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Vol.127 2015年3月16日
同じ太平洋の島国として。“第7回太平洋・島サミット”

2015年5月22-23日,福島県いわき市にて「第7回太平洋・島サミット(PALM7)」が開催されます。「福島いわきから太平洋への誓い 共に創る豊かな未来」をキャッチフレーズに,東日本大震災からの復興への取組を進めるいわき市から世界に向けて,安定かつ繁栄した太平洋地域の実現に向けた日本と太平洋諸国のメッセージを発信する予定です。今回は,太平洋島嶼国の歴史と文化,そして日本との関係について解説します。

太平洋島嶼国とは

青い海と白い砂浜が続く海岸(パラオ共和国) 日本の南方に位置する太平洋の島国には,約3万5千年前から人々が定住し始めたと言われています。この地域は,大航海時代の16世紀に世界史に登場しました。その後,1962年に西サモア(現在のサモア独立国)が独立したのを皮切りに,次々と独立国家が誕生しました。面積や人口の規模は様々で,日本の約1.25倍の広さを持つパプアニューギニア独立国から,世界で三番目に面積が小さいナウル共和国まで,多様な島国が点在しています。またパラオ共和国フィジー共和国などは,世界有数のダイビングスポットがあることでも知られており,美しい海と緑豊かな自然を 求めて,世界中から観光客が訪れる地域です。

南国情緒溢れる色鮮やかな植物たち(サモア独立国)
 

3つの地域性

太平洋の島国は,ミクロネシア,メラネシア,ポリネシアという3つの地域に区分されています。各地域には,それぞれの歴史を反映した独自で豊かな文化があります。「小さな島々」という意味を持つ「ミクロネシア」には,かつて日本の委任統治領だった国々もあり,日本の文化が現地の文化の中に残っています。また多くの日系人たちが,政治経済分野のリーダーとして活躍しているのも特徴です。「黒い島々」という意味を持つ「メラネシア」は,火山島が多く,熱帯雨林が広がっている地域です。鉱物資源や森林資源に恵まれており,多種多様な文化が存在する一方で,同じ部族出身者同士の団結意識が強いことでも有名です。「多くの島々」という意味を持つ「ポリネシア」は,古くから航海術に優れた海洋民として知られています。国王や貴族の間で培われてきた豊かな音楽や芸能が現在も各地で継承されており,日本でも人気のある「フラダンス」はその代表とも言えます。

太平洋島嶼国
※国旗をクリックすると詳細情報がご覧になれます。
 

日本との共通点

日本と太平洋島嶼国には,社会的制度や慣習などに様々な共通性が見られます。それは,同じ太平洋の島国であり,歴史的に古くから人的な交流があったためと考えられています。明治期以降は,労働移民として多くの日本人が島々に渡りました。また,日本の委任統治を経験したミクロネシア地域では,日本人の血を引く日系人の数は地域全体の人口のうち2割強とも言われています。日本由来の言葉も多く,例えばパラオ共和国では,「オキャク(お客)」,「ダイジョウブ(大丈夫)」,「シャシン(写真)」,「デンキ(電気)」や「センキョ(選挙)」などの日本語が,そのまま現地のパラオ語として使われています。

パラオ共和国の人々の様子
 

日本から見た太平洋島嶼国

このように同じ太平洋を共有し,歴史的に親日的であり,かつ国際社会において日本の立場を支持する太平洋島嶼国は,日本にとって大変重要な国々です。豊かな漁場としても知られる太平洋島嶼国は,日本の約5倍の排他的経済水域(EEZ)を有しており,日本で食されるマグロやカツオの約8割はこの水域で漁獲されています。また,銅,ニッケルなどの鉱物資源や,石油,天然ガスなどのエネルギー資源の重要な供給地であり,かつ海上輸送路にもなっています。特にミクロネシア3国(マーシャル諸島共和国パラオ共和国ミクロネシア連邦)では日系人の存在が大きく,ノート元マーシャル大統領,レメンゲサウ・パラオ大統領,モリ・ミクロネシア大統領など,日系人大統領も登場しています。太平洋戦争時に激戦地となった島々へは,近年でも多くの日本人が慰霊や遺骨収容のため訪れていますが,その際にも地元住民による多くの協力や支援が行われています。

