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Vol.12 2008年10月29日
IAEA(国際原子力機関)
~核不拡散と原子力の平和的利用のために

2008年9月、第52回国際原子力機関(IAEA)総会がウィーンで開かれました。今回の総会において、日本は、次期IAEA事務局長候補として、天野之弥(あまのゆきや)ウィーン国際機関日本政府代表部大使の擁立を表明しました。核拡散の脅威が高まり、また、原子力発電への関心を有する国が増加する中、IAEAの活動に新たな注目が集まっています。IAEAの役割と活動について解説します。

戦後、原子力の平和利用と軍事利用への防止が課題に

物質を構成する原子には、その中心に、陽子と中性子から成る原子核が存在します。これが分裂するときに大きなエネルギーが放出されます。これが原子力エネルギーです。第二次世界大戦までの原子力エネルギー開発は、軍事的利用、つまり核兵器製造が主な目的でした。しかし大戦終了後、原子力がエネルギーとして有効に利用できることが改めて提言されたとき、どのようにしたら軍事利用をされずに原子力の技術を利用できるかが、国際社会の新たな課題として浮上してきました。

軍事開発から平和利用、軍事利用の防止へ
 

IAEAの成り立ち:「Atoms for Peace」

終戦から8年経った1953年、国連総会においてアイゼンハワー米国大統領が「Atoms for Peace」という演説を行ったことをきっかけに、国際原子力機関(IAEA)を作ろうという気運が高まってきました。1955年からIAEA憲章の草案作りが始まり、1956年に草案採択。1957年にIAEA憲章が発効し、IAEAが発足しました。現在加盟国は145か国(2008年9月現在)、年1回ウィーンで総会が開かれています。

 

IAEAの目的:平和利用の促進と軍事利用への転用の防止

IAEAの目的は、原子力が平和的に利用されることを促進するとともに、軍事的利用に転用されることを防ぐことです。そのために、技術協力や情報交換、科学者や専門家の訓練等を行うほか、「保障措置」と呼ばれる活動を行っています。

 
 

核開発にあたって、軍事的利用を防ぐための「保障措置」

「保障措置」とは、原子力の利用にあたってウランやプルトニウムのような核物質等が軍事的に利用されないことを確保するための措置のことです。その活動の主なものとして、核物質の「計量管理」、査察官が核物質を保有している施設に立ち入って調査する「査察」、核物質への接近等を防止するため、核物質が貯蔵された容器の蓋などに封印を付けて核物質を物理的に封じ込める「封じ込め」、およびビデオカメラやモニターなどを使って行う「監視」です。これらの活動は、加盟国が自ら申告する核物質やその関連施設を対象として行われます。

IAEAの保障措置
 

IAEAはNPTの核不拡散体制にとって不可欠な存在

一方、核不拡散体制の中核を担っているのが、核兵器不拡散条約(NPT)です。この条約は、米、英、仏、中、露を核兵器国として定め、締約国が核軍縮交渉を誠実に行う義務を定める一方、この5か国以外の国を非核兵器国とし、非核兵器国が核兵器を持つことを禁じています。同時に、非核兵器国にIAEAとの間で包括的保障措置協定を結ぶことを義務づけています。こうして、非核兵器国は、IAEAに対し自国の原子力活動に関する申告を行い、IAEAは申告に基づいて核物質が軍事的利用をしていないかどうかを確認して、核の不拡散体制が維持される仕組みとなっています。

NPT締約国と保障措置協定の概略図
 
 

未申告の核物質の軍事転用を防止するために「保障措置」を強化する

1990年初頭、イラクや北朝鮮の核開発疑惑が起こった際に、従来の保障措置では未申告の原子力活動を検知し、軍事転用を未然に防止することができないのではないか、という議論が出てきました。そこで未申告の原子力活動を探知する能力をアップするための強化策として「追加議定書」が採択されました。

 

