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Vol.120 2014年11月11日
スコットランド ~ 日本との知られざる絆と独立問題

2014年9月18日,英国からの独立をめぐる住民投票が行われたことで,一躍世界の注目を浴びたスコットランド。日本においても,スコットランド人に関わりの深い人物をモデルにした朝の連続テレビドラマが放映されるなど,熱い視線が集まっています。独自の伝統や文化を育んできたスコットランドの歴史と現在の情勢について,日本との知られざるエピソードとともに御紹介します。

スコットランドとは

英国を構成する4つの地域スコットランドは,英国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)を構成する4つの地域のひとつです。かつては「スコットランド王国」として独立したひとつの国でしたが,1707年にスコットランド王国とイングランド王国が合併し「グレートブリテン連合王国」が成立。1801年にアイルランド王国が加わり「グレートブリテン及びアイルランド連合王国」が成立し,その後1922年に南アイルランドが分離して,現在の「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」と改称しました。スコットランドの人口は約530万人(英国全体の約8.4%),面積は約7.8万平方キロメートル(英国全体の約1/3)と,どちらも北海道とほぼ同じ規模です。政治の中心地エディンバラは,京都府と友好都市関係を締結しています。毎年8月から9月にかけて開催される芸術の祭典「エディンバラ国際フェスティバル」には,日本をはじめ世界中から多くの観光客が訪れます。

 

身近にある“スコットランド”

実は私たちの周りには,様々な「メイド・イン・スコットランド」が溢れています。NHK朝の連続テレビ小説「マッサン(※1)」に登場する「スコッチウイスキー」は,その代表格と言えるでしょう。他にも例えば,日本の制服などにも用いられる「タータン柄」は,スコットランドの伝統的なチェック柄であり,卒業式などで歌われる「蛍の光」は,もともとはスコットランド民謡です。ゴルフやカーリングなど,人気スポーツの発祥の地としても有名で,特にセント・アンドリュースのゴルフクラブは,世界中のゴルファーが一度は訪れたいと願う,ゴルフの聖地として知られています。また「経済学の父」アダム・スミスをはじめ,小説「シャーロック・ホームズ」の作者コナン・ドイル,小説「宝島」の作者ロバート・ルイス・スティーヴンソン,電話を発明したグレアム・ベル,ペニシリンを発明したアレクサンダー・フレミングなど,歴史上著名な人物を多数輩出しています。

タータン柄を配したスコットランドの民族衣装「キルト」 スコッチウィスキー

マッサン展(※1)2014年9月よりスタートした,NHK朝の連続テレビ小説。「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝さんと,彼がスコットランドでウイスキー製造法を学んでいるときに出会った妻のリタさんの物語がモチーフになっています。現在,外務省外交史料館では,日本とスコットランドの交流や,竹鶴政孝・リタ夫妻の足跡を紹介する「マッサン展-マッサンと呼ばれ愛された政孝の琥珀色の夢と青いバラのものがたり」を開催中(2015年5月8日まで)。

 

スコットランドは古き良き友人

日英修好通商条約調印書(重要文化財)日本とスコットランドとの出会いは,今から約400年前にさかのぼります。1603年,スコットランド王ジェームズ6世がイングランド王を兼ねて,ジェームズ1世として即位したのと同じ年,日本では徳川家康が征夷大将軍となり,江戸幕府を開きました。徳川家康は,英国人ウィリアム・アダムス(三浦按針)を介して,ジェームズ1世と手紙や贈答品のやりとりを行い,現在でもそのいくつかはロンドン塔に大切に保管されています。1858年に,「安政の五カ国条約」のひとつである日英修好通商条約を調印した際には,スコットランド出身の第8代エルギン卿が英国側全権として来日しました。またその翌年,スコットランド出身のトーマス・グラバーが長崎に来港し,後に「グラバー商会」を開設して長崎屈指の貿易商として活躍し,日本の近代化に大きく貢献したと言われています。

トーマス・グラバー像
 

フォース鉄道橋を作った男

会議や会食などでの序列・席次日本からスコットランドに渡り,現地で活躍した日本人も多くいます。中でも最も有名なのが,渡邊嘉一(わたなべ かいち)です。1884年にグラスゴー大学に留学した渡邊は,卒業後もスコットランドにとどまり,当時建設途中だったフォース鉄道橋の工事監督を任されます。フォース鉄道橋は当時の建築技術の最高峰を示したと言っても過言ではなく,19世紀の「土木工学の奇跡」,「世界第8番目の不思議」と讃えられました。 この橋はスコットランドの象徴的な存在であり,2007年よりスコットランド銀行が発行している20ポンド紙幣には,フォース鉄道橋と渡邊嘉一の姿が描かれています。1980年代からはスコットランドへの日系企業の進出も拡大し,現在その数は46社に上っています(2013年10月現在)。多くは製造業ですが,製薬や先端エンジニアリング等の高度技術分野における共同研究開発も行われており,投資拡大の事例も見られています。