 

太平洋の島国であることの難しさ

しかしながら太平洋島嶼国には,この地域ならではの課題が多くあることも事実です。国土が狭く分散していること,豊富な漁獲高を誇る漁場を有していても,国際市場から距離的に離れているため輸送コストが高くなること,さらに,自然災害や気候変動などの環境変化による影響を直接受けるため,甚大な被害が発生していることなどが,深刻な問題となっています。特にツバルなど,気候変動の影響で海水面が上昇し,水没の危機に直面している国もあり,これらの島国や地域が有する脆弱性は,ときに国の存在をも揺るがす大きな問題として国際的にも懸念されています。

わかる!国際情勢 Vol.27 水没が懸念される国々~ツバルを通して見る太平洋島嶼国

 

日本との交流と東日本大震災への支援

安倍総理パプアニューギニア訪問(写真提供:内閣広報室) 日本はこれまでにも太平洋島嶼国に対し,幅広い分野での友好・協力関係を推進してきました。特に経済協力の分野では,地元の人々の生活向上に貢献する草の根レベルでの支援を多数行っており,強い信頼関係を築いてきました。また,人的交流も盛んに行われており,太平洋島嶼国からは,首脳や閣僚が頻繁に来日しているほか,2014年7月には,安倍総理大臣がパプアニューギニアを訪問しました。2013年3月まで実施されたキズナ強化プロジェクトJENESYS2.0などのプログラムを通じて,青少年交流も盛んに行われています。東日本大震災の際には,太平洋島嶼国から日本に対して,多くの温かいお見舞いや義援金が届けられましたが,かつて日本の支援を受けた地元の人々が率先して,支援物資やメッセージを被災地に向けて送ったといったエピソードが多数報告されています。

【パラオ】トリビオン大統領(当時)は3月25日を震災犠牲者のための追悼の日とすることを決定(2011年3月))  【マーシャル諸島】チャリティ・イベント参加者が被災者へのメッセージを作成(2011年3月)

「がんばれ日本!世界は日本と共にある」大洋州(島嶼国)

 

第7回太平洋・島サミット(PALM7)の開催

第7回太平洋・島サミットロゴマーク このような状況の中,太平洋島嶼国が直面する様々な問題について首脳レベルで率直に意見交換を行う「第7回太平洋・島サミット(PALM7)」が,2015年5月22日と23日の2日間,福島県いわき市で開催されます。開催に当たって制作された公式ロゴマークは,太平洋・島サミットが「PALM」の略称で知られていることから中央に椰子の木(英語でパーム(Palm))をあしらい,日本と太平洋島嶼国をつなぐ架け橋を表現する3色の虹で構成されています。またキャッチフレーズも「福島いわきから太平洋への誓い共に創る豊かな未来」に決定し,福島県いわき市から,東日本大震災からの復興に向けた取組の状況についても世界に向けて発信される予定です。

ポスター(PDF) パンフレット
ポスター(PDF) パンフレット

 

同じ太平洋の島国として

PALM7開催に当たり,スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチームの「フラガール」が広報親善大使を務め,様々な場面で会場を盛り上げていくほか,ポスターコンクールや「パシフィック・フェスタ2015(太平洋文化芸術祭)」など,様々な記念事業が行われる予定です。日本はこのPALM7の機会に,太平洋島嶼国とのより緊密な協力関係を構築し,その絆を強化していくとともに,力強く復興を遂げる被災地の姿をアピールしていきたいと考えています。太平洋島嶼国の首脳レベルが一堂に会し,かつ今回で7回を迎え,国際社会にも認知されているPALMの重要性は,年々高まっています。主導する日本の役割にも,大きな期待が寄せられており,今後も日本と太平洋島嶼国の交流は,ますます深まっていくことでしょう。

第7回太平洋・島サミット広報親善大使「フラガール」

【関連バックナンバー】
わかる!国際情勢 Vol.89 第6回太平洋・島サミット(PALM6)~太平洋島嶼国との「キズナ」

 
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