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Vol.131 2015年7月30日
一人ひとりのよりよい未来のために - 開発協力大綱

2015年2月,「開発協力大綱」が閣議決定されました。開発協力(ここで「開発協力」とは,政府開発援助(ODA)による開発途上国・地域の開発を主たる目的とする政府・政府関係機関(JICA等)による活動のことを指しています)は,日本が国際社会の平和と安定のために戦略的に外交政策を展開する上で最も重要な手段のひとつです。日本が1954年にODAを通じた国際協力を開始してから,既に60年がたちましたが,日本は何のためにこうした協力を行っているのでしょうか。今回は,日本の開発協力の基本的な考え方を示している「開発協力大綱」の内容について分かりやすくお伝えします。

日本と開発途上国との「信頼の絆」

2011年3月の東日本大震災の後,日本が支援の申し出を受けた国は163の国と地域,43の国際機関にのぼります。それらの国々の中の多くは,日本よりも貧しい開発途上国でした。そうした国々からは,日本はこれまでODAを通じて自分たちを助けてくれた,日本が困っている時に支援するのはこれまでの日本のODAへのいわば恩返しであるとの声が寄せられました。このように日本のODAは,開発途上国の発展や成長への貢献を通じて,日本と開発途上国の間に確かな「信頼の絆」を築くのに役立っています。支援の現場で現地の人々とともに苦労しながら働いてきた日本人の姿は,そのまま日本への良いイメージへとつながります。それは日本にとって,大変貴重な資産といえるでしょう。

わかる!国際情勢:vol.116「未来への投資」としてのODA - 国際協力60周年

東日本大震災の際に送られた,各国からの応援メッセージ(左:パキスタン,右:ベトナム)
 

日本のODA60年の成果

上述したとおり,日本が1954年に開発途上国へのODAを開始してから,昨年で60年がたちました。日本はこの60年の歩みの中で,開発途上国の自助努力を後押しし,その持続的成長と人間の安全保障の実現を目指してきました。日本が重点的にODAで支援してきたASEANは,10か国全体でのGDPが今や2兆ドルを優に超える市場に成長。また,アフリカ諸国に関しても,日本が率先してTICAD(アフリカ開発会議)プロセス等を通じて平和構築や開発のためのODAを推進させたこともあり,近年目覚ましい成長を遂げつつあり,世界的に市場,投資先としてもアフリカへの関心が高まっています。

 

開発協力大綱の策定

2015年2月,日本政府は,今後の日本の開発協力の方向性を「開発協力大綱」として新たに策定しました。これまでの「政府開発援助(ODA)大綱」と言っていたものを「開発協力」とより広くとらえることにしました。これは,政府だけでなく,民間や地方も含めたオールジャパンの協力を目指そうとすること,ODAの範囲にとらわれずに協力のスコープを広げること,そして,開発途上国と対等なパートナーシップによる互恵的な協力関係の構築を目指すといった考えが背景にあります。これまで日本の援助は,国際的に定められたODA対象国に限定して行われてきており,一人あたりの国民総所得が一定基準(2014年でいうと,12,745米ドル)に達した国については,援助を打ち切ることとしていました。しかし,カリブ海の小さな島国などの中には,一人あたりの国民所得は基準を超えていても脆弱な経済・自然環境にある国もあります。今後,日本としては,こうした国々に対しては,しっかりとその実情を見極め,日本との関係を考慮しながら,必要な協力を行っていく方針に改めました。

 

これからの日本の開発協力が目指していること

メ開発協力大綱のポイント開発協力大綱には,いくつかの基本方針と重点課題が示されています。そこでは,日本の開発協力の目的について「国際社会の平和と安定及び繁栄により一層積極的に貢献すること」としつつ,そうした協力は日本の国益の確保にも資する旨明記しました。そもそも,国際社会の利益と国益は分かちがたく結びついており,開発協力は,その双方に資するべきとの考え方を示したものです。その上で,日本の開発協力の基本方針として,(1)平和国家として非軍事的協力により世界に貢献するとともに,(2)人間一人ひとりに焦点を当て,その保護と能力の強化を図る,さらに,(3)相手国等と対話や協働を重視しながら自立的発展に向けた協力を行う,という3点を掲げています。これらの方針は,言い換えれば,それぞれ「原点に返る」(平和国家・日本が開発協力を開始した動機),「人間に帰る」(日本の開発協力が常に立脚する視点),「基本に復(かえ)る」(共に汗をかくことが日本の開発協力を支える推進力)の3点に要約することもできるでしょう。