フォース鉄道橋の原理を示す人間橋。中央が渡邉嘉一 スコットランド銀行の20ポンド紙幣
 

皇室とスコットランドの交流

日本の皇室も,スコットランドとは親密な交流を続けてきました。1869年のエディンバラ公の訪日に対して,翌年から東伏見宮彰仁親王が英国に留学されました。1921年,裕仁皇太子(後の昭和天皇)が御訪欧の際にスコットランドを訪問されたほか,1953年にはエリザベス女王戴冠式に御出席された明仁皇太子(今上天皇)がエディンバラを訪問されています。また,2012年8月には秋篠宮眞子内親王殿下がエディンバラ大学に御留学されるなど,これまで多くの日本の皇族がスコットランドを御訪問され,温かな交流が育まれています。

 

スコットランド情勢 ~ 独立問題の背景

スコットランドは,歴史や文化だけではなく,司法制度や教育制度においても独自の特色を有しています。1999年,英国政府からの権限移譲により,スコットランド議会及びスコットランド自治政府が創設されました。スコットランド議会には,国が権限を留保する分野(憲法事項,防衛,外交,エネルギー等)を除き,保健衛生,教育,交通・運輸,経済開発,投資・貿易促進,観光など様々な分野に関する一次立法権が付与され,スコットランド政府が行政を担うようになりました。伝統的に労働党の地盤でしたが,2007年以降,イラク戦争を巡る政策や政治献金問題の影響で労働党が支持を減らすと,スコットランド国民党(SNP)が躍進し,2011年のスコットランド議会選挙でSNPが過半数を獲得すると,スコットランドは,英国政府と独立に向けた交渉を重ねました。その結果,2012年にキャメロン英国首相とサモンド・スコットランド自治政府首席大臣が, 2014年9月18日に独立の是非を問う住民投票を実施することで合意しました(エディンバラ合意)。

 

賛成派と反対派の主張

SNPを主体とするスコットランド政府独立賛成派は,スコットランドの民意が反映されない英国政府・議会を離れ,経済的により豊かで平等,非核,自己責任の独立国家の樹立を主張しました。2013年11月には,独立後の国家像を「白書」として公表しました。一方,労働党を始めとする独立反対派は,スコットランドは連合王国内にあってこそ力が発揮できる,「白書」の内容は単なる願望であって実現の保証がないなどと主張し,賛成派・反対派双方による激しいキャンペーンが繰り広げられました。当初は独立反対派の優勢が伝えられていましたが,2014年に入ってから賛成派の支持が急伸すると,次第に大接戦の様相を呈しました。最終結果は,賛成約162万票(44.7%)に対し,反対は約200万票(55.3%)でした(投票率約85%)。大方の事前の予想に反し,約10%の大差で独立反対が上回ったのは,投票態度を決めていなかった人々を含め,先行きに不安を覚えた住民が英国に留まることを選択したためだと言われています。

独立賛成派と独立反対派の主な主張

  賛成派 反対派
主体 スコットランド国民党(SNP),スコットランド自治政府他 保守党,自民党,労働党及び英国政府
経済 北海油田からの税収見通し増大 北海油田からの税収見通しは非現実的
通貨 「ポンド」維持 独立すれば,英国政府が「ポンド」継続使用を認めない可能性あり
外国投資 独立後は法人税を3%引き下げ,外国投資の誘致継続 独立すれば,外国企業にとって,ビジネス環境が不安定化
安全保障 核兵器と原子力潜水艦は速やかに撤去 独立すれば,英国からの防衛産業関連の発注なし,造船業は縮小,雇用に打撃
EU加盟 現在と同じ諸条件のまま速やかにEU加盟の達成が可能 新独立国としてEU加盟手続を開始する必要が生じ,容易ではない
更なる権限移譲 独立反対派の単なる口約束にすぎない 更なる権限移譲を公約

 

今後のスコットランド・英国の動き

スコットランドの住民投票は独立反対派が勝利し,英国への残留が決定しました。今後は住民投票直前に主要3政党が約束した行動計画表に基づき,スコットランドへの更なる権限移譲を具体化するための協議が行われ,11月30日までに最終的合意内容を記した白書が公表される予定です。一方で,住民投票結果発表直後に,キャメロン首相がスコットランド以外の地域に対しても新たな権限を付与することについて言及するなど,連合王国のあり方について新たな動きが始まっています。英国では2015年5月に,総選挙が行われる予定です。保守党が政権にとどまった場合は,EU残留か離脱かを問う住民投票の実施を約束しており,スコットランドに端を発した英国の動きは,今後も世界の注目を集めることとなるでしょう。

 
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