核物質の軍事転用や未申告の原子力活動を示す兆候がないかを検証

この追加議定書を締結すると、IAEAに提供するべき情報や検認対象が拡大するほか、短時間の通告での立ち入り(補完的アクセス)等を受け入れることになり、未申告の原子力活動がないことを確認するためのより強力な権限がIAEAに与えられます。より多くの国が追加議定書を締結することが、核不拡散体制の強化、ひいては世界の平和と安定にとり重要です。

 

日本は、原子力の平和利用において模範的な国

包括的保障措置協定や追加議定書による検証を通じてIAEAが「核物質の軍事転用や未申告の原子力活動を示す兆候がない」と「結論」付けた国に対しては、通常の査察を合理化・効率化する措置が執られることとなりました。これが「統合保障措置」です。この「結論」はIAEAによって毎年出されるもので、日本は、2004年に大規模な原子力活動を行う国としては初めて「兆候がないとの結論」が出されて以降、毎年、統合保障措置が適用されています。2006年現在世界では、日本を含む9か国(オーストラリア、ブルガリア、ハンガリー、インドネシア、日本、ノルウェー、ペルー、スロベニア、ウズベキスタン)に適用されており、査察の合理化、効率化がなされ、経費の削減にも繋がっています。

 

査察の手順

IAEAが行う査察とは、核物質を扱っている施設に対してIAEAと国の査察官が立ち入り、計量管理の記録を確認したり、放射線検知器等を使って未申告の原子力活動がないか調査をしたりするものです。原子力発電所の他、研究機関や大学などが該当し、通告があった場合は受け入れ義務が生じます。査察は抜き打ちで、通告後、24時間以内にIAEAがアクセスを実施することができます。

IAEAの査察対象となる場所
 

「核セキュリティ」と国際社会の取組

2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、世界はテロ対策の見直しを緊急課題としました。IAEAでは「核セキュリティ」という概念を打ち出し、テロリスト等によって核物質や放射性物質が悪用されないよう、各国の核テロ対策強化のための支援を行ったり、ガイドラインを整備するなどさまざまな措置を講じています。また、国連では2005年に「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」を採択。2007年に22か国が締結したことにより発効し、現在38か国が締結しています(2008年6月現在)。また、2006年7月サンクトペテルサミットにおいて、米露両大統領が「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」を提唱。核テロ対策の強化に向けて、国際社会が一致団結して取り組むべきとの姿勢を示しました。

 
 

日本の取組

日本は非核兵器国のリーダーとして、かねてより原子力の平和利用における「3S」(Safeguards=核不拡散/保障措置、Safety=原子力安全、 Security=核セキュリティ)の重要性を、国際社会に対して強く訴えかけてきました。IAEAに設置された核物質等テロ行為防止特別基金に対しても、2007年度までに84万ドルを拠出し、IAEAを支援しています。今後も日本の長年における原子力の平和的利用の経験を活かし、原子力発電の新規導入国に対して3S確保のための基盤整備支援を行い、IAEAとの協力関係を深めていく方針です。

 

IAEAのノーベル平和賞受賞と次期事務局長候補への日本の立候補

ノーベル平和賞を受領したエルバラダイIAEA事務局長と天野ウィーン代表部大使(IAEA理事会議長)2005年10月、IAEAは「原子力が軍事目的に利用されることを防止し、平和的目的の原子力利用が可能な限り安全な方法により実施されることを確保するための努力」並びに「軍縮のための努力が膠着状態にある中、また、核兵器が国家やテロリストに拡散する危険が存在し、かつ原子力が益々重要な役割を担っている状況下、IAEAの業務は計り知れないほどの重要性を有する」としてIAEAおよび同エルバラダイ事務局長にノーベル平和賞が授与されました。こうしたIAEAの重要性およびIAEAが我が国の基幹エネルギーの一翼を担う原子力について責任を有している重要な国際機関であることを踏まえ、日本は、2009年11月に任期満了を迎えるエルバラダイ事務局長の後任候補として、天野之弥(あまのゆきや)ウィーン国際機関日本政府代表部大使を擁立しました。今後ともIAEAを一層支援していく考えです。

 
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