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Vol.13 2008年11月5日
ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた日本の取組

2008年9月25日に行われたMDGsに関するハイレベル会合の分科会において、中曽根外務大臣は、TICAD IV およびG8北海道洞爺湖サミットの成果を踏まえ、「人間の安全保障」の理念、及び途上国のオーナーシップに裏打ちされた経済成長の重要性を指摘するとともに、MDGs達成に向けた我が国の積極的な取組を紹介しました。本年はMDGs中間年にあたり、目標達成に向けたMDGsの進捗状況と、日本の取組について解説します。

国連ミレニアム宣言の採択

ミレニアム開発目標(MDGs)の成り立ちは、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットに端を発します。参加した147の国家元首を含む189の加盟国代表は、21世紀の国際社会の目標として、国連ミレニアム宣言を採択しました。この宣言は、平和と安全、開発と貧困、環境、人権とグッドガバナンス(良い統治)、アフリカの特別なニーズなどを課題として掲げ、21世紀の国連が果たすべき役割の方向性を示しています。

 

ミレニアム開発目標(MDGs)の8つの目標

この国連ミレニアム宣言と、1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、1つの共通の枠組みとしてまとめられたものが、ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)です。MDGsは2015年までに達成すべき8つの目標を掲げており、これらの目標の下には、具体的目標を設定したターゲットや指標などがあります。現在、国際社会はこのMDGs達成に向けて、日々様々な努力や取組を行っており、国連は毎年、各指標の進捗状況を報告書としてまとめています。

ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals:MDGs)
 
 

MDGsの進捗状況

「国連ミレニアム開発目標(MDGs)報告2008」 によると、MDGs達成の見通しとしては、極度の貧困の半減や、初等教育の普及率向上、初等教育における女性の就学率の向上、エイズ感染者の減少、安全な飲み水の確保など、前年に比べて改善が見られた分野がいくつも見られました。他方で、アフリカのサハラ以南など、目標の達成はおろか、進展なしまたは状況が悪化しているとの報告がなされている分野も多数あります。

ミレニアム開発目標(MDGs):2008年プログレス・チャート
 

MDGsハイレベル会合の開催

さらに、MDGsが掲げられた当時には想定されていなかった食料・エネルギー価格高騰問題気候変動問題の影響も出ています。こうした問題は、先進国より途上国においてより深刻な打撃を与えています。このような状況の中、MDGsの中間年に当たる2008年の9月25日、「MDGsに関するハイレベル会合」がニューヨーク・国連本部で開催されました。主要国から首脳クラスや外相クラスが集まり、開会式の後、特に重要とされる「貧困と飢餓」「教育と保健」「環境の持続可能性」という3つの分野について分科会が開催されました。また、前日の24日、我が国はドイツ、オランダ、タジキスタンと共に、このハイレベル会合のサイド・イベントとして、「水と衛生に関するサイド・イベント『すべての人に水と衛生を』」を開催しました。

 
 

日本が発信したメッセージ

中曽根外務大臣は、「貧困と飢餓」の分科会でスピーチを行い、MDGs達成に向けた我が国の積極的な取組を紹介しました。さらに日本の外交政策の柱である「人間の安全保障」の理念を説明し、これを体現するために、途上国からドナー、新興経済国、国際機関、民間財団、企業、学界に至るまで幅広い関係者の力を結集する「全員参加型」のアプローチ、保健、水、教育、ジェンダーといった開発の各分野間の相乗効果を図る「マルチセクトラル」なアプローチを呼びかけました。また、途上国のオーナーシップ(自助努力)に裏打ちされた持続的な経済成長の重要性も強調しました。

 

「全員参加型」アプローチ「マルチセクトラル」なアプローチの成功例

日本は、「全員参加型」アプローチと「マルチセクトラル」なアプローチが、支援の効果的な取組方であるとしていますが、その良い例があります。日本は、マラリア対策として蚊帳の有効性を呼びかけ、多くの蚊帳を無償配布してきましたが、日本の住友化学は、アフリカ支援の一環として殺虫剤を練り込んだ蚊帳を開発しました。この蚊帳は、UNICEFなどを通じてアフリカ等各国に供給されています。また、タンザニアでは、この蚊帳を作る技術が住友化学からメーカーに無償で供与され、現地で生産されています。蚊帳販売から得られた収益の一部は、アフリカの小学校建設にも当てられています。この「全員参加」「マルチセクトラル」な取組により、乳幼児死亡率の低下、雇用の創出と経済開発、初等教育の普及などが実現できたと考えられます。

MDGs達成に向けた日本の取組例
 

日本の具体的貢献策

2008年のTICAD IVおよび北海道洞爺湖サミットにおいて、日本は新たにアフリカ向けODAを2012年までに倍増する意向を表明。また、食料価格の高騰問題への対策として緊急支援を実施するとともに、中長期的な展望として農業の分野の人材育成とアフリカ諸国におけるコメ生産量の倍増の目標を約束しました。さらに、保健、教育、水・衛生分野に重点を置き、資金協力、技術協力支援、人道支援、それぞれの側面からの対策に取り組んでいく考えを示し、これからもMDGs達成に向け、その役割を果たしていきます。

 
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