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Vol.117 2014年7月11日
「中央アジア+日本」対話 ~10年の道のり

中央アジア5カ国と日本による「中央アジア+日本」対話は,2014年でちょうど10周年を迎えます。7月16日にはキルギスにおいて第5回外相会合が開催される予定です。「中央アジア+日本」対話とは,どのような枠組みなのでしょうか。同地域の独自性や重要性,日本との関係性について,わかりやすく解説します。

「中央アジア+日本」対話の10周年を機に制定されたイメージキャラクターたち。19世紀後半の中央アジア・コーカサスを舞台とし,「マンガ大賞2014」の大賞作品に選ばれた『乙嫁語り』の作者・森薫さんによるデザイン。各国のキャラクターが着る民族衣装は,それぞれの国旗の色をモチーフとしている。

中央アジアの特長

中央アジア諸国中央アジア5カ国(ウズベキスタンカザフスタンキルギスタジキスタントルクメニスタン)は,ユーラシア大陸の中央部に位置し,古来シルクロードを通じて人と物の往来が盛んに行われてきた地域です。1991年のソ連崩壊後,それぞれが独立を果たし,国造りに尽力してきました。中央アジア一帯には,高い山々や草原,砂漠など,様々な気候や地形が存在しています。農業や牧畜業,鉱業等が栄え,石油や天然ガス,ウラン,レアアース等,豊富な天然資源にも恵まれています。また,山岳地域にあるタジキスタンやキルギスでは,豊富な水源を利用した水力発電が行われています。

わかる国際情勢 vol.94 中央アジア~アジアと欧州が出会う場所

 

日本にとっての「中央アジア」

中央アジアと言うと,少々なじみが薄く思えるかもしれませんが,実は日本にとって大変重要な国々です。豊富な天然資源を持つ中央アジアとの「資源外交」は,資源やエネルギーのほとんどを海外からの輸入に頼る日本が,最も重要視する活動のひとつです。また中央アジアは,テロや麻薬,難民問題など,多くの課題を抱えているアフガニスタンと長い国境線を共有しており,同地域の安定と発展は,アフガニスタン安定化のための「鍵」となるとも言われています。さらに中央アジアの国々は大変親日的であり,日本の国連安保理常任理事国入りを支持するなど,国際社会において良きパートナーとも言える存在です。

カザフスタンのアティラウ製油所  カザフスタンの鉛鉱山内の様子
 

中央アジアにとっての「日本」

中央アジアの国々と日本は,長年にわたって信頼関係を築いてきました。それをよく表すエピソードに,ウズベキスタンのオペラ劇場の話があります。終戦後,ソ連によって同地域に移送され,強制労働に従事していた日本人拘留者が建設の一部に従事したオペラ劇場「ナヴォイ劇場」は,20年後に大地震が発生した際にも,崩れ落ちずにしっかりと残っていました。この話は,日本人の勤勉さや技術力の高さを示す例えとして,今でも現地で語り継がれているそうです。ソ連からの独立後,中央アジアと日本の協力体制は,政治や経済,文化,人文分野等で発展してきましたが,特に日本が求められたのは,日本の技術や経験に裏打ちされた協力です。例えばキルギス,カザフスタン,ウズベキスタンに設置されたJICA日本人材開発センターは,日本のビジネス手法や日本語について学べる場として,今も現地の人々に有効活用されています。今後は,日本企業のさらなる進出に大きな期待が寄せられています。

 

中央アジアの課題

中央アジア諸国は,中国ロシアイラントルコという大国に囲まれた内陸の国々であり,人口は5カ国を足しても日本より少ない約6,500万人です。このような小さな国々が,周囲の大国との関係をどのように維持,発展させていくかというのは,大変難しい問題です。また,隣接するアフガニスタンからのテロや麻薬の流入,イスラム過激主義の浸透等による不安定化等が懸念されており,これからの中央アジアの安定と発展のためには,地域内での協力が不可欠となっている状況です。

 

