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Vol.116 2014年7月1日
「未来への投資」としてのODA ~ 国際協力60周年

2014年は,日本がコロンボ・プランと呼ばれる開発途上国援助のための国際機関に加盟し,政府開発援助(ODA)を開始してからちょうど60年目にあたる節目の年です。「還暦」を迎えた日本の国際協力は,時代や国際社会の変化とともに,どのような役割を担ってきたのでしょうか。今回は日本の国際協力のこれまでの歩みと,今後の展開について解説します。

国際協力とは

現在世界には,195の国があります。そのうち150カ国以上が,「開発途上国」と呼ばれている国々です。開発途上国の多くは貧困や紛争という問題をかかえ,十分な食料や飲み水が得られなかったり,教育や医療を満足に受けられなかったりしています。また,環境破壊や感染症の蔓延,紛争の深刻化など,地球規模の問題も山積していますが,これらの問題は決して開発途上国だけの問題ではありません。こうした中で各国は,国際社会全体の平和と安定,発展のため,開発途上国や地域の人々を支援する取組を行っています。

サモア・水道事業運営(宮古島モデル)支援協力  カンボジア・メコン架橋建設計画
 

ODAとは

国際協力には,開発途上国への「経済協力」のほか,PKOや経済連携協定(EPA)など,さまざまな形があります。このうち,「経済協力」の中で中核をなすのが,ODAという公的資金を用いて行う開発協力です。ODAとは,「Official Development Assistance(政府開発援助)」の略称です。主に貧しい国に対して保健や教育などの分野に必要な資金を贈与する「無償資金協力」と,途上国が自立できるよう日本の技術を伝える「技術協力」の他,将来,開発途上国が返済することを前提とする「有償資金協力(円借款)」があります。近年では政府だけではなく,民間企業やNGO,地方自治体,大学などにも国際協力の裾野は広がり,官民が連携した形で,様々な事業に取り組んでいます。

開発協力の種類 
 

日本が国際協力をスタートした日

第2次世界大戦後,最も早く組織された開発途上国援助のための国際機関である「コロンボ・プラン」に日本が加盟したのは,1954年10月6日のことです。この日が,日本のODAがスタートラインに立った日であり,10月6日を「国際協力の日」と定めています。当初は戦後のアジア諸国に対する賠償と,それに並行する経済協力としての資金協力を行っていました。1976年に日本の賠償支払いが完了すると,1977年以降,ODAは日本の経済成長とともに倍増傾向となり,1989年には,日本はODAの量でアメリカを抜き,世界第1位になりました。1992年には,冷戦後の国際情勢に対応するため,理念の明確化や政策面での強化を推進することを目的に,ODA政策の基本的方針を定める「ODA大綱」が定められました。この頃から,「量から質へ」の変換が図られ,NGOや民間企業などとの連携がより強化されるようになりました。

日本のODAの歴史 
 

新たな時代への対応

2000年代に入ると,日本は次第に国際社会から,ODAにおけるリーダーとしての指導力を発揮することが求められるようになってきました。一方で,厳しい財政状況の中,ODAに対する国民の理解と支持を得ることも,重要視されるようになります。2003年には,初めてODA大綱を改定し,「人間の安全保障」 と「平和構築」が新たなODAのキーワードとして掲げられました。同時に,「国民参加」,「透明性確保」,「効率性向上」を柱としたODA改革に向けた動きも活発化していきます。現在の日本のODA実績(支出総額)は,経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)加盟国中,米国に次いで,第2位という順位になっています。DACで通常国際比較で使用されている支出純額(※)では,米国,英国,ドイツに次いで第4位です。ただし,国民総所得(GNI)比では0.23%と,DAC加盟28か国の中で第18位にとどまり,国際社会における日本の経済力や地位を考慮すると,今後の日本の支援には,より一層大きな期待が寄せられています。

(※)ODAの支出総額から,回収額(援助供与国への貸付の返済額)を差し引いた額のこと。有償資金協力で貸し付けた資金は,国際協力機構(JICA)に規定の返済期間内に返済される。

主要国におけるODA実績の推移(支出総額ベース)
主要国におけるODA実績の推移(支出純額ベース)
主要援助国ODA実績の対国民総所得(GNI)比
 

ODAを供与した国々

日本がこれまでにODAを供与したことのある国と地域は,190に上ります(2012年末現在)。近年では特に,医療や保健,防災の分野での支援を積極的に行っています。地域別には,政治的にも経済的にも密接な関係を有しているアジア地域に対して,日本は多くのODAを供与してきており,現在においても最重点地域として位置づけています。また,現在著しい経済成長を遂げているアフリカに対しても,ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けた支援や人づくり,貿易や投資の促進などのための支援を実施しており,アフリカ側のオーナーシップを尊重しつつ,日本は良きパートナーとして,アフリカの成長を支えています。

