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Vol.128 2015年3月31日
日豪EPA:二国間の関係強化がもたらすもの

2015年1月15日,「日・オーストラリア経済連携協定(日豪EPA)」が発効しました。日豪EPAは,これまでに日本が締結したEPAの中でも,最も大きな経済パートナーとの協定であり,この協定の発効により,日豪関係が,一段と強化されることが期待されています。今回は,日豪EPAの意義について解説します。

資源大国・オーストラリアと日本との関係

日本にとってオーストラリアは,世界第4位の貿易相手国であり,特にエネルギー・鉱物資源に関しては,最大の供給国でもあります。鉄鉱石や石炭,金などの資源に恵まれたオーストラリアは,世界でも有数の資源大国であり,資源の乏しい日本にとっては,エネルギー安全保障の観点からも極めて重要な経済パートナーです。一方,オーストラリアにとっても日本は,世界第2位の貿易相手国と位置づけられています。また日本は,1957年に締結された日豪通商協定をきっかけに,特に資源分野を中心とした積極的な対豪投資を行っており,オーストラリアの資源業界の発展に寄与してきました。このような経緯からも,日本とオーストラリアは長期にわたって相互補完的な経済関係を築いており,両国は特別な信頼関係で結ばれています。

日豪経済関係
 

食料・安全保障・人的交流

©Australian Embassy, Tokyo さらに,日本にとってオーストラリアは,アメリカ,中国に続く第3の食料供給国であり,特に牛肉や酪農品,大麦に関しては,第1位の供給国です(2013年)。北半球にある日本と南半球にあるオーストラリアは,季節がちょうど反対になるので,日本では収穫できない時期に,オーストラリアで収穫された農作物を輸入することができるなど,季節的な面でも相互補完の関係を保っています。また,安全保障分野でも協力を強化しており,2007年には,安倍総理(当時)が「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を表明しました。以降,日本とオーストラリアは,人道支援・災害救援支援やPKO活動など,様々な場面で連携を強化しています。姉妹都市交流や人的交流も盛んに行われており,オーストラリアでは現在,「新コロンボ計画」という,インド太平洋地域へのオーストラリア人学生の留学やインターンシップの機会を支援するプロジェクトを実施しています。2014年に日本を含む4か国でパイロットプロジェクトを開始し,現在多くのオーストラリア人留学生が日本を訪れ,交流を深めています。

 

二国間EPAにおける最大の経済パートナーの誕生

このように,様々な分野で信頼関係を醸成してきた日本とオーストラリアは,経済関係のさらなる活性化と両国間の関係強化を目指し,2007年より日・オーストラリア経済連携協定交渉を開始しました。2012年6月までに16回にわたる交渉会合を実施しました。2014年4月の日豪首脳会談において大筋合意を確認した後,同年7月に安倍総理がオーストラリアを訪問した際,トニー・アボット・オーストラリア連邦首相との間で,日・オーストラリア経済連携協定及び同協定の実施取極への署名が行われました。そして日本及びオーストラリアは,それぞれの所要の国内法上の手続を完了し,2015年1月15日,日・オーストラリア経済連携協定(日豪EPA)が発効しました。

日豪首脳会談時の安倍首相とアボット首相の様子(2014年7月9日)(写真提供:内閣広報室)  日・豪経済連携協定に基づいて設置された合同委員会の第1回会合の様子(2015年1月15日)
 

日豪EPAの内容

この協定では,発効から10年間で,往復貿易額の約95%の関税が撤廃されます。日本にとってはオーストラリアからの輸入額の約93.7%の関税を撤廃し,オーストラリアにとっては,日本からの輸入額の約99.8%の関税を撤廃することになります。日本側から見ると,まずは自動車をはじめとする鉱工業品に関する大部分の品目について即時関税撤廃が行われた他,農林水産物に関しても,すべての品目について即時関税撤廃されます。オーストラリアからの輸入品については,鉱工業品はほぼすべての品目について即時もしくは今後10年間で関税撤廃され,農林水産品では,コメは関税撤廃の対象から除外となっていますが,牛肉は段階的に税率が削減され,ボトルワインは7年間で関税が撤廃されるなど,品目ごとに規定が決められています。特に牛肉については,輸入量が一定量を超えた場合に関税率を引き上げるという,特別なセーフガードを導入し,日本国内の産業を守る措置が取られています。

日・豪間貿易構造
 

「食料供給」の分野に注目

日豪EPAが他の経済連携協定(EPA)と比べて特徴的なのは,日本のEPAで初めて「食料供給」分野が含まれているという点です。具体的には,オーストラリアの国内生産が不作に陥るなどして,輸出を制限する措置を取らざるを得ない場合にも,日本側に対して制限の限定や情報提供,協議等をするという努力義務が定められています。食料自給率の問題が取りざたされる中,安定的な供給や,特定の品目についての輸出制限の回避に努められるということは,日本にとって大きなメリットのひとつだと言えるでしょう。また,「エネルギー・鉱物資源」分野が含まれていることや,これまで日豪の間では存在しなかった「政府調達」に関する約束が含まれていることも,日豪EPAの特徴として挙げられます。

 

産業界におけるメリット

日本の産業界にとっても,今回の日豪EPAにより,多くの変化がもたらされる可能性があります。これまでは,EPA税率の適用を受けるためには,その物品がEPA相手国からの輸入品であることを証明する原産地証明書を第三者機関に発行してもらう必要がありました。今回の日豪EPAでは,第三者機関ではなく,輸入者,輸出者または生産者自身が作成した書類の提出も可能となる自己申告制度が導入されたため,手続面がより簡素化されることになります。また,両国政府間の話し合いは,民間の産業界関係者も含めた形で行われるなど,「ビジネス環境の整備」という分野においても様々な取り決めが行われており,日豪EPAは産業界にとって,より実効性の高い,使い勝手の良い枠組として機能していくことが期待されています。

自己申告制度について(日豪EPA原産地手続)(税関ホームページ)

 

その他のEPAへの波及効果

現在日本は,ASEAN諸国を中心に15の国と地域との間でEPAの発効または署名を行っています。2015年1月に日豪EPA発効,同年2月にはモンゴルとの署名が行われたことにより,日本が発効及び署名済EPA相手国との貿易総額に占める割合は,22.6%となりました。うち4.39%を占めるオーストラリアとの締結は,日本の経済連携の取組の中でも,より存在感の大きなEPAであると言えるでしょう。日本は2018年までにFTA比率70%を達成することを目標としており,今回の日豪EPAは,この目標に大きく貢献するものと考えられています。

日本の経済連携(EPA)の取組
 

日豪EPAがもたらすもの

日豪EPAは,日本の消費者にとっても,目に見える部分で様々な変化をもたらすことでしょう。例えば,牛肉をはじめとするオーストラリアからの輸入品の関税が引き下げられ,その分が販売価格にも反映されれば,家計にとってもプラスの効果が期待されます。また,日豪両国間にとっての経済関係の緊密化はもちろんのこと,戦略的パートナーとしての存在を超えた,特別な関係である両国の関係強化に寄与するだけではありません。オーストラリア市場における日本企業の競争力を確保するとともに,エネルギー・鉱物資源や食料の安定供給も強化されます。さらに,二国間を超え,アジア,太平洋地域のルールづくりを促進するなど,日本にとって大きな意義をもたらす枠組みとして発展していくことが期待されています。

 
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