 

「触媒」としての開発協力-民間セクターとの連携と多様な主体の開発への参画

日本の開発協力は,(1)「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅,(2)普遍的価値の共有,平和・安定・安全な社会の実現,(3)地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靱な国際社会の構築の3つを重点課題として取り組んでいきます。その際,政府だけで取り組むのではなく,民間企業,地方自治体,NGO等との連携を強化していく考えです。また,民間投資を呼び込み,そして「質の高い成長」に結びつけるための「触媒」として役割を果たしていきたいと考えています。これは,開発途上国への民間資金フローが公的資金を大きく凌ぎ,民間部門の活動が開発途上国の経済成長を促す大きな原動力となっている現状を踏まえたものです。さらに,成長の果実が社会全体に行きわたり,誰一人取り残されない(包摂的),公正な開発を目指すことが重要です。このため,女性や社会的弱者を始めとする様々な関係者の開発への参画を促していく考えです。

民間連携事例:サウジアラビア「自動車技術高等研修所計画プロジェクト」(左)と,カンボジア「シハヌークビル港多目的ターミナル整備事業」(右)(写真提供:JICA)
 

新たな国際開発目標(ポスト2015年開発アジェンダ)への対応

また,2015年9月には,国連において,2015年以降の国際開発目標(ポスト2015年開発アジェンダと言われるものです)が策定されます。日本は上述のような取組を国際社会とも連動して進めていきます。

 

非軍事的協力による平和と繁栄への貢献

日本の過去60年以上のODAの歴史は,戦後日本の平和国家としての歩みそのものです。開発協力大綱においても,日本の開発協力の基本方針として,「非軍事的協力による平和と繁栄への貢献」を明記し,平和国家としての日本にふさわしい開発協力を推進するとの方針を堅持しています。また,この観点から,開発協力大綱には,開発協力の「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する」との原則を定めています。これは,1992年に開発協力大綱の前身である政府開発援助大綱を定めた時から変わっておらず,日本は,引き続き軍事目的に利用されるような開発協力は行いません。開発協力大綱では,「民生目的,災害救助等非軍事目的の開発協力に相手国の軍又は軍籍を有する者が関係する場合には,その実質的意義に着目し,個別具体的に検討する。」と定めています。これは,近年,自然災害の激甚化・頻発化やグローバル化に伴う感染症の瞬時の拡大等の人道危機の広範化が見られるようになっていることを踏まえ,感染症対策や紛争後の復旧・復興等の民生分野や災害救援等,軍や軍関係者が軍事活動以外の非軍事目的の活動において重要な役割を果たしている場合に,これらに対する非軍事目的の協力が必要となることを想定したものです。

 

日本の開発協力の進むべき道

今日の国際社会では,急激に進むグローバル化により,様々な課題やリスクが増大しています。一方で,紛争などにより国が脆弱な状況に置かれており,新興国が急速にそのプレゼンスを高めています。そのような状況の中で,2015年2月に定められた開発協力大綱は,日本が60年の国際協力で培ってきた伝統を継承しながら,国際社会の責任ある国家として,今後の日本の開発協力の進むべき道を記した羅針盤となるものです。上述した開発協力大綱の考え方を踏まえ,開発協力の戦略的展開に必要な実施体制の整備を図りながら,また,民間企業,地方自治体,大学・研究機関,NGOや市民社会組織(CSO),国際機関・地域機関等とより一層連携しながら,日本と世界各国との関係の維持・発展を図っていく考えです。

 
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