分野 事例名 詳細 写真


メキシコ医師団テルモ・カテーテル術研修 メキシコでは,虚血性心疾患が上位死因となっているが,治療技術における安全性と,医療費において改善の余地がある。民間提案型JICA技術協力研修事業として,若手医師を招聘。医療機器メーカーのトレーニング施設で,最新シミュレーターによる実技トレーニングを実施。


母子保健に焦点を当てたリプロダクティブヘルス向上プロジェクト パレスチナではイスラエル軍による分断と封鎖が続き,妊婦が保健医療施設へのアクセスや継続的な周産期ケアを受けることが困難な状態に陥ることがある。この課題に対処するため,母子健康手帳の配布と活用促進を開始。現在では,母親と医療従事者とのコミュニケーションや家族とのコミュニケーションのツールとして有効活用されている。







ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)に対する支援 2011年7月21日,日・ASEAN外相会議で,日本は「ASEAN防災ネットワーク構築構想」を提案。AHAセンターの能力強化を支援するとともにASEAN各国への二国間協力を行っている。

 

「日本の皆さん,ありがとう!」

日本のこれまで行ってきた支援は,実際にプロジェクトが行われた現地において,好意的にとらえられています。例えば,メコン河により東西に分断されていたカンボジアの主要な幹線道路に対して,日本のODA(無償資金協力)によってメコン架橋が建設されたのですが,現地ではこの橋を,日本語をそのまま使って「きずな橋」と呼び,親しまれているそうです。2011年の東日本大震災の後に世界中から送られてきた応援メッセージの中にも,自分たちが被災したときに日本に助けてもらったこと,自国の開発を支えてくれた日本への感謝の念に触れるものが数多くありました。また,2014年に行われたASEAN7カ国における対日世論調査では,9割以上の人々が「ASEAN諸国にとって,日本との友好関係が重要」と回答し,「日本政府の経済・技術協力が役立っている」と答えた人は89%,日本企業の進出に対しては95%が「好意的に捉えている」との結果が報告されています。これらの事例は,この60年間日本が行ってきた支援が,日本への信頼の強化に大きな役割を果たしてきた証とも言えるでしょう。

ODAエピソード『ODAちょっといい話』

「きずな橋」をモチーフにしたカンボジアの切手と,
カンボジアの500リエル紙幣
 

何のためのODA?

日本が,60年にわたって国際協力を行ってきた理由は,豊かな国が貧しい国に手を差し伸べるということだけではありません。資源や食料を海外に依存している日本にとって,ODAは最も重要な外交手段であり,国民の生活を守り,より良い国際環境を構築するという,日本自身の利益にかなうものでもあるのです。またODAを通して,日本の優れたインフラや製品・技術を海外に普及することで,新興国や途上国と日本がともに成長する機会を創出し,国際社会において,日本の存在感を向上させることにもつながっています。最近のODAをめぐる国際的な潮流では,経済のグローバル化に伴い,①貧困削減に加えて経済成長も,②ドナーと被援助国という垂直的な関係をもたらしていた援助から,先進国と途上国の双方に利益となる開発協力へ,③ODAに加えて民間投資も,④国際益の重視から,国際益と国益の両立,または国益重視へと,重視されるポイントも変わろうとしています。このような状況の中,日本における国際協力の形も,次第に変化を遂げようとしています。

 

地球の未来を守るため

国際協力60周年ロゴマーク2014年3月,岸田外務大臣は「進化するODA ~世界と日本の未来のために~」と題するスピーチを行いました。ここでは,国際協力60年の歩みを振り返りながら,「国際社会の議論をリードするODA」「開発の土台としての平和,安定,安全」「民間企業やNGO,地方自治体,大学等との連携の強化」という,ODAのさらなる進化に向けた方向性を提示しました。ODAの重要性を改めて述べつつ,同時にODA大綱の見直しの必要性を強く訴えました。ODAを取り巻く国際環境の変化に伴い,日本に求められる役割は,時代とともに変わりつつあります。国際協力を開始してから60年,「還暦」を迎えた日本は今後,途上国の安定と発展はもちろんのこと,日本や国際社会全体に役立つための「未来への投資(PDF)」に,力強く取り組んでいきます。

日本記者クラブでODA政策についてスピーチをする岸田外務大臣(2014年3月28日)
 
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