるイニシアティブを発揮していくとともに,津波観測や早期警戒などの国際的な防災協力を加速させていきます。

 
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