「中央アジア+日本」という枠組み

中央アジア諸国2004年,川口外務大臣(当時)の提唱により,「中央アジア+日本」対話が発足しました。これは日本が「触媒」となって,中央アジアの地域協力を促進するという目的で作られた枠組みです。第1回外相会合は2004年8月にカザフスタンで行われ,その後おおむね,2年に一度のペースで外相会合を開催しています。この対話の特長は,外相会合以外にも,高級実務者会合や東京対話,専門家会合等,様々なレベルでの話し合いの場を重層的に設けていることです。日本によるこの先駆的な取組は,国際社会からも注目を集め,現在ではEUや,韓国なども,同様のアプローチによる対話フォーラムを立ち上げています。

「中央アジア+日本」対話の種類

  各国の参加者 これまでの開催回数
外相会合 外務大臣 4回(2014年7月に第5回会合開催予定)
高級実務者会合(SOM) 外務省および関係省庁代表者 8回
東京対話 有識者・専門家 6回
専門家会合 外務省および関係省庁関係者,関係団体,有識者・専門家等 1回(2014年2月,農業分野にて開催)

農業を通じた地域の発展を目指し,2014年3月に
開催された第6回東京対話の様子
 

具体的な協力分野

日本は,中央アジア独立後の1990年代から,新たな国造りを支援するため,各国別にODA等の協力を行い,高い評価を得てきました。中央アジア諸国は,こうした経緯をふまえつつ,次第に,「中央アジア+日本」対話の枠組みによる地域協力も,より積極的に推進すべき分野として捉えるようになっています。第4回外相会合では,具体的に,中央アジアに共通する課題である「貿易・投資(農業を含む)」,「環境,省エネ・再生可能エネルギー」,「ミレニアム開発目標(MDGs)達成と格差是正」,「アフガニスタン安定化に向けた協力」,「防災協力」の5つの分野で協力を推進することで一致し,中央アジアの国々からは,特に農業分野での知見の共有や,同じ地震国である日本との防災分野での協力に対して期待が寄せられました。この方針の元で,中央アジアと日本の専門家らが集まり,具体的協力の実現に向けた道すじについて議論する機会も増えています。

キルギスに引き渡された日本製の緊急車両6台  日本からの無償資金協力によるキルギス
非常事態省付属消防庁への研修を終えて
 

深化していく「中央アジア+日本」対話

発足当初は,日本が提唱し,主導する形で進められてきた「中央アジア+日本」対話ですが,近年では中央アジア側からも,日本とともに地域協力を推進していきたいという,熱意ある声が聞かれるようになりました。現在,そのモデル・ケースとして行われているのが,農業分野における協力の促進です。2013年7月にキルギスで行われた第7回高級実務者会合では,地域発展の鍵を握る農業分野に関し,具体的な地域協力プロジェクトを策定していくことで一致しました。2014年2月の農業分野専門家会合では,中央アジア側が,日本との協力を期待しているプロジェクトについて説明を行いました。同年3月の第6回東京対話では,中央アジアの農業振興のためにできる協力について,日本の企業,中でも中央アジアと気候条件等の類似性を持つ北海道の企業や研究機関等が発表を行い,参加者間で活発な議論が交わされました。

野菜種子生産振興プロジェクト

農業指導の様子  灌漑施設の説明
 

10周年を迎えて

2014年7月にはキルギスで,第5回外相会合が行われます。ここでは「貿易・投資促進」,特に農業分野における協力や,「持続可能な成長(環境・省エネ,MDGs,防災)」,「アフガニスタンを含む地域安全保障」について,重点的に議論が行われる予定です。また各国の国民の皆さんに,「中央アジア+日本」対話の枠組みをより広く知っていただくため,このページのトップに載せた中央アジア各国と日本の友好関係を表すイメージキャラクター を新たに制作しました。キャラクターデザインは,19世紀後半の中央アジア・コーカサスを舞台とし,「マンガ大賞2014」の大賞作品に選ばれた『乙嫁語り』の作者・森薫さんが担当しています。これらのキャラクターは,これから行われる広報や文化交流活動等の機会に,登場することになります。2014年は,「中央アジア+日本」対話が発足してから,10年目にあたる節目の年です。この10年間で中央アジアと日本の関係は少しずつ深化を遂げ,足並みをそろえて様々な課題に取り組むべく,お互い努力を重ねてきました。日本と中央アジアは,今後さらなる10年後,20年後に向け,これまで以上に「中央アジア+日本」対話を発展させていきます。

「中央アジア+日本」対話,イメージキャラクター発表式
 
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